81章
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失意の中で迎えた翌朝。
大聖堂の鐘は響き、サヴェッラ大聖堂は大国同士の結婚というめでたい日を迎えた。
祝福の鐘が呪いのようにも感じられる。
すっかり午前中の気配を感じて、「ここまで遅く起きたのは久しぶりだな」と、取り留めもないことを考えた。
ここ最近は忙しくて、ろくに眠れていなかったから、疲れも溜まっていたのかもしれない。
これからどうしようかとぼんやり考えていると、隣から声がかけられた。
「おはようごぜえやす、兄貴。もうじき姉貴の結婚式が始まるでがすよ。せっかくここまで来たんだし、式に出れなくても、せめて近くまで行ってみましょうや。じゃっ、アッシは一足先に、式場の大聖堂の前へ行ってるでがすよ」
ヤンガスが宿屋から出ていくのを見送って、ため息をつく。
行ってどうするっていうんだろう。
レイラはもう、手の届かないところに行ってしまうのに。
それでも待っていると言われれば、それを無視するわけにもいかないか。
気乗りしないながらも宿屋を出て大聖堂へ向かおうとすると、階段の前にククールとゼシカと……ミーティア姫がいた。
「エイト!」
「やっと来たか、エイト。もう結婚式は始まってるようだぜ」
ククールが階段の上を親指で差す。
大聖堂の前へ向かう人たちの行列のおかげで、階段付近はかつて見た事ないほどの大混雑だ。
……レイラとチャゴス王子の結婚式なんて、誰が望んだことなんだか。
僕はそんなこと、望んだ覚えなんてないのに。
「あんだけ人が多けりゃよ、どさくさに紛れて何かやらかしても、大丈夫なんじゃねーかな」
「やらかすって何を?」
「決まってるわ! 乗り込むのよ!」
「僕の首が飛びます!!」
それはもう物理的に首が飛んでいきます!!
どうしてミーティア姫が乗り込む気でいるんだ。
ゼシカも否定しないし、ひょっとしてヤンガスもそのつもりでいるのか?
さすがにそれは……国際問題に発展しかねないぞ……!?
「エイト。昨日はお前を止めたが、あいつを幸せにしてやれるのはお前だけだと思ってる。あと、俺たちは仲間だ。お前が何かするつもりなら、力を貸すぜ」
「ククール……」
「トロデ王も頑固よね。いくら先代の約束でも、ミーティア姫様が嫌がってるんだから、やめればいいのに……。って、私は思うんだけどね。大国同士の結婚ともなると、そういうわけにもいかないのかな」
「……そういえば、どうしてミーティア姫は昨夜、僕らのいる宿屋に?」
「最初は、トロデーンの船にいようかと思ったの。だけどレイラに嫌なことを押しつけて、そのままトロデーンへ帰るなんて、ミーティアにはできませんわ! だってレイラは、エイトの恋人だもの! チャゴス王子なんかに奪われては駄目! 早く助けに行ってあげて、エイト!」
ミーティア姫に背中を押されて、階段を昇っていく。
ふと視界の端に、見覚えのある顔が映った。
あの人って……たしか、リーザス村で見たことがある気がする。
思わずその人を見てしまうと、その人もこちらに気付いて「おやぁ?」と首を傾げた。
「奇遇だねぇ。ほら、ゼシカのフィ〜アンセだったラグサットだよ。まあ、それも昔の話だけどね。はははは……」
「ああ、結局その婚約は破棄になったんですね……」
ゼシカがアルバート家から勘当されたせいなのか、それとも自分がサザンビークの大臣に勘当を言い渡されているせいかは知らないけど。
この人の場合は半分くらい自業自得だからなぁ。
「そうそう。君たちと一緒に煉獄島へ送られたっていう、ニノ大司教を覚えてるか〜い? これがすごいんだよ。な〜んと! ニノ大司教は、新しい法皇様におなりになったのさ。どん底からの奇跡の復活。いやぁ……人生ってのはさぁ、何があるか分からないもんだよねぇ」
「ニノ大司教……ご無事だったんだ、よかった……」
エレベーターの下敷きになってないといいなと思いつつ、その後の消息を知る機会がなかったけど……。
まさかしっかり法皇になっていたなんて、さすがはニノ大司教だ。
僕とラグサットさんが話をしている間に、ゼシカがしれっと横を通っていった。
僕を盾にしないでほしかったな……。
大聖堂の前は人だかりで、先頭にも行けそうになかった。
これじゃあ中の様子も見られそうにないな。
「まったく、すごい人出だね。これじゃちっとも見えやしないよ!」
「どうしたんだ!? 結婚式はもう始まってるのか!?」
「花嫁のミーティア様って、ものすごーく美人なんだって! あたしもあやかりたいな〜」
「わしは新郎新婦よりも、新しい法皇様を見たいですじゃ。しかしここじゃ何も見えん!」
「おめでとー! おめでとー! ミーティア様ー! チャゴス様ー!」
……本当にすごい人の数だ。
気後れしてその様子を後ろから眺めていると、ヤンガスが背後にいた修道士を押し返した。
「うわ! そんなに押さないで!」
修道士の言葉も虚しく、ヤンガスの腕がブン! と修道士を転がした。
コテンと尻もちをついた修道士には目もくれず、ヤンガスは僕を見て「おお、兄貴ィ!」と嬉しそうだ。
いや、僕のことはいいから、お前が転ばせた修道士を起こしてあげてほしいな……。
「来てくれると信じていたでがすよ! さあ、こっちこっち!」
そう言うや否や、僕の手を掴んでヤンガスが人だかりを押し退けていく。
つんのめりながら引っ張られていき、僕とヤンガスは人だかりの最前列へ。
さすがに疲れたのか、ヤンガスは肩で息を切らして、それから大聖堂の入口を見上げた。
「さてと、ここまで来たら、あとはあの邪魔くさい見張りをどうするかでがすが……」
「え? どうするって、どういうことだよ……?」
「もちろん乗り込むんでがすよ」
「何がもちろんだよ!?」
どうしてみんなは揃いも揃って、結婚式に乗り込む前提で動くんだ!
トロデ王のメンツが丸潰れなんて話どころじゃない!
間違いなくトロデーンは汚名を着せられることになるし、最悪サザンビークとの国交が断絶になる可能性だって……。
「早くしねぇと、結婚式が終わっちまうでがすよ。アッシはとっくに覚悟がついてるでがす。とにかく、乗り込むなら今しかねぇでげすよ」
「乗り……っ!?」
出来るかそんなこと、と言い返そうとした僕の肩を、誰かが叩く。
いつの間にか隣にはククールが立っていた。
ククールだけじゃなくて、その横にはゼシカとミーティア姫も。
「聖堂騎士団が襲ってきたら、俺たちが援護してやる。だからお前はその隙に中に入れ」
「は!?」
「エイトだって、このまま黙って、レイラとチャゴス王子の結婚を許すわけないでしょ? 私が許すわけないんだもの」
「え!?」
「エイト! エイトの大切な人なんでしょう? ちゃんとエイトが取り返しにいかないと! 男を見せるときって、こういう時のことを言うのよ!」
「ちょっと違う気がします!!」
「つべこべ言わずに行けって。やらずに後悔するより、やって後悔ってな」
「無茶苦茶だよ!!」
……だけど。
みんなが、僕とレイラのことを応援してくれているんだとしたら。
僕らの幸せを、願ってくれているんだとしたら。
……それに応えなければ、レイラの恋人なんか名乗れやしない!
大聖堂の鐘は響き、サヴェッラ大聖堂は大国同士の結婚というめでたい日を迎えた。
祝福の鐘が呪いのようにも感じられる。
すっかり午前中の気配を感じて、「ここまで遅く起きたのは久しぶりだな」と、取り留めもないことを考えた。
ここ最近は忙しくて、ろくに眠れていなかったから、疲れも溜まっていたのかもしれない。
これからどうしようかとぼんやり考えていると、隣から声がかけられた。
「おはようごぜえやす、兄貴。もうじき姉貴の結婚式が始まるでがすよ。せっかくここまで来たんだし、式に出れなくても、せめて近くまで行ってみましょうや。じゃっ、アッシは一足先に、式場の大聖堂の前へ行ってるでがすよ」
ヤンガスが宿屋から出ていくのを見送って、ため息をつく。
行ってどうするっていうんだろう。
レイラはもう、手の届かないところに行ってしまうのに。
それでも待っていると言われれば、それを無視するわけにもいかないか。
気乗りしないながらも宿屋を出て大聖堂へ向かおうとすると、階段の前にククールとゼシカと……ミーティア姫がいた。
「エイト!」
「やっと来たか、エイト。もう結婚式は始まってるようだぜ」
ククールが階段の上を親指で差す。
大聖堂の前へ向かう人たちの行列のおかげで、階段付近はかつて見た事ないほどの大混雑だ。
……レイラとチャゴス王子の結婚式なんて、誰が望んだことなんだか。
僕はそんなこと、望んだ覚えなんてないのに。
「あんだけ人が多けりゃよ、どさくさに紛れて何かやらかしても、大丈夫なんじゃねーかな」
「やらかすって何を?」
「決まってるわ! 乗り込むのよ!」
「僕の首が飛びます!!」
それはもう物理的に首が飛んでいきます!!
どうしてミーティア姫が乗り込む気でいるんだ。
ゼシカも否定しないし、ひょっとしてヤンガスもそのつもりでいるのか?
さすがにそれは……国際問題に発展しかねないぞ……!?
「エイト。昨日はお前を止めたが、あいつを幸せにしてやれるのはお前だけだと思ってる。あと、俺たちは仲間だ。お前が何かするつもりなら、力を貸すぜ」
「ククール……」
「トロデ王も頑固よね。いくら先代の約束でも、ミーティア姫様が嫌がってるんだから、やめればいいのに……。って、私は思うんだけどね。大国同士の結婚ともなると、そういうわけにもいかないのかな」
「……そういえば、どうしてミーティア姫は昨夜、僕らのいる宿屋に?」
「最初は、トロデーンの船にいようかと思ったの。だけどレイラに嫌なことを押しつけて、そのままトロデーンへ帰るなんて、ミーティアにはできませんわ! だってレイラは、エイトの恋人だもの! チャゴス王子なんかに奪われては駄目! 早く助けに行ってあげて、エイト!」
ミーティア姫に背中を押されて、階段を昇っていく。
ふと視界の端に、見覚えのある顔が映った。
あの人って……たしか、リーザス村で見たことがある気がする。
思わずその人を見てしまうと、その人もこちらに気付いて「おやぁ?」と首を傾げた。
「奇遇だねぇ。ほら、ゼシカのフィ〜アンセだったラグサットだよ。まあ、それも昔の話だけどね。はははは……」
「ああ、結局その婚約は破棄になったんですね……」
ゼシカがアルバート家から勘当されたせいなのか、それとも自分がサザンビークの大臣に勘当を言い渡されているせいかは知らないけど。
この人の場合は半分くらい自業自得だからなぁ。
「そうそう。君たちと一緒に煉獄島へ送られたっていう、ニノ大司教を覚えてるか〜い? これがすごいんだよ。な〜んと! ニノ大司教は、新しい法皇様におなりになったのさ。どん底からの奇跡の復活。いやぁ……人生ってのはさぁ、何があるか分からないもんだよねぇ」
「ニノ大司教……ご無事だったんだ、よかった……」
エレベーターの下敷きになってないといいなと思いつつ、その後の消息を知る機会がなかったけど……。
まさかしっかり法皇になっていたなんて、さすがはニノ大司教だ。
僕とラグサットさんが話をしている間に、ゼシカがしれっと横を通っていった。
僕を盾にしないでほしかったな……。
大聖堂の前は人だかりで、先頭にも行けそうになかった。
これじゃあ中の様子も見られそうにないな。
「まったく、すごい人出だね。これじゃちっとも見えやしないよ!」
「どうしたんだ!? 結婚式はもう始まってるのか!?」
「花嫁のミーティア様って、ものすごーく美人なんだって! あたしもあやかりたいな〜」
「わしは新郎新婦よりも、新しい法皇様を見たいですじゃ。しかしここじゃ何も見えん!」
「おめでとー! おめでとー! ミーティア様ー! チャゴス様ー!」
……本当にすごい人の数だ。
気後れしてその様子を後ろから眺めていると、ヤンガスが背後にいた修道士を押し返した。
「うわ! そんなに押さないで!」
修道士の言葉も虚しく、ヤンガスの腕がブン! と修道士を転がした。
コテンと尻もちをついた修道士には目もくれず、ヤンガスは僕を見て「おお、兄貴ィ!」と嬉しそうだ。
いや、僕のことはいいから、お前が転ばせた修道士を起こしてあげてほしいな……。
「来てくれると信じていたでがすよ! さあ、こっちこっち!」
そう言うや否や、僕の手を掴んでヤンガスが人だかりを押し退けていく。
つんのめりながら引っ張られていき、僕とヤンガスは人だかりの最前列へ。
さすがに疲れたのか、ヤンガスは肩で息を切らして、それから大聖堂の入口を見上げた。
「さてと、ここまで来たら、あとはあの邪魔くさい見張りをどうするかでがすが……」
「え? どうするって、どういうことだよ……?」
「もちろん乗り込むんでがすよ」
「何がもちろんだよ!?」
どうしてみんなは揃いも揃って、結婚式に乗り込む前提で動くんだ!
トロデ王のメンツが丸潰れなんて話どころじゃない!
間違いなくトロデーンは汚名を着せられることになるし、最悪サザンビークとの国交が断絶になる可能性だって……。
「早くしねぇと、結婚式が終わっちまうでがすよ。アッシはとっくに覚悟がついてるでがす。とにかく、乗り込むなら今しかねぇでげすよ」
「乗り……っ!?」
出来るかそんなこと、と言い返そうとした僕の肩を、誰かが叩く。
いつの間にか隣にはククールが立っていた。
ククールだけじゃなくて、その横にはゼシカとミーティア姫も。
「聖堂騎士団が襲ってきたら、俺たちが援護してやる。だからお前はその隙に中に入れ」
「は!?」
「エイトだって、このまま黙って、レイラとチャゴス王子の結婚を許すわけないでしょ? 私が許すわけないんだもの」
「え!?」
「エイト! エイトの大切な人なんでしょう? ちゃんとエイトが取り返しにいかないと! 男を見せるときって、こういう時のことを言うのよ!」
「ちょっと違う気がします!!」
「つべこべ言わずに行けって。やらずに後悔するより、やって後悔ってな」
「無茶苦茶だよ!!」
……だけど。
みんなが、僕とレイラのことを応援してくれているんだとしたら。
僕らの幸せを、願ってくれているんだとしたら。
……それに応えなければ、レイラの恋人なんか名乗れやしない!
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