38 初めての大喧嘩
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きっかけは些細なすれ違いだった
今日は一緒に夕飯を食べられるんじゃなかったのか、とか、そういう小さなものだった
けれど――それが何度か続いたある日、とうとう火山が噴火したのだ
「自分のscheduleくらい把握しておけよ」と
それにプッツン来てしまった私も、相当に疲れが溜まってイライラしていたんだと思う
「作ってほしいなんて言ってません!」と言い返した、それが――早い話、原因だったと思う
38 初めての大喧嘩
もそ……と購買で買ったおにぎりを食べ、私は十度目くらいになるため息を吐き出した
数年前までは食べ慣れた味――市販の鮭おにぎりとツナマヨおにぎりだ――が、味気なく感じる
「俺の錯覚なら教えてほしいんだけど、夕歌の頭にキノコ生えてる気がするんだよな」
「俺も見えてるよ、成実」
「某には見えませぬが……
その、人体にキノコは生えてこないのではござりませぬか?」
「ものの例えだよ、じめじめした空気の」
「は、はあ……」
もういっそ、キノコでも何でも生えてくれたほうが、笑いを取れて楽しいんじゃないかとすら思う
政宗さんと喧嘩になって、早三日
驚くべきことに、この三日間、なんと一度も口を利いていない
お互いにピリピリした空気があるし、何よりも、私も政宗さんも忙しすぎて、一緒にいる時間がない
「しかし、藤野のばあさんも元気だよな
連日お前を連れてあっちこっち顔出してんだろ?」
「そのようだな
新倉のおかげで、どうにか人並みの生活は保てているようだが……」
「跡を継ぐというのが、斯様に忙しいものでござったとは……」
「政宗さんも予想外だったんじゃないかな
……だからって言って、夕歌さんだけを責めるのもお門違いだけど」
親泰君がそう言って、気遣わしげな眼差しで成実を見やった
政宗さんは私が居ない時、別邸でご飯を食べるそうだから、必然的に成実がストレスの捌け口にされている可能性が高い
成実自身、それを当たり前というか、自分の役割だと思ってるところがあるから、それはそれで心配なんだけど
「まぁどっちが悪いかっつったら、どっちもどっちだけどよ」
「そう……うん、分かってるんだよ
私も悪かったし政宗さんも悪かったって
……ていうか、自分のスケジュールも把握できてない分、私が悪いんだし……」
ただ、恥ずかしい話、これまでの人生における対人スキルが足りなさ過ぎて、こういうことになった時、どうすればいいかが分からない
普通にちゃんと謝ればいいんだろうけどさ!
なんというか、顔を合わせるのも気まずいというか……
「政宗さんはなんて言ってるんだよ?」
「梵か……うーん、口じゃ言わねぇけど、雰囲気が刺々しいな
夕歌の名前なんか出した日にゃあ、殺されるんじゃねえかってな具合で」
「ま、政宗殿がそれほどお怒りになることなど、滅多にないのではござらぬか?
しかしながら、某には、政宗殿がそのように怒りを覚えられる程のことであるとは、思えぬのでござるが……」
「本人に言ってやってくれ、幸村
別邸の空気を救ってくれ……」
項垂れる成実に罪悪感を覚えつつ、もぐ……と三つめのおにぎりをかじる
どんなに心が沈んでいてもお腹は減るのだ
「……やっぱり政宗さんの言う通りだったのかなぁ」
「何がだよ」
「おばあちゃんの同行、私には早すぎたんじゃないかって言われちゃって」
「……梵の奴」
「政宗さんに言われたのがショックで、なんでそんなふうに言うんですかって言い返しちゃってさ
……応援してくれてると思ってたのになぁって
政宗さんのことだし、応援はしてくれてたと思うんだけど、政宗さんの想定を超えて私が能無しだったのかも……」
深いため息をついて、三つめのおにぎりを食べ終える
それから四つめのおにぎりを開けた
「……よく食うな、お前」
「食べた分は剣道で消化しているだろう、何も問題は無いはずだぞ」
「落ち込んでてもお腹は空くんだよね、分かるよ俺」
「う、うむ、食欲があるのは良いことでござる」
「……ストレスの捌け口を食に向けるのは、やめておいたほうがいいぞ、夕歌」
経験者らしい謎の説得力があった
私なんかよりもストレスに晒されている人が言うと、説得力も増すというものだ
「その気になれば一日一食でも生活できるよ」
「過去の悲惨な生活をネタにされても、俺らはどう反応すればいいのか分かんねぇからやめてくれ」
「……ごめん」
素直に謝って肩を落とす
成実相手には素直に謝れるのになぁ
ずっとこのままだったら、どうしよう
……どうしようも何も、政宗さんが悪いことなんてないんだけど
和真さんに甘えすぎたかな、政宗さんにも
自分のことは自分でちゃんと出来るようにならないと
「お前、今日の稽古は?」
「えーっとね、今日は最後まで練習できるよ
その後、おばあちゃんと一緒に、レストランで会食かな」
「ずっと忙しそうだね……」
「ちゃんと休めておられまするか?」
「……期末試験、みんな手伝ってね……」
「もちろんだ!
私の持てる全てでお前をサポートしよう!」
「しゃーねえ、やってやるか」
「うむ!
某も尽力致しましょうぞ!」
「一般教養なら俺も力になれると思う!」
うっうっ、持つべきは優しい親友だ
ありがとうみんな、大いに頼らせて頂きます!!
今日は一緒に夕飯を食べられるんじゃなかったのか、とか、そういう小さなものだった
けれど――それが何度か続いたある日、とうとう火山が噴火したのだ
「自分のscheduleくらい把握しておけよ」と
それにプッツン来てしまった私も、相当に疲れが溜まってイライラしていたんだと思う
「作ってほしいなんて言ってません!」と言い返した、それが――早い話、原因だったと思う
38 初めての大喧嘩
もそ……と購買で買ったおにぎりを食べ、私は十度目くらいになるため息を吐き出した
数年前までは食べ慣れた味――市販の鮭おにぎりとツナマヨおにぎりだ――が、味気なく感じる
「俺の錯覚なら教えてほしいんだけど、夕歌の頭にキノコ生えてる気がするんだよな」
「俺も見えてるよ、成実」
「某には見えませぬが……
その、人体にキノコは生えてこないのではござりませぬか?」
「ものの例えだよ、じめじめした空気の」
「は、はあ……」
もういっそ、キノコでも何でも生えてくれたほうが、笑いを取れて楽しいんじゃないかとすら思う
政宗さんと喧嘩になって、早三日
驚くべきことに、この三日間、なんと一度も口を利いていない
お互いにピリピリした空気があるし、何よりも、私も政宗さんも忙しすぎて、一緒にいる時間がない
「しかし、藤野のばあさんも元気だよな
連日お前を連れてあっちこっち顔出してんだろ?」
「そのようだな
新倉のおかげで、どうにか人並みの生活は保てているようだが……」
「跡を継ぐというのが、斯様に忙しいものでござったとは……」
「政宗さんも予想外だったんじゃないかな
……だからって言って、夕歌さんだけを責めるのもお門違いだけど」
親泰君がそう言って、気遣わしげな眼差しで成実を見やった
政宗さんは私が居ない時、別邸でご飯を食べるそうだから、必然的に成実がストレスの捌け口にされている可能性が高い
成実自身、それを当たり前というか、自分の役割だと思ってるところがあるから、それはそれで心配なんだけど
「まぁどっちが悪いかっつったら、どっちもどっちだけどよ」
「そう……うん、分かってるんだよ
私も悪かったし政宗さんも悪かったって
……ていうか、自分のスケジュールも把握できてない分、私が悪いんだし……」
ただ、恥ずかしい話、これまでの人生における対人スキルが足りなさ過ぎて、こういうことになった時、どうすればいいかが分からない
普通にちゃんと謝ればいいんだろうけどさ!
なんというか、顔を合わせるのも気まずいというか……
「政宗さんはなんて言ってるんだよ?」
「梵か……うーん、口じゃ言わねぇけど、雰囲気が刺々しいな
夕歌の名前なんか出した日にゃあ、殺されるんじゃねえかってな具合で」
「ま、政宗殿がそれほどお怒りになることなど、滅多にないのではござらぬか?
しかしながら、某には、政宗殿がそのように怒りを覚えられる程のことであるとは、思えぬのでござるが……」
「本人に言ってやってくれ、幸村
別邸の空気を救ってくれ……」
項垂れる成実に罪悪感を覚えつつ、もぐ……と三つめのおにぎりをかじる
どんなに心が沈んでいてもお腹は減るのだ
「……やっぱり政宗さんの言う通りだったのかなぁ」
「何がだよ」
「おばあちゃんの同行、私には早すぎたんじゃないかって言われちゃって」
「……梵の奴」
「政宗さんに言われたのがショックで、なんでそんなふうに言うんですかって言い返しちゃってさ
……応援してくれてると思ってたのになぁって
政宗さんのことだし、応援はしてくれてたと思うんだけど、政宗さんの想定を超えて私が能無しだったのかも……」
深いため息をついて、三つめのおにぎりを食べ終える
それから四つめのおにぎりを開けた
「……よく食うな、お前」
「食べた分は剣道で消化しているだろう、何も問題は無いはずだぞ」
「落ち込んでてもお腹は空くんだよね、分かるよ俺」
「う、うむ、食欲があるのは良いことでござる」
「……ストレスの捌け口を食に向けるのは、やめておいたほうがいいぞ、夕歌」
経験者らしい謎の説得力があった
私なんかよりもストレスに晒されている人が言うと、説得力も増すというものだ
「その気になれば一日一食でも生活できるよ」
「過去の悲惨な生活をネタにされても、俺らはどう反応すればいいのか分かんねぇからやめてくれ」
「……ごめん」
素直に謝って肩を落とす
成実相手には素直に謝れるのになぁ
ずっとこのままだったら、どうしよう
……どうしようも何も、政宗さんが悪いことなんてないんだけど
和真さんに甘えすぎたかな、政宗さんにも
自分のことは自分でちゃんと出来るようにならないと
「お前、今日の稽古は?」
「えーっとね、今日は最後まで練習できるよ
その後、おばあちゃんと一緒に、レストランで会食かな」
「ずっと忙しそうだね……」
「ちゃんと休めておられまするか?」
「……期末試験、みんな手伝ってね……」
「もちろんだ!
私の持てる全てでお前をサポートしよう!」
「しゃーねえ、やってやるか」
「うむ!
某も尽力致しましょうぞ!」
「一般教養なら俺も力になれると思う!」
うっうっ、持つべきは優しい親友だ
ありがとうみんな、大いに頼らせて頂きます!!
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