Episode.2-2
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異変に気付いたのは、私が先だった
片倉様が背後を見やる、それより一瞬早く、私の声が響く
「全軍停止!!」
「……ッ!?」
伊達軍が千曲川への突入から、一斉に動きを停止した
一糸乱れぬ足音は、やがてかすかな地響きとなり、ここへ迫ってくる
そうして、その軍勢は現れた
川中島全方向から一斉に見える、黒地の旗模様は……五七桐
――豊臣軍!!
「片倉様、あの旗印……!」
「あれは……なぜここにいやがる……?」
片倉様が呆然と見上げた旗は、川中島の風に揺れてはためいている
ありえない……そんな情報はなかった
おそらく武田も上杉もこれは予知できていない
ひときわ大きな足音が川中島に響く
「「!!」」
政宗様も、もちろん私たちも
崖上にそびえ立つ巨体の男を見上げた
「なに、あの男……」
手綱を握る手の力が強まる
底知れない力……魔王とはまた違う、けれど異質な――
その横に、白髪で仮面をつけた武将が現れた
「川中島に集う全武将、全兵士に告げる
この戦場は僕たち豊臣軍が完全に包囲した
豊臣の軍門に下りたまえ
降伏の暁には、全ての者に確たる処遇と、郎党の安堵を約束しよう」
張り上げない、けれど透き通る声が、川中島に広がっていく
「あれは……
豊臣の軍師・竹中半兵衛……?」
特殊な剣の使い手とも聞いているし、なにより頭も切れる人物だ
眼下の千曲川を見下ろすと、信玄公が軍配斧を、謙信公が居合刀を振り上げ
両軍の弓兵が一斉に矢をつがえていた
「放てッ!」
謙信公の合図で信玄公が軍配斧を振り下ろし、風を起こす
一声に大量の矢が巨体の男に向かって飛んで行った
男は腕組みを解くと、前に進み出て……
「ふんッ!!」
わずか拳の一振りによる風圧で、全ての矢が弾きかえされた
私たちに降り注ぐ形となった矢に当たらないようにしながら、その男を見上げる
男が咆哮を上げ、拳を空に突き上げた
雲が割れ、不自然なほどに、男にだけ陽の光が降り注ぐ
そして、その男は名乗りを上げた
「我が名は豊臣秀吉
我の前に屈し、我の下で一つとなれ
強き兵として、この国を富めんがために!」
あれが、覇王・豊臣秀吉……
威圧感は凄まじくて、馬の気を落ち着かせながら男を見上げる
その覇王に対して進み出る者が、一人――
「新参者にしちゃあ、結構なperformanceだ
だが、どうにもcoolじゃねえ」
政宗様……
やはりこういう時、真っ先に立ち向かうのはあのお方だ
けれど今は、政宗様の意気も買いだろう
川中島を全て包囲するのは豊臣の兵
いずれどこかで穴ができるはず
そこを突いて、一気に突破することができれば……
こうなってしまった以上、武田も上杉も川中島で戦いを続けるつもりはないはずだ
ここを豊臣軍で包囲されているのならば、まずは隙を突いて包囲網を脱出することが肝要となる
武田も上杉も、伊達も、今度こそはと思っての戦いになるはずだったが、致し方ない
「……気に入らないわね」
「姐御、どうするんすか?」
「大丈夫よ、片倉様が策を思いつくはずだから
まさか武田と上杉も交えて、ここで豊臣とやり合おうとは思わないでしょうから……」
「撤退ってことっすか……」
「シケた顔をしないの
無闇矢鱈と戦いを挑むことが天下への近道というわけじゃないのよ」
肩を落とす左馬助を励まして、視線を片倉様へとやった
仮にそれで豊臣を撤退させたとて、東国を担う我々には少なからず損害が出る
豊臣の陣容がどれほどのものか分からないうちから、国力を弱らせるような賭けには出たくない
(……そうでしょう、片倉様)
豊臣秀吉を見上げる竜の右目は、既に何事かを思案している
ならば我々は、その策を成功させるために動くのみだ
片倉様が背後を見やる、それより一瞬早く、私の声が響く
「全軍停止!!」
「……ッ!?」
伊達軍が千曲川への突入から、一斉に動きを停止した
一糸乱れぬ足音は、やがてかすかな地響きとなり、ここへ迫ってくる
そうして、その軍勢は現れた
川中島全方向から一斉に見える、黒地の旗模様は……五七桐
――豊臣軍!!
「片倉様、あの旗印……!」
「あれは……なぜここにいやがる……?」
片倉様が呆然と見上げた旗は、川中島の風に揺れてはためいている
ありえない……そんな情報はなかった
おそらく武田も上杉もこれは予知できていない
ひときわ大きな足音が川中島に響く
「「!!」」
政宗様も、もちろん私たちも
崖上にそびえ立つ巨体の男を見上げた
「なに、あの男……」
手綱を握る手の力が強まる
底知れない力……魔王とはまた違う、けれど異質な――
その横に、白髪で仮面をつけた武将が現れた
「川中島に集う全武将、全兵士に告げる
この戦場は僕たち豊臣軍が完全に包囲した
豊臣の軍門に下りたまえ
降伏の暁には、全ての者に確たる処遇と、郎党の安堵を約束しよう」
張り上げない、けれど透き通る声が、川中島に広がっていく
「あれは……
豊臣の軍師・竹中半兵衛……?」
特殊な剣の使い手とも聞いているし、なにより頭も切れる人物だ
眼下の千曲川を見下ろすと、信玄公が軍配斧を、謙信公が居合刀を振り上げ
両軍の弓兵が一斉に矢をつがえていた
「放てッ!」
謙信公の合図で信玄公が軍配斧を振り下ろし、風を起こす
一声に大量の矢が巨体の男に向かって飛んで行った
男は腕組みを解くと、前に進み出て……
「ふんッ!!」
わずか拳の一振りによる風圧で、全ての矢が弾きかえされた
私たちに降り注ぐ形となった矢に当たらないようにしながら、その男を見上げる
男が咆哮を上げ、拳を空に突き上げた
雲が割れ、不自然なほどに、男にだけ陽の光が降り注ぐ
そして、その男は名乗りを上げた
「我が名は豊臣秀吉
我の前に屈し、我の下で一つとなれ
強き兵として、この国を富めんがために!」
あれが、覇王・豊臣秀吉……
威圧感は凄まじくて、馬の気を落ち着かせながら男を見上げる
その覇王に対して進み出る者が、一人――
「新参者にしちゃあ、結構なperformanceだ
だが、どうにもcoolじゃねえ」
政宗様……
やはりこういう時、真っ先に立ち向かうのはあのお方だ
けれど今は、政宗様の意気も買いだろう
川中島を全て包囲するのは豊臣の兵
いずれどこかで穴ができるはず
そこを突いて、一気に突破することができれば……
こうなってしまった以上、武田も上杉も川中島で戦いを続けるつもりはないはずだ
ここを豊臣軍で包囲されているのならば、まずは隙を突いて包囲網を脱出することが肝要となる
武田も上杉も、伊達も、今度こそはと思っての戦いになるはずだったが、致し方ない
「……気に入らないわね」
「姐御、どうするんすか?」
「大丈夫よ、片倉様が策を思いつくはずだから
まさか武田と上杉も交えて、ここで豊臣とやり合おうとは思わないでしょうから……」
「撤退ってことっすか……」
「シケた顔をしないの
無闇矢鱈と戦いを挑むことが天下への近道というわけじゃないのよ」
肩を落とす左馬助を励まして、視線を片倉様へとやった
仮にそれで豊臣を撤退させたとて、東国を担う我々には少なからず損害が出る
豊臣の陣容がどれほどのものか分からないうちから、国力を弱らせるような賭けには出たくない
(……そうでしょう、片倉様)
豊臣秀吉を見上げる竜の右目は、既に何事かを思案している
ならば我々は、その策を成功させるために動くのみだ
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