11 夏の夜空に咲く花・後
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浴衣を着て、いざ花火大会へ
久しぶりの花火とお祭り、めいっぱい楽しむぞ!
11 夏の夜空に咲く花・後
カラコロカラコロ、人数分の下駄が鳴る
会場の中は人で溢れかえって、あちらこちらから屋台の美味しい匂いが漂ってきた
「お祭りだ……!」
「祭りだな」
私の当たり前すぎる感想に、政宗さんが合わせてきた
と思うと、誰かが私の肩を押して
「はぐれねぇように、梵とくっついとけよ」
「な、なっ……!?」
「大丈夫だって、登勢も俺にピッタリくっついてるから」
「ここ、毎年かなりの迷子が出てるから、夕歌も気を付けてね?」
「……さては登勢も迷子になった事があるな?」
「ご想像にお任せします」
「肯定じゃん」
会場に着いてからは、かすがとは別行動──とはならず
不意にぽんと肩に誰かの手が触れた
雪のように冷たく、ひんやりとした細い指
「おひさしぶりですね、いんのはな」
「わわ、上杉先生……!」
「アンタ──」
政宗さんまでもが驚いたように目を見開いて、上杉先生を見つめていた
上杉先生は、浴衣を着ていて──きっと男性用だとは思うんだけど
「どくがんりゅうとも、むつまじくしているようですね」
「え、あ、あはは……」
「ふふ……関関雎鳩
けれど──はなよ」
「はい」
「どくがんりゅうは、たしかにさとい
それゆえに、そなたがなにをいわずとも、そなたのこころをはかるでしょう
ですが……それではいけません」
「………」
「ことばにすることも、ときにはひつようということです
おぼえておきなさい」
言葉にすること……
私が思わず黙り込んでしまうと、上杉先生は「ほほ」と口に手を当てて、上品に笑い声を上げた
「むろん、そなたにももうしているのですよ、どくがんりゅう」
「チッ……アンタ、昔っからそうだったな
俺たちの腹ん中を見透かしたように当ててきやがる」
「ふ、ふ……」
ころころと笑った上杉先生が、かすがを伴って人混みの中へ消えていく
その姿を見送って、私たちは顔を見合せた
「結局……上杉先生って、何者なんだろう……」
どこか俗世離れしている人だとは思っていたけど、教訓めいたことをおっしゃるとは
──ことばにすることも、ときにはひつようということです
言葉にすること……
もしかして、あの日のこと?
……私は、叔父に会った日のことを政宗さんに話したわけではない
かすがと和真さんからの過去の話から、政宗さん達が推測しただけ
それが大当たりしているんだから、私も「そうだ」とも「違う」とも言えなくて
「……おい、夕歌」
「ふぁっ!?」
「ぼーっとすんな、はぐれるぞ」
「す、すみません……」
「ったく……で?
どれがいいんだ?」
「どれとは?」
「話も聞いてなかったってのか
食いたいやつがあれば言えって言ったんだ」
「え!!
あ、はい……!
えっと、それじゃあ──」
いくつか食べたいものを挙げて、政宗さんがその度に屋台に足を留めてくれる
私が食べたいもの、政宗さんが気になったもの
そうやって並んで屋台を歩いて気付いたことは
「Hey,honey.
金魚すくいってなんだ?」
「そのままの意味ですよ、ポイで金魚をイケスの中から掬うんです」
「ポイ?」
「紙が貼られたものなんですけど……」
「……破れねぇのか?」
「素早さが求められる遊びなんです」
「なるほど……
で、掬った金魚は?」
「持って帰れますよ
そのまま自宅で飼うんです」
ほぉ、と政宗さんの目が少年のように輝いた気がする
……そう、政宗さん、実は庶民の遊びをあまり知らない
育った環境のせいではあるけれど、こう見えてちょっと箱入りの気があるわけだ
「お前はやったことあるのか?」
「むかーし、ちっちゃい頃に一度だけ
すぐに破れちゃって、お店のおじさんが一匹だけサービスでくれて……」
それから、我が家の部屋に小さな水槽が出来て
私とお父さんで、毎週末に水槽を掃除してたっけ
残念ながら、私が中学に上がる前に死んじゃったけど
「……やるか」
「やるんですか」
「面白そうじゃねぇか」
「金魚どうするんですか?」
「飼う」
「飼うんだ……」
水槽、買わなきゃ……そうだ
こういう時は片倉先生に……
政宗さんが金魚すくいの方へ歩いていくのについて行きながら、片倉先生へLEINを入れる
「政宗さんが金魚すくいに張り切ってしまったので、金魚用の飼育セット一式お願いします
……これでよしっと」
さて、それじゃあ政宗さんの実力を見せてもらおうじゃないの!
久しぶりの花火とお祭り、めいっぱい楽しむぞ!
11 夏の夜空に咲く花・後
カラコロカラコロ、人数分の下駄が鳴る
会場の中は人で溢れかえって、あちらこちらから屋台の美味しい匂いが漂ってきた
「お祭りだ……!」
「祭りだな」
私の当たり前すぎる感想に、政宗さんが合わせてきた
と思うと、誰かが私の肩を押して
「はぐれねぇように、梵とくっついとけよ」
「な、なっ……!?」
「大丈夫だって、登勢も俺にピッタリくっついてるから」
「ここ、毎年かなりの迷子が出てるから、夕歌も気を付けてね?」
「……さては登勢も迷子になった事があるな?」
「ご想像にお任せします」
「肯定じゃん」
会場に着いてからは、かすがとは別行動──とはならず
不意にぽんと肩に誰かの手が触れた
雪のように冷たく、ひんやりとした細い指
「おひさしぶりですね、いんのはな」
「わわ、上杉先生……!」
「アンタ──」
政宗さんまでもが驚いたように目を見開いて、上杉先生を見つめていた
上杉先生は、浴衣を着ていて──きっと男性用だとは思うんだけど
「どくがんりゅうとも、むつまじくしているようですね」
「え、あ、あはは……」
「ふふ……
けれど──はなよ」
「はい」
「どくがんりゅうは、たしかにさとい
それゆえに、そなたがなにをいわずとも、そなたのこころをはかるでしょう
ですが……それではいけません」
「………」
「ことばにすることも、ときにはひつようということです
おぼえておきなさい」
言葉にすること……
私が思わず黙り込んでしまうと、上杉先生は「ほほ」と口に手を当てて、上品に笑い声を上げた
「むろん、そなたにももうしているのですよ、どくがんりゅう」
「チッ……アンタ、昔っからそうだったな
俺たちの腹ん中を見透かしたように当ててきやがる」
「ふ、ふ……」
ころころと笑った上杉先生が、かすがを伴って人混みの中へ消えていく
その姿を見送って、私たちは顔を見合せた
「結局……上杉先生って、何者なんだろう……」
どこか俗世離れしている人だとは思っていたけど、教訓めいたことをおっしゃるとは
──ことばにすることも、ときにはひつようということです
言葉にすること……
もしかして、あの日のこと?
……私は、叔父に会った日のことを政宗さんに話したわけではない
かすがと和真さんからの過去の話から、政宗さん達が推測しただけ
それが大当たりしているんだから、私も「そうだ」とも「違う」とも言えなくて
「……おい、夕歌」
「ふぁっ!?」
「ぼーっとすんな、はぐれるぞ」
「す、すみません……」
「ったく……で?
どれがいいんだ?」
「どれとは?」
「話も聞いてなかったってのか
食いたいやつがあれば言えって言ったんだ」
「え!!
あ、はい……!
えっと、それじゃあ──」
いくつか食べたいものを挙げて、政宗さんがその度に屋台に足を留めてくれる
私が食べたいもの、政宗さんが気になったもの
そうやって並んで屋台を歩いて気付いたことは
「Hey,honey.
金魚すくいってなんだ?」
「そのままの意味ですよ、ポイで金魚をイケスの中から掬うんです」
「ポイ?」
「紙が貼られたものなんですけど……」
「……破れねぇのか?」
「素早さが求められる遊びなんです」
「なるほど……
で、掬った金魚は?」
「持って帰れますよ
そのまま自宅で飼うんです」
ほぉ、と政宗さんの目が少年のように輝いた気がする
……そう、政宗さん、実は庶民の遊びをあまり知らない
育った環境のせいではあるけれど、こう見えてちょっと箱入りの気があるわけだ
「お前はやったことあるのか?」
「むかーし、ちっちゃい頃に一度だけ
すぐに破れちゃって、お店のおじさんが一匹だけサービスでくれて……」
それから、我が家の部屋に小さな水槽が出来て
私とお父さんで、毎週末に水槽を掃除してたっけ
残念ながら、私が中学に上がる前に死んじゃったけど
「……やるか」
「やるんですか」
「面白そうじゃねぇか」
「金魚どうするんですか?」
「飼う」
「飼うんだ……」
水槽、買わなきゃ……そうだ
こういう時は片倉先生に……
政宗さんが金魚すくいの方へ歩いていくのについて行きながら、片倉先生へLEINを入れる
「政宗さんが金魚すくいに張り切ってしまったので、金魚用の飼育セット一式お願いします
……これでよしっと」
さて、それじゃあ政宗さんの実力を見せてもらおうじゃないの!
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