第三十話 模索
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襲撃から一夜が明けた今日
「……ん」
ぼーっとする頭
傷口からの熱で上手く脳が働かない
「あー……」
額に手をやると、そこには温くなった手ぬぐいが
「………」
誰もいないのか……と何とはなしに思ったとき、障子の戸が開いて誰かが入ってきた
「あ、目が覚めた?」
「……佐助?」
「意識はしっかりしてるね、良かった」
すぐに手ぬぐいが冷たいものに取り換えられる
「ん、きもち……」
「そうしてると余計に幼く見えるねー、成ちゃん」
「るせ……」
「はいこれ、白湯」
「ありがと……」
佐助に手伝ってもらって半身を起こす
差し出された白湯を受け取ってゆっくりと飲み下して、もう一度横になった
夕華は……無事なんだろうか
霧隠と脛巾は、まだ帰ってないのかな……
「ま、切り傷じゃないだけマシかねぇ」
「………」
「酷いとはいえ、火傷だからね、成ちゃんの場合は
まぁ切り傷がないとは言わないけどさ」
「………」
「あんたのことだし、松永のところには一番に乗り込むだろ?」
「そりゃ……」
「だったらまずは動けるようにならないとね」
「……ん」
そっと目を閉じる
身体が重い、息苦しい
「お休み、成ちゃん」
そんな声がして……意識が暗闇に沈んでいった
* * *
その日の夕方
「調子はどうだ、成実」
「小十郎か
見ての通り、起き上がれるようにはなった
昨日の今日でこれなら、回復したほうだろうな」
そうか、と小十郎がわずかに表情を緩める
「梵は?」
「政宗様ももう歩けるまでに快復された」
「さすがだな、身体の頑丈さが違ぇや
綱元と小十郎ももう動き回って大丈夫なのか」
「俺達は大した怪我じゃなかったからな
オメェが一番重傷だったんだぞ」
「……だよな、あれ狙われてたの俺だったし」
それで、と話を転換する
「夕華の居場所は分かったのか?」
「いや……まだだ」
「そうか……」
……夕華
俺があの時、行かせなければ
いや……そしたらあいつは、兵の十人を見殺しにしてしまったことを一生悔やんでしまうだろう
俺達の気も知らねぇで……どこまでも自己犠牲に走るやつ
「とはいえ、これからどうするか……」
「………」
脛巾も霧隠も帰ってきていない今、俺達が迂闊に動けば夕華を危険に晒す可能性がある
悔しいが……今の状態じゃお手上げだ
「成実、夕餉の準備が出来たぞ
広間まで来られるか?」
綱元が顔を見せてそう言う
歩けないことは無いと思うけど……と立ち上がろうと試みる
「あまり無理はするなよ」
「わり、小十郎」
小十郎が支えてくれて、なんとか立てた
歩行も問題なさそうだ──あちこち痛むけど
「先に行っててくれ、これ以上は早く歩けない」
分かった、と小十郎が頷いて、後姿が広間の方向へと角を曲がっていった
さて、まさか綱元が俺をおぶってくれるとは考えにくいが……
「お前も先に行って良かったんだぞ?」
「そんな状態のお前を放っておくほど鬼じゃないつもりだ」
「……え、なに、何でお前そんなに優しいの」
「失礼な奴だな」
お前が優しいと裏がありそうで怖いんだよな──とは、口が裂けても言えないので
お言葉に甘えて、広間まで肩を貸してもらった
……「貸し一つだな」という言葉の意味が何かは、考えたくない
広間にはすでに膳が用意されていて、全員が揃ったところで手を合わせて夕餉にありついた
何も食べてなかったせいで、本当に腹が減ってたんだよな……
「……旦那方、夕餉の途中で悪いんだけど、ちょっといい?」
「猿か、どうした」
「大坂の動向を探ってたんだけど……」
「豊臣の山猿がどうした?」
「九州の制圧に成功したらしい」
「……西側を固めようって寸法か」
「九州と大坂から挟み撃ちされちゃあ、さすがの毛利と長曾我部も危ないと思うね」
「………」
事態は思った以上に深刻だ──
北も全土が伊達の勢力圏というわけじゃない、加賀の前田は豊臣方だし、徳川も豊臣に恭順している
その状態で西を九州から大坂まで固められてしまえば、伊達、上杉、武田の三軍で相手にするには厳しすぎる
背後を取られた中国と四国は、おそらく自国を守るので精一杯だ
「天下取り自体も、悠長にしている暇はねぇか……」
「それから今、才蔵から報告があったんだけど
夕華ちゃん、西の方にいるらしいよ」
佐助の言葉に全員がハッとする
そのとき
「政宗様っ!」
梵の目の前に、黒はばきが降り立った
「……ん」
ぼーっとする頭
傷口からの熱で上手く脳が働かない
「あー……」
額に手をやると、そこには温くなった手ぬぐいが
「………」
誰もいないのか……と何とはなしに思ったとき、障子の戸が開いて誰かが入ってきた
「あ、目が覚めた?」
「……佐助?」
「意識はしっかりしてるね、良かった」
すぐに手ぬぐいが冷たいものに取り換えられる
「ん、きもち……」
「そうしてると余計に幼く見えるねー、成ちゃん」
「るせ……」
「はいこれ、白湯」
「ありがと……」
佐助に手伝ってもらって半身を起こす
差し出された白湯を受け取ってゆっくりと飲み下して、もう一度横になった
夕華は……無事なんだろうか
霧隠と脛巾は、まだ帰ってないのかな……
「ま、切り傷じゃないだけマシかねぇ」
「………」
「酷いとはいえ、火傷だからね、成ちゃんの場合は
まぁ切り傷がないとは言わないけどさ」
「………」
「あんたのことだし、松永のところには一番に乗り込むだろ?」
「そりゃ……」
「だったらまずは動けるようにならないとね」
「……ん」
そっと目を閉じる
身体が重い、息苦しい
「お休み、成ちゃん」
そんな声がして……意識が暗闇に沈んでいった
* * *
その日の夕方
「調子はどうだ、成実」
「小十郎か
見ての通り、起き上がれるようにはなった
昨日の今日でこれなら、回復したほうだろうな」
そうか、と小十郎がわずかに表情を緩める
「梵は?」
「政宗様ももう歩けるまでに快復された」
「さすがだな、身体の頑丈さが違ぇや
綱元と小十郎ももう動き回って大丈夫なのか」
「俺達は大した怪我じゃなかったからな
オメェが一番重傷だったんだぞ」
「……だよな、あれ狙われてたの俺だったし」
それで、と話を転換する
「夕華の居場所は分かったのか?」
「いや……まだだ」
「そうか……」
……夕華
俺があの時、行かせなければ
いや……そしたらあいつは、兵の十人を見殺しにしてしまったことを一生悔やんでしまうだろう
俺達の気も知らねぇで……どこまでも自己犠牲に走るやつ
「とはいえ、これからどうするか……」
「………」
脛巾も霧隠も帰ってきていない今、俺達が迂闊に動けば夕華を危険に晒す可能性がある
悔しいが……今の状態じゃお手上げだ
「成実、夕餉の準備が出来たぞ
広間まで来られるか?」
綱元が顔を見せてそう言う
歩けないことは無いと思うけど……と立ち上がろうと試みる
「あまり無理はするなよ」
「わり、小十郎」
小十郎が支えてくれて、なんとか立てた
歩行も問題なさそうだ──あちこち痛むけど
「先に行っててくれ、これ以上は早く歩けない」
分かった、と小十郎が頷いて、後姿が広間の方向へと角を曲がっていった
さて、まさか綱元が俺をおぶってくれるとは考えにくいが……
「お前も先に行って良かったんだぞ?」
「そんな状態のお前を放っておくほど鬼じゃないつもりだ」
「……え、なに、何でお前そんなに優しいの」
「失礼な奴だな」
お前が優しいと裏がありそうで怖いんだよな──とは、口が裂けても言えないので
お言葉に甘えて、広間まで肩を貸してもらった
……「貸し一つだな」という言葉の意味が何かは、考えたくない
広間にはすでに膳が用意されていて、全員が揃ったところで手を合わせて夕餉にありついた
何も食べてなかったせいで、本当に腹が減ってたんだよな……
「……旦那方、夕餉の途中で悪いんだけど、ちょっといい?」
「猿か、どうした」
「大坂の動向を探ってたんだけど……」
「豊臣の山猿がどうした?」
「九州の制圧に成功したらしい」
「……西側を固めようって寸法か」
「九州と大坂から挟み撃ちされちゃあ、さすがの毛利と長曾我部も危ないと思うね」
「………」
事態は思った以上に深刻だ──
北も全土が伊達の勢力圏というわけじゃない、加賀の前田は豊臣方だし、徳川も豊臣に恭順している
その状態で西を九州から大坂まで固められてしまえば、伊達、上杉、武田の三軍で相手にするには厳しすぎる
背後を取られた中国と四国は、おそらく自国を守るので精一杯だ
「天下取り自体も、悠長にしている暇はねぇか……」
「それから今、才蔵から報告があったんだけど
夕華ちゃん、西の方にいるらしいよ」
佐助の言葉に全員がハッとする
そのとき
「政宗様っ!」
梵の目の前に、黒はばきが降り立った
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