第二十六話 対立
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日々の冷え込みが厳しくなる、睦月の今日この頃
とある日の朝、私は体を揺すられて目を覚ました
「夕華、起きろ」
手のひらの優しさには覚えがあった
でも、その声は固く、緊張したような感じで……
「……成実さん?」
「今日は客が来る」
「お客様……ですか?
誰が……?」
表情を硬くしたまま、成実さんが口を開く
「……お東様だよ」
つまり
私の本当の母親である、義姫が来るということ
「今日はお前も同席しなきゃいけないんだ
とりあえず、あれに着替えてろ」
「これ……」
見るからに高級そうな着物と羽織
あの日、成実さんと城下で買った儀礼用のものだ、と気付くのに時間はかからなかったけど
「着替えたら朝餉な」
「はい……
……成実さん、どうかしたんですか?」
「……夕華
お東様の前で俺が理性なくしたら殴ってくれ」
「はっ!?」
「多分俺……
お東様に対して殺意沸くだろうから」
「え……?」
成実さんはそう言って部屋を出ていった
義姫と政宗の不仲は、平成の世にも伝わっている
二人の間でどんな会話がなされていたかは知らないけど……
おそらくこのBASARA世界の政宗、つまり兄様と義姫も仲が悪いのだろう
ならばなぜ、青葉城に来るの……?
その理由はよく分からないけど
とりあえず、成実さんが暴走しないように見張っておこう
きっと暴走したら手に負えなくなりそうだし
「早く着替えよ……」
布団から這い出て、喜多さんを呼ぶ
「寒っ……」
お部屋の外には雪が積もっている
子供の頃ならはしゃいでいたかもしれないけど……
「おはようございます、夕華様」
「喜多さん、おはようございます」
喜多さんに手伝ってもらって、正装に着替える
こんなに着物を重ねて着ることなんて、そうそう無いだろうな……
* * *
着替えて、朝餉も食べ終えた
重苦しい青葉城内を、成実さんと一緒に歩いて部屋へ戻る
「……成実さん」
「何だ?」
「義姫様は、どうして兄様に会おうとしてるんでしょうか」
「それは……」
成実さんは、少し考え込むように黙って
「……家督を、さ……」
とだけ言った
家督がどうしたんだろう……
先代の当主である輝宗様から兄様が家督を譲り受けて、すでに三年ほどは経つと聞いている
何となく聞きづらくて、私もそれ以上は聞くのを躊躇ってしまった
成実さんとお部屋の前で一度別れて、自室の鏡台の前に座る
「失礼いたします」
お部屋に入ってきた喜多さんが、櫛で私の髪を丁寧にといていく
それから、簪を手に髪の毛を結い上げて、髪飾りが差し込まれた
「夕華様、こちらを」
喜多さんが手に持っていた羽織りに袖を通す
「お東様とお会いになるのは、初めてでございますね……」
「……はい」
「あまり硬くならずに……普段の通りになさいませ
夕華様には、もう既に一国の姫の気品が十分に備わっております」
自室で身なりを整えていると
「夕華」
「あ……成実さん」
お東様が来るからか、成実さんは朝から固い
成実さんだけに限った話じゃないけど……
「今日の席、お東様が何を言われても『はい』って答えとけ」
「えっ……
どうしてですか?」
「いいから
それ以外は何があっても何も言うな、何もするな」
「成実さん?」
成実さんの強張った顔がそう迫って、私も流石に不振を抱く
「約束してくれ、絶対に何もしないって
それがお前を守る最善の方法なんだ」
「守るって……?」
いろいろ訳が分からない
問いただしたいけど、成実さんの目はとても真剣そのもので……
聞けるような雰囲気じゃなかった
「分かり……ました」
「ごめんな、詳しいことも言えねぇで
……行くぞ」
「……はい」
成実さんに続いて、広間に向かう
広間の近くで、兄様と綱元さん、小十郎さんに会った
普段なら「お綺麗ですよ」等の言葉が飛んでくるのに、今日は皆それどころではないらしく
「原田さんは……?」
「あいつには執務を頼んである
夕華、リラックスしろ」
「あ、はい……」
兄様は、知ってるはず
この先に何が起きるかなんて
知っていて、この人は笑顔を浮かべてる
兄様の手をそっと握る
私は、兄様の味方だから──何があっても
私の手を握り返してくれた兄様の手が、障子を開ける
ともかく、堂々としていればいい
奥州筆頭の妹として……一国の姫として
とある日の朝、私は体を揺すられて目を覚ました
「夕華、起きろ」
手のひらの優しさには覚えがあった
でも、その声は固く、緊張したような感じで……
「……成実さん?」
「今日は客が来る」
「お客様……ですか?
誰が……?」
表情を硬くしたまま、成実さんが口を開く
「……お東様だよ」
つまり
私の本当の母親である、義姫が来るということ
「今日はお前も同席しなきゃいけないんだ
とりあえず、あれに着替えてろ」
「これ……」
見るからに高級そうな着物と羽織
あの日、成実さんと城下で買った儀礼用のものだ、と気付くのに時間はかからなかったけど
「着替えたら朝餉な」
「はい……
……成実さん、どうかしたんですか?」
「……夕華
お東様の前で俺が理性なくしたら殴ってくれ」
「はっ!?」
「多分俺……
お東様に対して殺意沸くだろうから」
「え……?」
成実さんはそう言って部屋を出ていった
義姫と政宗の不仲は、平成の世にも伝わっている
二人の間でどんな会話がなされていたかは知らないけど……
おそらくこのBASARA世界の政宗、つまり兄様と義姫も仲が悪いのだろう
ならばなぜ、青葉城に来るの……?
その理由はよく分からないけど
とりあえず、成実さんが暴走しないように見張っておこう
きっと暴走したら手に負えなくなりそうだし
「早く着替えよ……」
布団から這い出て、喜多さんを呼ぶ
「寒っ……」
お部屋の外には雪が積もっている
子供の頃ならはしゃいでいたかもしれないけど……
「おはようございます、夕華様」
「喜多さん、おはようございます」
喜多さんに手伝ってもらって、正装に着替える
こんなに着物を重ねて着ることなんて、そうそう無いだろうな……
* * *
着替えて、朝餉も食べ終えた
重苦しい青葉城内を、成実さんと一緒に歩いて部屋へ戻る
「……成実さん」
「何だ?」
「義姫様は、どうして兄様に会おうとしてるんでしょうか」
「それは……」
成実さんは、少し考え込むように黙って
「……家督を、さ……」
とだけ言った
家督がどうしたんだろう……
先代の当主である輝宗様から兄様が家督を譲り受けて、すでに三年ほどは経つと聞いている
何となく聞きづらくて、私もそれ以上は聞くのを躊躇ってしまった
成実さんとお部屋の前で一度別れて、自室の鏡台の前に座る
「失礼いたします」
お部屋に入ってきた喜多さんが、櫛で私の髪を丁寧にといていく
それから、簪を手に髪の毛を結い上げて、髪飾りが差し込まれた
「夕華様、こちらを」
喜多さんが手に持っていた羽織りに袖を通す
「お東様とお会いになるのは、初めてでございますね……」
「……はい」
「あまり硬くならずに……普段の通りになさいませ
夕華様には、もう既に一国の姫の気品が十分に備わっております」
自室で身なりを整えていると
「夕華」
「あ……成実さん」
お東様が来るからか、成実さんは朝から固い
成実さんだけに限った話じゃないけど……
「今日の席、お東様が何を言われても『はい』って答えとけ」
「えっ……
どうしてですか?」
「いいから
それ以外は何があっても何も言うな、何もするな」
「成実さん?」
成実さんの強張った顔がそう迫って、私も流石に不振を抱く
「約束してくれ、絶対に何もしないって
それがお前を守る最善の方法なんだ」
「守るって……?」
いろいろ訳が分からない
問いただしたいけど、成実さんの目はとても真剣そのもので……
聞けるような雰囲気じゃなかった
「分かり……ました」
「ごめんな、詳しいことも言えねぇで
……行くぞ」
「……はい」
成実さんに続いて、広間に向かう
広間の近くで、兄様と綱元さん、小十郎さんに会った
普段なら「お綺麗ですよ」等の言葉が飛んでくるのに、今日は皆それどころではないらしく
「原田さんは……?」
「あいつには執務を頼んである
夕華、リラックスしろ」
「あ、はい……」
兄様は、知ってるはず
この先に何が起きるかなんて
知っていて、この人は笑顔を浮かべてる
兄様の手をそっと握る
私は、兄様の味方だから──何があっても
私の手を握り返してくれた兄様の手が、障子を開ける
ともかく、堂々としていればいい
奥州筆頭の妹として……一国の姫として
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