Episode.2-7
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摺上原から撤退した伊達軍が身を寄せたのは、ひとつ山を越えた麓にある、廃寺だった
追っ手もないようだということを確認すると、一気に体が悲鳴を上げ始める
ああ、そういえば、傷もろくにふさがってないまま、無理矢理戦ったのだったか……
「姐御ッ!?」
身体が傾くのを受け止めたのは文七郎だ
手を借りてどうにか立ち上がり、文七郎に借りていた刀を返す
「姐御――」
「大丈夫……
それよりも、政宗様を早く、手当てしないと……」
廃寺の戸をあけ、中に入る
先に向かった奴らがある程度は片付けてくれたのか、見た目の割に内部は綺麗だ
「政宗様を奥にお通しして……
あんた達は、手当、を――」
(あれ……目の前が歪む……)
ぐにゃりと視界が回って、進めなくなる
頭を押さえたけれど、なおも酷くなっていくばかりだ
「……っ」
足が力を失った
そのまま、身体が倒れて……
良直が何か言っているけれど、言葉が聞き取れない
ぼんやりと遠くでそれを聞きながら、とうとう意識を手離した
*********************
「……ん」
ぼんやりと目が覚めた
薄暗い部屋……陽は既に落ちたようだ
ぼうっとした頭で目の前を見ていると、見慣れない天井が目に入ってきた
(ここは……どこだったかしら)
ずきんと頭が痛みを訴えて、小さく呻いてこめかみを押さえる
その右手は包帯が幾重にも巻かれていた
「あ……そう、か……
倒れたのか……」
身体を見ると上半身はほとんど包帯が巻かれている
傷の手当てもしてくれているようだ
誰がしてくれたか分からないけれど、血もしっかり止まっている
小さく息を吐き出した時、はっと全てを思い出した
「そうだわ、政宗様は……!」
軋む体を叱咤して、羽織を胸元まできっちり着込んで布団を出た
ひんやりとした床が足の裏に冷たさを伝えてくる
部屋を出たところで、廊下で見張っていたらしい孫兵衛が、私を見て慌てたように駆け寄ってきた
「姐御!
まだ起き上がっちゃあ……」
「政宗様は……どこ?」
「筆頭なら、この奥の……」
「ありがとう」
孫に笑みを返し、言われた通りに奥を目指す
中に入ると、政宗様はまだ目を閉じていて
そのそばには文七が座っていて、こっくりと船を漕ぎながら眠っていた
「お疲れ様……」
足音を忍ばせて、文七の反対側に座る
口元に手を当てれば、規則正しい呼吸が手のひらに感じられた
そっと政宗様の前髪を払う
あれだけ怪我を負って、その上、覇王ともやり合ったのだもの
(やっぱりお止めすべきだったんだわ……)
後悔が押し寄せる
私があの場に留まってでも、政宗様を退却させなければならなかった
片倉様なら、そう進言することに躊躇ったりなどされなかっただろう
隣にいたのが私であったばかりに……
薄暗い中でも、政宗様のかんばせは青白いと分かる
私が来て陣形を立て直したとはいえ、ひとりでほとんどの敵を相手にしていたもの
摺上原で顔が真っ青だったのも、本当は血が足りなかったせいだ……
身体中に巻かれた包帯が痛々しい
(私が……もっと軍略に長けていたら、こんなことには――
片倉様の補佐をして長いけれど、やはり私では片倉様の代わりにはなれない……)
自軍を立て直すのにも時間がかかったし、かなりの損害を出してしまった
片倉様に合わせる顔がない
――それから、どれくらい経っただろう
急に政宗様の瞳が開いて、左右をわずかに見渡した
「お目覚めですか、政宗様……」
声を発する気力はまだないのか、私を見つめた後、反対側にいる文七に目を移した
眠っていた文七の首がカクンと大きく船を漕ぎ、その小さな衝撃で文七が目を覚ます
「筆頭……?
筆頭ぉッ!」
泣き出しそうな笑みで文七が部屋を慌てて走って出て行く
兵達を呼び集めようというのだろう
「良うございました……政宗様……」
「……綾葉……」
政宗さんの顔が、少しだけ悲しげに歪む
程なくして、大勢の足音がバタバタと聞こえ
「筆頭!」
「目を覚まされたんすね、筆頭!」
「よ、良かったァ……!」
なだれ込んできた兵達が、泣きそうな顔で口々にそう言う
そうして政宗様の布団を囲むようにして、全員が集まった
追っ手もないようだということを確認すると、一気に体が悲鳴を上げ始める
ああ、そういえば、傷もろくにふさがってないまま、無理矢理戦ったのだったか……
「姐御ッ!?」
身体が傾くのを受け止めたのは文七郎だ
手を借りてどうにか立ち上がり、文七郎に借りていた刀を返す
「姐御――」
「大丈夫……
それよりも、政宗様を早く、手当てしないと……」
廃寺の戸をあけ、中に入る
先に向かった奴らがある程度は片付けてくれたのか、見た目の割に内部は綺麗だ
「政宗様を奥にお通しして……
あんた達は、手当、を――」
(あれ……目の前が歪む……)
ぐにゃりと視界が回って、進めなくなる
頭を押さえたけれど、なおも酷くなっていくばかりだ
「……っ」
足が力を失った
そのまま、身体が倒れて……
良直が何か言っているけれど、言葉が聞き取れない
ぼんやりと遠くでそれを聞きながら、とうとう意識を手離した
*********************
「……ん」
ぼんやりと目が覚めた
薄暗い部屋……陽は既に落ちたようだ
ぼうっとした頭で目の前を見ていると、見慣れない天井が目に入ってきた
(ここは……どこだったかしら)
ずきんと頭が痛みを訴えて、小さく呻いてこめかみを押さえる
その右手は包帯が幾重にも巻かれていた
「あ……そう、か……
倒れたのか……」
身体を見ると上半身はほとんど包帯が巻かれている
傷の手当てもしてくれているようだ
誰がしてくれたか分からないけれど、血もしっかり止まっている
小さく息を吐き出した時、はっと全てを思い出した
「そうだわ、政宗様は……!」
軋む体を叱咤して、羽織を胸元まできっちり着込んで布団を出た
ひんやりとした床が足の裏に冷たさを伝えてくる
部屋を出たところで、廊下で見張っていたらしい孫兵衛が、私を見て慌てたように駆け寄ってきた
「姐御!
まだ起き上がっちゃあ……」
「政宗様は……どこ?」
「筆頭なら、この奥の……」
「ありがとう」
孫に笑みを返し、言われた通りに奥を目指す
中に入ると、政宗様はまだ目を閉じていて
そのそばには文七が座っていて、こっくりと船を漕ぎながら眠っていた
「お疲れ様……」
足音を忍ばせて、文七の反対側に座る
口元に手を当てれば、規則正しい呼吸が手のひらに感じられた
そっと政宗様の前髪を払う
あれだけ怪我を負って、その上、覇王ともやり合ったのだもの
(やっぱりお止めすべきだったんだわ……)
後悔が押し寄せる
私があの場に留まってでも、政宗様を退却させなければならなかった
片倉様なら、そう進言することに躊躇ったりなどされなかっただろう
隣にいたのが私であったばかりに……
薄暗い中でも、政宗様のかんばせは青白いと分かる
私が来て陣形を立て直したとはいえ、ひとりでほとんどの敵を相手にしていたもの
摺上原で顔が真っ青だったのも、本当は血が足りなかったせいだ……
身体中に巻かれた包帯が痛々しい
(私が……もっと軍略に長けていたら、こんなことには――
片倉様の補佐をして長いけれど、やはり私では片倉様の代わりにはなれない……)
自軍を立て直すのにも時間がかかったし、かなりの損害を出してしまった
片倉様に合わせる顔がない
――それから、どれくらい経っただろう
急に政宗様の瞳が開いて、左右をわずかに見渡した
「お目覚めですか、政宗様……」
声を発する気力はまだないのか、私を見つめた後、反対側にいる文七に目を移した
眠っていた文七の首がカクンと大きく船を漕ぎ、その小さな衝撃で文七が目を覚ます
「筆頭……?
筆頭ぉッ!」
泣き出しそうな笑みで文七が部屋を慌てて走って出て行く
兵達を呼び集めようというのだろう
「良うございました……政宗様……」
「……綾葉……」
政宗さんの顔が、少しだけ悲しげに歪む
程なくして、大勢の足音がバタバタと聞こえ
「筆頭!」
「目を覚まされたんすね、筆頭!」
「よ、良かったァ……!」
なだれ込んできた兵達が、泣きそうな顔で口々にそう言う
そうして政宗様の布団を囲むようにして、全員が集まった
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