9章
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船のロープが係船柱に括り付けられ、錨が降ろされた。
船着き場へとタラップが掛けられて、他の乗客達が次々と船を降りていく。
「どうやら着いたようじゃな。それでは、わしとミーティアは町の外で待っておるぞ。またいつかのように、人々に騒がれても面倒じゃからな」
そう言って陛下は姫様と共に船着き場を出ていった。
それを見送って、私達もいざ下船!
「いざ! 上陸ッ!!」
「ちょ、ちょっとレイラ、急に手を引っ張るなよ!」
「ほらほらエイト、始めの一歩ってやつだよ! 一緒にやろ! せーの!」
「いや僕まで巻き込まっ……! ああもう、せーの!」
「始めの一歩!!」
タラップから飛んで船着き場へ着地。
ここが南の大陸の玄関口、船着き場かぁ!
「うーん! 着いたねぇー!」
「そうだね。さすがにもう休みたいよ……」
「エイトってば、そればっかりー。まあ確かに、イカ退治してから休んでないもんね。ってことでゼシカ、今日は宿屋に泊まっちゃダメ?」
「何言ってるの、着いたばっかりでしょ」
それはそうなんだけど!
それはそうなんだけど、優しさが欲しい!
具体的に言うなら、今日はもう寝たい!
「で、でもさぁ、私達、イカ退治から休みなしだよ……」
「そうだね。レイラは特に頑張ったからね。ゼシカ、今日はレイラを休ませてあげたいんだ。だめかな?」
さすが十年来の付き合いになる幼馴染み。
持つべきものは理解のある仲間だ。
ありがとうエイト、一生ついて行く。
いやごめん、一生は言い過ぎた。
「それもそうね……。分かったわ。情報収集をして、今日はもう休みましょ」
「だってよ、エイト!」
「うん、良かった」
……パーティの主導権、ゼシカに握られてない?
いやまあ、エイトが主導権をいつまでも握り続けていられるとは、私も思ってなかったけど。
それにしても賑やかな港だ。
こんなに人がいるなら、ドルマゲスの行方も案外すんなり手に入ったりして。
「さて……。ドルマゲスはこっちの大陸に着いてから、どこに向かったのかしらね……」
「足取りを掴めたところで、僕らはこの大陸の地理には不慣れだし……。ある程度でも詳しい人がいれば楽なん……」
だけど、と言い終わらず、エイトが不自然に言葉を切って、ヤンガスを見る。
そういえばヤンガス、南の大陸に着いてもそんなに騒がなかった。
どころか……。
「いやぁ、兄貴達と一緒に、この南の大地を踏む日が来るとは感動的でがすなぁ」
「……そうじゃん。ヤンガス、この大陸からトロデーンに来たんじゃん!!」
「ほ、本当だ!? もしかしてヤンガス、この大陸にそこそこ詳しかったりする……?」
「アッシはこの南の大陸に関しては、それなりに詳しいでがす。兄貴、姉貴、頼りにしてくだせぇ!!」
「や、ヤンガスー!!」
ああヤンガスバンザイ、あのとき仲間にして良かった!
世界地図すら持たない私達では、もはや道なりに進むことしか出来ないのだ。
ここに土地勘のある奴が加わると、行動できる範囲も大きく広がる。
ひとまず今日のところは船着き場で情報収集。
日も傾いてきたから、移動は明日にしようということで決まった。
「じゃあ日が落ちたらここに集合で」
「がってん承知でがす!」
「ええ、分かったわ」
「また後でねー!」
三人と手を振って分かれ……ようとしたら、なぜかエイトに手を掴まれた。
いやなぜ?
私も情報収集に行きたいのだが。
「どしたの、エイト」
「レイラは僕と一緒にね。疲れているのに、無理はしないでいいんだ」
「あう……。お見通しでしたか、そりゃそうだ。付き合い長いもんねぇ」
宿屋の中に入っていくエイトについて行って、ベットを四人分確保。
それから宿屋の中で聞き込みをしてみたけれど、そんな奴は見ていないという言葉が帰ってくるだけだった。
「やっぱりそう簡単にはいかないか……」
「海を歩いて渡るくらいだし、人目につかないように行動してるみたいだ。これだけ人が多かったら目撃者もいると思ったんだけど……」
小さくため息をついたエイトが、宿屋の階段を見上げた。
この宿屋、陸側の出入口になっているだけあって、外壁の役割も兼ねているので建物も高い。
「この宿屋って屋上に上がれるんだね。ねぇエイト、行ってみない? もしかしたら誰かいるかも!」
「そうだね。ちょっと行ってみようか」
エイトと二人で階段を上っていく。
見上げただけでも分かったけど、階段が長い。
壁に沿って階段をぐるぐる上りながら、さすがにちょっと疲れてきたぞ、と膝を摩った頃、ようやく屋上へと出た。
「……いい眺めだね」
先に上がったエイトがそう呟いて微笑む。
私もその隣に立って、歓声を上げた。
「わぁ……!! 見て見てエイト、綺麗な夕焼け!」
水平線には橙色の夕陽が接していて、空も海もオレンジ色に輝いている。
吹き付ける海の潮風も心地良い。
しばらくぼんやりしてしまったところで、二人ではっとなって顔を見合わせた。
「それじゃあ、聞きこみ開始だね!」
「うん、そうだね。……もう少しだけ、こうしていたかったな……」
ぽつりとエイトが何かを呟いて、寂しそうに微笑む。
よく聞き取れなかった私は、小首を傾げて顔を覗き込んだ。
エイトが少しだけ目を見開いて、それからなんでもないと首を振る。
変なエイト。
屋上には、陸の方を向いて黄昏れる女性が一人。
とりあえず話を聞いてみるかと、私がそっと声をかけた。
「あの、すみません……」
「はぁ……ククール様ぁ……」
「……はい?」
知らん男の名前が出てきた。
ククール、誰だそいつ。
背後のエイトを思わず振り返ると、エイトはやはり黙って首を横に振った。
「あ、あらやだ、声に出ちゃってた?」
「はい、それはもうはっきりと。はぁ……ククール様ぁ……! って陶酔したお声が」
「誰も再現しろとは言ってないからね、レイラ」
「どんな人なんだろうなって気になっちゃって」
「もしかして、定期船に乗って来たの? それじゃあククール様を知らなくても無理ないわ。ねえあなた達、聖堂騎士団って知ってるでしょ?」
「せ、聖堂騎士団……?」
「えええー!? 知らないの!?」
「す、すみません! 無知ですみません!」
なにせ、ついさっきこの大陸にやってきたばかりなもので!
こっちだと有名なのかな。
……もしかしてヤンガスも、こっちだと有名だったりする?
悪い意味で……。
ともあれ、トロデーン城がある北の大陸には、聖堂騎士団とやらが常駐するような、神聖な建物など無い。
せいぜいが町に一つ教会がある他は、城の西に教会があるくらいだ。
どこにでもあるような教会だから、わざわざ聖堂騎士団なんか配属させるわけないし……。
「だったら教えてあげるわ。聖堂騎士団は、マイエラ修道院にいるの。マイエラ修道院っていうのは、ほら、あそこよ」
「あ、確かになんかそれっぽいものが見えますね……?」
「あれがマイエラ修道院……」
「三大聖地のひとつだっけ? サヴェッラ大聖堂と聖地ゴルドは、一回だけ行ったことあるよね。陛下の付き添いで」
「そうだったね。レイラは具合を悪くして、船室で横になってたっけ」
「言わなくていいんだよ、そういう余計なことは!」
照れ隠しにエイトの肩をバチンと叩く。
「痛いよ」とエイトは言って笑った。
絶対に痛いと思ってないだろ、そうなんだろ。
「あそこで日々、修道院の治安と、オディロ修道院長様の命をお守りしてるのが、聖堂騎士団なの。強くて頭も良くてエリートで、しかもみんな、超イケメン揃い! ね、ね? 素敵でしょ? あなた達も一度、見に行ってみたら? 私なんて毎日ここからマイエラ修道院を眺めてるんだから!」
「毎日!? ここから!? 修道院を!? お祈りに行くんじゃなくて!?」
「レイラ、シッ!!」
エイトが口を塞ぎに来たけど、もう遅い。
全部言っちゃった。
女性がピキッとならないうちに、エイトに手を引かれて、引き摺られるようにして私は屋上から下りることになった。
船着き場へとタラップが掛けられて、他の乗客達が次々と船を降りていく。
「どうやら着いたようじゃな。それでは、わしとミーティアは町の外で待っておるぞ。またいつかのように、人々に騒がれても面倒じゃからな」
そう言って陛下は姫様と共に船着き場を出ていった。
それを見送って、私達もいざ下船!
「いざ! 上陸ッ!!」
「ちょ、ちょっとレイラ、急に手を引っ張るなよ!」
「ほらほらエイト、始めの一歩ってやつだよ! 一緒にやろ! せーの!」
「いや僕まで巻き込まっ……! ああもう、せーの!」
「始めの一歩!!」
タラップから飛んで船着き場へ着地。
ここが南の大陸の玄関口、船着き場かぁ!
「うーん! 着いたねぇー!」
「そうだね。さすがにもう休みたいよ……」
「エイトってば、そればっかりー。まあ確かに、イカ退治してから休んでないもんね。ってことでゼシカ、今日は宿屋に泊まっちゃダメ?」
「何言ってるの、着いたばっかりでしょ」
それはそうなんだけど!
それはそうなんだけど、優しさが欲しい!
具体的に言うなら、今日はもう寝たい!
「で、でもさぁ、私達、イカ退治から休みなしだよ……」
「そうだね。レイラは特に頑張ったからね。ゼシカ、今日はレイラを休ませてあげたいんだ。だめかな?」
さすが十年来の付き合いになる幼馴染み。
持つべきものは理解のある仲間だ。
ありがとうエイト、一生ついて行く。
いやごめん、一生は言い過ぎた。
「それもそうね……。分かったわ。情報収集をして、今日はもう休みましょ」
「だってよ、エイト!」
「うん、良かった」
……パーティの主導権、ゼシカに握られてない?
いやまあ、エイトが主導権をいつまでも握り続けていられるとは、私も思ってなかったけど。
それにしても賑やかな港だ。
こんなに人がいるなら、ドルマゲスの行方も案外すんなり手に入ったりして。
「さて……。ドルマゲスはこっちの大陸に着いてから、どこに向かったのかしらね……」
「足取りを掴めたところで、僕らはこの大陸の地理には不慣れだし……。ある程度でも詳しい人がいれば楽なん……」
だけど、と言い終わらず、エイトが不自然に言葉を切って、ヤンガスを見る。
そういえばヤンガス、南の大陸に着いてもそんなに騒がなかった。
どころか……。
「いやぁ、兄貴達と一緒に、この南の大地を踏む日が来るとは感動的でがすなぁ」
「……そうじゃん。ヤンガス、この大陸からトロデーンに来たんじゃん!!」
「ほ、本当だ!? もしかしてヤンガス、この大陸にそこそこ詳しかったりする……?」
「アッシはこの南の大陸に関しては、それなりに詳しいでがす。兄貴、姉貴、頼りにしてくだせぇ!!」
「や、ヤンガスー!!」
ああヤンガスバンザイ、あのとき仲間にして良かった!
世界地図すら持たない私達では、もはや道なりに進むことしか出来ないのだ。
ここに土地勘のある奴が加わると、行動できる範囲も大きく広がる。
ひとまず今日のところは船着き場で情報収集。
日も傾いてきたから、移動は明日にしようということで決まった。
「じゃあ日が落ちたらここに集合で」
「がってん承知でがす!」
「ええ、分かったわ」
「また後でねー!」
三人と手を振って分かれ……ようとしたら、なぜかエイトに手を掴まれた。
いやなぜ?
私も情報収集に行きたいのだが。
「どしたの、エイト」
「レイラは僕と一緒にね。疲れているのに、無理はしないでいいんだ」
「あう……。お見通しでしたか、そりゃそうだ。付き合い長いもんねぇ」
宿屋の中に入っていくエイトについて行って、ベットを四人分確保。
それから宿屋の中で聞き込みをしてみたけれど、そんな奴は見ていないという言葉が帰ってくるだけだった。
「やっぱりそう簡単にはいかないか……」
「海を歩いて渡るくらいだし、人目につかないように行動してるみたいだ。これだけ人が多かったら目撃者もいると思ったんだけど……」
小さくため息をついたエイトが、宿屋の階段を見上げた。
この宿屋、陸側の出入口になっているだけあって、外壁の役割も兼ねているので建物も高い。
「この宿屋って屋上に上がれるんだね。ねぇエイト、行ってみない? もしかしたら誰かいるかも!」
「そうだね。ちょっと行ってみようか」
エイトと二人で階段を上っていく。
見上げただけでも分かったけど、階段が長い。
壁に沿って階段をぐるぐる上りながら、さすがにちょっと疲れてきたぞ、と膝を摩った頃、ようやく屋上へと出た。
「……いい眺めだね」
先に上がったエイトがそう呟いて微笑む。
私もその隣に立って、歓声を上げた。
「わぁ……!! 見て見てエイト、綺麗な夕焼け!」
水平線には橙色の夕陽が接していて、空も海もオレンジ色に輝いている。
吹き付ける海の潮風も心地良い。
しばらくぼんやりしてしまったところで、二人ではっとなって顔を見合わせた。
「それじゃあ、聞きこみ開始だね!」
「うん、そうだね。……もう少しだけ、こうしていたかったな……」
ぽつりとエイトが何かを呟いて、寂しそうに微笑む。
よく聞き取れなかった私は、小首を傾げて顔を覗き込んだ。
エイトが少しだけ目を見開いて、それからなんでもないと首を振る。
変なエイト。
屋上には、陸の方を向いて黄昏れる女性が一人。
とりあえず話を聞いてみるかと、私がそっと声をかけた。
「あの、すみません……」
「はぁ……ククール様ぁ……」
「……はい?」
知らん男の名前が出てきた。
ククール、誰だそいつ。
背後のエイトを思わず振り返ると、エイトはやはり黙って首を横に振った。
「あ、あらやだ、声に出ちゃってた?」
「はい、それはもうはっきりと。はぁ……ククール様ぁ……! って陶酔したお声が」
「誰も再現しろとは言ってないからね、レイラ」
「どんな人なんだろうなって気になっちゃって」
「もしかして、定期船に乗って来たの? それじゃあククール様を知らなくても無理ないわ。ねえあなた達、聖堂騎士団って知ってるでしょ?」
「せ、聖堂騎士団……?」
「えええー!? 知らないの!?」
「す、すみません! 無知ですみません!」
なにせ、ついさっきこの大陸にやってきたばかりなもので!
こっちだと有名なのかな。
……もしかしてヤンガスも、こっちだと有名だったりする?
悪い意味で……。
ともあれ、トロデーン城がある北の大陸には、聖堂騎士団とやらが常駐するような、神聖な建物など無い。
せいぜいが町に一つ教会がある他は、城の西に教会があるくらいだ。
どこにでもあるような教会だから、わざわざ聖堂騎士団なんか配属させるわけないし……。
「だったら教えてあげるわ。聖堂騎士団は、マイエラ修道院にいるの。マイエラ修道院っていうのは、ほら、あそこよ」
「あ、確かになんかそれっぽいものが見えますね……?」
「あれがマイエラ修道院……」
「三大聖地のひとつだっけ? サヴェッラ大聖堂と聖地ゴルドは、一回だけ行ったことあるよね。陛下の付き添いで」
「そうだったね。レイラは具合を悪くして、船室で横になってたっけ」
「言わなくていいんだよ、そういう余計なことは!」
照れ隠しにエイトの肩をバチンと叩く。
「痛いよ」とエイトは言って笑った。
絶対に痛いと思ってないだろ、そうなんだろ。
「あそこで日々、修道院の治安と、オディロ修道院長様の命をお守りしてるのが、聖堂騎士団なの。強くて頭も良くてエリートで、しかもみんな、超イケメン揃い! ね、ね? 素敵でしょ? あなた達も一度、見に行ってみたら? 私なんて毎日ここからマイエラ修道院を眺めてるんだから!」
「毎日!? ここから!? 修道院を!? お祈りに行くんじゃなくて!?」
「レイラ、シッ!!」
エイトが口を塞ぎに来たけど、もう遅い。
全部言っちゃった。
女性がピキッとならないうちに、エイトに手を引かれて、引き摺られるようにして私は屋上から下りることになった。
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