32 ハッピーバレンタインデー当日
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「はあ、明日のパーティーに私もですか
……明日のパーティーに私もですか!?」
「Nice reactionだな」
「見事な二段構えでしたね」
「言ってる場合か!!!」
昨日の今日で何があったんだ、私に!!
しかもまた当事者抜きで勝手に決まってるし!!
なんなんだ、本当に!!
32 ハッピーバレンタインデー当日
ウォークインクローゼットを空けて、ドレスを探す
といっても社交の場に出たことは片手で数える回数しかなく、持っているドレスも数着しかないのが現状だ
「これは叔父が乱入してきた時のパーティーで着たドレスか……
ちょっと嫌なこと思い出すな……」
「処分致します」
「判断が早い」
誰も捨てろとは言ってない
ちょっと今は着たくないだけで……
となると、まだ袖を通していないものがいいかな……
「……これ、まだあったんだ」
「これは……綺麗なドレスですね」
私が引っ張り出したのは、腰から裾にかけて青のグラデーションが綺麗なパーティードレス
何を隠そう、婆娑羅学院一年の時、学祭の後夜祭で着たものだ
「あれから三、四年は経ってるけど、まだ着られるかな……」
「試着なさいますか?」
「はい
着られるなら、せっかくだし明日これを着るのもいいかも」
和真さんが部屋から出て行ったのを確認して、服を脱ぐ
それからパーティードレスを着てみた
うん、サイズは問題ないな
一応は五分袖だし、会場内は温かいだろうし……
「お嬢様、失礼致します
いかがですか?」
「あ、どうぞ」
ドアを開けて入ってきた和真さんがそれは大きく息を呑み、口元を手で覆った
それがキャパオーバーの合図であるということは、これまでの付き合いで知っている
「和真さん、飛んでます」
「はっ……!
失礼致しました、とてもお綺麗で!
まるで夜会に咲く蝶のようです、女神の化身かと思いました」
「言動がかすが化するのはやめていただけませんか……」
和真さんがクローゼットから白のハイヒールを持ってきてくれて、履き替えて立ち上がる
「わァすごい……」と和真さんの語彙力が消し飛んだ
大丈夫か、この万能執事
「手直しもいらなさそうですし、これで問題ないですか?」
「問題など最初から存在致しません
もはや最適解と申し上げましょう
お嬢様の愛らしさと美しさがすべて際立つ、最高のドレスがここにありました」
「最高のドレスが見つかるの早すぎたな」
何年もかけたのなら分かるけど、人生初のパーティードレスが最高のドレスだったのか
いいのか、本当にそれで
和真さんのことだから何を着ても最高としか言わない可能性は大いにある
和真さんをもう一度下がらせて、洋服に着替え直した
あとで政宗さんにドレスのことは伝えておこう、そうすれば明日はタイの色を合わせてくれるはずだ
「こちらのドレスはお嬢様にとって、思い入れのあるドレスであるとお見受け致します」
「そっか、和真さんと出会ったのはこの後だから、ご存知なかったんですね
これは学院時代、初めての学院祭で、後夜祭のダンスパーティーの時に着たものなんです」
クローゼットを閉めてリビングへ降りながら、当時のことを思い出した
なかなかスパルタだったな、竹中先輩とのダンスレッスンは
「用意してくれたのは竹中先輩でしたけど、最後には政宗さんが買い取って、私にプレゼントしてくれたんですよ
あの時、お互いまだパートナーが決まっていなくて……
私は本当に忘れちゃっていて、パートナーを誰にするかなんて決めていなくて、政宗さんは私を誘いたかったけど誘えずにいたらしくて」
「おや、そうだったのですか
政宗様に似つかわしくない奥手ぶりですね」
「あはは、和真さんもそう思います?
私もそう思ったんですよ、てっきり自分と踊れって言い出すかなとか
ジャンケンで決まりそうになったので、私から政宗さんをお誘いしたんですよね
あの時、政宗さんをパートナーに誘えて良かった
淡い初恋が実ることって、あるんですね」
ただ政宗さんとパートナーになれたら嬉しかった
でも、佐助先輩の後押しもあって、ちゃんと政宗さんに思いを伝えることにした
政宗さんは男から言うもんだ、って私に最後まで言わせてくれなかったけど
「……もし、あの時、政宗さんに告白していなかったら、どうなっていたんでしょう」
「お見合いのお話が来るまで、友達以上恋人未満だったかもしれませんね」
紅茶をティーカップに注ぎながら、和真さんが答えた
そういえばお見合いしたなぁ
地獄かってくらい笑いを堪えなきゃいけなかったけど
「人との出会いは一期一会ですから、いつどこで出会うかなど分からないものですが……
お嬢様と政宗様のファーストダンスをこの目で見ることが出来なかったのは、本当に悔やまれます」
「付け焼き刃だったので上手くなかったと思いますよ
今のほうがもう少し……」
「技術の善し悪しではございません
初めて政宗様とダンスを踊られた時の高揚感や緊張感、それに勝る幸福感は、その時だけのものです
大切なひとときを飾ったドレスが、こうしてお嬢様のお手元にあることを、私は喜ばしく思います」
和真さんに言われて思い出す
初めて政宗さんと踊った時のこと
すごくドキドキして、緊張もして……でも周りの視線も気にならないくらい幸せで
「……そうですね
夢のようなひと時だったのは間違いないです」
紅茶を飲みつつそう答え、思い出した甘酸っぱい記憶に頬が熱を持った
そういえばあの時は、ベストカップルになれっていう無茶な指令も出ていたっけ
最初から出来レースみたいなものだったけど……
「あの時、ダンスパーティーのベストカップルに私と政宗さんが選ばれたんですよ
本来、ベストカップルに選ばれたら、女の子の頬に生徒会長がキスしなきゃいけなかったんですけど」
「ほう?」
「政宗さん、相手が私だからって、普通にキスしてきました」
「政宗様らしいですね」
かなり恥ずかしかったけど、それもまた思い出だ
大変なことも多かったけど……楽しかったな、学院生活は
たくさんの出会いもあって、そのどれもが大切で
でも一番は……やっぱり、政宗さんと出会えたことだ
ありがとう、なんてお礼を言うのは、少し照れくさいけれど
でも、私の隣にいるのが政宗さんで良かったって、心からそう思っている
あなたを愛せて良かった
私を愛してくれたのが政宗さんで、本当に良かった
……明日のパーティーに私もですか!?」
「Nice reactionだな」
「見事な二段構えでしたね」
「言ってる場合か!!!」
昨日の今日で何があったんだ、私に!!
しかもまた当事者抜きで勝手に決まってるし!!
なんなんだ、本当に!!
32 ハッピーバレンタインデー当日
ウォークインクローゼットを空けて、ドレスを探す
といっても社交の場に出たことは片手で数える回数しかなく、持っているドレスも数着しかないのが現状だ
「これは叔父が乱入してきた時のパーティーで着たドレスか……
ちょっと嫌なこと思い出すな……」
「処分致します」
「判断が早い」
誰も捨てろとは言ってない
ちょっと今は着たくないだけで……
となると、まだ袖を通していないものがいいかな……
「……これ、まだあったんだ」
「これは……綺麗なドレスですね」
私が引っ張り出したのは、腰から裾にかけて青のグラデーションが綺麗なパーティードレス
何を隠そう、婆娑羅学院一年の時、学祭の後夜祭で着たものだ
「あれから三、四年は経ってるけど、まだ着られるかな……」
「試着なさいますか?」
「はい
着られるなら、せっかくだし明日これを着るのもいいかも」
和真さんが部屋から出て行ったのを確認して、服を脱ぐ
それからパーティードレスを着てみた
うん、サイズは問題ないな
一応は五分袖だし、会場内は温かいだろうし……
「お嬢様、失礼致します
いかがですか?」
「あ、どうぞ」
ドアを開けて入ってきた和真さんがそれは大きく息を呑み、口元を手で覆った
それがキャパオーバーの合図であるということは、これまでの付き合いで知っている
「和真さん、飛んでます」
「はっ……!
失礼致しました、とてもお綺麗で!
まるで夜会に咲く蝶のようです、女神の化身かと思いました」
「言動がかすが化するのはやめていただけませんか……」
和真さんがクローゼットから白のハイヒールを持ってきてくれて、履き替えて立ち上がる
「わァすごい……」と和真さんの語彙力が消し飛んだ
大丈夫か、この万能執事
「手直しもいらなさそうですし、これで問題ないですか?」
「問題など最初から存在致しません
もはや最適解と申し上げましょう
お嬢様の愛らしさと美しさがすべて際立つ、最高のドレスがここにありました」
「最高のドレスが見つかるの早すぎたな」
何年もかけたのなら分かるけど、人生初のパーティードレスが最高のドレスだったのか
いいのか、本当にそれで
和真さんのことだから何を着ても最高としか言わない可能性は大いにある
和真さんをもう一度下がらせて、洋服に着替え直した
あとで政宗さんにドレスのことは伝えておこう、そうすれば明日はタイの色を合わせてくれるはずだ
「こちらのドレスはお嬢様にとって、思い入れのあるドレスであるとお見受け致します」
「そっか、和真さんと出会ったのはこの後だから、ご存知なかったんですね
これは学院時代、初めての学院祭で、後夜祭のダンスパーティーの時に着たものなんです」
クローゼットを閉めてリビングへ降りながら、当時のことを思い出した
なかなかスパルタだったな、竹中先輩とのダンスレッスンは
「用意してくれたのは竹中先輩でしたけど、最後には政宗さんが買い取って、私にプレゼントしてくれたんですよ
あの時、お互いまだパートナーが決まっていなくて……
私は本当に忘れちゃっていて、パートナーを誰にするかなんて決めていなくて、政宗さんは私を誘いたかったけど誘えずにいたらしくて」
「おや、そうだったのですか
政宗様に似つかわしくない奥手ぶりですね」
「あはは、和真さんもそう思います?
私もそう思ったんですよ、てっきり自分と踊れって言い出すかなとか
ジャンケンで決まりそうになったので、私から政宗さんをお誘いしたんですよね
あの時、政宗さんをパートナーに誘えて良かった
淡い初恋が実ることって、あるんですね」
ただ政宗さんとパートナーになれたら嬉しかった
でも、佐助先輩の後押しもあって、ちゃんと政宗さんに思いを伝えることにした
政宗さんは男から言うもんだ、って私に最後まで言わせてくれなかったけど
「……もし、あの時、政宗さんに告白していなかったら、どうなっていたんでしょう」
「お見合いのお話が来るまで、友達以上恋人未満だったかもしれませんね」
紅茶をティーカップに注ぎながら、和真さんが答えた
そういえばお見合いしたなぁ
地獄かってくらい笑いを堪えなきゃいけなかったけど
「人との出会いは一期一会ですから、いつどこで出会うかなど分からないものですが……
お嬢様と政宗様のファーストダンスをこの目で見ることが出来なかったのは、本当に悔やまれます」
「付け焼き刃だったので上手くなかったと思いますよ
今のほうがもう少し……」
「技術の善し悪しではございません
初めて政宗様とダンスを踊られた時の高揚感や緊張感、それに勝る幸福感は、その時だけのものです
大切なひとときを飾ったドレスが、こうしてお嬢様のお手元にあることを、私は喜ばしく思います」
和真さんに言われて思い出す
初めて政宗さんと踊った時のこと
すごくドキドキして、緊張もして……でも周りの視線も気にならないくらい幸せで
「……そうですね
夢のようなひと時だったのは間違いないです」
紅茶を飲みつつそう答え、思い出した甘酸っぱい記憶に頬が熱を持った
そういえばあの時は、ベストカップルになれっていう無茶な指令も出ていたっけ
最初から出来レースみたいなものだったけど……
「あの時、ダンスパーティーのベストカップルに私と政宗さんが選ばれたんですよ
本来、ベストカップルに選ばれたら、女の子の頬に生徒会長がキスしなきゃいけなかったんですけど」
「ほう?」
「政宗さん、相手が私だからって、普通にキスしてきました」
「政宗様らしいですね」
かなり恥ずかしかったけど、それもまた思い出だ
大変なことも多かったけど……楽しかったな、学院生活は
たくさんの出会いもあって、そのどれもが大切で
でも一番は……やっぱり、政宗さんと出会えたことだ
ありがとう、なんてお礼を言うのは、少し照れくさいけれど
でも、私の隣にいるのが政宗さんで良かったって、心からそう思っている
あなたを愛せて良かった
私を愛してくれたのが政宗さんで、本当に良かった
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