79章
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世界が平和になって数ヶ月後。
トロデーン王国の復活も世界中が知るところとなり、城の賑わいもすっかり元通りになってきた今日この頃。
今日は私たちにとって、とても大事な大仕事の日だ。
最後の確認を済ませて詰所へ戻ると、エイトが机に座って読書中。
余裕そうというか、もはや今日の仕事程度では緊張したりしないんだろうな。
ラプソーンを倒した人間ともなると、心臓が鉄になってるのかもしれない。
「う〜ん……っ。疲れたぁ」
「おかえり、レイラ」
「ただいまぁ。最終チェック終わったよ〜」
ありがとうと微笑むエイトにひらひらと手を振って、エイトが座っている机に腰かける。
椅子がないので仕方ないということにしてほしい。
晴れて近衛兵に復帰した私とエイト。
私は十日間、エイトは一ヶ月の休暇を経て、今は近衛兵として毎日職務に邁進している。
旅に出る前に過ごしていた日常とさほど変わらない──かと思いきや。
私とエイトの生活は、この数ヶ月で激変してしまった。
それはなぜかと言うと──。
「いやぁ、光ってるねぇ!」
「何が?」
「近衛隊長のバッジ!」
そう! 我々の旅のリーダーだったエイトは、この度なんと近衛隊長に大昇進したのである!
弱冠十八歳にして、一国の近衛隊を率いる隊長となったエイトを支えるのは、もちろん私だ。
いやもう本当に、生まれも育ちも分からぬ孤児二人が、国の近衛兵を率いる立場までのし上がるなど、当時誰が思っただろうか。
「そういうレイラこそ、副隊長のバッジが綺麗だよ」
「へ? あ、ありがと……」
エイトの左胸には隊長の。
私の左胸には副隊長の。
それぞれの真新しいバッジがきらりと光る。
隊長となったエイトは、まず引き継ぎで城中を駆け回る日々が続いた。
ちなみに私はというと、実は副隊長という役職は初めて設けられたものなので、引き継ぎらしい引き継ぎはなかったと言っていい。
なのでこちらは、エイトが引き継いだ業務から仕事を振り分けてもらえばいいかな、と思っている。
……というのが、ここ最近で起きたビッグニュース。
そして今日は何があるかというと──。
「……いよいよ今日だね、私たちの大仕事」
「僕としては複雑な思いだけどね」
「それは私もだよ……。あの約束がちゃんと生きてたなんて……」
二人でため息をつく。
今日は、姫様がサヴェッラ大聖堂へ行く日。
明日は大聖堂で、あのブ……チャゴス王子と姫様の結婚式が執り行われるのだ。
私たち近衛隊の仕事は、トロデーンからサヴェッラ大聖堂までの護衛。
気は全然進まないけど、頑張らなきゃ。
決まったことをグチグチ言っても仕方ないのは分かっているし、今更どうにもならないことだというのも理解している。
ただそれでも、姫様をあんなクソ野郎に渡さなければならないことに納得できるかと言われれば、それは絶対に否だ。
私とエイトが城を離れる関係で、近衛隊の指示系統も特別仕様になる。
その最終確認をして戻ってきたのがついさっき、というわけだ。
あーあ、と二度目のため息が口から溢れ出た時。
「兄貴、姉貴ー!」
詰所の入口から、懐かしい声が聞こえてきた。
私とエイトを姉貴兄貴と呼ぶガサガサ声は……!
「ヤンガス! 久しぶりー!」
詰所の入口でブンブンと手を振るヤンガスに手を振り返す。
半年くらいは会ってないはずだけど、全然変わってないや。
「へへっ、久しぶりでがす。最後の戦い以来でがすなぁ。そうそう、聞いたでがすよ。なんでも近衛隊長と副隊長になったとか! 今の兄貴と姉貴は光って見えますよ。そんなお二人の初仕事をアッシが手伝えるなんて、弟分として光栄でがす」
「こちらこそ。ヤンガスが居てくれると心強いよ。またよろしく」
エイトに「心強い」と言われたヤンガスが、満更でもなさそうに鼻の下を擦った。
心強いのは確かにそうかも。
なにより、またみんなで旅が出来るのが嬉しい。
旅という程の距離じゃないのが残念だけど。
「今回の兄貴たちの仕事は、馬姫様を……あっ、いけね! もう馬じゃねーんだ。ミーティア姫様を、結婚式が行われるサヴェッラ大聖堂まで護衛して行くんでがすよね」
「片道限りの護衛だけどね。帰りは気楽な船旅だよ」
「……そうだね」
「けど意外でがすよ。あんなことがあったのに、まだチャゴス王子との婚約が生きてたとは」
「それは本当にそうだよね。てっきり白紙に戻ってるかと思ったのに」
「全然そんなことなかったね……」
エイトは寂しそうにして、言葉少なに相槌を打つだけだ。
やっぱり姫様とお別れになるのは寂しいよなぁ。
しかも相手があのチャゴス王子なのが尚のこと許せん!
あの野郎、儀式から会ってないけど、少しはマシな性格になってんだろうなぁ!?
「そうそう。ここに来る途中、大臣に言伝を頼まれたでがすよ。出発の用意は整ったから、部屋にいるミーティア姫を兄貴が連れてきてくれって」
「……僕が? 分かった、すぐに連れてくるよ」
「そいじゃアッシは城の中庭で待ってるでがすよ」
ヤンガスが詰所を出ていって、エイトと顔を見合わせる。
姫様のご指名はエイトだけだから、私はいないほうがいいかな。
私も先に中庭で待つことにしよっと。
「じゃあ宜しく頼んだぜ、隊長!」
「え? レイラも一緒に迎えに行こうよ」
「バッカ野郎、姫様がなんでわざわざエイトだけ呼んだと思ってんだ! それが分かんないにしても、今回はエイト一人で迎えに行ったほうがいいんだよ。じゃ、そういうわけで! 私も先に中庭で待ってるね!」
ヤンガスを追いかけるように部屋の外へ向かおうとすると、途中までは一緒に行くと言ってエイトも席を立った。
本当に私離れができない隊長様である。
普段なら嬉しいところだけど、姫様の心境を思うとどうにも喜べないな。
世界が平和になって、みんなでこれから幸せになろうってのに、こんなのはあんまりだよ……。
トロデーン王国の復活も世界中が知るところとなり、城の賑わいもすっかり元通りになってきた今日この頃。
今日は私たちにとって、とても大事な大仕事の日だ。
最後の確認を済ませて詰所へ戻ると、エイトが机に座って読書中。
余裕そうというか、もはや今日の仕事程度では緊張したりしないんだろうな。
ラプソーンを倒した人間ともなると、心臓が鉄になってるのかもしれない。
「う〜ん……っ。疲れたぁ」
「おかえり、レイラ」
「ただいまぁ。最終チェック終わったよ〜」
ありがとうと微笑むエイトにひらひらと手を振って、エイトが座っている机に腰かける。
椅子がないので仕方ないということにしてほしい。
晴れて近衛兵に復帰した私とエイト。
私は十日間、エイトは一ヶ月の休暇を経て、今は近衛兵として毎日職務に邁進している。
旅に出る前に過ごしていた日常とさほど変わらない──かと思いきや。
私とエイトの生活は、この数ヶ月で激変してしまった。
それはなぜかと言うと──。
「いやぁ、光ってるねぇ!」
「何が?」
「近衛隊長のバッジ!」
そう! 我々の旅のリーダーだったエイトは、この度なんと近衛隊長に大昇進したのである!
弱冠十八歳にして、一国の近衛隊を率いる隊長となったエイトを支えるのは、もちろん私だ。
いやもう本当に、生まれも育ちも分からぬ孤児二人が、国の近衛兵を率いる立場までのし上がるなど、当時誰が思っただろうか。
「そういうレイラこそ、副隊長のバッジが綺麗だよ」
「へ? あ、ありがと……」
エイトの左胸には隊長の。
私の左胸には副隊長の。
それぞれの真新しいバッジがきらりと光る。
隊長となったエイトは、まず引き継ぎで城中を駆け回る日々が続いた。
ちなみに私はというと、実は副隊長という役職は初めて設けられたものなので、引き継ぎらしい引き継ぎはなかったと言っていい。
なのでこちらは、エイトが引き継いだ業務から仕事を振り分けてもらえばいいかな、と思っている。
……というのが、ここ最近で起きたビッグニュース。
そして今日は何があるかというと──。
「……いよいよ今日だね、私たちの大仕事」
「僕としては複雑な思いだけどね」
「それは私もだよ……。あの約束がちゃんと生きてたなんて……」
二人でため息をつく。
今日は、姫様がサヴェッラ大聖堂へ行く日。
明日は大聖堂で、あのブ……チャゴス王子と姫様の結婚式が執り行われるのだ。
私たち近衛隊の仕事は、トロデーンからサヴェッラ大聖堂までの護衛。
気は全然進まないけど、頑張らなきゃ。
決まったことをグチグチ言っても仕方ないのは分かっているし、今更どうにもならないことだというのも理解している。
ただそれでも、姫様をあんなクソ野郎に渡さなければならないことに納得できるかと言われれば、それは絶対に否だ。
私とエイトが城を離れる関係で、近衛隊の指示系統も特別仕様になる。
その最終確認をして戻ってきたのがついさっき、というわけだ。
あーあ、と二度目のため息が口から溢れ出た時。
「兄貴、姉貴ー!」
詰所の入口から、懐かしい声が聞こえてきた。
私とエイトを姉貴兄貴と呼ぶガサガサ声は……!
「ヤンガス! 久しぶりー!」
詰所の入口でブンブンと手を振るヤンガスに手を振り返す。
半年くらいは会ってないはずだけど、全然変わってないや。
「へへっ、久しぶりでがす。最後の戦い以来でがすなぁ。そうそう、聞いたでがすよ。なんでも近衛隊長と副隊長になったとか! 今の兄貴と姉貴は光って見えますよ。そんなお二人の初仕事をアッシが手伝えるなんて、弟分として光栄でがす」
「こちらこそ。ヤンガスが居てくれると心強いよ。またよろしく」
エイトに「心強い」と言われたヤンガスが、満更でもなさそうに鼻の下を擦った。
心強いのは確かにそうかも。
なにより、またみんなで旅が出来るのが嬉しい。
旅という程の距離じゃないのが残念だけど。
「今回の兄貴たちの仕事は、馬姫様を……あっ、いけね! もう馬じゃねーんだ。ミーティア姫様を、結婚式が行われるサヴェッラ大聖堂まで護衛して行くんでがすよね」
「片道限りの護衛だけどね。帰りは気楽な船旅だよ」
「……そうだね」
「けど意外でがすよ。あんなことがあったのに、まだチャゴス王子との婚約が生きてたとは」
「それは本当にそうだよね。てっきり白紙に戻ってるかと思ったのに」
「全然そんなことなかったね……」
エイトは寂しそうにして、言葉少なに相槌を打つだけだ。
やっぱり姫様とお別れになるのは寂しいよなぁ。
しかも相手があのチャゴス王子なのが尚のこと許せん!
あの野郎、儀式から会ってないけど、少しはマシな性格になってんだろうなぁ!?
「そうそう。ここに来る途中、大臣に言伝を頼まれたでがすよ。出発の用意は整ったから、部屋にいるミーティア姫を兄貴が連れてきてくれって」
「……僕が? 分かった、すぐに連れてくるよ」
「そいじゃアッシは城の中庭で待ってるでがすよ」
ヤンガスが詰所を出ていって、エイトと顔を見合わせる。
姫様のご指名はエイトだけだから、私はいないほうがいいかな。
私も先に中庭で待つことにしよっと。
「じゃあ宜しく頼んだぜ、隊長!」
「え? レイラも一緒に迎えに行こうよ」
「バッカ野郎、姫様がなんでわざわざエイトだけ呼んだと思ってんだ! それが分かんないにしても、今回はエイト一人で迎えに行ったほうがいいんだよ。じゃ、そういうわけで! 私も先に中庭で待ってるね!」
ヤンガスを追いかけるように部屋の外へ向かおうとすると、途中までは一緒に行くと言ってエイトも席を立った。
本当に私離れができない隊長様である。
普段なら嬉しいところだけど、姫様の心境を思うとどうにも喜べないな。
世界が平和になって、みんなでこれから幸せになろうってのに、こんなのはあんまりだよ……。
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