第四十四話 翹望
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夕華が前の世界に戻ってから丸一日が経った
あの後、家臣たちに夕華が実家に戻ったことを説明した
愛想を尽かされたのではだの何だの、ごちゃごちゃ言ってたけどなんとかごまかした
尽かされる……ね
まぁ、あいつが戻ってこなかったら尽かされた……んだろう、多分
「その時にならねぇと分かんねーっつの」
持っていた筆をくるりと指で回して、俺はそう呟いた
しかし……
「さて……
あの妹馬鹿になんて言い訳するかな……」
そう
未だに良いごまかし方が出てこないのだ
実家に帰ったって説明して、その実家に本人がいないんだからその手の誤魔化しは無理
つか実家が青葉城って時点でこの誤魔化しは駄目
だってな……
夕華が異世界から飛んできたって知ってるのは、梵と三傑と原田くらいだからな
あと喜多姉ちゃん
しかもその秘密を知ってる六人のうち五人は青葉城
どうしよう
俺、本家から殴られるかもしんない
っつか梵に殺されるかも……
「夕華……
頼むから戻ってきてくれ……」
あんだけ言っておきながらなんですけども
戻ってきてくれないと、俺に死亡ふらぐってやつが立っちゃうらしい
……ふらぐってなんだろう
まあいいか
死の危険が迫ってるのは明白だからな……
「はぁ……」
まぁ、いっそありのままの事実を伝えたほうが危険度は減るか……
死の危険を冒してってことにはなるけど……
そこまで考えて、ふとふと気付いた
「……つか、ん?」
あいつ、何で急に帰りたいとか言い出したんだ?
今までそんなそぶりなかったよな?
急に育ての親が恋しくなった?
いやいや、でも今さら?
普通はこっちに来てすぐくらいじゃねぇか?
もう一年は経つぞ?
「……もしかして、家康の情報収集?
そういやあいつ……武将に関してはやたらと知ってたような……」
まぁ、考えても分からないし、理由は夕華のみぞ知るってやつだし
「おーい」
「はっ」
「お茶淹れてくれ」
「承知」
小姓に命じて茶を持ってこさせる
結局、梵に対してはありのままの事実を伝えることにした
いろいろ考えてたらそっちの方が無難な気がしてきた
夕華が実家に帰りたいって言ってた理由は、何となく分かった気がする
的外れかもしれないけど、今は納得できる理由が欲しかった
第一、あいつは婆裟羅者だったって分かった時も、大して驚きもしなかった
むしろ戦に出なきゃいけねぇのかっていうことを気にしてた
つまり、あいつはバサラの存在は知ってた
そしてもう一つ
あいつの世界の武将と、俺たちの世界の武将は、名前とか家柄とか、そういうのは一緒だった
けどあいつの世界の武将は、バサラなんて持ってないわけで
じゃあなんであいつはこっちの世界の武将たちを知ってたんだろうか
こっちの武将たちに会っても、混乱してるふうもなくて、むしろはしゃいでた
まあ、中には知らなかった奴もいたみてぇだけど
長曾我部三兄弟の次男と三男は、初めて名前を聞いたらしい
「……いろいろ謎だな」
そういや、向こうの世界で住んでた森川家ってのは、伊達家の分家筋だったんだっけ
まぁ分家なんていっぱいあって、どこの分家か分かんねぇけど
あんまり本家と絡みがないってくらいだからな
「頭痛い……」
難しいこと考え過ぎた……
もともと梵並みの頭しか持ってないんだから当然か
とりあえず今は徳川戦に向けて準備するのが先だ
茶を飲み終えた俺は、部屋にある長槍を持って、俺は鍛錬場に向かうことにした
* * *
「──殿、安房殿より文が」
原田がそう言って俺に文を差し出した
俺の背後で「成実がか?」と小十郎が怪訝な声を出す
まぁ、あいつの場合は文を出すより自分からこっちにやってくるからな……
早馬で届けられたというその文を受け取る
あいつが文とは珍しい──それに早馬とは、穏やかじゃなさそうだ
中を開けると、そこには
「……Ah?」
「いかがなされた?」
「夕華が……前の世界に帰った」
「は……それは、真で?」
「あいつが帰りたいと言ったそうだ」
俄には信じがたい
「I can't believe……夕華、何が……?」
「ですが……夕華様も人の子です
育ての親や、お育ちになられた世界が恋しくなっても不思議では……」
「今になってか?
homesickになるんなら、もっと前じゃねぇのか
夕華がここにきてもうすぐ一年だぞ」
「確かに、妙ではありますが……
成実はなんと?」
「本人は戻ってくる気がある、らしい
今川戦あたりから様子がおかしかったそうだ」
「今川戦から……そうでしたか」
気付かなかった己を恨みたい
頼む……帰ってきてくれ
俺に残された……最後の──
あの後、家臣たちに夕華が実家に戻ったことを説明した
愛想を尽かされたのではだの何だの、ごちゃごちゃ言ってたけどなんとかごまかした
尽かされる……ね
まぁ、あいつが戻ってこなかったら尽かされた……んだろう、多分
「その時にならねぇと分かんねーっつの」
持っていた筆をくるりと指で回して、俺はそう呟いた
しかし……
「さて……
あの妹馬鹿になんて言い訳するかな……」
そう
未だに良いごまかし方が出てこないのだ
実家に帰ったって説明して、その実家に本人がいないんだからその手の誤魔化しは無理
つか実家が青葉城って時点でこの誤魔化しは駄目
だってな……
夕華が異世界から飛んできたって知ってるのは、梵と三傑と原田くらいだからな
あと喜多姉ちゃん
しかもその秘密を知ってる六人のうち五人は青葉城
どうしよう
俺、本家から殴られるかもしんない
っつか梵に殺されるかも……
「夕華……
頼むから戻ってきてくれ……」
あんだけ言っておきながらなんですけども
戻ってきてくれないと、俺に死亡ふらぐってやつが立っちゃうらしい
……ふらぐってなんだろう
まあいいか
死の危険が迫ってるのは明白だからな……
「はぁ……」
まぁ、いっそありのままの事実を伝えたほうが危険度は減るか……
死の危険を冒してってことにはなるけど……
そこまで考えて、ふとふと気付いた
「……つか、ん?」
あいつ、何で急に帰りたいとか言い出したんだ?
今までそんなそぶりなかったよな?
急に育ての親が恋しくなった?
いやいや、でも今さら?
普通はこっちに来てすぐくらいじゃねぇか?
もう一年は経つぞ?
「……もしかして、家康の情報収集?
そういやあいつ……武将に関してはやたらと知ってたような……」
まぁ、考えても分からないし、理由は夕華のみぞ知るってやつだし
「おーい」
「はっ」
「お茶淹れてくれ」
「承知」
小姓に命じて茶を持ってこさせる
結局、梵に対してはありのままの事実を伝えることにした
いろいろ考えてたらそっちの方が無難な気がしてきた
夕華が実家に帰りたいって言ってた理由は、何となく分かった気がする
的外れかもしれないけど、今は納得できる理由が欲しかった
第一、あいつは婆裟羅者だったって分かった時も、大して驚きもしなかった
むしろ戦に出なきゃいけねぇのかっていうことを気にしてた
つまり、あいつはバサラの存在は知ってた
そしてもう一つ
あいつの世界の武将と、俺たちの世界の武将は、名前とか家柄とか、そういうのは一緒だった
けどあいつの世界の武将は、バサラなんて持ってないわけで
じゃあなんであいつはこっちの世界の武将たちを知ってたんだろうか
こっちの武将たちに会っても、混乱してるふうもなくて、むしろはしゃいでた
まあ、中には知らなかった奴もいたみてぇだけど
長曾我部三兄弟の次男と三男は、初めて名前を聞いたらしい
「……いろいろ謎だな」
そういや、向こうの世界で住んでた森川家ってのは、伊達家の分家筋だったんだっけ
まぁ分家なんていっぱいあって、どこの分家か分かんねぇけど
あんまり本家と絡みがないってくらいだからな
「頭痛い……」
難しいこと考え過ぎた……
もともと梵並みの頭しか持ってないんだから当然か
とりあえず今は徳川戦に向けて準備するのが先だ
茶を飲み終えた俺は、部屋にある長槍を持って、俺は鍛錬場に向かうことにした
* * *
「──殿、安房殿より文が」
原田がそう言って俺に文を差し出した
俺の背後で「成実がか?」と小十郎が怪訝な声を出す
まぁ、あいつの場合は文を出すより自分からこっちにやってくるからな……
早馬で届けられたというその文を受け取る
あいつが文とは珍しい──それに早馬とは、穏やかじゃなさそうだ
中を開けると、そこには
「……Ah?」
「いかがなされた?」
「夕華が……前の世界に帰った」
「は……それは、真で?」
「あいつが帰りたいと言ったそうだ」
俄には信じがたい
「I can't believe……夕華、何が……?」
「ですが……夕華様も人の子です
育ての親や、お育ちになられた世界が恋しくなっても不思議では……」
「今になってか?
homesickになるんなら、もっと前じゃねぇのか
夕華がここにきてもうすぐ一年だぞ」
「確かに、妙ではありますが……
成実はなんと?」
「本人は戻ってくる気がある、らしい
今川戦あたりから様子がおかしかったそうだ」
「今川戦から……そうでしたか」
気付かなかった己を恨みたい
頼む……帰ってきてくれ
俺に残された……最後の──
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