第二十三話 告白
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上田城に来て三日後
来た当初は、侍女さんに成実さんの介抱を任せてたけど……
「──だーかーらー!!
まだ起き上がっちゃ駄目だって何回言わせるんですか!!」
「寝てばっかだと逆に体がきついんだよ!!」
「知りません!!
お医者様から寝てろって言われてるんですから寝る!!」
今ではすっかり私の役目
立場的に強く言えない侍女さん、私をただの物静かなお姫様だと思っていた千草さんたちは、私の剣幕にただただ驚くばかり
お淑やかでも何でもなくて、というか見た目詐欺でごめんなさい……
「とにかく!!
絶対安静だって言ってるんですからさっさと寝る!!
そうじゃないと良くなるものも良くなりませんよ!!」
「いいじゃねえか別に……ヒッ!!」
畳に打ち付けたのは薙刀の石突
ドスッという音が成実さんの顔のすぐ横で響いた
「さっさと寝ないと、次は手刀を埋めますよ」
「……はい」
正直でよろしい
お布団に潜った成実さんに満足して、私は背後でオロオロしていた皆さんへ笑顔を向けた
「お騒がせしてしまってすみません
もう大丈夫ですから」
そう声をかけると、侍女さんたちはハッとしてお仕事に戻っていった
千草さんは私のお世話が仕事だから残っていたけど
「すごい剣幕でしたわね……」
「まあ、こいつは俺のことになると途端にこんなだからな」
「成実さんが無茶ばっかりするからです」
「ふふふっ
けれど、それほどまでに夕華様が成実様を深く想っていらっしゃるということでしょうね」
さりげなく爆弾を投下しないでください千草さぁぁぁん!!!
「お……想う?」
「あら、違いましたの?
私どもはずっとそのような関係だとばかり思っておりました」
そのような関係とはつまり
「俺と夕華が、恋仲だって?」
「ええ」
満面の笑みで頷かれても困る
だって私は確かに成実さんのことが好きだけど
まだ想いも告げてないし……
成実さんが私を好きでいてくれているのかすら分かんないわけだし
「そういや大森でも勘違いされてたっけ……」
「確かに……」
成実さんと顔を見合わせる
……そりゃ、この人が私の恋人だったらどんなにいいか、とは思うけど
佐竹様の御嫡男の言葉が、そのたびに頭に浮かんでしまう
──世迷言を、と
「……違います
ただの従兄妹同士です」
「そうだったのですか……」
千草さんが肩を落とした
どんだけ期待してたのよこの人は
「夕華、俺がいない間に奥州は変わりねぇか?」
気を利かせてくれたのか、成実さんがそう話題を変えてくれた
「あ、はい
特に変わったことは……
しいて言えば、兄様がいつも以上に優しかったくらいで……」
「いつもの時点で死ぬほど優しいと思うけどな……
それ以上ってあったのかよ……」
「一緒に遠出をしてくれたり、城下に連れ出してくれたり……」
「あいつ楽しかっただろうなー……」
成実さんの視線が遠いものになる
確かに、そのときの兄様はいつもより五割増で輝いてた気がする
楽しかったんだろうな……私と出掛けるの……
「あ、あとは……佐竹様とのお茶会に私を連れて行ってくださって……」
「佐竹との?」
「はい」
「そっか、楽しかったか?」
「………」
やっぱり、世迷言なんだろうか……
兄様はきっぱりと「私を嫁がせる気はない」って佐竹様に仰ってくださったけど……
そうは思ってくれないのが、今の世の中で
私が佐竹様のお城に行ったという事実が大事なのであって……
そこに──私の気持ちは関係なくて
「……夕華?」
「えっ……」
「何かあったのか、佐竹の城で」
成実さんの深茶色の瞳が不安気に私を捉える
……心配を掛けちゃいけないよね、それに……
私が抱いてる感情が、成実さんにとって必ずしも良い影響とは言えない
「……いいえ、楽しかったですよ」
「ほんとに?」
「はい、いろんなお話が聞けて……」
無理矢理にでも、笑わなくちゃ
不安を与えたくてここに来たんじゃないんだ
「とっても楽しかったです」
「……そっか」
成実さんが微笑む
……ただの従兄妹同士にしては、近すぎる距離感
だけれど、恋人同士と言うには……一歩届かないもどかしさ
どっちつかずの今の状態を、私たちはいつまで続けなければならないんだろう
来た当初は、侍女さんに成実さんの介抱を任せてたけど……
「──だーかーらー!!
まだ起き上がっちゃ駄目だって何回言わせるんですか!!」
「寝てばっかだと逆に体がきついんだよ!!」
「知りません!!
お医者様から寝てろって言われてるんですから寝る!!」
今ではすっかり私の役目
立場的に強く言えない侍女さん、私をただの物静かなお姫様だと思っていた千草さんたちは、私の剣幕にただただ驚くばかり
お淑やかでも何でもなくて、というか見た目詐欺でごめんなさい……
「とにかく!!
絶対安静だって言ってるんですからさっさと寝る!!
そうじゃないと良くなるものも良くなりませんよ!!」
「いいじゃねえか別に……ヒッ!!」
畳に打ち付けたのは薙刀の石突
ドスッという音が成実さんの顔のすぐ横で響いた
「さっさと寝ないと、次は手刀を埋めますよ」
「……はい」
正直でよろしい
お布団に潜った成実さんに満足して、私は背後でオロオロしていた皆さんへ笑顔を向けた
「お騒がせしてしまってすみません
もう大丈夫ですから」
そう声をかけると、侍女さんたちはハッとしてお仕事に戻っていった
千草さんは私のお世話が仕事だから残っていたけど
「すごい剣幕でしたわね……」
「まあ、こいつは俺のことになると途端にこんなだからな」
「成実さんが無茶ばっかりするからです」
「ふふふっ
けれど、それほどまでに夕華様が成実様を深く想っていらっしゃるということでしょうね」
さりげなく爆弾を投下しないでください千草さぁぁぁん!!!
「お……想う?」
「あら、違いましたの?
私どもはずっとそのような関係だとばかり思っておりました」
そのような関係とはつまり
「俺と夕華が、恋仲だって?」
「ええ」
満面の笑みで頷かれても困る
だって私は確かに成実さんのことが好きだけど
まだ想いも告げてないし……
成実さんが私を好きでいてくれているのかすら分かんないわけだし
「そういや大森でも勘違いされてたっけ……」
「確かに……」
成実さんと顔を見合わせる
……そりゃ、この人が私の恋人だったらどんなにいいか、とは思うけど
佐竹様の御嫡男の言葉が、そのたびに頭に浮かんでしまう
──世迷言を、と
「……違います
ただの従兄妹同士です」
「そうだったのですか……」
千草さんが肩を落とした
どんだけ期待してたのよこの人は
「夕華、俺がいない間に奥州は変わりねぇか?」
気を利かせてくれたのか、成実さんがそう話題を変えてくれた
「あ、はい
特に変わったことは……
しいて言えば、兄様がいつも以上に優しかったくらいで……」
「いつもの時点で死ぬほど優しいと思うけどな……
それ以上ってあったのかよ……」
「一緒に遠出をしてくれたり、城下に連れ出してくれたり……」
「あいつ楽しかっただろうなー……」
成実さんの視線が遠いものになる
確かに、そのときの兄様はいつもより五割増で輝いてた気がする
楽しかったんだろうな……私と出掛けるの……
「あ、あとは……佐竹様とのお茶会に私を連れて行ってくださって……」
「佐竹との?」
「はい」
「そっか、楽しかったか?」
「………」
やっぱり、世迷言なんだろうか……
兄様はきっぱりと「私を嫁がせる気はない」って佐竹様に仰ってくださったけど……
そうは思ってくれないのが、今の世の中で
私が佐竹様のお城に行ったという事実が大事なのであって……
そこに──私の気持ちは関係なくて
「……夕華?」
「えっ……」
「何かあったのか、佐竹の城で」
成実さんの深茶色の瞳が不安気に私を捉える
……心配を掛けちゃいけないよね、それに……
私が抱いてる感情が、成実さんにとって必ずしも良い影響とは言えない
「……いいえ、楽しかったですよ」
「ほんとに?」
「はい、いろんなお話が聞けて……」
無理矢理にでも、笑わなくちゃ
不安を与えたくてここに来たんじゃないんだ
「とっても楽しかったです」
「……そっか」
成実さんが微笑む
……ただの従兄妹同士にしては、近すぎる距離感
だけれど、恋人同士と言うには……一歩届かないもどかしさ
どっちつかずの今の状態を、私たちはいつまで続けなければならないんだろう
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