20 学祭・本祭
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私は許さない
私達の犠牲の上に成り立つ学祭なんて、認めない!!
20 学祭・本祭
学祭二日目──
「今日も今日とて調理班ですよ!!!」
騒々しい模擬店ゾーンに私の叫びは虚しく消えた
結論から言おう、私の心は荒れている
それはもう嵐の如く大荒れだ
「何が悲しくて初めての学祭で朝から夕方までお好み焼きを焼かなきゃいけないんですか!!
初めての学祭で!!」
「おう」
「学祭二日目、楽しんでいこう!?
誰のおかげで楽しめてると思ってるんですか!!」
「うん」
「私たち伊達組が!!
自由を犠牲にして!!
焼き続けてるおかげですよ!!」
「「本当にな」」
隣二人から死んだような同意の声が聞こえてきた
なにせここ剣道部の模擬店は、味もさることながら、作ってる部員の顔がべらぼうに良いという理由で、更に人が集まってしまっている
おかげでその「顔が良い部員」の従兄弟組とオマケの私は、昨日以上に忙殺されていた
「夕歌ちゃん!
お好み焼き、今日の分のタネはこれが最後だよ!!」
「は!?
まだお昼前ですけど!?」
「昨日も真っ先にお好み焼きが売り切れたよな」
「Fan club効果だろ」
「なんで学院から離れても健在なんですかね」
答えは知っているけれど、問わずにはいられない
じゅわ、と新しいお好み焼きの生地を鉄板に流す
お好み焼きのみならず、たこ焼きも焼きそばも、作ったそばから売れていくので、ひたすら作り続けるしかないのだ
なんという苦行
「完売したら自由時間だから、三人とも頑張って!」
「もう私たちの人数分、全種類買いません?」
「それもありだな」
「おーい、焼きそばとたこ焼きとお好み焼き、三つずつ取り置き!」
「お買い上げありがとうございます!!
四五〇〇円になります!!」
「部員割は?」
「そんなモンはない」
「チッ」
「十五万の領収書を持ってきた奴らが、今更その程度も払えませんなんて……言わないよね?」
マネージャーは大変根に持っていらっしゃった
私は悪くないのに思わず口が「すみません……」と零す
「もうこれから焼くヤツ全部まとめて誰か買ってくんねぇかな
大した金額じゃねぇだろ」
「一パック五百円だからね、決して安くはないからね
君たちの価値基準で判断しないでね」
言い返せない従兄弟組が口を閉ざす
部員のほとんどを売り子に回してしまったものの、それは果たして必要だったのかと疑問に思うほどの盛況ぶりだ
何なら、さっきマネージャーが売り子チームに「もう残り少ないから戻ってきて」と指示をしていたくらいだし
「あ、お好み焼きラスト?」
「ですね!
お願いします!」
ヘラにこびり付いた生地を落として、表のメニュー表のお好み焼きに「完売」の札を貼った
ひと足お先に自由時間と洒落込むか
「お先に失礼しまーす!」
「お疲れ様ー!
はい、お昼ご飯」
取り置きしていた分を受け取って、いつもの場所に向かう
メインのエリアからはかなり離れた敷地内の隅の方、いつか政宗さんと二人でご飯を食べた花の庭園
そこへ顔を出してみると、予想通り誰もいなかった
「……ここはやっぱり静かだな」
ベンチに座って、焼きそばのパックの蓋を開ける
割り箸を割って手を合わせた
「んー、やっぱ政宗さんが作ると、焼きそばも一級品だな」
さて成実が作ったたこ焼きはっと……
うん、安定して美味しい
「まぁ、たこ焼きだもんね
美味しくするにも限界はあるか」
成実が聞いたら「悪かったな、限界でよ!」と拗ねそうだけど、生憎と本人は模擬店の中だ
「そだ、登勢たちも呼んで一緒に食べようかな」
人が多い方がご飯も楽しいよね
……ふと、甘い香りが漂ってきて、顔を上げた
どこから匂ってくるんだろう、すごくいい匂い
でも食べ物もあるし、ここを離れるのはなぁ
香りの元は気になったけれど、そのままここに残ることにした
もうすぐ二人も来るだろうし、その時にまだ香りが続いていたら追い掛けてみよう
「そういえば、私が一人になると決まって和真さんが来てくれるけど、今日は現れないな……」
言いたくはないけど、私はこんなんでも命を狙われている
一人にしておくのは危ないからと、必ず誰かがそばに居てくれるのに、今日に限って誰もいない
「うーん……
久しぶりのおひとり様は、怒られそうだけど気分がいいなー」
あっという間に焼きそばを平らげて、たこ焼きを口に入れる
多分これ、五百円では何の元も採れないよな……
材料費が十五万円だからな……
私達の犠牲の上に成り立つ学祭なんて、認めない!!
20 学祭・本祭
学祭二日目──
「今日も今日とて調理班ですよ!!!」
騒々しい模擬店ゾーンに私の叫びは虚しく消えた
結論から言おう、私の心は荒れている
それはもう嵐の如く大荒れだ
「何が悲しくて初めての学祭で朝から夕方までお好み焼きを焼かなきゃいけないんですか!!
初めての学祭で!!」
「おう」
「学祭二日目、楽しんでいこう!?
誰のおかげで楽しめてると思ってるんですか!!」
「うん」
「私たち伊達組が!!
自由を犠牲にして!!
焼き続けてるおかげですよ!!」
「「本当にな」」
隣二人から死んだような同意の声が聞こえてきた
なにせここ剣道部の模擬店は、味もさることながら、作ってる部員の顔がべらぼうに良いという理由で、更に人が集まってしまっている
おかげでその「顔が良い部員」の従兄弟組とオマケの私は、昨日以上に忙殺されていた
「夕歌ちゃん!
お好み焼き、今日の分のタネはこれが最後だよ!!」
「は!?
まだお昼前ですけど!?」
「昨日も真っ先にお好み焼きが売り切れたよな」
「Fan club効果だろ」
「なんで学院から離れても健在なんですかね」
答えは知っているけれど、問わずにはいられない
じゅわ、と新しいお好み焼きの生地を鉄板に流す
お好み焼きのみならず、たこ焼きも焼きそばも、作ったそばから売れていくので、ひたすら作り続けるしかないのだ
なんという苦行
「完売したら自由時間だから、三人とも頑張って!」
「もう私たちの人数分、全種類買いません?」
「それもありだな」
「おーい、焼きそばとたこ焼きとお好み焼き、三つずつ取り置き!」
「お買い上げありがとうございます!!
四五〇〇円になります!!」
「部員割は?」
「そんなモンはない」
「チッ」
「十五万の領収書を持ってきた奴らが、今更その程度も払えませんなんて……言わないよね?」
マネージャーは大変根に持っていらっしゃった
私は悪くないのに思わず口が「すみません……」と零す
「もうこれから焼くヤツ全部まとめて誰か買ってくんねぇかな
大した金額じゃねぇだろ」
「一パック五百円だからね、決して安くはないからね
君たちの価値基準で判断しないでね」
言い返せない従兄弟組が口を閉ざす
部員のほとんどを売り子に回してしまったものの、それは果たして必要だったのかと疑問に思うほどの盛況ぶりだ
何なら、さっきマネージャーが売り子チームに「もう残り少ないから戻ってきて」と指示をしていたくらいだし
「あ、お好み焼きラスト?」
「ですね!
お願いします!」
ヘラにこびり付いた生地を落として、表のメニュー表のお好み焼きに「完売」の札を貼った
ひと足お先に自由時間と洒落込むか
「お先に失礼しまーす!」
「お疲れ様ー!
はい、お昼ご飯」
取り置きしていた分を受け取って、いつもの場所に向かう
メインのエリアからはかなり離れた敷地内の隅の方、いつか政宗さんと二人でご飯を食べた花の庭園
そこへ顔を出してみると、予想通り誰もいなかった
「……ここはやっぱり静かだな」
ベンチに座って、焼きそばのパックの蓋を開ける
割り箸を割って手を合わせた
「んー、やっぱ政宗さんが作ると、焼きそばも一級品だな」
さて成実が作ったたこ焼きはっと……
うん、安定して美味しい
「まぁ、たこ焼きだもんね
美味しくするにも限界はあるか」
成実が聞いたら「悪かったな、限界でよ!」と拗ねそうだけど、生憎と本人は模擬店の中だ
「そだ、登勢たちも呼んで一緒に食べようかな」
人が多い方がご飯も楽しいよね
……ふと、甘い香りが漂ってきて、顔を上げた
どこから匂ってくるんだろう、すごくいい匂い
でも食べ物もあるし、ここを離れるのはなぁ
香りの元は気になったけれど、そのままここに残ることにした
もうすぐ二人も来るだろうし、その時にまだ香りが続いていたら追い掛けてみよう
「そういえば、私が一人になると決まって和真さんが来てくれるけど、今日は現れないな……」
言いたくはないけど、私はこんなんでも命を狙われている
一人にしておくのは危ないからと、必ず誰かがそばに居てくれるのに、今日に限って誰もいない
「うーん……
久しぶりのおひとり様は、怒られそうだけど気分がいいなー」
あっという間に焼きそばを平らげて、たこ焼きを口に入れる
多分これ、五百円では何の元も採れないよな……
材料費が十五万円だからな……
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