Episode.11
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織田の元に身を寄せてから幾日かが過ぎた
自分の意志でここに来たものの、はっきりと織田に仕えるとは言っていない
というか、そもそも仕えるつもりもない
ともあれそのせいで、私の行動はかなり制限されたものだった
それでも彦一郎様のお側にいられるだけで幸せだ
かといって、伊達のことを忘れることもできないでいる
このままではいけないことは重々承知している
それでも――もう奥州には、私の帰る場所など無いだろうから
彦一郎様と再会できた以上、織田包囲網を展開して織田を倒したら、私は美稜へ戻ることになる
……首を差し出すわけにはいかなくなったけれど、織田を倒しさえすれば、もう伊達と関わることはないだろう
ため息をついて、空を見上げる
気持ちがいい晴天が広がっているのは、ここに来た時と変わらない
政宗様達はどうしておられるだろう
彦一郎様からは逐次、伊達の動向を伺っている
撤退の途上で政宗様が倒れたことも、大事をとって甲斐武田の躑躅ヶ崎館で養生していることも教えてくださった
武田・上杉の連合軍は長篠で撤退し、それぞれの領地に戻ったという
武田は手狭になってしまったかもしれないけれど、負傷した政宗様を引き止めてくれて助かった
「……綾葉」
「彦一郎様」
お部屋に現れた彦一郎様はどこか浮かぬ顔だった
建前上は捕虜であるので、私は彦一郎様のお部屋から出ることを許されていない
そのため、彦一郎様は基本的に、私のお傍にいて下さる――嬉しい反面、心苦しいのは確かだ
「いかがなさいましたか?」
「ああ……
……松永弾正久秀を知っているか?」
「松永……久秀……?」
「戦国の梟雄といわれる男だ
だが今は庵にこもり、骨董品集めに精を出していると聞く」
「その松永が、どうかなさったのですか?」
「……政宗公の刀が、狙われているらしい」
「政宗様の刀が……!?」
六の爪は伊達家の至宝
政宗様の命の次に大切なものだ
「どうやら人質を取っているようでな
その人質と引き換えに、伊達の宝である六爪と、武田の家宝である楯無の鎧を渡せと言うことらしいのだ」
「人質……とは、もしや片倉様では――」
「いや、伊達の足軽だ
名前までは聞いていないが、人質の数は三人
一人は髪を前に長く固めて突き出していて――」
「……良直」
三人のうちの一人が良直であれば、残り二人の顔も芋づる式に出てくる
恐らくあと二人は左馬助、文七郎、孫兵衛の誰かだ
あの四人は見張りの当番も同じ組だったからか、いつも一緒にいるような間柄だった
恐らく松永久秀に襲われた時も、一緒にいて……うち三人はそのまま捕まってしまったのだろう
なんであれ、そのような状況を政宗様が見過ごすとは思えない
それこそ負傷をおしてでも助けに行こうとするはずだ
竜の宝に手を出そうだなんて、度胸だけは認めてあげてもいい
「そのような不届き者、断固として見過ごすわけにはゆきませぬ!
私が討ち取ってまいります」
「落ち着け!
お前はここからの外出を許されていない
それに、伊達を裏切ったと見せているお前が今ここで行けば――」
「……それは……っ」
織田をも裏切ったとの烙印を押され、彦一郎様の面目にも傷がつく
悔しいが私はここで大人しくしているしかないのだ……
「案ずるな
伊達には、政宗公の腹心である竜の右目がいる
きっと何かしらの策を立てているはずだろう」
「それは……左様でございますが……」
「それよりも、今はお前のことだ」
「……え」
彦一郎様の両手が、私の手を包む
眼差しは変わらず柔らかい……それなのに、浮かぶ色は寂しさだ
「お前がいるべき場所は、ここではないだろう?」
「彦一郎様……?」
「もうじき信長様が薩摩討伐のため、九州に向かわれる」
その言葉に、彦一郎様の真意を見て取った
「同時に濃姫様と蘭丸殿は越後、明智殿は三河へ行かれる算段だ
つまり、その期間はここに織田の主軸がいない
お前が逃げやすくなるんだ」
「それは……!」
「このような好機はもう二度とない
私に任せてくれ
必ずお前を、政宗公の元へ逃がしてみせる」
「……私だけ、ですか」
今の説明、私だけを逃がすようにしか聞こえない
きっとそのつもりなのだろう
優しい彦一郎様のことだから、織田を裏切って共に逃げ出そうなどということを考えたりしないのだ
……もう守るべきものなど、我々にはありもしないのに
自分の意志でここに来たものの、はっきりと織田に仕えるとは言っていない
というか、そもそも仕えるつもりもない
ともあれそのせいで、私の行動はかなり制限されたものだった
それでも彦一郎様のお側にいられるだけで幸せだ
かといって、伊達のことを忘れることもできないでいる
このままではいけないことは重々承知している
それでも――もう奥州には、私の帰る場所など無いだろうから
彦一郎様と再会できた以上、織田包囲網を展開して織田を倒したら、私は美稜へ戻ることになる
……首を差し出すわけにはいかなくなったけれど、織田を倒しさえすれば、もう伊達と関わることはないだろう
ため息をついて、空を見上げる
気持ちがいい晴天が広がっているのは、ここに来た時と変わらない
政宗様達はどうしておられるだろう
彦一郎様からは逐次、伊達の動向を伺っている
撤退の途上で政宗様が倒れたことも、大事をとって甲斐武田の躑躅ヶ崎館で養生していることも教えてくださった
武田・上杉の連合軍は長篠で撤退し、それぞれの領地に戻ったという
武田は手狭になってしまったかもしれないけれど、負傷した政宗様を引き止めてくれて助かった
「……綾葉」
「彦一郎様」
お部屋に現れた彦一郎様はどこか浮かぬ顔だった
建前上は捕虜であるので、私は彦一郎様のお部屋から出ることを許されていない
そのため、彦一郎様は基本的に、私のお傍にいて下さる――嬉しい反面、心苦しいのは確かだ
「いかがなさいましたか?」
「ああ……
……松永弾正久秀を知っているか?」
「松永……久秀……?」
「戦国の梟雄といわれる男だ
だが今は庵にこもり、骨董品集めに精を出していると聞く」
「その松永が、どうかなさったのですか?」
「……政宗公の刀が、狙われているらしい」
「政宗様の刀が……!?」
六の爪は伊達家の至宝
政宗様の命の次に大切なものだ
「どうやら人質を取っているようでな
その人質と引き換えに、伊達の宝である六爪と、武田の家宝である楯無の鎧を渡せと言うことらしいのだ」
「人質……とは、もしや片倉様では――」
「いや、伊達の足軽だ
名前までは聞いていないが、人質の数は三人
一人は髪を前に長く固めて突き出していて――」
「……良直」
三人のうちの一人が良直であれば、残り二人の顔も芋づる式に出てくる
恐らくあと二人は左馬助、文七郎、孫兵衛の誰かだ
あの四人は見張りの当番も同じ組だったからか、いつも一緒にいるような間柄だった
恐らく松永久秀に襲われた時も、一緒にいて……うち三人はそのまま捕まってしまったのだろう
なんであれ、そのような状況を政宗様が見過ごすとは思えない
それこそ負傷をおしてでも助けに行こうとするはずだ
竜の宝に手を出そうだなんて、度胸だけは認めてあげてもいい
「そのような不届き者、断固として見過ごすわけにはゆきませぬ!
私が討ち取ってまいります」
「落ち着け!
お前はここからの外出を許されていない
それに、伊達を裏切ったと見せているお前が今ここで行けば――」
「……それは……っ」
織田をも裏切ったとの烙印を押され、彦一郎様の面目にも傷がつく
悔しいが私はここで大人しくしているしかないのだ……
「案ずるな
伊達には、政宗公の腹心である竜の右目がいる
きっと何かしらの策を立てているはずだろう」
「それは……左様でございますが……」
「それよりも、今はお前のことだ」
「……え」
彦一郎様の両手が、私の手を包む
眼差しは変わらず柔らかい……それなのに、浮かぶ色は寂しさだ
「お前がいるべき場所は、ここではないだろう?」
「彦一郎様……?」
「もうじき信長様が薩摩討伐のため、九州に向かわれる」
その言葉に、彦一郎様の真意を見て取った
「同時に濃姫様と蘭丸殿は越後、明智殿は三河へ行かれる算段だ
つまり、その期間はここに織田の主軸がいない
お前が逃げやすくなるんだ」
「それは……!」
「このような好機はもう二度とない
私に任せてくれ
必ずお前を、政宗公の元へ逃がしてみせる」
「……私だけ、ですか」
今の説明、私だけを逃がすようにしか聞こえない
きっとそのつもりなのだろう
優しい彦一郎様のことだから、織田を裏切って共に逃げ出そうなどということを考えたりしないのだ
……もう守るべきものなど、我々にはありもしないのに
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