Episode.18
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温かな赤
それが彦一郎様の装束を赤黒く染め上げていく
「彦一郎様……!」
血に塗れる彦一郎様の右手が差し伸ばされる
それを掴んで、必死に彼の名前を呼んだ
頭の中に浮かぶのは最低最悪な予想
逃れられないと分かっていても
彼の名を呼ばずにはいられなかった
呼んでいて、私の声を聞いていてくれる間は、彦一郎様は……
まだ、ここにいてくれるはずだから……!
「すまない……な
最後の最期に……そんな顔をさせてしまって……」
「最期などと……おっしゃらないでください……」
視界が涙で霞んでいく
分かっている
彦一郎様は、もう助からない……
それでも認めたくない、こんな終わり方を認めるわけにはいかない
「……綾葉
頼みが……ある……」
「……はい
なんでございましょう……」
弱々しい呼吸をしながら、彦一郎様がゆっくりと言葉を紡いだ
瞳の光はか細く明暗を繰り返している
――嫌、そんなのは嫌だ
あなたがいない世界なんて、私は耐えられない
「美稜の将は……すべて、武田に仕えろ、と……
それだけを……お前の、口から……
私の遺した言葉だと……」
「そんな……
美稜は、美稜はどうなるのですか!?
私はどうすれば……!」
彦一郎様は淡く微笑んだ
握り締めていた手が、私の頬に伸びる
「お前の……好きなように生きろ……
伊達でも、どこでもいい……
お前がお前らしく……生きられるところで
ただ……」
彦一郎様の瞳から、光が消えていく
その両の瞳の目尻から、涙が零れ落ちていって
「美稜を……忘れないでくれ――」
彦一郎様の右手が私の顔を引き寄せる
触れ合った唇から、彦一郎様の想いが伝わってくるようで……
何も言えなくなった私へ、彦一郎様は幸せそうに微笑んでいた
「お前と出会えて、本当に良かった
……ありがとう、綾葉――」
穏やかな微笑みを浮かべ、瞬間、身体から全ての力が抜け落ちた
落ちていく右手を掴むことさえできなかった
(……ああ、風が止んだ――)
それが――美稜彦一郎隆政様の時が止まった瞬間だった
「……忘れません
たとえ美稜がなくなろうと、美稜の者たる心は、皆が一生持ち続けるはずです」
今はただ、安らかにお眠り下さい
あなた様の短い生涯の僅か一部ではありますが、共に寄り添い歩めたことは、私にとって何よりの誇りです
私を愛してくれたあなた
私を救ってくれた光
あなたは私の希望で、憧れで、私の全てだった
涙は零れない
なぜなら――まだ、決着はついていないからだ
そっと彦一郎様の身体を横たえたとき
「ぬぅぅおぅ……!」
地の底から這い出るようなおぞましい声に、私は天守を見上げた
蒼紅の二人はまだ戦っている……けれど、明らかに魔王の方が圧倒している
二人が魔王の技を食らって空高く打ち上げられる
「政宗様!
真田殿!」
迷わず二丁銃を引き抜いて構える
魔王の眼光が私を射抜くけれど、もはやそれに恐怖も畏怖も感じない
「貴様が余に敵うと思うてか!」
「気持ちだけは負けないつもりよ!」
一気に距離を詰める
魔王の太刀が当たらない距離を保ちながら、銃弾を撃ち込んでいく
気持ちで負けたらそこで全てが終わりだ
負けることは、私たちには許されていない
すなわち、私たちには勝利しか待っていない!
太刀の切っ先をスレスレでかわして、炎を宿した銃撃を見舞う
確かに効いているはずなのに、魔王は顔色ひとつ変えない
「フハハ!
その程度で余を討つなど、片腹痛いわ!」
「ちっ……!」
攻撃の余波で足元を掬われたのを利用して、空中で身を捻り、更に連射を浴びせる
着地した瞬間、太刀が振り下ろされるのは分かっていた
銃弾を刀で受け止め、弾きながら、魔王はこちらを嘲笑う
「不知火!!」
「効かぬわ!!」
引き金を引いた時、空の音だけがした
(弾切れ……!)
懐から予備の弾丸を握り締めるが、装填するタイミングは無さそうだ
(こうなれば一か八か、空中で!)
右の銃はまだ弾がある
紅炎舞で魔王の視界を遮った隙に、弾を詰めれば――いける!
「紅炎舞!!」
空中に跳び、炎の弾丸を降らせる
その隙に左の銃に弾を詰めた
まだいける、私はまだ戦える!
こんなところでくたばってなんかいられない――!
それが彦一郎様の装束を赤黒く染め上げていく
「彦一郎様……!」
血に塗れる彦一郎様の右手が差し伸ばされる
それを掴んで、必死に彼の名前を呼んだ
頭の中に浮かぶのは最低最悪な予想
逃れられないと分かっていても
彼の名を呼ばずにはいられなかった
呼んでいて、私の声を聞いていてくれる間は、彦一郎様は……
まだ、ここにいてくれるはずだから……!
「すまない……な
最後の最期に……そんな顔をさせてしまって……」
「最期などと……おっしゃらないでください……」
視界が涙で霞んでいく
分かっている
彦一郎様は、もう助からない……
それでも認めたくない、こんな終わり方を認めるわけにはいかない
「……綾葉
頼みが……ある……」
「……はい
なんでございましょう……」
弱々しい呼吸をしながら、彦一郎様がゆっくりと言葉を紡いだ
瞳の光はか細く明暗を繰り返している
――嫌、そんなのは嫌だ
あなたがいない世界なんて、私は耐えられない
「美稜の将は……すべて、武田に仕えろ、と……
それだけを……お前の、口から……
私の遺した言葉だと……」
「そんな……
美稜は、美稜はどうなるのですか!?
私はどうすれば……!」
彦一郎様は淡く微笑んだ
握り締めていた手が、私の頬に伸びる
「お前の……好きなように生きろ……
伊達でも、どこでもいい……
お前がお前らしく……生きられるところで
ただ……」
彦一郎様の瞳から、光が消えていく
その両の瞳の目尻から、涙が零れ落ちていって
「美稜を……忘れないでくれ――」
彦一郎様の右手が私の顔を引き寄せる
触れ合った唇から、彦一郎様の想いが伝わってくるようで……
何も言えなくなった私へ、彦一郎様は幸せそうに微笑んでいた
「お前と出会えて、本当に良かった
……ありがとう、綾葉――」
穏やかな微笑みを浮かべ、瞬間、身体から全ての力が抜け落ちた
落ちていく右手を掴むことさえできなかった
(……ああ、風が止んだ――)
それが――美稜彦一郎隆政様の時が止まった瞬間だった
「……忘れません
たとえ美稜がなくなろうと、美稜の者たる心は、皆が一生持ち続けるはずです」
今はただ、安らかにお眠り下さい
あなた様の短い生涯の僅か一部ではありますが、共に寄り添い歩めたことは、私にとって何よりの誇りです
私を愛してくれたあなた
私を救ってくれた光
あなたは私の希望で、憧れで、私の全てだった
涙は零れない
なぜなら――まだ、決着はついていないからだ
そっと彦一郎様の身体を横たえたとき
「ぬぅぅおぅ……!」
地の底から這い出るようなおぞましい声に、私は天守を見上げた
蒼紅の二人はまだ戦っている……けれど、明らかに魔王の方が圧倒している
二人が魔王の技を食らって空高く打ち上げられる
「政宗様!
真田殿!」
迷わず二丁銃を引き抜いて構える
魔王の眼光が私を射抜くけれど、もはやそれに恐怖も畏怖も感じない
「貴様が余に敵うと思うてか!」
「気持ちだけは負けないつもりよ!」
一気に距離を詰める
魔王の太刀が当たらない距離を保ちながら、銃弾を撃ち込んでいく
気持ちで負けたらそこで全てが終わりだ
負けることは、私たちには許されていない
すなわち、私たちには勝利しか待っていない!
太刀の切っ先をスレスレでかわして、炎を宿した銃撃を見舞う
確かに効いているはずなのに、魔王は顔色ひとつ変えない
「フハハ!
その程度で余を討つなど、片腹痛いわ!」
「ちっ……!」
攻撃の余波で足元を掬われたのを利用して、空中で身を捻り、更に連射を浴びせる
着地した瞬間、太刀が振り下ろされるのは分かっていた
銃弾を刀で受け止め、弾きながら、魔王はこちらを嘲笑う
「不知火!!」
「効かぬわ!!」
引き金を引いた時、空の音だけがした
(弾切れ……!)
懐から予備の弾丸を握り締めるが、装填するタイミングは無さそうだ
(こうなれば一か八か、空中で!)
右の銃はまだ弾がある
紅炎舞で魔王の視界を遮った隙に、弾を詰めれば――いける!
「紅炎舞!!」
空中に跳び、炎の弾丸を降らせる
その隙に左の銃に弾を詰めた
まだいける、私はまだ戦える!
こんなところでくたばってなんかいられない――!
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