第二十一話 出立
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
奥州のスッキリとした朝
障子を開けて、深呼吸をする
空気が澄んでいるからか、自然と身が引き締まった
佐竹様の太田城から昨日戻ってきて、夜頃には佐竹様からの書簡を持たされた従者が来訪
書状には「我が息子が姫君へ無礼を」と謝罪の内容が記されていて、兄様と三傑の二人に問い詰められてしまった
……いや、訂正
事情を話したら兄様が御嫡男様を殺しに行かんばかりに殺気立たれたので、三人で必死にお止めした
その際に綱元さんから飛び出た、「利用価値のあるうちは最大限に利用しなければなりません!」は、聞かなかったことにする
小十郎さんも聞かなかったふりをしていたしな……
「……もう一か月か……」
成実さんがここを出て、上田の修行に出てから
もうそんなに経つんだ……
「元気にしてるかな……」
布団を畳んでから、喜多さんを呼んで着物に着替えることにして
「本日はどちらをお召しになりましょう?」
「えーっと……」
こちらに戻ってきてからというもの、私の私物は増える傾向にある
なぜ、と聞かれれば答えは簡単
兄様が外国との同盟の確認で奥州を離れるたびに、土産と称して着物一着
原田さんがそのたびに吐血
それでも財政が素晴らしい程黒字なのは、兄様のなせる業なのか家臣が素晴らしいからなのか
おそらく後者なのではないかと考える
まあもともと同盟とか他国との馴れ合いを好まない伊達軍だから、そんなに兄様が奥州を離れることもないしね
「今日はどれ着ようかな……」
ふむ、と考えて、久々に成実さんが買ってくれた紅色の小袖を選んだ
袖を通すか通さないかの時……
廊下を急ぐ足音が聞こえて、喜多さんと二人で顔を見合わせる
誰だろう……足音から考えるに、綱元さんではなさそうだ
そう思ううちに、その人物は私の部屋の前に来て
スターン!という音と共に、障子が壊れる勢いで開いた
「に、兄様……?」
「政宗様、お行儀が悪うございます!」
「夕華!!」
「ちょっと待って、私まだ襦袢姿なんですよ!?」
「そんなのいちいち気にしてられるか!!
成実が……!!」
成実さんの名前と、兄様の焦りの表情……それが何を物語るのかを理解して、一瞬で血の気が引いた
太田城で簪が落ちたことが過る
「成実さんに何かあったんですか!?」
そう詰め寄ると、兄様は黙って手紙を差し出した
差出人は幸村さん
宛名は……私
急いで書いたらしく、いつもの筆遣いじゃない
はやる気持ちで手紙を広げた
そこに書いてあったのは
──上田城に水城海夜が現れたこと
真田十勇士のうち、佐助さんを除く六人が重傷を負ったこと
そして……成実さんは……
右手と腹部を槍で刺され、毒に侵された……
「そんな……」
解毒剤を飲ませたため命の危険はない、という一文は頭からすり抜けていた
「成、実……さん……」
私の手から、手紙が落ちる
「夕華様、文にはなんと……?」
喜多さんの手に拾い上げた手紙を乗せる
「失礼いたします」
そう断った喜多さんが手紙を広げて……
言葉を失うように息を呑んだ
「何とか助かったようだがな……」
「予断を許さぬ状況であるのは、確かでございましょう……」
「……夕華?」
「夕華様……如何なさいました?」
「……成実さん……」
──怖い
いやだ……
成実さんが死んだら……
私……!
「夕華、成実なら大丈夫だぞ」
「そうですわ、あの方に限って、夕華様を残して先立たれるなど……」
身体の震えが止まらない
私の知らないところで成実さんが倒れて……
私の知らない間に、成実さんが死んでしまったら……
そう考えると、頭がおかしくなりそうで
「夕華様、お気をしっかりお持ちくださいまし」
「で、も……」
声が震えて、上手く言葉が出てこない
嫌な予感っていうものは、どうしてこんなに当たってしまうのか──
どうすればいいのか分からなくて
ただ、不安で押しつぶされそうだった……
障子を開けて、深呼吸をする
空気が澄んでいるからか、自然と身が引き締まった
佐竹様の太田城から昨日戻ってきて、夜頃には佐竹様からの書簡を持たされた従者が来訪
書状には「我が息子が姫君へ無礼を」と謝罪の内容が記されていて、兄様と三傑の二人に問い詰められてしまった
……いや、訂正
事情を話したら兄様が御嫡男様を殺しに行かんばかりに殺気立たれたので、三人で必死にお止めした
その際に綱元さんから飛び出た、「利用価値のあるうちは最大限に利用しなければなりません!」は、聞かなかったことにする
小十郎さんも聞かなかったふりをしていたしな……
「……もう一か月か……」
成実さんがここを出て、上田の修行に出てから
もうそんなに経つんだ……
「元気にしてるかな……」
布団を畳んでから、喜多さんを呼んで着物に着替えることにして
「本日はどちらをお召しになりましょう?」
「えーっと……」
こちらに戻ってきてからというもの、私の私物は増える傾向にある
なぜ、と聞かれれば答えは簡単
兄様が外国との同盟の確認で奥州を離れるたびに、土産と称して着物一着
原田さんがそのたびに吐血
それでも財政が素晴らしい程黒字なのは、兄様のなせる業なのか家臣が素晴らしいからなのか
おそらく後者なのではないかと考える
まあもともと同盟とか他国との馴れ合いを好まない伊達軍だから、そんなに兄様が奥州を離れることもないしね
「今日はどれ着ようかな……」
ふむ、と考えて、久々に成実さんが買ってくれた紅色の小袖を選んだ
袖を通すか通さないかの時……
廊下を急ぐ足音が聞こえて、喜多さんと二人で顔を見合わせる
誰だろう……足音から考えるに、綱元さんではなさそうだ
そう思ううちに、その人物は私の部屋の前に来て
スターン!という音と共に、障子が壊れる勢いで開いた
「に、兄様……?」
「政宗様、お行儀が悪うございます!」
「夕華!!」
「ちょっと待って、私まだ襦袢姿なんですよ!?」
「そんなのいちいち気にしてられるか!!
成実が……!!」
成実さんの名前と、兄様の焦りの表情……それが何を物語るのかを理解して、一瞬で血の気が引いた
太田城で簪が落ちたことが過る
「成実さんに何かあったんですか!?」
そう詰め寄ると、兄様は黙って手紙を差し出した
差出人は幸村さん
宛名は……私
急いで書いたらしく、いつもの筆遣いじゃない
はやる気持ちで手紙を広げた
そこに書いてあったのは
──上田城に水城海夜が現れたこと
真田十勇士のうち、佐助さんを除く六人が重傷を負ったこと
そして……成実さんは……
右手と腹部を槍で刺され、毒に侵された……
「そんな……」
解毒剤を飲ませたため命の危険はない、という一文は頭からすり抜けていた
「成、実……さん……」
私の手から、手紙が落ちる
「夕華様、文にはなんと……?」
喜多さんの手に拾い上げた手紙を乗せる
「失礼いたします」
そう断った喜多さんが手紙を広げて……
言葉を失うように息を呑んだ
「何とか助かったようだがな……」
「予断を許さぬ状況であるのは、確かでございましょう……」
「……夕華?」
「夕華様……如何なさいました?」
「……成実さん……」
──怖い
いやだ……
成実さんが死んだら……
私……!
「夕華、成実なら大丈夫だぞ」
「そうですわ、あの方に限って、夕華様を残して先立たれるなど……」
身体の震えが止まらない
私の知らないところで成実さんが倒れて……
私の知らない間に、成実さんが死んでしまったら……
そう考えると、頭がおかしくなりそうで
「夕華様、お気をしっかりお持ちくださいまし」
「で、も……」
声が震えて、上手く言葉が出てこない
嫌な予感っていうものは、どうしてこんなに当たってしまうのか──
どうすればいいのか分からなくて
ただ、不安で押しつぶされそうだった……
1/3ページ