第四十五話 永別
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森川家に戻ってきて早一週間
向こうは春だったけど、こっちは時間の流れが早くて、秋も深まった頃
季節的には、みんなもう学校真っ盛り
そんな中、私はというと、高校に退学届を出して、今はひたすら敵の攻略をしている
次は、徳川との戦……
以前の家康であれば、兄様でも勝てただろう
でも、今の家康は……
双竜で向かえば問題はないだろうけど、本多忠勝を相手にするのは私と三傑
もしそこで小十郎さんが負傷すれば、伊達軍の勝利は危うくなりかねない
そして、徳川を倒したらいよいよ豊臣……
大物との連戦か……
それに、仮に秀吉を倒したとして
絶対に石田三成が黙っていないはず
先手を打たれる前に、こちらも手を打っておかなければ
杞憂で終わればいいけど……
まあ、準備をするに越したことはないよね
絶対条件として、雑賀衆と手を組む
これは必要だ
兄様に確認をとってからにはなるけれど、雑賀衆の戦力を味方につけられれば、一気にこちら側に勝機が傾く
それから伊予河野の鶴姫ともできれば話をしたいところだな……
うん、ひとまず天海とか金吾とかは置いておくとして
「……刑部がなぁ……
何も起こさないといいけど……」
ああもう、3は問題ばっかり起きすぎ
でも大体敵の特徴はつかめたし、上出来か
あとは向こうに戻って……
「戻る、か……」
そろそろ戻ったほうがいいのは分かってる
一週間も鍛錬を放ったらかしてるのはまずいし、みんなだって心配してる
……けど
もう血を浴びたくないと私の心が叫んでいた
ほっとしてしまったんだ、ここに戻ってきて
今ここで帰らなくても、成実さんたちはきっと私を恨んだりしない
それが私の選んだ答えなら、と受け入れるだろう
でも、本当にここにいていいのかな
私が本当にいるべきなのは、やっぱり向こうの世界なんだと思う
成実さん……私は、どうしたら──
* * *
「あなた、いつ向こうに帰るの?」
その日の夕食の時、お母さんにそう尋ねられた
「いつ……って」
「もうそろそろ帰らなきゃいけないんじゃないの?
もうすぐ徳川と戦なんでしょう……?」
「え……
何で、知ってるの……?」
「ずっと呟いてたわよ
次は徳川とか……って」
夕飯を食べる手を止めた
二人の瞳は、あの頃と変わらない
私が平和に暮らしていた頃と……
「……怖くないの?
目の前に、何百人と人を殺してきたやつがいて」
「それが他人だったら怖いわよ
でもね、あなただったら怖くない
むしろ無事でいてくれたことにほっとしてる」
「……お父さんも?」
お父さんは、黙って頷いてくれた
「未練はあるのか?」
「……ない
私、決めたの、もう逃げないって
自分で決めたことなら、ちゃんと最後までその意志を貫くって
だから……戦うよ
戦って戦って……絶対に平和にしてみせる」
二人は、頼もしい者を見るような、そんな目だった
「夕飯は食べて帰りなさい
最後の晩餐にしては質素すぎるけど」
「ううん
こういうのが一番だと思うよ」
一年前と何も変わらないお母さんの手料理
もう食べられないのが残念だけど、私の好物が食べられただけで幸せだ
──夕飯を食べて、胃の消化を待って落ち着いてから
私は、洋服から小袖に着替えた
「向こうに持っていくものは?」
「ううん、大丈夫」
「お前、制服はどうしたんだ?」
「……多分、青葉城にある、と思う」
「今は青葉城に住んでないの?」
「今は大森城に住んでるの
成実さんと一緒に」
「成実……まさか成実公か?
あの、伊達の双璧の?」
「お父さん、ちゃんと綱元さんも入れてあげなきゃ
伊達は三傑が揃わないと駄目なんだから」
「そう……そうだな」
「それにしても、どうして成実公と住んでるのよ?」
「私ね、兄様が天下を統一したら……成実さんの正室になるの」
「え……えぇ!?」
「成実公のご正室に!?」
「ちゃんと兄様にお許しもいただいてるからね?」
「……本当に、私達の世界の歴史とは大きく異なってるのね……」
「ふふ、そうだよ」
もう一度、私の部屋を見渡して
それから二人に向き直った
「それじゃあ……
今まで、本当にありがとう」
「幸せになりなさい」
「政宗様と景綱公と成実公……綱元公にもよろしく頼む」
「うん、伝えとく」
お父さんとお母さんと、二言三言言葉を交わして
「二人とも、元気でね……」
それだけを残して、私は
あの世界へ帰りたいと強く願った
私が生きるべき乱世、私の生まれたあの愛しい奥州へ──
瞼の裏にまで入ってくる光、色んなものが遠ざかっていく
……成実さん
もうすぐ、帰りますね……
向こうは春だったけど、こっちは時間の流れが早くて、秋も深まった頃
季節的には、みんなもう学校真っ盛り
そんな中、私はというと、高校に退学届を出して、今はひたすら敵の攻略をしている
次は、徳川との戦……
以前の家康であれば、兄様でも勝てただろう
でも、今の家康は……
双竜で向かえば問題はないだろうけど、本多忠勝を相手にするのは私と三傑
もしそこで小十郎さんが負傷すれば、伊達軍の勝利は危うくなりかねない
そして、徳川を倒したらいよいよ豊臣……
大物との連戦か……
それに、仮に秀吉を倒したとして
絶対に石田三成が黙っていないはず
先手を打たれる前に、こちらも手を打っておかなければ
杞憂で終わればいいけど……
まあ、準備をするに越したことはないよね
絶対条件として、雑賀衆と手を組む
これは必要だ
兄様に確認をとってからにはなるけれど、雑賀衆の戦力を味方につけられれば、一気にこちら側に勝機が傾く
それから伊予河野の鶴姫ともできれば話をしたいところだな……
うん、ひとまず天海とか金吾とかは置いておくとして
「……刑部がなぁ……
何も起こさないといいけど……」
ああもう、3は問題ばっかり起きすぎ
でも大体敵の特徴はつかめたし、上出来か
あとは向こうに戻って……
「戻る、か……」
そろそろ戻ったほうがいいのは分かってる
一週間も鍛錬を放ったらかしてるのはまずいし、みんなだって心配してる
……けど
もう血を浴びたくないと私の心が叫んでいた
ほっとしてしまったんだ、ここに戻ってきて
今ここで帰らなくても、成実さんたちはきっと私を恨んだりしない
それが私の選んだ答えなら、と受け入れるだろう
でも、本当にここにいていいのかな
私が本当にいるべきなのは、やっぱり向こうの世界なんだと思う
成実さん……私は、どうしたら──
* * *
「あなた、いつ向こうに帰るの?」
その日の夕食の時、お母さんにそう尋ねられた
「いつ……って」
「もうそろそろ帰らなきゃいけないんじゃないの?
もうすぐ徳川と戦なんでしょう……?」
「え……
何で、知ってるの……?」
「ずっと呟いてたわよ
次は徳川とか……って」
夕飯を食べる手を止めた
二人の瞳は、あの頃と変わらない
私が平和に暮らしていた頃と……
「……怖くないの?
目の前に、何百人と人を殺してきたやつがいて」
「それが他人だったら怖いわよ
でもね、あなただったら怖くない
むしろ無事でいてくれたことにほっとしてる」
「……お父さんも?」
お父さんは、黙って頷いてくれた
「未練はあるのか?」
「……ない
私、決めたの、もう逃げないって
自分で決めたことなら、ちゃんと最後までその意志を貫くって
だから……戦うよ
戦って戦って……絶対に平和にしてみせる」
二人は、頼もしい者を見るような、そんな目だった
「夕飯は食べて帰りなさい
最後の晩餐にしては質素すぎるけど」
「ううん
こういうのが一番だと思うよ」
一年前と何も変わらないお母さんの手料理
もう食べられないのが残念だけど、私の好物が食べられただけで幸せだ
──夕飯を食べて、胃の消化を待って落ち着いてから
私は、洋服から小袖に着替えた
「向こうに持っていくものは?」
「ううん、大丈夫」
「お前、制服はどうしたんだ?」
「……多分、青葉城にある、と思う」
「今は青葉城に住んでないの?」
「今は大森城に住んでるの
成実さんと一緒に」
「成実……まさか成実公か?
あの、伊達の双璧の?」
「お父さん、ちゃんと綱元さんも入れてあげなきゃ
伊達は三傑が揃わないと駄目なんだから」
「そう……そうだな」
「それにしても、どうして成実公と住んでるのよ?」
「私ね、兄様が天下を統一したら……成実さんの正室になるの」
「え……えぇ!?」
「成実公のご正室に!?」
「ちゃんと兄様にお許しもいただいてるからね?」
「……本当に、私達の世界の歴史とは大きく異なってるのね……」
「ふふ、そうだよ」
もう一度、私の部屋を見渡して
それから二人に向き直った
「それじゃあ……
今まで、本当にありがとう」
「幸せになりなさい」
「政宗様と景綱公と成実公……綱元公にもよろしく頼む」
「うん、伝えとく」
お父さんとお母さんと、二言三言言葉を交わして
「二人とも、元気でね……」
それだけを残して、私は
あの世界へ帰りたいと強く願った
私が生きるべき乱世、私の生まれたあの愛しい奥州へ──
瞼の裏にまで入ってくる光、色んなものが遠ざかっていく
……成実さん
もうすぐ、帰りますね……
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