8章
夢小説設定
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潮風が気持ちいい。
南の大陸を目指す船は、順調に航路を進んでいる。
次にあの大陸に戻った時には、陛下と姫様が元に戻っているといいな。
「なんだかドキドキするわね……」
海を見つめてそう呟いたゼシカに微笑む。
知らない場所に行くのは、いつだってドキドキするものだ。
私もそうだった。
城から離れることなんてなかったから、トラペッタに行くのでさえ、ちょっと緊張していたのを思い出す。
ふと、ゼシカの視線がじーっと私に向けられているのに気付いた。
「……何か言いたいことでもあるの?」
「えっ?」
「ずっと視線が向けられてるから、何か言いたいことがあるのかと思って」
「あ、ううん、そういうつもりじゃないの。ええと、レイラ……で合ってるわよね?」
「うん、そうだよ。改めてよろしく、ゼシカ!」
「……ええ、こちらこそ宜しくね」
ゼシカと握手をして、微笑み合う。
それからゼシカの目が、私の左腰に提げている剣に向かった。
今の時代、女戦士も珍しくないとは思うけど、確かにリーザス村には女戦士なんていないみたいだった。
珍しいものではあるのかもしれない。
「女が剣を振り回してるのって珍しいよね」
「そういうわけじゃないわよ。戦い方は人それぞれだわ」
「あはは、いいのいいの。まあ、私にとっては当たり前のことでもあるからね、剣と共にあるっていうのは」
左腰にあるのは銅の剣。
兵士の剣よりは切れ味が良くて、今のところはこの剣のほうが使い心地がいい。
昔は剣を持ち上げることすら難しかった小娘が、今では片手で振り回しているんだから、我ながら驚きだ。
「そういえば、魔物を倒してからポルトリンクに帰る途中で、人づてに聞いたんだけど。レイラって、トロデーンの兵士だったのね」
「うん、近衛兵だよ。エイトは同僚なの」
「ふうん? 彼とは同い年なの?」
「そうそう、私とエイトと姫様は同い年の十八歳! 誕生日の順でいくと、エイト、私、姫様の順番かな。同い年だから、小さい頃は三人でよく遊んだりもしたなぁ」
もちろん、それは私達が大きくなるにつれてなくなってしまったけど、代わりに私達は近衛兵に選ばれて、死ぬほど鍛錬を積んできた。
エイトと二人で、陛下と姫様をお守りするんだって約束して――今はエイトと一緒に、陛下と姫様を元に戻すんだって約束した。
「……そうだったの。じゃあ私は十七歳だから、三人とはひとつ違いになるのね」
「そうなんだ! ……え? 年下? ほんとに?」
歳が近いとは思っていたけど、年下の可能性は考えてなかった。
明らかにどう見たって、私のほうが年下に見える。
精神年齢的には間違いなく私のほうが下だ。
やばい、どうしよう。
年上の威厳がない、まるでない。
「今から身につく年上の威厳がありますか?」
「ないと思うわ」
ですよね。
私は素直に頷いて、潔く諦めることにした。
私はこのままでいこう。
ムードメーカーってやつだ、私が目指すべきポジションはきっとそれだ!
「それにしても、兵士になるって決めた時、親御さんは何も言わなかったの?」
「あー……。私、孤児でさ。おまけに小さい頃の記憶もないから、親の顔を見たことがなくて」
「えっ……」
「ある意味では、お城のみんなが親みたいなもんだったかな? みんな頑張れって応援してくれたよ!」
反対する人はいなかったように思う。
まあ、陛下からの命令だから、反対できなかったっていうのもあるだろうけど。
でも私もエイトと一緒にいたかったから、悩むことなく近衛兵になることを選んだ。
エイトとは一年遅れだったから、同期入隊ではなかったけど。
「その……ごめんなさい」
「え、なんで謝るの!? いいって、私は気にしてないし! どんな理由があったにしろ、私を産んでくれたことには感謝してるしさ」
そのおかげで、今こうして生きているわけだ。
顔も名前も知らない両親にだって、それくらいの感謝の気持ちはある。
ただ、私の記憶はある日を境にぶっつりと途切れていて、それより前は遡れない。
私の記憶は城に来てからのものしかなくて、城に来る前の記憶が一切ないのだ。
自分の名前がレイラというのは分かるけれど、住んでいる場所も何も分からない。
素性の知れない子供をよく城に置いたな、と今でも不思議に思うところだ。
「とにかく気にしないで! 私はなんだかんだ、城で楽しい日々を過ごしてたしさ。夜の見張りは眠くてきつかったけど、エイトと一緒だったから苦ではなかったし。それに、兵士になったからこそ、こうやってエイト達と一緒に旅ができてるわけだしね!」
「あなたのそういう前向きなところ、私は好きよ。時々ふざける割には、まともなこと言うのね」
「自然な流れで貶さなかった?」
頭パッパラパーだと思われてた?
これでも近衛隊の中では、なかなか良い評価をもらってたんだけど……。
陛下と姫様からの信頼も厚かったし、まともな人間だと思ってたのに。
……まさか私、まともじゃなかったってこと……?
南の大陸を目指す船は、順調に航路を進んでいる。
次にあの大陸に戻った時には、陛下と姫様が元に戻っているといいな。
「なんだかドキドキするわね……」
海を見つめてそう呟いたゼシカに微笑む。
知らない場所に行くのは、いつだってドキドキするものだ。
私もそうだった。
城から離れることなんてなかったから、トラペッタに行くのでさえ、ちょっと緊張していたのを思い出す。
ふと、ゼシカの視線がじーっと私に向けられているのに気付いた。
「……何か言いたいことでもあるの?」
「えっ?」
「ずっと視線が向けられてるから、何か言いたいことがあるのかと思って」
「あ、ううん、そういうつもりじゃないの。ええと、レイラ……で合ってるわよね?」
「うん、そうだよ。改めてよろしく、ゼシカ!」
「……ええ、こちらこそ宜しくね」
ゼシカと握手をして、微笑み合う。
それからゼシカの目が、私の左腰に提げている剣に向かった。
今の時代、女戦士も珍しくないとは思うけど、確かにリーザス村には女戦士なんていないみたいだった。
珍しいものではあるのかもしれない。
「女が剣を振り回してるのって珍しいよね」
「そういうわけじゃないわよ。戦い方は人それぞれだわ」
「あはは、いいのいいの。まあ、私にとっては当たり前のことでもあるからね、剣と共にあるっていうのは」
左腰にあるのは銅の剣。
兵士の剣よりは切れ味が良くて、今のところはこの剣のほうが使い心地がいい。
昔は剣を持ち上げることすら難しかった小娘が、今では片手で振り回しているんだから、我ながら驚きだ。
「そういえば、魔物を倒してからポルトリンクに帰る途中で、人づてに聞いたんだけど。レイラって、トロデーンの兵士だったのね」
「うん、近衛兵だよ。エイトは同僚なの」
「ふうん? 彼とは同い年なの?」
「そうそう、私とエイトと姫様は同い年の十八歳! 誕生日の順でいくと、エイト、私、姫様の順番かな。同い年だから、小さい頃は三人でよく遊んだりもしたなぁ」
もちろん、それは私達が大きくなるにつれてなくなってしまったけど、代わりに私達は近衛兵に選ばれて、死ぬほど鍛錬を積んできた。
エイトと二人で、陛下と姫様をお守りするんだって約束して――今はエイトと一緒に、陛下と姫様を元に戻すんだって約束した。
「……そうだったの。じゃあ私は十七歳だから、三人とはひとつ違いになるのね」
「そうなんだ! ……え? 年下? ほんとに?」
歳が近いとは思っていたけど、年下の可能性は考えてなかった。
明らかにどう見たって、私のほうが年下に見える。
精神年齢的には間違いなく私のほうが下だ。
やばい、どうしよう。
年上の威厳がない、まるでない。
「今から身につく年上の威厳がありますか?」
「ないと思うわ」
ですよね。
私は素直に頷いて、潔く諦めることにした。
私はこのままでいこう。
ムードメーカーってやつだ、私が目指すべきポジションはきっとそれだ!
「それにしても、兵士になるって決めた時、親御さんは何も言わなかったの?」
「あー……。私、孤児でさ。おまけに小さい頃の記憶もないから、親の顔を見たことがなくて」
「えっ……」
「ある意味では、お城のみんなが親みたいなもんだったかな? みんな頑張れって応援してくれたよ!」
反対する人はいなかったように思う。
まあ、陛下からの命令だから、反対できなかったっていうのもあるだろうけど。
でも私もエイトと一緒にいたかったから、悩むことなく近衛兵になることを選んだ。
エイトとは一年遅れだったから、同期入隊ではなかったけど。
「その……ごめんなさい」
「え、なんで謝るの!? いいって、私は気にしてないし! どんな理由があったにしろ、私を産んでくれたことには感謝してるしさ」
そのおかげで、今こうして生きているわけだ。
顔も名前も知らない両親にだって、それくらいの感謝の気持ちはある。
ただ、私の記憶はある日を境にぶっつりと途切れていて、それより前は遡れない。
私の記憶は城に来てからのものしかなくて、城に来る前の記憶が一切ないのだ。
自分の名前がレイラというのは分かるけれど、住んでいる場所も何も分からない。
素性の知れない子供をよく城に置いたな、と今でも不思議に思うところだ。
「とにかく気にしないで! 私はなんだかんだ、城で楽しい日々を過ごしてたしさ。夜の見張りは眠くてきつかったけど、エイトと一緒だったから苦ではなかったし。それに、兵士になったからこそ、こうやってエイト達と一緒に旅ができてるわけだしね!」
「あなたのそういう前向きなところ、私は好きよ。時々ふざける割には、まともなこと言うのね」
「自然な流れで貶さなかった?」
頭パッパラパーだと思われてた?
これでも近衛隊の中では、なかなか良い評価をもらってたんだけど……。
陛下と姫様からの信頼も厚かったし、まともな人間だと思ってたのに。
……まさか私、まともじゃなかったってこと……?
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