第四十一話 継承
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奥州──
仙台から少し離れたところに、その城はある
伊達実元居城・大森城
青葉城として親しまれている仙台城とは、華やかさは劣るものの
いかにもという城構えは、大森城下の人々から親しまれている
そして、この大森城は、新しい城主を迎えようとしていた
伊達実元嫡男
──伊達藤五郎成実
伊達三傑・伊達の双璧の一人、「武の伊達成実」として名を馳せる者──
* * *
「成実さん、入りますね?」
一言声をかけて、障子を開ける
「夕華か……」
成実さんの顔は、硬直していた
見るからに「緊張してます」って顔だなぁ
戦の前だって、ここまで緊張した成実さんは見たことがないのに
「……成実さん、表情が硬いです」
「おう……」
「リラックスしましょう、リラックス」
「俺ぁ南蛮語分かんねえんだよ」
「落ち着いてくださいって意味です
はい、深呼吸」
「……ダメだ余計緊張してきた……」
しまった、逆効果だったか……
そりゃあまぁ、家督を継ぐってことは相当のプレッシャーだとは思うし
大森伊達家の繁栄も、成実さんにかかっているところはある
……でも、それすらも糧にして前に進むのが、私の知っている伊達成実だ
「っもう!
いつも通りにいけばいいんですよ!
なんで戦の時はあんなに余裕なのに、こんな時はがちがちなんですか?」
「俺にもよく分かんねぇ」
うん……
成実さん、ものすごく緊張してらっしゃいますね
動きが固いと言うか、油の足りていないロボットのようというか……
このままだと、歩行時に手と足が同時に出かねないな……
どうしようか……
「えーっと……違うことを考えてみたり……」
黙り込んだままの成実さんが、私をじっと見下ろした
「……ん?
どうしました?
喜多さんにお召し替えを手伝ってもらったので、おかしいところはないはずですけど」
私の格好は、儀礼用の着物だ
大森に移るときに一緒に持ってきたもので、本家に居たときも、新年の儀やらのお祝い事でしか着たことがない
ちょっと新鮮だったりするのかな?
……ていうか、もしかして成実さん、この着物を着た私を見るの自体、初めてなんじゃ……
「成実さん?」
「……夕華」
「はい」
「愛してる」
耳元に成実さんの口が寄せられたかと思うと、低い声でそう囁かれ、一瞬で頭が真っ白になった
何を言われるかと思ったら……予想の遥か斜め上で……びっくりだ
「ぷッ……呆けた顔」
「ちょっ……!
だって今のは成実さんが!」
「あーはいはい
文句は式が終わってからな」
唇に触れるだけのキスをして、成実さんは至極ご満悦な顔をしていた
緊張は解れてくれたみたいだけど、なんだろう……納得がいかないこの気持ち……
「……成実さん、私で遊ばないでくださいね」
「遊んでねーだろ、俺の緊張も解れたし」
「今それを言う必要がありました!?」
「俺は思ったことはその場で言うタイプだからな
お前も知ってるだろ」
「……知ってますけど」
それはもう身をもって知ってるけど
成実さんとの付き合いも、何だかんだあと二、三ヶ月で一年になる
そっか……私がこの世界に帰ってきて、もう少しで一年なんだ
思ったよりも早くこの世界に順応できたのも、きっと私がこの世界で生まれたからだろう
……それでも、機械も電気も何もないこの世界で生きていくのは、思った以上に大変だったけど
私が生きていけたのも、やっぱり成実さん……そして本家のみんなのお陰だ
「姫様」
お部屋の外から、侍女が私を呼ぶ
それに返事をして、成実さんを見つめた
「ほら、もうすぐ始まるだろ
もう行けよ
遅れたら恥ずかしいぞー?」
「はい、広間で待ってます
式が終わった後で、成実さんに抱きつきに行きますね!」
「可愛いこと言ってくれるじゃねえか
そんときゃ思いっきり抱き締めてやるよ」
とんでもなく恥ずかしい会話だったけれど、嬉しかったりもする
最後の調整がある成実さんに手を振って、侍女と控えていた喜多さんを伴って広間へと向かう
事実上、成実さんの正室のような立場なので、必ず喜多さんか侍女を連れて歩かなければならないのだ
お姫様……奥方様って大変だ、なんて思ったこともあるけど、慣れてしまえばそうでもない
……さてさて、それじゃあ、成実さんの一世一代の晴れ舞台を拝むとするか!
仙台から少し離れたところに、その城はある
伊達実元居城・大森城
青葉城として親しまれている仙台城とは、華やかさは劣るものの
いかにもという城構えは、大森城下の人々から親しまれている
そして、この大森城は、新しい城主を迎えようとしていた
伊達実元嫡男
──伊達藤五郎成実
伊達三傑・伊達の双璧の一人、「武の伊達成実」として名を馳せる者──
* * *
「成実さん、入りますね?」
一言声をかけて、障子を開ける
「夕華か……」
成実さんの顔は、硬直していた
見るからに「緊張してます」って顔だなぁ
戦の前だって、ここまで緊張した成実さんは見たことがないのに
「……成実さん、表情が硬いです」
「おう……」
「リラックスしましょう、リラックス」
「俺ぁ南蛮語分かんねえんだよ」
「落ち着いてくださいって意味です
はい、深呼吸」
「……ダメだ余計緊張してきた……」
しまった、逆効果だったか……
そりゃあまぁ、家督を継ぐってことは相当のプレッシャーだとは思うし
大森伊達家の繁栄も、成実さんにかかっているところはある
……でも、それすらも糧にして前に進むのが、私の知っている伊達成実だ
「っもう!
いつも通りにいけばいいんですよ!
なんで戦の時はあんなに余裕なのに、こんな時はがちがちなんですか?」
「俺にもよく分かんねぇ」
うん……
成実さん、ものすごく緊張してらっしゃいますね
動きが固いと言うか、油の足りていないロボットのようというか……
このままだと、歩行時に手と足が同時に出かねないな……
どうしようか……
「えーっと……違うことを考えてみたり……」
黙り込んだままの成実さんが、私をじっと見下ろした
「……ん?
どうしました?
喜多さんにお召し替えを手伝ってもらったので、おかしいところはないはずですけど」
私の格好は、儀礼用の着物だ
大森に移るときに一緒に持ってきたもので、本家に居たときも、新年の儀やらのお祝い事でしか着たことがない
ちょっと新鮮だったりするのかな?
……ていうか、もしかして成実さん、この着物を着た私を見るの自体、初めてなんじゃ……
「成実さん?」
「……夕華」
「はい」
「愛してる」
耳元に成実さんの口が寄せられたかと思うと、低い声でそう囁かれ、一瞬で頭が真っ白になった
何を言われるかと思ったら……予想の遥か斜め上で……びっくりだ
「ぷッ……呆けた顔」
「ちょっ……!
だって今のは成実さんが!」
「あーはいはい
文句は式が終わってからな」
唇に触れるだけのキスをして、成実さんは至極ご満悦な顔をしていた
緊張は解れてくれたみたいだけど、なんだろう……納得がいかないこの気持ち……
「……成実さん、私で遊ばないでくださいね」
「遊んでねーだろ、俺の緊張も解れたし」
「今それを言う必要がありました!?」
「俺は思ったことはその場で言うタイプだからな
お前も知ってるだろ」
「……知ってますけど」
それはもう身をもって知ってるけど
成実さんとの付き合いも、何だかんだあと二、三ヶ月で一年になる
そっか……私がこの世界に帰ってきて、もう少しで一年なんだ
思ったよりも早くこの世界に順応できたのも、きっと私がこの世界で生まれたからだろう
……それでも、機械も電気も何もないこの世界で生きていくのは、思った以上に大変だったけど
私が生きていけたのも、やっぱり成実さん……そして本家のみんなのお陰だ
「姫様」
お部屋の外から、侍女が私を呼ぶ
それに返事をして、成実さんを見つめた
「ほら、もうすぐ始まるだろ
もう行けよ
遅れたら恥ずかしいぞー?」
「はい、広間で待ってます
式が終わった後で、成実さんに抱きつきに行きますね!」
「可愛いこと言ってくれるじゃねえか
そんときゃ思いっきり抱き締めてやるよ」
とんでもなく恥ずかしい会話だったけれど、嬉しかったりもする
最後の調整がある成実さんに手を振って、侍女と控えていた喜多さんを伴って広間へと向かう
事実上、成実さんの正室のような立場なので、必ず喜多さんか侍女を連れて歩かなければならないのだ
お姫様……奥方様って大変だ、なんて思ったこともあるけど、慣れてしまえばそうでもない
……さてさて、それじゃあ、成実さんの一世一代の晴れ舞台を拝むとするか!
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