77章
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トロデーン復活の宴がお開きになったタイミングで、僕は隊長を捕まえた。
これから僕らは、旅に出る前の日常に戻っていく。
旅に出る前の日常に戻るということは──また、あの子が手を血に染める日が来るかもしれないということだ。
せっかく自分の中で区切りをつけてくれたのに、またレイラが重い責任を背負い込むのは、僕が耐えられない。
「隊長。……レイラに、これからも『夜勤』を頼むんですか」
「……」
隊長は答えない。
それが無言の肯定だということは、流石の僕でも察せられた。
もうやめてほしい、これ以上あの子の繊細な心を傷つけないでほしい。
あの子がどんな思いで、「能天気なレイラ」という周囲のイメージを演じていたか。
本当はそれが出来なくなるくらい、罪悪感で心を蝕まれていたのに。
「お願いします。もうあの子に、レイラに『夜勤』を命じないでください。お願いします」
隊長に向かって腰を折って頭を下げる。
そのまま返答を待っていると、「お願いします」と違う声が、同じように隊長へ頼み込んでいた。
すぐ後ろを見やると、そこにはゼシカとヤンガスがいて、僕と同じように頭を下げている。
「み、皆様方──」
「アッシにゃあ、難しいことは分からねぇ。それでも、レイラの姉貴がずっと苦しんでたんだってことぐれぇは、分かってるつもりでがす。もう姉貴にあんな思いは二度とさせたくねぇんだ。だから……頼む。この通りだ! どうしても誰かを手にかけなきゃなんねぇときは、アッシが姉貴の代わりに手を汚してやらぁ!」
「ヤンガス……」
「レイラは、ようやく……一度死んだことでようやく自分を許せたの。たくさんの人を『国を守る』という大義名分の元に殺してきたことを、あの子は自分の罪だと思って、今まで生きてきたのよ。それがようやく今、レイラの中で清算されたの。また同じ苦しみを味わわなきゃいけないなんて、そんなのあんまりだわ」
「……ゼシカ」
お願いします、と二人がまた頭を下げる。
僕も改めて隊長へ頭を下げた。
そこへ幾分か上機嫌な足音が近付いてきて──「ああ」と隊長に声をかけたのは、なんとククールだった。
「あんたがレイラの隊長さんか? ちょうどいい、ひとつ頼みがあるんだ。あいつを『夜勤』から解放してくれないもんかな」
「──」
まさかククールまで、そう言ってくれるなんて。
僕ら四人に乞われた隊長は、「あー」と困ったような声を出して、ため息をついた。
それから顔を上げるように言われて、僕ら三人が下げていた頭を上げる。
隊長は僕らを見て、やっぱり困ったように笑った。
「もう『夜勤』をレイラに頼むつもりはないよ」
「……え」
「トロデ王に言われたんだ。『夜勤』そのものを辞めよう、とな。我々には物を言う口があるのだから、話し合いで解決すべきだろうと」
「……トロデ王が」
「思えばレイラには酷なことを強いてきたものだ。謝って許されることではないが、これからは我々と変わらない、いち近衛兵として、この国に仕えてもらおうと思っている」
「……っ、あ、ありがとうございます……!」
「レイラがそんなに抱え込んでいたとは、恥ずかしながら俺も知らなくてな。部下の精神状態にも気付けないとは、隊長失格かもしれん」
「そ、そんな! そんなことはないです!」
「そうよ! あれは隠すのが上手すぎるレイラにも問題があったのよ! つらいことはつらいって、はっきり言えば良かったのに」
ゼシカの憤りも尤もだけど、僕もレイラも、国の意志に従うことでしか生きていく術を見出せなかった。
命令を拒否したせいで国を追われたら、どうやって生きていけばいいか分からなくて。
もちろんレイラが追放されれば、僕も一緒になってトロデーンを去るつもりだった。
だけど僕たちを拾ってここまで面倒を見てくれた、大恩あるトロデ王や城の人たちを捨て去ることなんて、僕らには到底できることじゃなかったんだ。
「レイラには改めて『夜勤』からの免職を伝えるが、お前から先に伝えておいてくれないか」
「分かりました! ……本当にありがとうございます」
「やめてくれよ。国を救った英雄に頭なんか下げられちゃ、俺は立つ瀬がないんだぞ」
困ったように頭を搔く隊長と笑い合って、僕らはそれぞれの部屋に戻った。
ヤンガスたちはそれぞれ客間を宛てがわれているから、彼らを部屋に案内した後、僕は兵舎の自室へ戻ろうとして──。
「……レイラ、まだ起きてるかな」
いつの間にか姿を消していたレイラの顔が浮かんで、僕の足はそのままレイラの部屋へと向かった。
伝えなきゃいけないことができたし、きっとトロデ王は説明するのなんて忘れてるだろうから、レイラの血筋のことも教えてあげなきゃいけない。
ああでも、もう夜も遅いから、先に寝ちゃったかな。
ひとまずドアをノックしてみて、反応がなければ自分の部屋に戻ることにしよう。
そう決めた僕の脚が止まって、目の前にはひとつの部屋に繋がるドアがある。
呼吸をひとつ整えて、ドアをノックすると──。
ドアの向こうから、「どうぞ」とレイラの声が聞こえてきた。
これから僕らは、旅に出る前の日常に戻っていく。
旅に出る前の日常に戻るということは──また、あの子が手を血に染める日が来るかもしれないということだ。
せっかく自分の中で区切りをつけてくれたのに、またレイラが重い責任を背負い込むのは、僕が耐えられない。
「隊長。……レイラに、これからも『夜勤』を頼むんですか」
「……」
隊長は答えない。
それが無言の肯定だということは、流石の僕でも察せられた。
もうやめてほしい、これ以上あの子の繊細な心を傷つけないでほしい。
あの子がどんな思いで、「能天気なレイラ」という周囲のイメージを演じていたか。
本当はそれが出来なくなるくらい、罪悪感で心を蝕まれていたのに。
「お願いします。もうあの子に、レイラに『夜勤』を命じないでください。お願いします」
隊長に向かって腰を折って頭を下げる。
そのまま返答を待っていると、「お願いします」と違う声が、同じように隊長へ頼み込んでいた。
すぐ後ろを見やると、そこにはゼシカとヤンガスがいて、僕と同じように頭を下げている。
「み、皆様方──」
「アッシにゃあ、難しいことは分からねぇ。それでも、レイラの姉貴がずっと苦しんでたんだってことぐれぇは、分かってるつもりでがす。もう姉貴にあんな思いは二度とさせたくねぇんだ。だから……頼む。この通りだ! どうしても誰かを手にかけなきゃなんねぇときは、アッシが姉貴の代わりに手を汚してやらぁ!」
「ヤンガス……」
「レイラは、ようやく……一度死んだことでようやく自分を許せたの。たくさんの人を『国を守る』という大義名分の元に殺してきたことを、あの子は自分の罪だと思って、今まで生きてきたのよ。それがようやく今、レイラの中で清算されたの。また同じ苦しみを味わわなきゃいけないなんて、そんなのあんまりだわ」
「……ゼシカ」
お願いします、と二人がまた頭を下げる。
僕も改めて隊長へ頭を下げた。
そこへ幾分か上機嫌な足音が近付いてきて──「ああ」と隊長に声をかけたのは、なんとククールだった。
「あんたがレイラの隊長さんか? ちょうどいい、ひとつ頼みがあるんだ。あいつを『夜勤』から解放してくれないもんかな」
「──」
まさかククールまで、そう言ってくれるなんて。
僕ら四人に乞われた隊長は、「あー」と困ったような声を出して、ため息をついた。
それから顔を上げるように言われて、僕ら三人が下げていた頭を上げる。
隊長は僕らを見て、やっぱり困ったように笑った。
「もう『夜勤』をレイラに頼むつもりはないよ」
「……え」
「トロデ王に言われたんだ。『夜勤』そのものを辞めよう、とな。我々には物を言う口があるのだから、話し合いで解決すべきだろうと」
「……トロデ王が」
「思えばレイラには酷なことを強いてきたものだ。謝って許されることではないが、これからは我々と変わらない、いち近衛兵として、この国に仕えてもらおうと思っている」
「……っ、あ、ありがとうございます……!」
「レイラがそんなに抱え込んでいたとは、恥ずかしながら俺も知らなくてな。部下の精神状態にも気付けないとは、隊長失格かもしれん」
「そ、そんな! そんなことはないです!」
「そうよ! あれは隠すのが上手すぎるレイラにも問題があったのよ! つらいことはつらいって、はっきり言えば良かったのに」
ゼシカの憤りも尤もだけど、僕もレイラも、国の意志に従うことでしか生きていく術を見出せなかった。
命令を拒否したせいで国を追われたら、どうやって生きていけばいいか分からなくて。
もちろんレイラが追放されれば、僕も一緒になってトロデーンを去るつもりだった。
だけど僕たちを拾ってここまで面倒を見てくれた、大恩あるトロデ王や城の人たちを捨て去ることなんて、僕らには到底できることじゃなかったんだ。
「レイラには改めて『夜勤』からの免職を伝えるが、お前から先に伝えておいてくれないか」
「分かりました! ……本当にありがとうございます」
「やめてくれよ。国を救った英雄に頭なんか下げられちゃ、俺は立つ瀬がないんだぞ」
困ったように頭を搔く隊長と笑い合って、僕らはそれぞれの部屋に戻った。
ヤンガスたちはそれぞれ客間を宛てがわれているから、彼らを部屋に案内した後、僕は兵舎の自室へ戻ろうとして──。
「……レイラ、まだ起きてるかな」
いつの間にか姿を消していたレイラの顔が浮かんで、僕の足はそのままレイラの部屋へと向かった。
伝えなきゃいけないことができたし、きっとトロデ王は説明するのなんて忘れてるだろうから、レイラの血筋のことも教えてあげなきゃいけない。
ああでも、もう夜も遅いから、先に寝ちゃったかな。
ひとまずドアをノックしてみて、反応がなければ自分の部屋に戻ることにしよう。
そう決めた僕の脚が止まって、目の前にはひとつの部屋に繋がるドアがある。
呼吸をひとつ整えて、ドアをノックすると──。
ドアの向こうから、「どうぞ」とレイラの声が聞こえてきた。
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