Episode.2-12
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
摺上原での戦いから日は流れ、夏真っ盛りの今日
私達は大阪を目指して出陣した
「Are you ready,guys!?」
「「Yeahー!!」」
「Hurry up!」
「「Yeahー!!」」
「Burning up!!」
「「Yeahー!!」」
片倉様が不在のため、彼の位置を私が代わりに務めることになったわけだけれど
先頭で腕を組み、馬を走らせる政宗様の様子を見やる
……いつも通りに見えて、そうではなさそうだ
やはり片倉様がいないということと、摺上原での戦略の失敗からか、焦りが彼を包んでいる
今の政宗様には、以前ほどの余裕がないように感じる
もし無茶をしそうになったら、私がしっかりとお止めしなければ……
「……ん?」
向こうから、斥候に出した兵士二人が戻ってくるのが見えた
そのまま私と政宗さんの後ろを通って互いにすれ違い、私達に並走してくる
なにか良くない報せでもあったと見えるけれど、はたして
「筆頭、姐御!
瀬戸川の向こうに、上杉の軍勢が!」
「何……?」
「簡単に突破できそうな数じゃありませんぜ!」
上杉殿が、なぜ瀬戸川に……?
弱体化を余儀なくされた今の私達相手なら、上杉軍も苦戦はしない
これを好機とみて、攻め込んできたの……?
いや、義に篤い上杉殿が、そんな姑息な手を使うとは考えにくい
だとしたら一体なぜ……
(しかも、瀬戸川は……)
分かっていて、わざとここを選んだというの?
政宗様の判断を伺うけれど、政宗様も上杉殿の真意は測りかねているようだ
それでも進軍を止めるという選択肢は無い
戦うことになったら……伊達に勝ち目はないけれど
*********************
阿武隈川の支流、瀬戸川
そこにかかるのは人取橋
その瀬戸川と人取橋を挟んで対岸に、上杉軍は展開していた
政宗様はというと、丘の方に立ったまま、ただ対岸を見つめていた
良直たち四人に、周囲の様子を見てくるよう指示を出した後、彼は何もしていない
おそらく、上杉殿の真意を探っているのだろう
程なくして、様子を見に行かせた四人組が丘を登ってきた
「筆頭、ダメっす!」
「上杉の奴ら、何を言っても完全シカトっす!」
「迂回路もすべて塞がれてます!」
「それに、どこにも上杉謙信らしき姿が見当たりません……!」
反応がない……けれど道を塞ぎ、私達を通そうとはしない
そして、上杉殿の姿も見当たらない……
戦を仕掛けてきたと捉えるには、不振な点が多すぎる
そうでは無いと仮定すると……ではこの布陣に、何の意味が……?
「もしかして、上杉も豊臣に乗っ取られちまったんじゃ……!」
「じゃあ、他にも……!?
また囲み討ちにしようってのか!?」
摺上原での光景が頭を過ぎったのだろう
四人が頭を抱えたとき
「――Be quiet.
ジタバタしても始まらねえ」
静かに政宗様がそうおっしゃった
その言葉に、四人が口を噤む
そして政宗様は、ふと何かを思い出したように呟いた
「人取橋か……」
青々と茂る草原と晴れ渡った青空に重なる光景がある
恐ろしい程に赤い夕空と、幾重にも折り重なった死体、血が流れて赤く染まる大地と瀬戸川――
ああ……本当にひどい光景だった
まるで地獄のようだと思ったものだ
……伊達が奥州を平定するために起こした戦、それがここで起きた――人取橋の戦い
あの時の大損害は、後に伊達軍の在り方を決定づけることにもなった
結果は伊達の辛勝――けれどもそれを手放しで喜ぶことは出来なかった
「何を企んでいやがる、越後の軍神……?」
四人を下がらせると、政宗様は珍しく床几に腰を下ろした
私も立ちっぱなしで疲れたので、政宗様の横で草原に座ることにした
どうやら上杉も戦いに来たわけではなさそうだけれど、ただ伊達を足止めするだけなら、わざわざここ人取橋でなくても良かった
あえてここを選んだ理由があるはず
傍に置いてある兜は、弦月の前立てにいつの間にか小鳥が一羽止まっていた
まるで戦など終わってしまったかのような穏やかさだ
「……武田との川中島といい、のんびりやるのが好きなこった……」
政宗様がそう呟いて兜に止まる小鳥を横目で見やった
留まっているのはセキレイ
政宗様の花押の元となった鳥だ
セキレイから目を離したとき、対岸に一つの影が見えた
「あれは……」
「越後の軍神……」
どこにも姿がないと聞いていたけれど……
政宗様と軍神が見つめ合う
対岸と言っても距離が離れているから、互いに表情までは読み取れないだろうけれど
「やり合うんすか、筆頭……!」
左馬助の言葉にはすぐに反応せず、政宗様はなおも上杉殿を見つめ
そうして立ち上がらぬままに言った
「……オメエらはもうしばらくpicnicを楽しみな」
「「……へっ?」」
てっきりやり合うとばかり思っていたのだろう、兵達からは間抜けた声が返ってきた
向こうも、まさか私達が仕掛けてくるとは思っていないだろう
ならばわざわざこちらから仕掛ける必要はない
「豊臣は逃げやしねえ……」
相変わらず上杉殿の意図は読めないけれど……
動きはせず、ただこちらを眺めるだけの上杉軍を見つめ返す
まるで『そうあせらず、ここでひといき、いれてゆきなさい』とでもおっしゃっているかのよう
「あちらから攻めてくる気もないようでございますし、私達も体を休めましょう
包帯が取れていらっしゃらない方もおられるようですから」
政宗様の首元から覗く白い包帯
完治を待たずに飛び出して、この人は……と言いたいところだけど、今回ばかりは不問とすべきだろう
ほとんど傷もふさがっているようだから、強くはお止めしなかったのもある
……ついでに、対岸で桃色の花が舞っている理由については、知らないふりをしておく
触れないほうが良い気がした
これはただの勘だけれど
私達は大阪を目指して出陣した
「Are you ready,guys!?」
「「Yeahー!!」」
「Hurry up!」
「「Yeahー!!」」
「Burning up!!」
「「Yeahー!!」」
片倉様が不在のため、彼の位置を私が代わりに務めることになったわけだけれど
先頭で腕を組み、馬を走らせる政宗様の様子を見やる
……いつも通りに見えて、そうではなさそうだ
やはり片倉様がいないということと、摺上原での戦略の失敗からか、焦りが彼を包んでいる
今の政宗様には、以前ほどの余裕がないように感じる
もし無茶をしそうになったら、私がしっかりとお止めしなければ……
「……ん?」
向こうから、斥候に出した兵士二人が戻ってくるのが見えた
そのまま私と政宗さんの後ろを通って互いにすれ違い、私達に並走してくる
なにか良くない報せでもあったと見えるけれど、はたして
「筆頭、姐御!
瀬戸川の向こうに、上杉の軍勢が!」
「何……?」
「簡単に突破できそうな数じゃありませんぜ!」
上杉殿が、なぜ瀬戸川に……?
弱体化を余儀なくされた今の私達相手なら、上杉軍も苦戦はしない
これを好機とみて、攻め込んできたの……?
いや、義に篤い上杉殿が、そんな姑息な手を使うとは考えにくい
だとしたら一体なぜ……
(しかも、瀬戸川は……)
分かっていて、わざとここを選んだというの?
政宗様の判断を伺うけれど、政宗様も上杉殿の真意は測りかねているようだ
それでも進軍を止めるという選択肢は無い
戦うことになったら……伊達に勝ち目はないけれど
*********************
阿武隈川の支流、瀬戸川
そこにかかるのは人取橋
その瀬戸川と人取橋を挟んで対岸に、上杉軍は展開していた
政宗様はというと、丘の方に立ったまま、ただ対岸を見つめていた
良直たち四人に、周囲の様子を見てくるよう指示を出した後、彼は何もしていない
おそらく、上杉殿の真意を探っているのだろう
程なくして、様子を見に行かせた四人組が丘を登ってきた
「筆頭、ダメっす!」
「上杉の奴ら、何を言っても完全シカトっす!」
「迂回路もすべて塞がれてます!」
「それに、どこにも上杉謙信らしき姿が見当たりません……!」
反応がない……けれど道を塞ぎ、私達を通そうとはしない
そして、上杉殿の姿も見当たらない……
戦を仕掛けてきたと捉えるには、不振な点が多すぎる
そうでは無いと仮定すると……ではこの布陣に、何の意味が……?
「もしかして、上杉も豊臣に乗っ取られちまったんじゃ……!」
「じゃあ、他にも……!?
また囲み討ちにしようってのか!?」
摺上原での光景が頭を過ぎったのだろう
四人が頭を抱えたとき
「――Be quiet.
ジタバタしても始まらねえ」
静かに政宗様がそうおっしゃった
その言葉に、四人が口を噤む
そして政宗様は、ふと何かを思い出したように呟いた
「人取橋か……」
青々と茂る草原と晴れ渡った青空に重なる光景がある
恐ろしい程に赤い夕空と、幾重にも折り重なった死体、血が流れて赤く染まる大地と瀬戸川――
ああ……本当にひどい光景だった
まるで地獄のようだと思ったものだ
……伊達が奥州を平定するために起こした戦、それがここで起きた――人取橋の戦い
あの時の大損害は、後に伊達軍の在り方を決定づけることにもなった
結果は伊達の辛勝――けれどもそれを手放しで喜ぶことは出来なかった
「何を企んでいやがる、越後の軍神……?」
四人を下がらせると、政宗様は珍しく床几に腰を下ろした
私も立ちっぱなしで疲れたので、政宗様の横で草原に座ることにした
どうやら上杉も戦いに来たわけではなさそうだけれど、ただ伊達を足止めするだけなら、わざわざここ人取橋でなくても良かった
あえてここを選んだ理由があるはず
傍に置いてある兜は、弦月の前立てにいつの間にか小鳥が一羽止まっていた
まるで戦など終わってしまったかのような穏やかさだ
「……武田との川中島といい、のんびりやるのが好きなこった……」
政宗様がそう呟いて兜に止まる小鳥を横目で見やった
留まっているのはセキレイ
政宗様の花押の元となった鳥だ
セキレイから目を離したとき、対岸に一つの影が見えた
「あれは……」
「越後の軍神……」
どこにも姿がないと聞いていたけれど……
政宗様と軍神が見つめ合う
対岸と言っても距離が離れているから、互いに表情までは読み取れないだろうけれど
「やり合うんすか、筆頭……!」
左馬助の言葉にはすぐに反応せず、政宗様はなおも上杉殿を見つめ
そうして立ち上がらぬままに言った
「……オメエらはもうしばらくpicnicを楽しみな」
「「……へっ?」」
てっきりやり合うとばかり思っていたのだろう、兵達からは間抜けた声が返ってきた
向こうも、まさか私達が仕掛けてくるとは思っていないだろう
ならばわざわざこちらから仕掛ける必要はない
「豊臣は逃げやしねえ……」
相変わらず上杉殿の意図は読めないけれど……
動きはせず、ただこちらを眺めるだけの上杉軍を見つめ返す
まるで『そうあせらず、ここでひといき、いれてゆきなさい』とでもおっしゃっているかのよう
「あちらから攻めてくる気もないようでございますし、私達も体を休めましょう
包帯が取れていらっしゃらない方もおられるようですから」
政宗様の首元から覗く白い包帯
完治を待たずに飛び出して、この人は……と言いたいところだけど、今回ばかりは不問とすべきだろう
ほとんど傷もふさがっているようだから、強くはお止めしなかったのもある
……ついでに、対岸で桃色の花が舞っている理由については、知らないふりをしておく
触れないほうが良い気がした
これはただの勘だけれど
1/3ページ