Episode.14
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立ち上がり、小十郎さんを見下ろす政宗様と
座ったまま、政宗さんを見上げる片倉様
その二人を静かに見守る彦一郎様と佐助
片倉様は政宗様の本当の意図に気付いたのか、しかし信じ難いというように政宗様を見上げていた
「政宗様……まさか……」
その一言で意図は伝わっていると確信したのか、政宗様は含みを持たせた笑みを残し、そして真剣な顔付きで真田殿へと視線をやった
「真田幸村
アンタはどうだ?」
信玄公の枕元で縮こまり、項垂れる真田殿へ、政宗様はなおも問いを重ねていく
「俺はアンタが真っ先に飛び出していくもんだとばかり思ってたぜ?」
政宗様は、昔の己と真田殿を重ねているのかもしれない
政宗様も家督を継いですぐに、最愛の父である輝宗様を失っている
今回のように、卑怯なやり口で
「……お館様」
小さな声が信玄公を呼んだ
後悔だけが詰め込まれた声だった
後ろを見ることしか出来ない人のそれだ
政宗様の表情は厳しい
まるで真田幸村殿のことを、日本一の兵という肩書きを、見定めようとしているようだった
「申し訳ございませぬ、お館様……
明智光秀の奇襲に際し、某、何のお役にも立てませず……」
「真田の旦那……
敵はいつも、一番大事なものを狙ってくる
これまで俺たち武田も、伊達も、そうしてこの戦国をのし上がってきた
それはお互い様だ
分かってるはずだろう」
「某……戦場以外で敵を討ったことはござらん……
ましてや、武器を持たぬ民を巻き込むようなやり方で……」
「だったら怒ってくれ!
そのままお館様の枕元で俯いて、織田に潰されるのを待つつもりなのか?
そうしていたいのは、旦那だけじゃないんだぜ!」
珍しくも佐助が感情をあらわにしている
その佐助の相手は、物言わぬ信玄公を前にして震えていた
「どうしたら良いのか、わからぬ……
心細い……怖いのだ……」
震える右手を、左手で押さえつけ
それでも震えが収まらない
その気持ちは痛いほど分かる
私も幾度となく経験したことだから
轟音と共に雷鳴が響き渡る
それは様子を見ていた独眼竜の心情を表すかのように、一段と激しいものだった
「羨ましい野郎だぜ……」
政宗様は低くそう呟いて、障子戸を開け放した
庭先には、伊達の兵達が散らばりつつも揃っている
「筆頭!」
「出陣っすか!」
「待ってました!」
良直と左馬助、孫兵衛が走り寄ってきたのを皮切りに、伊達衆が政宗様の前に揃った
それから、しばらくの沈黙があった後
ゆっくりと政宗様が口を開いた
「――Break it up.
奥州伊達軍は、本日只今をもって解散する!」
兵達が政宗様を見上げたまま固まる
もちろん私もだ
唐突な家臣団の解散宣言――
その言葉の意味を理解できないものがほとんどだった
「政宗、様……?
一体何をおっしゃって……」
「止めるな、綾葉
政宗公と苦難を共にしてきたお前なら、あのお方の真意に気付けるはずだ」
そうは言っても、家臣団の解散なんて有り得ない事態だ
片倉様も、どうして何も言わないの
今の発言は、真田殿に聞こえていなかったのだろうか
好敵手の選んだそれを知りながら、あなたはそれでもまだ下を向いて俯くままでいるの?
政宗様は雨の降りしきる庭を一人で歩き、どこかへと去って行こうとする
「政宗様、お待ちください……!」
「綾葉」
「ですが……!」
彦一郎様の腕が私の右手を掴む
そうして彼は無言で首を振った
「政宗、殿……?」
「どこへ行く、独眼竜!」
佐助の声に、政宗様が歩いていた足を止め、振り返る
そうして彼は、いつもの笑みの中に苛立ちを滲ませて告げた
「本能寺に決まってんだろ!
今度こそこの俺が直々に、魔王の首獲らせてもらう!」
その言葉で全てに合点がいった
家臣団の解散の、本当の意味に
上げかけていた腰を下ろし、一つ呼吸を整える
(貴方はそれでこそ奥州筆頭でございます)
いや、この限りにおいては、その肩書きすら関係ないのだろう
どれほど策略を張り巡らされても、そこに大義と誇りがあれば、政宗様は正面から受けて立ってきた
軍を率いて、伊達の名を掲げ、奥州の地でその名を馳せてきた
ああ、そうか……彼は本当に今、心底から怒りを抱いているのだ
座ったまま、政宗さんを見上げる片倉様
その二人を静かに見守る彦一郎様と佐助
片倉様は政宗様の本当の意図に気付いたのか、しかし信じ難いというように政宗様を見上げていた
「政宗様……まさか……」
その一言で意図は伝わっていると確信したのか、政宗様は含みを持たせた笑みを残し、そして真剣な顔付きで真田殿へと視線をやった
「真田幸村
アンタはどうだ?」
信玄公の枕元で縮こまり、項垂れる真田殿へ、政宗様はなおも問いを重ねていく
「俺はアンタが真っ先に飛び出していくもんだとばかり思ってたぜ?」
政宗様は、昔の己と真田殿を重ねているのかもしれない
政宗様も家督を継いですぐに、最愛の父である輝宗様を失っている
今回のように、卑怯なやり口で
「……お館様」
小さな声が信玄公を呼んだ
後悔だけが詰め込まれた声だった
後ろを見ることしか出来ない人のそれだ
政宗様の表情は厳しい
まるで真田幸村殿のことを、日本一の兵という肩書きを、見定めようとしているようだった
「申し訳ございませぬ、お館様……
明智光秀の奇襲に際し、某、何のお役にも立てませず……」
「真田の旦那……
敵はいつも、一番大事なものを狙ってくる
これまで俺たち武田も、伊達も、そうしてこの戦国をのし上がってきた
それはお互い様だ
分かってるはずだろう」
「某……戦場以外で敵を討ったことはござらん……
ましてや、武器を持たぬ民を巻き込むようなやり方で……」
「だったら怒ってくれ!
そのままお館様の枕元で俯いて、織田に潰されるのを待つつもりなのか?
そうしていたいのは、旦那だけじゃないんだぜ!」
珍しくも佐助が感情をあらわにしている
その佐助の相手は、物言わぬ信玄公を前にして震えていた
「どうしたら良いのか、わからぬ……
心細い……怖いのだ……」
震える右手を、左手で押さえつけ
それでも震えが収まらない
その気持ちは痛いほど分かる
私も幾度となく経験したことだから
轟音と共に雷鳴が響き渡る
それは様子を見ていた独眼竜の心情を表すかのように、一段と激しいものだった
「羨ましい野郎だぜ……」
政宗様は低くそう呟いて、障子戸を開け放した
庭先には、伊達の兵達が散らばりつつも揃っている
「筆頭!」
「出陣っすか!」
「待ってました!」
良直と左馬助、孫兵衛が走り寄ってきたのを皮切りに、伊達衆が政宗様の前に揃った
それから、しばらくの沈黙があった後
ゆっくりと政宗様が口を開いた
「――Break it up.
奥州伊達軍は、本日只今をもって解散する!」
兵達が政宗様を見上げたまま固まる
もちろん私もだ
唐突な家臣団の解散宣言――
その言葉の意味を理解できないものがほとんどだった
「政宗、様……?
一体何をおっしゃって……」
「止めるな、綾葉
政宗公と苦難を共にしてきたお前なら、あのお方の真意に気付けるはずだ」
そうは言っても、家臣団の解散なんて有り得ない事態だ
片倉様も、どうして何も言わないの
今の発言は、真田殿に聞こえていなかったのだろうか
好敵手の選んだそれを知りながら、あなたはそれでもまだ下を向いて俯くままでいるの?
政宗様は雨の降りしきる庭を一人で歩き、どこかへと去って行こうとする
「政宗様、お待ちください……!」
「綾葉」
「ですが……!」
彦一郎様の腕が私の右手を掴む
そうして彼は無言で首を振った
「政宗、殿……?」
「どこへ行く、独眼竜!」
佐助の声に、政宗様が歩いていた足を止め、振り返る
そうして彼は、いつもの笑みの中に苛立ちを滲ませて告げた
「本能寺に決まってんだろ!
今度こそこの俺が直々に、魔王の首獲らせてもらう!」
その言葉で全てに合点がいった
家臣団の解散の、本当の意味に
上げかけていた腰を下ろし、一つ呼吸を整える
(貴方はそれでこそ奥州筆頭でございます)
いや、この限りにおいては、その肩書きすら関係ないのだろう
どれほど策略を張り巡らされても、そこに大義と誇りがあれば、政宗様は正面から受けて立ってきた
軍を率いて、伊達の名を掲げ、奥州の地でその名を馳せてきた
ああ、そうか……彼は本当に今、心底から怒りを抱いているのだ
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