Episode.07
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奥州を出発してから丸一日が過ぎ、翌日
早朝の気配が漂う街道を、伊達軍は尾張を目指して進軍していた
先頭を走るのは政宗様、その左側を片倉様が走る
私は政宗様の右後ろを走っていた
片倉様は何もおっしゃらなかったけれど、尾張へ攻め込む道中、いずれ織田方の軍が我々を迎え撃つだろう
織田に属する家々が、尾張まで我々を見逃すはずがない
慶次殿は織田を包囲する陣容に浅井・朝倉の両軍を見込んでいたけれど……
浅井はその織田から嫁をもらった家だ
織田包囲網に加担するどころか、我々を待ち構えている可能性の方が高い
「独眼竜!」
私を追い越して慶次殿が先頭の政宗様へ近づく
政宗様は振り返ることなく、慶次殿に応えた
「どうした、色男」
「今頃、上杉の軍勢が信濃を抜けて甲斐へ向かっているはずだ」
「……川中島の再戦でもやろうってのか」
「いや、武田と合流して尾張へ攻め込む
俺達を先鋒にしてな
悪く思わないでくれ、けどあんた、俺がけしかけなくても――」
「そんなことは小十郎がとっくにお見通しだ
ま、どうでもいいがな」
政宗様はにべもなくそう言い捨てた
果たしてそれはどうでもいいことなのだろうか
結構重要なことだと私は思うのだけれど……
しかし片倉様はお見通しだったのか、流石は軍師
慶次殿から織田包囲網を如何にして展開するか、詳しく聞きはせずとも、ある程度の予想は出来ていたのだろう
話に聞けば、慶次殿は越後の軍神――謙信公と懇意の仲であると聞く
その伝手で武田にも話を持ちかけて、その足で奥州まで上ってきたのだろう
残念ながら、そのような事情を蹴飛ばして我が道を往くのが、我ら奥州伊達軍である
「俺の邪魔は誰にもさせねえ
たとえ百万の軍勢が後ろから追ってこようが、魔王の首を獲るのはこの俺だ、You see?」
呆れるやら頼もしいやら
政宗様とて、桶狭間での一幕を忘れたわけではない
織田信長という存在が放つ禍々しさへの恐怖心は、彼も理解している
その恐怖を、日ノ本の明日を創るという大きな責務でもって、自らへの鼓舞として心身を奮い立たせておられるのだ
「そのまま、一気に天下を取る
まずは背中に迫った武田と上杉から潰すことになるぜ」
そこまで言って、政宗様は口を閉ざした
けれど微かに口角が上がっている
「……アイツとのお楽しみは最後まで取っておきたいところだったが……
悪かねえ」
……なるほど、真田幸村のことか
分かりやすい人だ
「……?」
片倉様の視線は、慶次殿ではなく私を見ているように思えた
もしくは、慶次殿と私を同時に観察しているような
「片倉様?」
「……この調子ですと、三方ヶ原に差し掛かる前に一夜を明かすことになりそうですな」
「No problem.
paceを上げたところで、馬がバテたんじゃ話にならねぇ
……魔王は逃げやしねぇよ」
織田は、この包囲網をどう見ているのだろう
関わり合いなど無かった諸国が手を結べるはずもないと踏んでいるのか、それとも――
(結局、片倉様の信頼を勝ち取れないまま、尾張へ攻め上ることになってしまった)
唯一の心残りはそれくらいだろうか
ああでも、その方が私の首を刎ねるのに躊躇しないだろうから、むしろ好都合であるかもしれない
……もうすぐだ
もうすぐ、私は悲願と共にようやく、この世に別れを告げられる
*********************
慶次殿はわずか数日で、軍の兵たちと打ち解けたようだ
もともとノリがいい奴らが多い軍だし、慶次殿自身も人懐こい性格をされている
いがみ合いなんてものは全く危惧してなかった
ふと双竜の様子を伺うと、やはり二人で何事かを話されている
昨日の夜も、政宗様と片倉様は二人で何かを話していた
軍議なら私も呼べばいいのにと思うけれど、私に声がかからないということは、私的な会話であったのか
……それとも、この一件が片付いてから私をどうするかの話だったのか
慶次殿は慶次殿で、左馬助が集めた伊達家の歴代の指物を一緒に眺めていたり、良直の髪型を真似しようとしていたり
……孫兵衛は相変わらず、食べてしかいなかったけど
ともあれ伊達に馴染めていることは喜ばしい
(……私達を先鋒にして、か)
斥候の情報と照らし合わせても、このままいくと上杉武田の連合軍が、三方ヶ原で徳川とぶつかることになりそうだ
織田に服属している以上、魔王の命令は絶対
徳川が連合軍を迎え撃つように動くと見て間違いない
よって、ここで私たちと背後の両軍が離されそうだ、というのが私たちの見解だった
このまま何事もなく尾張に向かえたらいいのだけど……
早朝の気配が漂う街道を、伊達軍は尾張を目指して進軍していた
先頭を走るのは政宗様、その左側を片倉様が走る
私は政宗様の右後ろを走っていた
片倉様は何もおっしゃらなかったけれど、尾張へ攻め込む道中、いずれ織田方の軍が我々を迎え撃つだろう
織田に属する家々が、尾張まで我々を見逃すはずがない
慶次殿は織田を包囲する陣容に浅井・朝倉の両軍を見込んでいたけれど……
浅井はその織田から嫁をもらった家だ
織田包囲網に加担するどころか、我々を待ち構えている可能性の方が高い
「独眼竜!」
私を追い越して慶次殿が先頭の政宗様へ近づく
政宗様は振り返ることなく、慶次殿に応えた
「どうした、色男」
「今頃、上杉の軍勢が信濃を抜けて甲斐へ向かっているはずだ」
「……川中島の再戦でもやろうってのか」
「いや、武田と合流して尾張へ攻め込む
俺達を先鋒にしてな
悪く思わないでくれ、けどあんた、俺がけしかけなくても――」
「そんなことは小十郎がとっくにお見通しだ
ま、どうでもいいがな」
政宗様はにべもなくそう言い捨てた
果たしてそれはどうでもいいことなのだろうか
結構重要なことだと私は思うのだけれど……
しかし片倉様はお見通しだったのか、流石は軍師
慶次殿から織田包囲網を如何にして展開するか、詳しく聞きはせずとも、ある程度の予想は出来ていたのだろう
話に聞けば、慶次殿は越後の軍神――謙信公と懇意の仲であると聞く
その伝手で武田にも話を持ちかけて、その足で奥州まで上ってきたのだろう
残念ながら、そのような事情を蹴飛ばして我が道を往くのが、我ら奥州伊達軍である
「俺の邪魔は誰にもさせねえ
たとえ百万の軍勢が後ろから追ってこようが、魔王の首を獲るのはこの俺だ、You see?」
呆れるやら頼もしいやら
政宗様とて、桶狭間での一幕を忘れたわけではない
織田信長という存在が放つ禍々しさへの恐怖心は、彼も理解している
その恐怖を、日ノ本の明日を創るという大きな責務でもって、自らへの鼓舞として心身を奮い立たせておられるのだ
「そのまま、一気に天下を取る
まずは背中に迫った武田と上杉から潰すことになるぜ」
そこまで言って、政宗様は口を閉ざした
けれど微かに口角が上がっている
「……アイツとのお楽しみは最後まで取っておきたいところだったが……
悪かねえ」
……なるほど、真田幸村のことか
分かりやすい人だ
「……?」
片倉様の視線は、慶次殿ではなく私を見ているように思えた
もしくは、慶次殿と私を同時に観察しているような
「片倉様?」
「……この調子ですと、三方ヶ原に差し掛かる前に一夜を明かすことになりそうですな」
「No problem.
paceを上げたところで、馬がバテたんじゃ話にならねぇ
……魔王は逃げやしねぇよ」
織田は、この包囲網をどう見ているのだろう
関わり合いなど無かった諸国が手を結べるはずもないと踏んでいるのか、それとも――
(結局、片倉様の信頼を勝ち取れないまま、尾張へ攻め上ることになってしまった)
唯一の心残りはそれくらいだろうか
ああでも、その方が私の首を刎ねるのに躊躇しないだろうから、むしろ好都合であるかもしれない
……もうすぐだ
もうすぐ、私は悲願と共にようやく、この世に別れを告げられる
*********************
慶次殿はわずか数日で、軍の兵たちと打ち解けたようだ
もともとノリがいい奴らが多い軍だし、慶次殿自身も人懐こい性格をされている
いがみ合いなんてものは全く危惧してなかった
ふと双竜の様子を伺うと、やはり二人で何事かを話されている
昨日の夜も、政宗様と片倉様は二人で何かを話していた
軍議なら私も呼べばいいのにと思うけれど、私に声がかからないということは、私的な会話であったのか
……それとも、この一件が片付いてから私をどうするかの話だったのか
慶次殿は慶次殿で、左馬助が集めた伊達家の歴代の指物を一緒に眺めていたり、良直の髪型を真似しようとしていたり
……孫兵衛は相変わらず、食べてしかいなかったけど
ともあれ伊達に馴染めていることは喜ばしい
(……私達を先鋒にして、か)
斥候の情報と照らし合わせても、このままいくと上杉武田の連合軍が、三方ヶ原で徳川とぶつかることになりそうだ
織田に服属している以上、魔王の命令は絶対
徳川が連合軍を迎え撃つように動くと見て間違いない
よって、ここで私たちと背後の両軍が離されそうだ、というのが私たちの見解だった
このまま何事もなく尾張に向かえたらいいのだけど……
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