Episode.2-10
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――何のためにここにいる?
そんなことは私が聞きたいくらいだ
現実とも夢とも分からない状態
足元がふわふわとして、立つこともできない
昼間であるのに、夢のようなものを見る
世に言う、白昼夢
夢に現れては、私に冷笑を浴びせる、あのお方
けれどもうそんなことには慣れてしまって、耳を塞ごうという気にもならない
だって本当にその通りだ
私がここにいる意味など、もはやどこにも無いような気がして――
「……綾葉?」
唐突に肩を叩かれ、一気に現実が戻ってきた
視界がぼやけて、頭がぐらりと揺れる
頭痛まで併発しているようで、ズキズキとした痛みがこめかみを走った
「政宗……様?」
「大丈夫か?
こんな所に座り込んで」
「あ……
はい、平気です……」
柱を支えにどうにか立ち上がる
相変わらず視界は揺れたままだし、足元も覚束無い
けれど、政宗様にご迷惑はかけられない
「そろそろ、次の出陣の用意をせねばなりませんね
兵たちの傷も、塞がってきているようですし……」
「何言ってやがる
お前がその状態で、出陣なんてできるか」
「私のことを言っている場合ですか?」
振り返らないまま突き放すようにそう言えば、政宗様は押し黙った
……政宗様が言い返さないなんて、珍しいこともあるものだ
「片倉様を、取り戻すのでしょう?
私も早くそうすべきであると思うております
政宗様と片倉様は二人でひとつの竜でございますれば……
双竜が揃ってこそ、伊達は真価を発揮致します
政宗様を支え、御身をお守りする者がいなければ……」
「綾葉」
「それに片倉様のことを、千夜も心配しておりますので」
現れかける昼の夢を追い払いながら、頭を下げてその場を立ち去る
まともに政宗様の顔を見ることなんてできやしない
(でも、これでいいのかもしれないわ
私と政宗様は、距離が近くなりすぎたのよ)
土地をもらって家を興し、政宗様に重宝されていると勘違いした思い込みを正すには、丁度いい
私は奥州美稜家当主、伊達家に――政宗様に仕える存在
それだけの存在でしかないのだから
*********************
行燈の灯が、夜の帳を明るく照らし出す
その明かりを頼りに、手元の二丁銃の手入れを進めた
何かをしていないと、また夢に入ってしまうから
「……よし」
手入れが終わった銃を置き、道具を片付ける
そうして一息ついて、ふと気を弛めた瞬間――
ぐらりと頭が揺れ、いつものあの感覚が沸き起こった
「駄目……」
目を閉じて大きく息を吸い、ついで首を振る
現れかけた人の姿を無理やり脳裏から追いやって、ため息をついた
手早く道具を元に戻し、布団に入ろうとしたとき
「Hey,綾葉
起きてるか?」
障子の向こう側から声が聞こえた
月影に照らし出された姿は、政宗様だ
「……このような夜更けに、如何な御用向きでございましょう
夜這いしに来たと申されますなら、一発お見舞いして差し上げますが」
「なんでわざわざ死にに来なきゃいけねぇんだ
入るぞ」
「……なりません」
本来なら、主の言葉に逆らうことは許されないけれど
私と政宗様は少し特殊な関係だから、断ったところで問題はないはず
事実その通りで、政宗様の手が障子を開けることはなかった
ほ、と小さく息を吐いて、政宗様の影を見上げる
夜更けに人の部屋に、ましてや女の部屋を訪ねてくるなんて、夜這いでなければ何だというのか
誰もが寝静まったこの時間に来られたということは……
誰にも聞かれたくない、内緒話でもしようということか、はたまた別の目論見あってのことか
どちらにしろ、素直に部屋へ招き入れたくはない
……否、政宗様とは日中日夜を問わず、あまり顔を合わせたくはないのだけれど
そんなことは私が聞きたいくらいだ
現実とも夢とも分からない状態
足元がふわふわとして、立つこともできない
昼間であるのに、夢のようなものを見る
世に言う、白昼夢
夢に現れては、私に冷笑を浴びせる、あのお方
けれどもうそんなことには慣れてしまって、耳を塞ごうという気にもならない
だって本当にその通りだ
私がここにいる意味など、もはやどこにも無いような気がして――
「……綾葉?」
唐突に肩を叩かれ、一気に現実が戻ってきた
視界がぼやけて、頭がぐらりと揺れる
頭痛まで併発しているようで、ズキズキとした痛みがこめかみを走った
「政宗……様?」
「大丈夫か?
こんな所に座り込んで」
「あ……
はい、平気です……」
柱を支えにどうにか立ち上がる
相変わらず視界は揺れたままだし、足元も覚束無い
けれど、政宗様にご迷惑はかけられない
「そろそろ、次の出陣の用意をせねばなりませんね
兵たちの傷も、塞がってきているようですし……」
「何言ってやがる
お前がその状態で、出陣なんてできるか」
「私のことを言っている場合ですか?」
振り返らないまま突き放すようにそう言えば、政宗様は押し黙った
……政宗様が言い返さないなんて、珍しいこともあるものだ
「片倉様を、取り戻すのでしょう?
私も早くそうすべきであると思うております
政宗様と片倉様は二人でひとつの竜でございますれば……
双竜が揃ってこそ、伊達は真価を発揮致します
政宗様を支え、御身をお守りする者がいなければ……」
「綾葉」
「それに片倉様のことを、千夜も心配しておりますので」
現れかける昼の夢を追い払いながら、頭を下げてその場を立ち去る
まともに政宗様の顔を見ることなんてできやしない
(でも、これでいいのかもしれないわ
私と政宗様は、距離が近くなりすぎたのよ)
土地をもらって家を興し、政宗様に重宝されていると勘違いした思い込みを正すには、丁度いい
私は奥州美稜家当主、伊達家に――政宗様に仕える存在
それだけの存在でしかないのだから
*********************
行燈の灯が、夜の帳を明るく照らし出す
その明かりを頼りに、手元の二丁銃の手入れを進めた
何かをしていないと、また夢に入ってしまうから
「……よし」
手入れが終わった銃を置き、道具を片付ける
そうして一息ついて、ふと気を弛めた瞬間――
ぐらりと頭が揺れ、いつものあの感覚が沸き起こった
「駄目……」
目を閉じて大きく息を吸い、ついで首を振る
現れかけた人の姿を無理やり脳裏から追いやって、ため息をついた
手早く道具を元に戻し、布団に入ろうとしたとき
「Hey,綾葉
起きてるか?」
障子の向こう側から声が聞こえた
月影に照らし出された姿は、政宗様だ
「……このような夜更けに、如何な御用向きでございましょう
夜這いしに来たと申されますなら、一発お見舞いして差し上げますが」
「なんでわざわざ死にに来なきゃいけねぇんだ
入るぞ」
「……なりません」
本来なら、主の言葉に逆らうことは許されないけれど
私と政宗様は少し特殊な関係だから、断ったところで問題はないはず
事実その通りで、政宗様の手が障子を開けることはなかった
ほ、と小さく息を吐いて、政宗様の影を見上げる
夜更けに人の部屋に、ましてや女の部屋を訪ねてくるなんて、夜這いでなければ何だというのか
誰もが寝静まったこの時間に来られたということは……
誰にも聞かれたくない、内緒話でもしようということか、はたまた別の目論見あってのことか
どちらにしろ、素直に部屋へ招き入れたくはない
……否、政宗様とは日中日夜を問わず、あまり顔を合わせたくはないのだけれど
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