Episode.2-3
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川中島での一件からしばらくして後
伊達屋敷の広間では、軍議が行われていた
「宇都宮と小田原が落とされるたぁ、武田のオッサンは何してやがったんだ」
上座で片膝を立て、頬杖をつく政宗様は平時の袴での出で立ち
対する私たちは敵襲に備えられるよう、常に武装を心掛けている
情報収集のために放っていた斥候が持ち帰ったのは、武田が宇都宮と小田原を豊臣に落とされたという報せだった
それらは元々、小田原を居城とした北条家の土地
昨年、我々が啄木鳥の戦法を模倣して北条を誘き出し、武田にぶつけた後、武田軍は小田原城を攻め、そのまま北条の土地を落としたのだ
その領地を、豊臣が容易く落とした――それが、斥候からの情報だった
「甲斐の虎の目が直接届かぬ武田領を、伏兵が同時多発的に攻めたものと
加えて、安芸の毛利が豊臣と手を結ばんとしているとの由」
伏兵戦略、そして毛利との同盟
伊達兵の中でどよめきが起こる
中国の覇者として、その策略は奥州にも届いている
以前には織田包囲網へも加担してくれたけれど……
今回も我々の味方、とはいかないようだ
「しかしながら、我々にとって目下の懸案は、平定した周辺国に不穏な動きがあることです」
「その潜伏侵略ってのが、この奥州でも始まりやがるってことか」
「左様
すぐにでも大阪へ攻め上りたいお気持ちは察しまするが、留守に足元を掬われては敵いませぬ」
日の本全土の地図から、奥州の地図を片倉様が広げる
……奥州の平定には、私達もかなりの犠牲を払っている
これをひっくり返されたくはない
「周辺国の動きを見定め、事によっては再度、平定の戦をせねばなりますまい」
「troublesome.
まどろっこしい連中だぜ……」
「あるいは……伏兵はすでに」
小十郎さんが私たち家臣を鋭く見渡す
……さすがに私には視線を寄越さなかったけれど
「武田・上杉の動向のみならず、再び川中島へ割り込まんとした我々の動きまで、豊臣は掴んでおりました
この軍議の場におらぬ限り、得られるはずのない情報です」
そう、それは私も違和感を覚えていた
川中島の戦いといえば、関わりがあるのは武田と上杉の両軍であって、通常ならそこに奥州伊達軍がいると考えるほうがおかしいのだ
「質問宜しいですか、政宗様、片倉様」
「どうした、綾葉」
手を挙げて切り出すと、政宗様が発言を許可してくれた
礼を言って片倉様へと視線を渡す
「我々は昨年、同じように川中島へ乱入を目論み、妻女山へ参りました
今回も同様のことが起こると、豊臣が踏んでいた可能性はございませんか」
「……確かに、その可能性も捨てきれねぇ
だがそれなら尚更おかしいだろう
豊臣は、伊達がいる前提で軍を展開した んだからな」
「それは……そうなのですが」
「去年のことを鑑みても、せいぜいが『ひょっとするといるかもしれねぇ』程度でしか話は出来ねぇはずだ
だが奴らは、伊達が川中島に、その日その時分いると踏んで包囲してきた」
「……なるほど、それは確かに――この中に内通者でもおらぬ限り、知り得ぬことにございますね」
そう言って背後を見やる
考えたくはないけれど、この中に裏切り者がいるらしい
良直が右隣にいた孫兵衛を睨む
「お、俺じゃねえし!」
続いて、左隣の文七郎も睨まれた
「ち、違いますって!」
「大丈夫よ、あんた達じゃないとは分かってるから」
「「さすがっす姐御……!!」」
キラキラとした瞳で二人から見つめられた
その目はやめてほしい、ちょっと恥ずかしいから
「豊臣は川中島で事を決するつもりでいやがった
spy野郎の役目も一先ずそこまでだったとすりゃ……」
「いえ、おそらくあの竹中半兵衛という男、為らぬ場合を見越してもおるはず
引き続き、紛れ込ませておるものと」
「だったら……炙り出すか?」
政宗さんが小十郎さんを目線だけで見上げる
その視線を受け、片倉様は我々家臣を見やった
「身内に手荒な真似は気が引けまするが……
早速、明日にでも」
そう言って小十郎さんが立ち上がる
政宗さんはため息をひとつ吐き
「……仕方ねえな」
竜のごとき鋭い眼光で、広間全てにいる伊達兵を睨み渡す
……広間にいる伊達家臣たちは、その眼差しの圧を受けて、一様に身を震え上がらせた
伊達屋敷の広間では、軍議が行われていた
「宇都宮と小田原が落とされるたぁ、武田のオッサンは何してやがったんだ」
上座で片膝を立て、頬杖をつく政宗様は平時の袴での出で立ち
対する私たちは敵襲に備えられるよう、常に武装を心掛けている
情報収集のために放っていた斥候が持ち帰ったのは、武田が宇都宮と小田原を豊臣に落とされたという報せだった
それらは元々、小田原を居城とした北条家の土地
昨年、我々が啄木鳥の戦法を模倣して北条を誘き出し、武田にぶつけた後、武田軍は小田原城を攻め、そのまま北条の土地を落としたのだ
その領地を、豊臣が容易く落とした――それが、斥候からの情報だった
「甲斐の虎の目が直接届かぬ武田領を、伏兵が同時多発的に攻めたものと
加えて、安芸の毛利が豊臣と手を結ばんとしているとの由」
伏兵戦略、そして毛利との同盟
伊達兵の中でどよめきが起こる
中国の覇者として、その策略は奥州にも届いている
以前には織田包囲網へも加担してくれたけれど……
今回も我々の味方、とはいかないようだ
「しかしながら、我々にとって目下の懸案は、平定した周辺国に不穏な動きがあることです」
「その潜伏侵略ってのが、この奥州でも始まりやがるってことか」
「左様
すぐにでも大阪へ攻め上りたいお気持ちは察しまするが、留守に足元を掬われては敵いませぬ」
日の本全土の地図から、奥州の地図を片倉様が広げる
……奥州の平定には、私達もかなりの犠牲を払っている
これをひっくり返されたくはない
「周辺国の動きを見定め、事によっては再度、平定の戦をせねばなりますまい」
「troublesome.
まどろっこしい連中だぜ……」
「あるいは……伏兵はすでに」
小十郎さんが私たち家臣を鋭く見渡す
……さすがに私には視線を寄越さなかったけれど
「武田・上杉の動向のみならず、再び川中島へ割り込まんとした我々の動きまで、豊臣は掴んでおりました
この軍議の場におらぬ限り、得られるはずのない情報です」
そう、それは私も違和感を覚えていた
川中島の戦いといえば、関わりがあるのは武田と上杉の両軍であって、通常ならそこに奥州伊達軍がいると考えるほうがおかしいのだ
「質問宜しいですか、政宗様、片倉様」
「どうした、綾葉」
手を挙げて切り出すと、政宗様が発言を許可してくれた
礼を言って片倉様へと視線を渡す
「我々は昨年、同じように川中島へ乱入を目論み、妻女山へ参りました
今回も同様のことが起こると、豊臣が踏んでいた可能性はございませんか」
「……確かに、その可能性も捨てきれねぇ
だがそれなら尚更おかしいだろう
豊臣は、
「それは……そうなのですが」
「去年のことを鑑みても、せいぜいが『ひょっとするといるかもしれねぇ』程度でしか話は出来ねぇはずだ
だが奴らは、伊達が川中島に、その日その時分いると踏んで包囲してきた」
「……なるほど、それは確かに――この中に内通者でもおらぬ限り、知り得ぬことにございますね」
そう言って背後を見やる
考えたくはないけれど、この中に裏切り者がいるらしい
良直が右隣にいた孫兵衛を睨む
「お、俺じゃねえし!」
続いて、左隣の文七郎も睨まれた
「ち、違いますって!」
「大丈夫よ、あんた達じゃないとは分かってるから」
「「さすがっす姐御……!!」」
キラキラとした瞳で二人から見つめられた
その目はやめてほしい、ちょっと恥ずかしいから
「豊臣は川中島で事を決するつもりでいやがった
spy野郎の役目も一先ずそこまでだったとすりゃ……」
「いえ、おそらくあの竹中半兵衛という男、為らぬ場合を見越してもおるはず
引き続き、紛れ込ませておるものと」
「だったら……炙り出すか?」
政宗さんが小十郎さんを目線だけで見上げる
その視線を受け、片倉様は我々家臣を見やった
「身内に手荒な真似は気が引けまするが……
早速、明日にでも」
そう言って小十郎さんが立ち上がる
政宗さんはため息をひとつ吐き
「……仕方ねえな」
竜のごとき鋭い眼光で、広間全てにいる伊達兵を睨み渡す
……広間にいる伊達家臣たちは、その眼差しの圧を受けて、一様に身を震え上がらせた
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