Episode.3-9
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夜が明け、日が昇り、そしてまた夜がくる
それを何度繰り返しただろう
そう考えて、せいぜいが三度かと気が付いた
……ここは甲斐武田の躑躅ヶ崎館
世話になるのは二年ぶりだ
「失礼致しまする
政宗殿、口から流せるものを用意させ申した
こちらを綾葉殿に」
「Thanks.
アンタも帰ってきたばかりで忙しいだろうに、俺たちの面倒まで見させて悪いな」
「なんの!
綾葉殿は我ら武田とも縁のあるお方
それに……綾葉殿が目を覚まされぬのは、某が政宗殿との勝負に熱中するあまり、綾葉殿のご様子に気付けなんだせいでもありまする」
「それに関しちゃ、俺も同罪だ
……アンタが潔く槍を引いてくれて助かった」
鎧の間に寝かされた綾葉は、三日三晩眠り続けている
関ヶ原の地で真田幸村と決着をつけるべく、勝負に夢中になっていた俺は、小十郎が割って入るまで、綾葉の様子なんざ気にも留めていなかった
死人のように青ざめた顔は生気がなく、呼び掛けにも応じない
ただ脈はあって、綾葉が生きていると伝えてきた……それだけだ
俺と石田三成の決着の場を持たせるために、小十郎と一緒になって、押し寄せてくる敵を相手し続けて
魔王が復活したとなりゃ、魂に刻み付けられた呪縛が目を覚まし、綾葉の身体を乗っ取ろうとした
死力を尽くして魔王と戦って──力尽きた反動で呪縛に呑まれて
それでも最後は、風神の力を借りて、魔王との因縁を断ち切る一矢を放って……
余程の神経をすり減らしていたはずだ
「綾葉殿は、魔王との因縁……蝮の呪縛を、断ち切れたのでござろうか」
「きっとな」
そうであることを願うしかない
もちろん、因縁や呪縛が断ち切れなかったとしても、魔王は地の底に沈んだ
綾葉が苦しむ必要はない……と信じたいが
「某、政宗殿にお会いしたら、お聞きしたいことがございました」
「Um?」
「何故、綾葉殿は、政宗殿への輿入れを拒んだのでござろうか?
あれ程までに政宗殿をお慕いされておられた故、佐助より輿入れの話がなくなったと聞き、驚いたのでござる」
「……まさか本当に、魔王との因縁が続いてやがったとはな」
「と、申されますと?」
「魔王の奴が綾葉をなんて呼んだか、覚えてるか」
「たしか……死告蝶、と」
死を告げる蝶、それが綾葉の運命だとしたら
綾葉には本気で、誰かと歩む道なんざ、存在しなかったということだ
その運命を捻じ曲げてでも未来を望んだら、大切なものは綾葉の手のひらから零れていく
……ある意味じゃあ、綾葉が俺から離れようとしたのは、正解だったってことだ
「魔王の因縁……それほどに強いものでござったか……」
「焼いて消した程度じゃあ解けねぇはずだ
綾葉のそれは、斎藤の家に生まれた時から決まっていたものだったんだろうからな」
それでもこいつは立ち向かった
俺との明日を手にするために
それはどんなに直向きで、切実な願いだったろう
自分の全てを俺に捧げると綾葉は言った
それなら俺も、お前の全てを受け取るから
「失礼致しまする
幸村様、急ぎ確認して頂きたいことが……」
「すぐに参ろう!
では政宗殿、某はこれにて
政宗殿もご無理はなさらぬよう」
「分かった分かった」
真田幸村が鎧の間を出ていけば、ここには俺と綾葉しかいなくなる
人払いをされているせいで、小十郎もうちの奴らも、ここには近付けない
頭を左手で抱き上げて、口元に白湯を当てる
少しずつ流し込んでやれば、こくりこくりと喉が動いた
「……この竜に看病させたんだ
目覚めた時にゃ、Kissのひとつでも欲しいもんだな」
立ち上がって鎧の間を出る
小十郎と確認しなきゃならねぇこともあるし、生き残った奴らも綾葉のことが気にかかってるだろう
伊達が詰めている部屋へ向かえば、その庭先であの四人が、またもや顔を付き合わせて話し込んでいた
「Hey,guys.
そんなところで団子になって、何してやがる?」
「筆頭!」
「姐御の様子は!?」
「まだ目ぇ覚めませんか!?」
「俺らにできることないですか!?」
「OK,OK.
まずは落ち着け」
四人が勢いを削がれたように固まる
しゅんと小さくなったそいつらへ、どう声をかけようかと少し迷ったところに、今度は小十郎が通りかかった
「政宗様」
「よう、小十郎」
「綾葉の様子は……」
「目を覚ます気配はゼロだな
もう少し待つしかねぇ」
「……左様で」
ほとんど変わらなかったが、十年以上の付き合いで俺は分かった
こいつがまさか、綾葉のことで一喜一憂する日がくるとはな……
それだけ綾葉も、うちの一員になったってことなんだろう
「Don't worry.
綾葉はここでくたばるような奴じゃねぇ
この竜と番う女なんだ
そんじょそこらの奴らとは違う、そうだろ?」
「……そうですな」
半分は自分に言い聞かせている言葉だった
綾葉はこんなところでは死なない
奥州に戻って、俺の嫁になるんだろう
風神の後なんざ、追いかけてくれるなよ──
それを何度繰り返しただろう
そう考えて、せいぜいが三度かと気が付いた
……ここは甲斐武田の躑躅ヶ崎館
世話になるのは二年ぶりだ
「失礼致しまする
政宗殿、口から流せるものを用意させ申した
こちらを綾葉殿に」
「Thanks.
アンタも帰ってきたばかりで忙しいだろうに、俺たちの面倒まで見させて悪いな」
「なんの!
綾葉殿は我ら武田とも縁のあるお方
それに……綾葉殿が目を覚まされぬのは、某が政宗殿との勝負に熱中するあまり、綾葉殿のご様子に気付けなんだせいでもありまする」
「それに関しちゃ、俺も同罪だ
……アンタが潔く槍を引いてくれて助かった」
鎧の間に寝かされた綾葉は、三日三晩眠り続けている
関ヶ原の地で真田幸村と決着をつけるべく、勝負に夢中になっていた俺は、小十郎が割って入るまで、綾葉の様子なんざ気にも留めていなかった
死人のように青ざめた顔は生気がなく、呼び掛けにも応じない
ただ脈はあって、綾葉が生きていると伝えてきた……それだけだ
俺と石田三成の決着の場を持たせるために、小十郎と一緒になって、押し寄せてくる敵を相手し続けて
魔王が復活したとなりゃ、魂に刻み付けられた呪縛が目を覚まし、綾葉の身体を乗っ取ろうとした
死力を尽くして魔王と戦って──力尽きた反動で呪縛に呑まれて
それでも最後は、風神の力を借りて、魔王との因縁を断ち切る一矢を放って……
余程の神経をすり減らしていたはずだ
「綾葉殿は、魔王との因縁……蝮の呪縛を、断ち切れたのでござろうか」
「きっとな」
そうであることを願うしかない
もちろん、因縁や呪縛が断ち切れなかったとしても、魔王は地の底に沈んだ
綾葉が苦しむ必要はない……と信じたいが
「某、政宗殿にお会いしたら、お聞きしたいことがございました」
「Um?」
「何故、綾葉殿は、政宗殿への輿入れを拒んだのでござろうか?
あれ程までに政宗殿をお慕いされておられた故、佐助より輿入れの話がなくなったと聞き、驚いたのでござる」
「……まさか本当に、魔王との因縁が続いてやがったとはな」
「と、申されますと?」
「魔王の奴が綾葉をなんて呼んだか、覚えてるか」
「たしか……死告蝶、と」
死を告げる蝶、それが綾葉の運命だとしたら
綾葉には本気で、誰かと歩む道なんざ、存在しなかったということだ
その運命を捻じ曲げてでも未来を望んだら、大切なものは綾葉の手のひらから零れていく
……ある意味じゃあ、綾葉が俺から離れようとしたのは、正解だったってことだ
「魔王の因縁……それほどに強いものでござったか……」
「焼いて消した程度じゃあ解けねぇはずだ
綾葉のそれは、斎藤の家に生まれた時から決まっていたものだったんだろうからな」
それでもこいつは立ち向かった
俺との明日を手にするために
それはどんなに直向きで、切実な願いだったろう
自分の全てを俺に捧げると綾葉は言った
それなら俺も、お前の全てを受け取るから
「失礼致しまする
幸村様、急ぎ確認して頂きたいことが……」
「すぐに参ろう!
では政宗殿、某はこれにて
政宗殿もご無理はなさらぬよう」
「分かった分かった」
真田幸村が鎧の間を出ていけば、ここには俺と綾葉しかいなくなる
人払いをされているせいで、小十郎もうちの奴らも、ここには近付けない
頭を左手で抱き上げて、口元に白湯を当てる
少しずつ流し込んでやれば、こくりこくりと喉が動いた
「……この竜に看病させたんだ
目覚めた時にゃ、Kissのひとつでも欲しいもんだな」
立ち上がって鎧の間を出る
小十郎と確認しなきゃならねぇこともあるし、生き残った奴らも綾葉のことが気にかかってるだろう
伊達が詰めている部屋へ向かえば、その庭先であの四人が、またもや顔を付き合わせて話し込んでいた
「Hey,guys.
そんなところで団子になって、何してやがる?」
「筆頭!」
「姐御の様子は!?」
「まだ目ぇ覚めませんか!?」
「俺らにできることないですか!?」
「OK,OK.
まずは落ち着け」
四人が勢いを削がれたように固まる
しゅんと小さくなったそいつらへ、どう声をかけようかと少し迷ったところに、今度は小十郎が通りかかった
「政宗様」
「よう、小十郎」
「綾葉の様子は……」
「目を覚ます気配はゼロだな
もう少し待つしかねぇ」
「……左様で」
ほとんど変わらなかったが、十年以上の付き合いで俺は分かった
こいつがまさか、綾葉のことで一喜一憂する日がくるとはな……
それだけ綾葉も、うちの一員になったってことなんだろう
「Don't worry.
綾葉はここでくたばるような奴じゃねぇ
この竜と番う女なんだ
そんじょそこらの奴らとは違う、そうだろ?」
「……そうですな」
半分は自分に言い聞かせている言葉だった
綾葉はこんなところでは死なない
奥州に戻って、俺の嫁になるんだろう
風神の後なんざ、追いかけてくれるなよ──
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