08 宵の宴に
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少しずつ、少しずつ
昨日よりも一歩、前へ進む
不安と恐怖を抱えて、それでも前へ――
08 宵の宴に
「──私がパーティに?」
季節は暑さを増してきた、五月の下旬
いつものように部活を終えて、伊達家で夕飯を頂いて、つい先程、私と政宗さんは自宅に戻った
そのまますぐにお風呂を済ませて、ようやくソファに腰を落ち着けたところで、政宗さんから差し出されたのはひとつの封筒
それは紛れもなく、招待状だった
「珍しい……というか、初めてですよね?
政宗さんは何度もお呼ばれしてますけど、私まで呼ばれるなんて」
「そろそろ、お前を連れて行ってもいいんじゃねぇかと思ってな
小十郎も異論はないみてぇだったぜ」
「あの片倉先生が……!?」
再三のお呼ばれを「ひよっこには荷が重いだろうぜ」と半笑いで斬り捨てていった、あの片倉先生が!?
確かに当時はひよっこだったけど、今はもう成長したってことなんだろうか
「っつっても、そんなに仰々しいもんじゃねぇ
会場も狭いしな、見知った奴らもそれなりにいるだろ」
「そうですか……むぅ、迷う……」
「ゆっくり決めりゃいいさ──と、言いたいところだが、実はそうもいかなくてな」
「えっ」
「……二週間後の開催だ」
「え?」
封を切って中身を取り出す
確かに、そこには二週間後の日付が書かれていた
「……えぇぇえ!?」
「さらに酷なことを言えば、そいつはdance付きだ」
「だっ、ダンス!?
政宗さんっ、私のダンスの実力、知ってますよね!?」
「知ってる」
「過去でも二回しか踊ったことないですよ!?」
「知ってる」
「ただでさえ、竹中先輩による鬼指導の末の付け焼き刃なのに!!」
「それも知ってる、誰がお前と踊ったと思ってんだ?」
「一番長く踊った相手は竹中先輩ですね」
「テメェ!!」
「ぎゃああああ!!」
本気で首を絞めるな!!
それが可愛い奥さんにすることか!!
「まぁともかく、そういう訳でだ」
「強引に話を進めようとしましたね」
「当分の間、死ぬほどhardなscheduleになるからな
覚悟しとけよ」
「えっ、なんでですか」
「俺が付け焼き刃程度で満足すると思うか?」
「……まさか」
「これから当日までの二週間、部活の後はdanceのlessonが入るに決まってるだろうが 」
──その時、私は「だろうな」と思った
思ったけど言わせてほしい
「鬼ですか!!?」
「Ah?
俺の知ってる夕歌なら、この程度のことはeasyだろ?」
「政宗さんのハイスペックさと一緒にしないでもらえます!?」
「多少の考慮はしてやっただろうが」
「どこで!?」
少なくとも今のところ、全く考慮の気持ちが見えない
あれか、もしかして私が気付いてないだけなのか
「……ちなみにあの、つかぬ事をお聞きしますけど」
「どうした?」
「講師役はどなたが……?」
「そいつは始まってからのお楽しみだ」
「お楽しみ!?」
──この状況下でお楽しみに出来るわけねぇだろ!!
うっかり今までの淑女教育を無にする言葉遣いが飛び出しそうになり、バッ、と手で口を塞ぐ
こんな言葉遣い、社交マナー講師役の喜多先生に聞かれたら、その場でお説教が始まってしまう
なにせ片倉先生のお姉さんなのだ、半分は片倉先生と同じ血を引いているせいか、お小言は長い傾向にある
一番驚いたのは、片倉先生もだけど、あの綱元先輩とも義理の姉弟だったことだ
そして二人ともが、喜多先生に全く口答えしようとしなかった
「竹中先輩ですか?」
「さぁな?」
「それとも喜多先生ですか?」
「お楽しみだっつったろ」
「相手が誰かによっては、私も覚悟を決める必要があるんですよ!」
「相手が誰だろうと腹は括った方がいいぞ」
「そんな非情な現実、スマホを見ながら突きつけないでくださいよ!!」
きっと和真さんだったら、私に優しく教えてくれるのに──という所まで考えて、ズキンと胸が痛む
和真さんが何も言わずに姿を消して、間もなく一ヶ月が経とうとしている
お暇乞い……と表現していいのかは分からないけど、私の元を去るといった話は、和真さんからは何も聞いていない
藤野の人は、和真さんが私を見限ったと言っていたけれど、そもそも超が付く程に重度の主バカな和真さんが、敬愛している主の私を見限るだろうか
自分で言うのもおかしいけれど、その可能性はほぼ無いといっていい
だったらなぜ、和真さんは戻ってこないんだろう……?
急に黙り込んだ私を見かねてか、政宗さんがポンと私の頭を撫でた
「新倉のことか?」
「え……」
「見てりゃ分かる
ったく、あの野郎も罪な野郎だぜ
従者が主を不安にさせてどうする……」
嘆息と共にそう呟いた政宗さんが、ソファから立ち上がる
それを目で追うと、キッチンに入っていったので、お茶がほしかったのか、と視線を外した
……いつか、これが当たり前になるんだろうか
いつか、和真さんのいない日常が──
昨日よりも一歩、前へ進む
不安と恐怖を抱えて、それでも前へ――
08 宵の宴に
「──私がパーティに?」
季節は暑さを増してきた、五月の下旬
いつものように部活を終えて、伊達家で夕飯を頂いて、つい先程、私と政宗さんは自宅に戻った
そのまますぐにお風呂を済ませて、ようやくソファに腰を落ち着けたところで、政宗さんから差し出されたのはひとつの封筒
それは紛れもなく、招待状だった
「珍しい……というか、初めてですよね?
政宗さんは何度もお呼ばれしてますけど、私まで呼ばれるなんて」
「そろそろ、お前を連れて行ってもいいんじゃねぇかと思ってな
小十郎も異論はないみてぇだったぜ」
「あの片倉先生が……!?」
再三のお呼ばれを「ひよっこには荷が重いだろうぜ」と半笑いで斬り捨てていった、あの片倉先生が!?
確かに当時はひよっこだったけど、今はもう成長したってことなんだろうか
「っつっても、そんなに仰々しいもんじゃねぇ
会場も狭いしな、見知った奴らもそれなりにいるだろ」
「そうですか……むぅ、迷う……」
「ゆっくり決めりゃいいさ──と、言いたいところだが、実はそうもいかなくてな」
「えっ」
「……二週間後の開催だ」
「え?」
封を切って中身を取り出す
確かに、そこには二週間後の日付が書かれていた
「……えぇぇえ!?」
「さらに酷なことを言えば、そいつはdance付きだ」
「だっ、ダンス!?
政宗さんっ、私のダンスの実力、知ってますよね!?」
「知ってる」
「過去でも二回しか踊ったことないですよ!?」
「知ってる」
「ただでさえ、竹中先輩による鬼指導の末の付け焼き刃なのに!!」
「それも知ってる、誰がお前と踊ったと思ってんだ?」
「一番長く踊った相手は竹中先輩ですね」
「テメェ!!」
「ぎゃああああ!!」
本気で首を絞めるな!!
それが可愛い奥さんにすることか!!
「まぁともかく、そういう訳でだ」
「強引に話を進めようとしましたね」
「当分の間、死ぬほどhardなscheduleになるからな
覚悟しとけよ」
「えっ、なんでですか」
「俺が付け焼き刃程度で満足すると思うか?」
「……まさか」
「これから当日までの二週間、部活の後はdanceのlessonが入るに決まってるだろうが 」
──その時、私は「だろうな」と思った
思ったけど言わせてほしい
「鬼ですか!!?」
「Ah?
俺の知ってる夕歌なら、この程度のことはeasyだろ?」
「政宗さんのハイスペックさと一緒にしないでもらえます!?」
「多少の考慮はしてやっただろうが」
「どこで!?」
少なくとも今のところ、全く考慮の気持ちが見えない
あれか、もしかして私が気付いてないだけなのか
「……ちなみにあの、つかぬ事をお聞きしますけど」
「どうした?」
「講師役はどなたが……?」
「そいつは始まってからのお楽しみだ」
「お楽しみ!?」
──この状況下でお楽しみに出来るわけねぇだろ!!
うっかり今までの淑女教育を無にする言葉遣いが飛び出しそうになり、バッ、と手で口を塞ぐ
こんな言葉遣い、社交マナー講師役の喜多先生に聞かれたら、その場でお説教が始まってしまう
なにせ片倉先生のお姉さんなのだ、半分は片倉先生と同じ血を引いているせいか、お小言は長い傾向にある
一番驚いたのは、片倉先生もだけど、あの綱元先輩とも義理の姉弟だったことだ
そして二人ともが、喜多先生に全く口答えしようとしなかった
「竹中先輩ですか?」
「さぁな?」
「それとも喜多先生ですか?」
「お楽しみだっつったろ」
「相手が誰かによっては、私も覚悟を決める必要があるんですよ!」
「相手が誰だろうと腹は括った方がいいぞ」
「そんな非情な現実、スマホを見ながら突きつけないでくださいよ!!」
きっと和真さんだったら、私に優しく教えてくれるのに──という所まで考えて、ズキンと胸が痛む
和真さんが何も言わずに姿を消して、間もなく一ヶ月が経とうとしている
お暇乞い……と表現していいのかは分からないけど、私の元を去るといった話は、和真さんからは何も聞いていない
藤野の人は、和真さんが私を見限ったと言っていたけれど、そもそも超が付く程に重度の主バカな和真さんが、敬愛している主の私を見限るだろうか
自分で言うのもおかしいけれど、その可能性はほぼ無いといっていい
だったらなぜ、和真さんは戻ってこないんだろう……?
急に黙り込んだ私を見かねてか、政宗さんがポンと私の頭を撫でた
「新倉のことか?」
「え……」
「見てりゃ分かる
ったく、あの野郎も罪な野郎だぜ
従者が主を不安にさせてどうする……」
嘆息と共にそう呟いた政宗さんが、ソファから立ち上がる
それを目で追うと、キッチンに入っていったので、お茶がほしかったのか、と視線を外した
……いつか、これが当たり前になるんだろうか
いつか、和真さんのいない日常が──
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