29 新年合同初稽古
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世間は正月休みの、一月二日――
「斎藤、軸足がブレてるぞ!
踏み込みが足りん!」
「は、はいぃ!!」
「シゲ!
素振りがダレてるの分かってるな?」
「う、ウッス!!」
「政宗様、右側が隙だらけですぞ!」
「Shit!
俺まで説教はNo thanksだぜ!!」
「そこで死んでるのは誰だ、鬼庭か?
起きろー!」
「お、俺は元々デスクワーク派で……」
「あんだけ銃ぶっぱなす野郎が何言ってんだよ!?」
片倉剣道道場は、新年早々、地獄の様相を呈していた
生きて帰れるのかな、これ……
29 新年合同初稽古
「……し、死ぬ」
道場の床に大の字になって呻く
大学の稽古の時よりスパルタだ……
何よりあの政宗さんが壁にもたれかかって座り込んでいる
みんな喋る元気もなさそうだ
「これはまた見事に屍の山でございますね……」
「おお新倉くん、買い出しを頼んですまんなぁ」
「お気になさらず
お嬢様がお召し上がりになるものでもありますから
皆様、しばらくご休憩ください
昼食をご用意致します」
「メシ……食える気がしない……」
成実の呟きには完全同意だ
疲労が溜まりすぎて、ご飯どころじゃない
もう帰りたい……
「てめぇら、午前中はこれで終いだ
ストレッチして身体を冷やさねぇように気を付けろ」
「ス……ストレッチ……」
よろよろと起き上がって、ストレッチをする
膝が笑ってしまって上手く立てない
「お前、産まれたての小鹿みたいになってるぞ……」
「成実こそ……」
「Hey,綱元
Wake up.」
「……」
「え、綱元死んだ?」
「勝手に殺すな……殺すぞ……」
「疲れすぎて外面取り繕えてねーな」
「綱元先輩が直接的に殺すって言うことあるんだ……」
遠回しにそういう意味を含んだ物言いをすることはよくあるけど
……いや、それはそれでどうかと思う
ぐぐっとアキレス腱を伸ばして、ストレッチもそろそろ終わりに差し掛かった頃
「……アッ」
短い悲鳴を上げて成実が倒れた
その様は藻掻くというより、のたうち回ると表現した方がいいくらいの勢いだ
「し、成実、大丈夫?
まさか……」
「……足攣った……」
「片倉先生ェーッ!!」
なんだって成実が真っ先に倒れなくても!!
絶対最初に倒れるのは私だと思ってたのに!!
「斎藤、何が……」
私の悲鳴で戻ってきた片倉先生が、状況を見て呆れたようにため息をついた
屍と化した綱元先輩は政宗さんが背負っているし、その政宗さんは成実のせいで笑いっぱなしだ
そして私はちょっと笑いながら成実にすがっている
いやもうこんなの、面白くないはずがない
「はっ、真っ先に倒れるのがてめぇとはな
護衛役の風上にも置けねぇってもんだぜ」
「いやこれ相当スパルタだからな……!?
よく動けたなって自分を褒めたいくらいなんだけどな!?」
「おい綱元、政宗様のお手を煩わせるんじゃねぇ
とっとと降りやがれ」
「気にしちゃいねぇよ
元々deskwork typeなんだろ」
「梵、そいつデスクワーク派の皮を被った武闘派だからな、騙されるなよ」
「いつまでお背中に乗ってやがる、自主的に降りねぇってんなら、俺が引きずり下ろしてやってもいいんだぜ?」
「くっ……これだから筋肉バカは……」
「バカって言えるほどこじゅ兄がバカじゃないから、いまいち響かねぇよな……」
片倉先生が成実をうつ伏せに転がしてふくらはぎをマッサージしていく
「あ゛あ゛あ゛あ゛……」という断末魔が情けなく消えていった
ズルズルと政宗さんの背中を滑り落ちた綱元先輩は、遅ればせながらストレッチをしている
成実が復活したのを待って、体が冷えないうちに道場を後にした
向かったのは、道場の隣にある師範のおうち
つまりは片倉先生のご実家だ
「お邪魔します」
玄関で靴を脱いで向きを揃え、洗面所でしっかり手を洗う
それから居間へ入ると、師範の奥さんがこたつでぬくぬくしていた
「あらあらみんな、お疲れ様ぁ」
「直子おばさん!
御無沙汰してますー!」
昔と変わらずおっとりしている直子おばさん
昔ここに通っていた時はよく顔を合わせていたけど、引っ越してからは顔を合わせることもなかった
お元気そうで安心した
「あらあら夕歌ちゃん、大きくなったわねぇ
坊ちゃまとの生活はどう?」
「政宗さん、直子おばさんにまで坊っちゃまって呼ばれてるんですね」
「もう二十歳なんだがな」
「いくつになっても坊っちゃまは坊っちゃまですとも
さあさあみんな、お座りなさいな
いまお茶を出しましょうね」
「あ、手伝いますよ」
「ありがとう成実くん、じゃあお願いしようかしらねぇ」
成実がおばさんと一緒に台所へ向かうのを見送って、私と政宗さんはコタツへ足を突っ込んだ
あったかぁい……
テーブルの上にはみかんも置いてある
手が伸びてしまうのは不可抗力だ
「夕歌様、お昼ご飯をお持ちしますので、みかんは我慢なさって下さいね」
「うっ!」
お箸を並べに来た和真さんにしっかり釘を刺されてしまった
なんでバレたんだ……まだ手に取ってすらいなかったのに……
「斎藤、軸足がブレてるぞ!
踏み込みが足りん!」
「は、はいぃ!!」
「シゲ!
素振りがダレてるの分かってるな?」
「う、ウッス!!」
「政宗様、右側が隙だらけですぞ!」
「Shit!
俺まで説教はNo thanksだぜ!!」
「そこで死んでるのは誰だ、鬼庭か?
起きろー!」
「お、俺は元々デスクワーク派で……」
「あんだけ銃ぶっぱなす野郎が何言ってんだよ!?」
片倉剣道道場は、新年早々、地獄の様相を呈していた
生きて帰れるのかな、これ……
29 新年合同初稽古
「……し、死ぬ」
道場の床に大の字になって呻く
大学の稽古の時よりスパルタだ……
何よりあの政宗さんが壁にもたれかかって座り込んでいる
みんな喋る元気もなさそうだ
「これはまた見事に屍の山でございますね……」
「おお新倉くん、買い出しを頼んですまんなぁ」
「お気になさらず
お嬢様がお召し上がりになるものでもありますから
皆様、しばらくご休憩ください
昼食をご用意致します」
「メシ……食える気がしない……」
成実の呟きには完全同意だ
疲労が溜まりすぎて、ご飯どころじゃない
もう帰りたい……
「てめぇら、午前中はこれで終いだ
ストレッチして身体を冷やさねぇように気を付けろ」
「ス……ストレッチ……」
よろよろと起き上がって、ストレッチをする
膝が笑ってしまって上手く立てない
「お前、産まれたての小鹿みたいになってるぞ……」
「成実こそ……」
「Hey,綱元
Wake up.」
「……」
「え、綱元死んだ?」
「勝手に殺すな……殺すぞ……」
「疲れすぎて外面取り繕えてねーな」
「綱元先輩が直接的に殺すって言うことあるんだ……」
遠回しにそういう意味を含んだ物言いをすることはよくあるけど
……いや、それはそれでどうかと思う
ぐぐっとアキレス腱を伸ばして、ストレッチもそろそろ終わりに差し掛かった頃
「……アッ」
短い悲鳴を上げて成実が倒れた
その様は藻掻くというより、のたうち回ると表現した方がいいくらいの勢いだ
「し、成実、大丈夫?
まさか……」
「……足攣った……」
「片倉先生ェーッ!!」
なんだって成実が真っ先に倒れなくても!!
絶対最初に倒れるのは私だと思ってたのに!!
「斎藤、何が……」
私の悲鳴で戻ってきた片倉先生が、状況を見て呆れたようにため息をついた
屍と化した綱元先輩は政宗さんが背負っているし、その政宗さんは成実のせいで笑いっぱなしだ
そして私はちょっと笑いながら成実にすがっている
いやもうこんなの、面白くないはずがない
「はっ、真っ先に倒れるのがてめぇとはな
護衛役の風上にも置けねぇってもんだぜ」
「いやこれ相当スパルタだからな……!?
よく動けたなって自分を褒めたいくらいなんだけどな!?」
「おい綱元、政宗様のお手を煩わせるんじゃねぇ
とっとと降りやがれ」
「気にしちゃいねぇよ
元々deskwork typeなんだろ」
「梵、そいつデスクワーク派の皮を被った武闘派だからな、騙されるなよ」
「いつまでお背中に乗ってやがる、自主的に降りねぇってんなら、俺が引きずり下ろしてやってもいいんだぜ?」
「くっ……これだから筋肉バカは……」
「バカって言えるほどこじゅ兄がバカじゃないから、いまいち響かねぇよな……」
片倉先生が成実をうつ伏せに転がしてふくらはぎをマッサージしていく
「あ゛あ゛あ゛あ゛……」という断末魔が情けなく消えていった
ズルズルと政宗さんの背中を滑り落ちた綱元先輩は、遅ればせながらストレッチをしている
成実が復活したのを待って、体が冷えないうちに道場を後にした
向かったのは、道場の隣にある師範のおうち
つまりは片倉先生のご実家だ
「お邪魔します」
玄関で靴を脱いで向きを揃え、洗面所でしっかり手を洗う
それから居間へ入ると、師範の奥さんがこたつでぬくぬくしていた
「あらあらみんな、お疲れ様ぁ」
「直子おばさん!
御無沙汰してますー!」
昔と変わらずおっとりしている直子おばさん
昔ここに通っていた時はよく顔を合わせていたけど、引っ越してからは顔を合わせることもなかった
お元気そうで安心した
「あらあら夕歌ちゃん、大きくなったわねぇ
坊ちゃまとの生活はどう?」
「政宗さん、直子おばさんにまで坊っちゃまって呼ばれてるんですね」
「もう二十歳なんだがな」
「いくつになっても坊っちゃまは坊っちゃまですとも
さあさあみんな、お座りなさいな
いまお茶を出しましょうね」
「あ、手伝いますよ」
「ありがとう成実くん、じゃあお願いしようかしらねぇ」
成実がおばさんと一緒に台所へ向かうのを見送って、私と政宗さんはコタツへ足を突っ込んだ
あったかぁい……
テーブルの上にはみかんも置いてある
手が伸びてしまうのは不可抗力だ
「夕歌様、お昼ご飯をお持ちしますので、みかんは我慢なさって下さいね」
「うっ!」
お箸を並べに来た和真さんにしっかり釘を刺されてしまった
なんでバレたんだ……まだ手に取ってすらいなかったのに……
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