Episode.2-5
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夕刻の摺上原――
進軍を続ける豊臣・蘆名の軍勢の前に、蒼の一軍が立ちはだかった
先頭を駆ける政宗が停止する
「竹中半兵衛……
追いかける手間が省けたぜ」
「伊達軍の戦力をまともに分散させたのは間違いだったね、政宗君」
「なに……?」
「……片倉君なら」
半兵衛の色素の薄い唇が動く
夕焼けを背に受け、その瞳は静かな色をしていた
「南部、津軽、そして相馬には最小限の兵のみをあてて拮抗させるか、ギリギリまで引きつけてから策を講じていたはずだ
別働隊に攻めやすくするための陽動ではないかと警戒してね」
半兵衛の剣が振り下ろされる
後ろに控えていた兵たちが、一斉に伊達軍へ攻めかかった
「……Haッ!」
伊達政宗の表情に険しさが浮かぶ
見据える先にいるのは竹中半兵衛
「Be right there!」
地を蹴る馬から跳び上がり、一刀を引き抜く
半兵衛の関節剣が絡みついた
それを故意に巻き付け、力任せに引き抜く
半兵衛も流れるように馬から跳び上がり、政宗の後方に着地した
流麗な動きで関節剣が鞭のようにしなる
土煙からその身を回転させ、政宗が固有技を発し、豊臣の兵を一掃した時
「――ッ」
着地したその先に竹中半兵衛の姿はなく
目を見開いたのと同時
政宗の兜が火花を散らした
隙だらけの背中――
後方を振り返った政宗の身体に、背後からの衝撃が伝わった
音が、聞こえなかった
ただ――はっきり
「政宗様ッ――!!」
この場にいるはずのない声が聞こえた気がした
そして
装束が破かれる不快な音も――
*********************
摺上原に着くころには、既に戦闘が始まっていた
夕刻の中に衝突する二つの軍
そのほぼ中央にいるのは、政宗様と……
「竹中半兵衛……!」
援護に行こうとしたとき
政宗様の背後に竹中が回り込んだのを見た
「うそ……」
政宗様が、斬られる
火花を散らした兜、そして振り抜かれた竹中の右腕
「政宗様ッ――!!!」
政宗様が竹中から距離を取る
ああ、嘘だ、そんな――
「政宗様!!」
もう一度その名前を呼んで、迷いなく戦場に身を投じる
そうして政宗様を背に、竹中半兵衛と対峙した
裂かれた背中の紋章
小十郎さんが守り続けてきた、その背中が
……裂かれた
「いつもなら片倉君が守ってくれるその背中……
容易く裂ける」
笑みすら浮かぶその表情に銃口を向ける
許さない……こんなことをして、ただで奥州から帰れると思うな
「遅かったね、綾葉君
君の大切な主君の背中は守れなかったようだ」
「テメエ……!!」
「彼には厚い処遇を約束するよ
だから、君たちは安心して――」
竹中が剣を構える
「この摺上原に散ってくれたまえ」
「上等だ……
借りはこの場で返させてもらう!」
「あんた、無傷で白河関を越えられると思わない事ね!!」
蒼い雷光を纏った政宗さんが竹中に肉薄する
私も政宗様を援護するため竹中半兵衛の頭上へと跳び上がった
「食らえ――紅炎舞ッ!!」
「WAR・DANCE!」
炎弾の雨が降った直後、政宗様の怒りに任せた一撃が竹中半兵衛を襲った
着地した瞬間、固有技の衝撃波をもろに食らって、私まで少し後退してしまったけれど、すぐさま不知火を見舞う
政宗様はなおも追撃していき、竹中半兵衛の表情からは笑みが消えた
このまま、押していけば……!
――その時、遠くから地響きが聞こえてきた
摺上原の向こう側に見えるのは、南部、津軽、相馬の三軍
そちらに気を取られたほんの一瞬を、こいつは見逃さなかった
土煙を発生させた次の瞬間、竹中は馬上に乗っており
そのまま、豊臣軍は撤退した
「Damn it!」
追いかけようとした政宗さんが、足を止める
あちこちから聞こえるのは伊達兵の悲鳴
……戦線の維持に、限界が近付いていた
政宗様の背中が切り裂かれてしまったこともあるのだろう
茫然としている者もいる
「政宗様……私……」
「……お前まで、呆然としてくれるなよ」
政宗様と目が合って、僅かに視線が下に向かう
私も装束が僅かに赤く染まりつつあった
……屋敷上の丘でのこともあったから、元からこの色だと言われればそうなのだけれど
「この程度で死んでは、片倉様に会わせる顔がございません」
強がりだったかもしれないし、本当にそう思っていたかもしれない
どのみち、政宗様と私でやらねばならないのは変わりないのだ
弱音など、この場においては何の意味も為さない
「Fum……てんでcoolじゃねえな
右目を奪われちまった途端にこのザマたぁ……
我ながら反吐が出やがる……!!」
敵が政宗様に殺到する
それを衝撃波で吹き飛ばしたとき、兜が高く弾け飛んだ
「Come on!
It's not over yet!!」
押し寄せる敵に、政宗様が突進していく
ならば私のすべきことは――
「……あんた達ッ!!
顔を上げなさい!!」
「あね、ご」
「政宗様は諦めていないわ!!
――奥州を、取り戻すんでしょう!?」
「筆頭……でも、筆頭の背中が――」
呆然とした孫の顔を引っ叩く
驚いたように私を見上げる孫の背後から、敵が迫って来たのを撃ち殺した
「立ちなさい!!
そうしていたいのは、あんた達だけじゃないのよ!!」
「……姐御ぉ……!」
「伊達軍、陣形を立て直して!!
魚鱗の陣よ!!」
「――ッ!!」
「返事!!」
「「……応ッ!!」」
バラバラだった伊達の動きが統率を取り戻す
戦場を駆け回りながら、手薄な場所へ技を放ち、戦線を押し返していく
「美稜綾葉、覚悟ォ!!」
「欲しけりゃくれてやるわよ
あんたには、とびきり重い一撃を、ね!!」
懐に飛び込んで敵兵の口に銃口を突っ込む
迷いなく引き金を引けば、顔ごと破裂して敵兵が倒れた
「いい加減、我慢ならないわ……
卑怯な手を使う豊臣も、その甘言に乗せられて伊達に弓引く奴らも――」
「姐御、無茶っす!!
ひとりでそんな大勢を相手に!!」
「束になってかかって来なさい!!
全部ひっくるめて、この美稜綾葉が相手してあげるわ!!」
降り注ぐ弓矢が頬を掠める
けれどそれより早く、敵集団へ向かって桜番が火を吹いた
「あぁぁあああ――!!」
蒼い稲妻が弾け、紅い炎が幾度も爆ぜる
敗戦の色が濃い摺上原に、銃声は絶え間なく響き続けた
進軍を続ける豊臣・蘆名の軍勢の前に、蒼の一軍が立ちはだかった
先頭を駆ける政宗が停止する
「竹中半兵衛……
追いかける手間が省けたぜ」
「伊達軍の戦力をまともに分散させたのは間違いだったね、政宗君」
「なに……?」
「……片倉君なら」
半兵衛の色素の薄い唇が動く
夕焼けを背に受け、その瞳は静かな色をしていた
「南部、津軽、そして相馬には最小限の兵のみをあてて拮抗させるか、ギリギリまで引きつけてから策を講じていたはずだ
別働隊に攻めやすくするための陽動ではないかと警戒してね」
半兵衛の剣が振り下ろされる
後ろに控えていた兵たちが、一斉に伊達軍へ攻めかかった
「……Haッ!」
伊達政宗の表情に険しさが浮かぶ
見据える先にいるのは竹中半兵衛
「Be right there!」
地を蹴る馬から跳び上がり、一刀を引き抜く
半兵衛の関節剣が絡みついた
それを故意に巻き付け、力任せに引き抜く
半兵衛も流れるように馬から跳び上がり、政宗の後方に着地した
流麗な動きで関節剣が鞭のようにしなる
土煙からその身を回転させ、政宗が固有技を発し、豊臣の兵を一掃した時
「――ッ」
着地したその先に竹中半兵衛の姿はなく
目を見開いたのと同時
政宗の兜が火花を散らした
隙だらけの背中――
後方を振り返った政宗の身体に、背後からの衝撃が伝わった
音が、聞こえなかった
ただ――はっきり
「政宗様ッ――!!」
この場にいるはずのない声が聞こえた気がした
そして
装束が破かれる不快な音も――
*********************
摺上原に着くころには、既に戦闘が始まっていた
夕刻の中に衝突する二つの軍
そのほぼ中央にいるのは、政宗様と……
「竹中半兵衛……!」
援護に行こうとしたとき
政宗様の背後に竹中が回り込んだのを見た
「うそ……」
政宗様が、斬られる
火花を散らした兜、そして振り抜かれた竹中の右腕
「政宗様ッ――!!!」
政宗様が竹中から距離を取る
ああ、嘘だ、そんな――
「政宗様!!」
もう一度その名前を呼んで、迷いなく戦場に身を投じる
そうして政宗様を背に、竹中半兵衛と対峙した
裂かれた背中の紋章
小十郎さんが守り続けてきた、その背中が
……裂かれた
「いつもなら片倉君が守ってくれるその背中……
容易く裂ける」
笑みすら浮かぶその表情に銃口を向ける
許さない……こんなことをして、ただで奥州から帰れると思うな
「遅かったね、綾葉君
君の大切な主君の背中は守れなかったようだ」
「テメエ……!!」
「彼には厚い処遇を約束するよ
だから、君たちは安心して――」
竹中が剣を構える
「この摺上原に散ってくれたまえ」
「上等だ……
借りはこの場で返させてもらう!」
「あんた、無傷で白河関を越えられると思わない事ね!!」
蒼い雷光を纏った政宗さんが竹中に肉薄する
私も政宗様を援護するため竹中半兵衛の頭上へと跳び上がった
「食らえ――紅炎舞ッ!!」
「WAR・DANCE!」
炎弾の雨が降った直後、政宗様の怒りに任せた一撃が竹中半兵衛を襲った
着地した瞬間、固有技の衝撃波をもろに食らって、私まで少し後退してしまったけれど、すぐさま不知火を見舞う
政宗様はなおも追撃していき、竹中半兵衛の表情からは笑みが消えた
このまま、押していけば……!
――その時、遠くから地響きが聞こえてきた
摺上原の向こう側に見えるのは、南部、津軽、相馬の三軍
そちらに気を取られたほんの一瞬を、こいつは見逃さなかった
土煙を発生させた次の瞬間、竹中は馬上に乗っており
そのまま、豊臣軍は撤退した
「Damn it!」
追いかけようとした政宗さんが、足を止める
あちこちから聞こえるのは伊達兵の悲鳴
……戦線の維持に、限界が近付いていた
政宗様の背中が切り裂かれてしまったこともあるのだろう
茫然としている者もいる
「政宗様……私……」
「……お前まで、呆然としてくれるなよ」
政宗様と目が合って、僅かに視線が下に向かう
私も装束が僅かに赤く染まりつつあった
……屋敷上の丘でのこともあったから、元からこの色だと言われればそうなのだけれど
「この程度で死んでは、片倉様に会わせる顔がございません」
強がりだったかもしれないし、本当にそう思っていたかもしれない
どのみち、政宗様と私でやらねばならないのは変わりないのだ
弱音など、この場においては何の意味も為さない
「Fum……てんでcoolじゃねえな
右目を奪われちまった途端にこのザマたぁ……
我ながら反吐が出やがる……!!」
敵が政宗様に殺到する
それを衝撃波で吹き飛ばしたとき、兜が高く弾け飛んだ
「Come on!
It's not over yet!!」
押し寄せる敵に、政宗様が突進していく
ならば私のすべきことは――
「……あんた達ッ!!
顔を上げなさい!!」
「あね、ご」
「政宗様は諦めていないわ!!
――奥州を、取り戻すんでしょう!?」
「筆頭……でも、筆頭の背中が――」
呆然とした孫の顔を引っ叩く
驚いたように私を見上げる孫の背後から、敵が迫って来たのを撃ち殺した
「立ちなさい!!
そうしていたいのは、あんた達だけじゃないのよ!!」
「……姐御ぉ……!」
「伊達軍、陣形を立て直して!!
魚鱗の陣よ!!」
「――ッ!!」
「返事!!」
「「……応ッ!!」」
バラバラだった伊達の動きが統率を取り戻す
戦場を駆け回りながら、手薄な場所へ技を放ち、戦線を押し返していく
「美稜綾葉、覚悟ォ!!」
「欲しけりゃくれてやるわよ
あんたには、とびきり重い一撃を、ね!!」
懐に飛び込んで敵兵の口に銃口を突っ込む
迷いなく引き金を引けば、顔ごと破裂して敵兵が倒れた
「いい加減、我慢ならないわ……
卑怯な手を使う豊臣も、その甘言に乗せられて伊達に弓引く奴らも――」
「姐御、無茶っす!!
ひとりでそんな大勢を相手に!!」
「束になってかかって来なさい!!
全部ひっくるめて、この美稜綾葉が相手してあげるわ!!」
降り注ぐ弓矢が頬を掠める
けれどそれより早く、敵集団へ向かって桜番が火を吹いた
「あぁぁあああ――!!」
蒼い稲妻が弾け、紅い炎が幾度も爆ぜる
敗戦の色が濃い摺上原に、銃声は絶え間なく響き続けた
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