第三十四話 救出
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
松永の拠点から、富嶽へ戻ってきた
負傷した箇所の手当てを受けてからずっと、夕華の枕元に座っている
無事だったから良かったものの……今回のことは、夕華が殺されていても不思議じゃなかった
仮に俺達を迎え撃った兵たちが、豊臣の兵だとしたら
……おそらく、豊臣方は伊達の弱体化を目論んでいたのだろう
主軸たる夕華を殺して、乗り込んできた俺達の戦力を削ぐ算段だった
誤算があったとすれば、松永が夕華を生かしておいたこと──
そして、 松永が俺に倒されたことだ
「よぅ」
「元親……」
「姫さんはまだ目を覚まさねぇか」
「……ああ」
どっかりと腰を下ろした元親が、夕華を見つめる
「……なるほど、確かに竜の兄さんに似てやがる」
「そうか?
あんまり似てねぇと思うけど」
「いんや、何となく似てるぜ
口元辺りは似てんじゃねぇか?」
「……言われてみりゃあそんな気がするような……
まぁ、こいつが梵みたいに勝ち気な顔することはないからな、気付かなかっただけかもしんねぇや」
「だろ?
……ま、これであんたも肩の荷が下りたんじゃねぇのか?」
「……半分くらいはな」
もう半分は……下ろす気もない荷だ
俺がずっと背負ってかなきゃいけないものだ
夕華を人質に差し出してしまった──
「お前さん、背負いたがる性質なんだなァ」
「………」
「悪いとは言わねぇがよ
生きづらいって言われねぇか?」
「……よく言われる」
「姫さんが、お前さんが負い目を感じながら一緒に居てほしいなんざ言うとでも?」
「───」
「俺ァそうは思わねぇがな
あんたが助けに来た──この姫さんにとっちゃ、それで十分なんじゃねぇか?」
「お前……」
「そんときの話は綱の方から聞いてるぜ
……ありゃあどうしようもなかった
確かに世間から見りゃあ、姫さんのとった行動は大馬鹿だろうよ
だがな、俺達にとっちゃあ……子分の一人でも欠けちゃあなんねぇ
例えそれが理想論で終わっちまおうがな」
「………」
「その助けた十人以上の犠牲を払ってでも、あんたらはこの姫さんを助けた
だったら最初っから、十人を見殺しにしときゃあ被害は最小限だったろうが……
そんなもん、出来るはずもねぇ
仲間を見殺しにするなんざ、姫さんにとっちゃあ俺達以上に耐えられなかっただろうさ」
「だけど……それが、俺のしたことを正当化する理由には──」
「なるさ」
元親がそう即答した
「姫さんが松永に捕まらなかったら、松永の野郎の拠点がどこかすら分からず仕舞い──
最悪、また兵を人質に宝を要求してくることも考えられた」
「それを……阻止できたって?」
「そうできたのは、人取橋って場所で、あんたらが姫さんを松永に差し出したからだろ?」
……そう考えることは、出来るけど
未だに分からない
あのとき、松永に渡すことが正解だったのか……
「あんた一人で抱え込もうとするなよ、氷の兄さん」
「え……」
「あんた一人が悪いんじゃねぇ、あんたが悪いってんなら、誰も止められなかった伊達の全員──竜の兄さん含めた全員も悪いってことだろ?」
「や、梵たちは別に……」
「そういうもんなのさ、あんたがよーく知ってるだろう?」
……そりゃそうだけど
いつも俺が背負い込もうとしたものは、梵が横から掻っ攫っていく
果てには俺が大殿を手に掛けたことだって……
「責任を感じてんのは構わねぇが、竜の兄さんだって負わなきゃならねぇモンもあらぁ」
「………」
「あんたの失態じゃあねぇ、防げなかった竜の兄さんの失態だ」
「っ、そんなことは!」
「本人はとっくにそのつもりみてぇだぜ?」
……またあいつは、勝手に人の責任を取りやがって
元親がもう一度夕華の顔を見て、それから、来た時同様にふらりと居なくなった
……背負いすぎるな、か
多分、難しく考えすぎなんだろうな、とは思っているものの、梵のように何でもかんでも割り切れる性分ではないし
一々考えすぎなんだろうな、だから梵が責任を負うことになるんだ
……それを黙って見逃すことは、果たして俺にとって正解なんだろうか
単なる甘えではないのか──そう考えて
「……この思考をやめろって言われたんだよな、多分……」
結果、いつもいつも堂々巡りだ
だったらもう、いいか……なんて
夕華は無事で、俺も生きてる
なら、それでいいじゃねぇか、と結論付けることにした
梵が当主として今回の件の責任を負うってんなら、俺がこれ以上口を出すわけにもいかない
横からやいのやいの言ったって、梵の面目を潰すことにもなりかねねぇし……
「あーあ、いつになってもお前にゃ敵わねぇや
なんでそう簡単に人の責任を自分の責任にすり替えるかねぇ……」
真上にいた太陽が傾き始めたのか、部屋が橙色に変わっていく
半日以上も目を覚まさない夕華
けれど、不思議と焦る気持ちも無くて……
今はただ静かに休んでほしい──それだけだ
負傷した箇所の手当てを受けてからずっと、夕華の枕元に座っている
無事だったから良かったものの……今回のことは、夕華が殺されていても不思議じゃなかった
仮に俺達を迎え撃った兵たちが、豊臣の兵だとしたら
……おそらく、豊臣方は伊達の弱体化を目論んでいたのだろう
主軸たる夕華を殺して、乗り込んできた俺達の戦力を削ぐ算段だった
誤算があったとすれば、松永が夕華を生かしておいたこと──
そして、 松永が俺に倒されたことだ
「よぅ」
「元親……」
「姫さんはまだ目を覚まさねぇか」
「……ああ」
どっかりと腰を下ろした元親が、夕華を見つめる
「……なるほど、確かに竜の兄さんに似てやがる」
「そうか?
あんまり似てねぇと思うけど」
「いんや、何となく似てるぜ
口元辺りは似てんじゃねぇか?」
「……言われてみりゃあそんな気がするような……
まぁ、こいつが梵みたいに勝ち気な顔することはないからな、気付かなかっただけかもしんねぇや」
「だろ?
……ま、これであんたも肩の荷が下りたんじゃねぇのか?」
「……半分くらいはな」
もう半分は……下ろす気もない荷だ
俺がずっと背負ってかなきゃいけないものだ
夕華を人質に差し出してしまった──
「お前さん、背負いたがる性質なんだなァ」
「………」
「悪いとは言わねぇがよ
生きづらいって言われねぇか?」
「……よく言われる」
「姫さんが、お前さんが負い目を感じながら一緒に居てほしいなんざ言うとでも?」
「───」
「俺ァそうは思わねぇがな
あんたが助けに来た──この姫さんにとっちゃ、それで十分なんじゃねぇか?」
「お前……」
「そんときの話は綱の方から聞いてるぜ
……ありゃあどうしようもなかった
確かに世間から見りゃあ、姫さんのとった行動は大馬鹿だろうよ
だがな、俺達にとっちゃあ……子分の一人でも欠けちゃあなんねぇ
例えそれが理想論で終わっちまおうがな」
「………」
「その助けた十人以上の犠牲を払ってでも、あんたらはこの姫さんを助けた
だったら最初っから、十人を見殺しにしときゃあ被害は最小限だったろうが……
そんなもん、出来るはずもねぇ
仲間を見殺しにするなんざ、姫さんにとっちゃあ俺達以上に耐えられなかっただろうさ」
「だけど……それが、俺のしたことを正当化する理由には──」
「なるさ」
元親がそう即答した
「姫さんが松永に捕まらなかったら、松永の野郎の拠点がどこかすら分からず仕舞い──
最悪、また兵を人質に宝を要求してくることも考えられた」
「それを……阻止できたって?」
「そうできたのは、人取橋って場所で、あんたらが姫さんを松永に差し出したからだろ?」
……そう考えることは、出来るけど
未だに分からない
あのとき、松永に渡すことが正解だったのか……
「あんた一人で抱え込もうとするなよ、氷の兄さん」
「え……」
「あんた一人が悪いんじゃねぇ、あんたが悪いってんなら、誰も止められなかった伊達の全員──竜の兄さん含めた全員も悪いってことだろ?」
「や、梵たちは別に……」
「そういうもんなのさ、あんたがよーく知ってるだろう?」
……そりゃそうだけど
いつも俺が背負い込もうとしたものは、梵が横から掻っ攫っていく
果てには俺が大殿を手に掛けたことだって……
「責任を感じてんのは構わねぇが、竜の兄さんだって負わなきゃならねぇモンもあらぁ」
「………」
「あんたの失態じゃあねぇ、防げなかった竜の兄さんの失態だ」
「っ、そんなことは!」
「本人はとっくにそのつもりみてぇだぜ?」
……またあいつは、勝手に人の責任を取りやがって
元親がもう一度夕華の顔を見て、それから、来た時同様にふらりと居なくなった
……背負いすぎるな、か
多分、難しく考えすぎなんだろうな、とは思っているものの、梵のように何でもかんでも割り切れる性分ではないし
一々考えすぎなんだろうな、だから梵が責任を負うことになるんだ
……それを黙って見逃すことは、果たして俺にとって正解なんだろうか
単なる甘えではないのか──そう考えて
「……この思考をやめろって言われたんだよな、多分……」
結果、いつもいつも堂々巡りだ
だったらもう、いいか……なんて
夕華は無事で、俺も生きてる
なら、それでいいじゃねぇか、と結論付けることにした
梵が当主として今回の件の責任を負うってんなら、俺がこれ以上口を出すわけにもいかない
横からやいのやいの言ったって、梵の面目を潰すことにもなりかねねぇし……
「あーあ、いつになってもお前にゃ敵わねぇや
なんでそう簡単に人の責任を自分の責任にすり替えるかねぇ……」
真上にいた太陽が傾き始めたのか、部屋が橙色に変わっていく
半日以上も目を覚まさない夕華
けれど、不思議と焦る気持ちも無くて……
今はただ静かに休んでほしい──それだけだ
1/3ページ