第三十八話 来訪
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雪合戦から一夜明けた今日
私は成実さんと城下に繰り出していた
「なんだか、久々に来たような気がします」
「一緒に歩いたのは皐月のあれが最後だもんな」
冬の奥州は、他国に比べると寒さの格が違う
まあ、越後や羽州は雪ですごいだろうけど、太平洋側の仙台は、実はそこまでなかったりするわけで
……とはいえ、寒いものは寒い
「こっちに来てもう半年以上経つんだな、お前」
「そうですね……」
「寂しくなったりとかしねえか?」
成実さんの言葉は、多分、向こうの世界にいる私の育ての親のことを言ってるんだと思う
そんなことはない──と言いたいけれど
「……今はそうでもないですけど
でもやっぱり、時々……」
「……そっか」
哀感を漂わせるように微笑み、成実さんの手が私の頭を撫でてくれた
「でも、私の生きるべき世界はここです
だから……仕方がないことなんだと思ってます
会いたくても会えないわけですし……」
「……そう、だな」
私たちの横を、母親と小さな子供が手を繋いで歩いていく
その姿を目で追って、ツキリと胸が痛んだ
「私も、昔はよく、母と一緒に買い物に行ったりしてました」
成実さんの手が、私の左手を包む
年相応に甘えられない私を、両親はあの手この手で育てたそうだ
戸籍のない私をどうやって養子にしたかは分からないけど、両親のお陰で私は無事にここまで大きくなったわけで
「いきなりいなくなって、向こうの親御さんは心配してるだろうな……」
「捜索願とか出されてないといいんですけど……
でも、きっとあの二人のことだから、分かってくれてると思います」
「……そうだといいな」
「はい……」
元気にしてるかな、二人とも……
そう思いながらふと視線を左側に向けたとき、私は思わず甘味処の前で足を止めてしまった
「何だ?
甘味食うか?」
「いえ、そうじゃなくて……」
どう見ても見覚えのある背中……
というか、髪型とかで分かるよね
「……む?
おおっ、成実殿に夕華殿!」
「佐助さん、幸村さん!
お久しぶりです!」
「やっほー、久しぶりだねー」
城下一と名高い甘味処・渡辺屋の前にいたのは、上田城の主である幸村さんと、その腹心の佐助さん
青葉城に来訪の予定は聞いてないけど……兄様が急に呼び出したのだろうか
「ところで、もしかして二人でデート中?」
「ちょっ、佐助さん!?
どこでそんな言葉知ったんですか!?」
「竜の旦那に真田の旦那が教えてもらったみたいでさぁ
どういう意味か知りたいってうるさいから調べてみたら、ね?」
「うむ!
仲睦まじいようで、羨ましゅうござるぞ!」
「おかげさまで……
ところで、奥州にはどういったご用件で?」
「あー、ちょいと大将から竜の旦那に書簡を届けに来たんだよ
あ、そういえば、なんか鬼の旦那の船がこっちに向かってるみたいだけど?」
佐助さんにそう言われ、成実さんと二人で顔を見合わせた
元親さんの来訪は、それこそ寝耳に水だ
瀬戸内は東西を豊臣の勢力に囲まれた地だから、兄様もおいそれと呼び出せない
「元親が?」
「それに続く形で毛利水軍の船も来てたね」
「毛利……」
成実さんが考え込むように瞳を細める
僅かに寄せられた眉根は、瀬戸内の北上がいい話ではないと物語っていた
「こりゃあ悠長に城下散策なんてしてる場合じゃねえかもな」
はっきりと成実さんの眉間にしわが刻まれる
確かに、身動きを取りづらい瀬戸内が、足元を掬われるリスクを負ってまで北上するとは考えづらい
考えられるとしたら──豊臣の軍門に下って、その勢力の一員として、伊達を潰しに来たか
「梵に伝えてくる
夕華、悪いが城下でぇとってやつはまた今度だ
戻るぞ!」
「あっ、はい!」
「俺様達もすぐに向かうよ
二人は先に竜の旦那たちに状況を説明して」
「分かった、なるべく早く頼むぞ」
「うむ!」
成実さんに手を引かれて、急いで青葉城へと逆戻りする
折角のデートだったのに……なんて言っている場合ではない
もし本当に瀬戸内が豊臣の手先になっていたなら、伊達一軍で相手をするには厳しすぎる
門兵が、私たちを見てきょとんとした顔をする
「あれ?
姫様と成実様、さっき……」
「それどころじゃなくなった!
あとから真田の二人も来るから、通してやってくれ!」
「は、はいっス!」
門を通って、すぐにお城へと上がる
兄様は今はお部屋にいらっしゃるはずだし、小十郎さんもいるとしたら兄様のお部屋だ
成実さんもそれは分かっているようで、私の手を引いて向かった先は、兄様の私室だった
私は成実さんと城下に繰り出していた
「なんだか、久々に来たような気がします」
「一緒に歩いたのは皐月のあれが最後だもんな」
冬の奥州は、他国に比べると寒さの格が違う
まあ、越後や羽州は雪ですごいだろうけど、太平洋側の仙台は、実はそこまでなかったりするわけで
……とはいえ、寒いものは寒い
「こっちに来てもう半年以上経つんだな、お前」
「そうですね……」
「寂しくなったりとかしねえか?」
成実さんの言葉は、多分、向こうの世界にいる私の育ての親のことを言ってるんだと思う
そんなことはない──と言いたいけれど
「……今はそうでもないですけど
でもやっぱり、時々……」
「……そっか」
哀感を漂わせるように微笑み、成実さんの手が私の頭を撫でてくれた
「でも、私の生きるべき世界はここです
だから……仕方がないことなんだと思ってます
会いたくても会えないわけですし……」
「……そう、だな」
私たちの横を、母親と小さな子供が手を繋いで歩いていく
その姿を目で追って、ツキリと胸が痛んだ
「私も、昔はよく、母と一緒に買い物に行ったりしてました」
成実さんの手が、私の左手を包む
年相応に甘えられない私を、両親はあの手この手で育てたそうだ
戸籍のない私をどうやって養子にしたかは分からないけど、両親のお陰で私は無事にここまで大きくなったわけで
「いきなりいなくなって、向こうの親御さんは心配してるだろうな……」
「捜索願とか出されてないといいんですけど……
でも、きっとあの二人のことだから、分かってくれてると思います」
「……そうだといいな」
「はい……」
元気にしてるかな、二人とも……
そう思いながらふと視線を左側に向けたとき、私は思わず甘味処の前で足を止めてしまった
「何だ?
甘味食うか?」
「いえ、そうじゃなくて……」
どう見ても見覚えのある背中……
というか、髪型とかで分かるよね
「……む?
おおっ、成実殿に夕華殿!」
「佐助さん、幸村さん!
お久しぶりです!」
「やっほー、久しぶりだねー」
城下一と名高い甘味処・渡辺屋の前にいたのは、上田城の主である幸村さんと、その腹心の佐助さん
青葉城に来訪の予定は聞いてないけど……兄様が急に呼び出したのだろうか
「ところで、もしかして二人でデート中?」
「ちょっ、佐助さん!?
どこでそんな言葉知ったんですか!?」
「竜の旦那に真田の旦那が教えてもらったみたいでさぁ
どういう意味か知りたいってうるさいから調べてみたら、ね?」
「うむ!
仲睦まじいようで、羨ましゅうござるぞ!」
「おかげさまで……
ところで、奥州にはどういったご用件で?」
「あー、ちょいと大将から竜の旦那に書簡を届けに来たんだよ
あ、そういえば、なんか鬼の旦那の船がこっちに向かってるみたいだけど?」
佐助さんにそう言われ、成実さんと二人で顔を見合わせた
元親さんの来訪は、それこそ寝耳に水だ
瀬戸内は東西を豊臣の勢力に囲まれた地だから、兄様もおいそれと呼び出せない
「元親が?」
「それに続く形で毛利水軍の船も来てたね」
「毛利……」
成実さんが考え込むように瞳を細める
僅かに寄せられた眉根は、瀬戸内の北上がいい話ではないと物語っていた
「こりゃあ悠長に城下散策なんてしてる場合じゃねえかもな」
はっきりと成実さんの眉間にしわが刻まれる
確かに、身動きを取りづらい瀬戸内が、足元を掬われるリスクを負ってまで北上するとは考えづらい
考えられるとしたら──豊臣の軍門に下って、その勢力の一員として、伊達を潰しに来たか
「梵に伝えてくる
夕華、悪いが城下でぇとってやつはまた今度だ
戻るぞ!」
「あっ、はい!」
「俺様達もすぐに向かうよ
二人は先に竜の旦那たちに状況を説明して」
「分かった、なるべく早く頼むぞ」
「うむ!」
成実さんに手を引かれて、急いで青葉城へと逆戻りする
折角のデートだったのに……なんて言っている場合ではない
もし本当に瀬戸内が豊臣の手先になっていたなら、伊達一軍で相手をするには厳しすぎる
門兵が、私たちを見てきょとんとした顔をする
「あれ?
姫様と成実様、さっき……」
「それどころじゃなくなった!
あとから真田の二人も来るから、通してやってくれ!」
「は、はいっス!」
門を通って、すぐにお城へと上がる
兄様は今はお部屋にいらっしゃるはずだし、小十郎さんもいるとしたら兄様のお部屋だ
成実さんもそれは分かっているようで、私の手を引いて向かった先は、兄様の私室だった
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