73章
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竜神王を正気に戻した後に明かされた、僕の出生の秘密。
今まで分からなかった、どこにも存在しないと思っていた両親は、確かにここにいた。
会うことはできないけど……両親が生きた証が、ここに残っていた。
「……そっか。僕にも、ちゃんと親がいたんだ……」
ラプソーンを倒すための手掛かりを得る旅。
その途上で、思いがけない真実と出会った。
納得がいく部分はある。
初めてクラビウス王にお会いしたとき、王様は誰かと僕を見間違えた。
今思い返せば、あれはエルトリオ王子と見間違えたんだ。
だけどエルトリオ王子が生きていたら、僕のような若い見た目をしているはずもないから、他人の空似だと──。
「兄貴、嬉しそうでがす」
「そうね。出自はとんでもなくぶっ飛んでるけど」
「父親がサザンビークの第一王子とはなぁ」
「これでサザンビークの王様がちゃんとエルトリオ王子だったら、今頃お姫様と婚約してたのはエイトだったのね……」
「やめてよ、僕にはレイラだけなんだから」
「分かってるわよ」
「そのことなんじゃがの」
後ろから唐突に声がした。
「トロデ王、いつの間に!!」
「最初からおったわい」
いましたっけ? ……とは言わないでおく。
トロデ王がいたと言うんだから、いたということにしておいた方がいいんだ。
これは十年間お仕えした小間使い時代と近衛兵時代の経験則だ、間違いない。
「黙っておったが、そろそろ話しても良いかのう。レイラの出自のことじゃ」
「レイラ? トロデーン領に住む貴族の家系というだけじゃないんですか?」
「うむ。実はレイラの父親は、わしの兄なのじゃ」
「「えぇぇえええっ!?」」
全員の声が綺麗に重なる。
トロデ王は耳を塞いでいた。
いや、だって、なんだってそんな、今になって!!
「ちょっ……なんでそんな大事なことを黙ってたんですか!」
「知られてはならんかったのじゃ!」
「ってことは、レイラって実は王族でもあるってことなの!?」
「……まあ、そうなるのう。もちろん兄は王位を捨ててロアナス家に婿入りしたわけじゃから、王位継承権などはないが」
全員が絶句したまま、時間だけが過ぎた。
そりゃそうだ。
まさか、そんなカミングアウトが待ち受けてただなんて、誰が予想できよう。
そ、それじゃあ、世が世なら、サザンビークの王子が僕で、トロデーンの姫がレイラで……。
僕らが婚約していた可能性があったってこと……!?
「……それってよ、チャゴスと姫様の結婚を、お前とレイラで肩代わりできるかもしれないって話にならねぇか?」
「え?」
「だから、サザンビーク側の王子がエイトだ。で、トロデーン側の姫がレイラ。血筋だけでいけばそういう話になるだろ」
「そうはなるまい。トロデーンもそうじゃが、王位継承権を持つ者が新たに現れるとなると、国を乱すことにもなりかねん。わしもレイラを王族の一員と見なすことはできん。それはあのクラビウス王も同じことじゃろう」
「……でもそうなると、ミーティア姫はあのチャゴス王子と結婚することになるのよ。トロデ王はそれでいいの?」
「……」
トロデ王は答えなかった。
そんなふうに簡単な事じゃないんだ、国同士の約束事は。
お互いのメンツもあるし、国同士が結び付くことによって得られる利益もある。
それに、昔のトロデーンとサザンビークは犬猿の仲だった。
この結婚を機に、恒久的な友好国となれる恩恵は、双方の国にとって重要なもの……。
ある意味では、王族の義務とでも言うべきものだ。
……僕だって本当は、大事な幼馴染みでもあるミーティア姫を、あんな世紀のダメ王子になんてくれてやりたくもない。
だけど……それはもう、こちらの一存で無かったことにはできないもので……。
僕たちはミーティア姫があのブタ野郎の手垢を付けられるのを、黙って見ていることしかできないんだ。
「……さて、話も終わったようじゃし、里の様子を見回ってくるとしようか。それとも、もう一度今の話を聞きたいかね?」
「あ、それはいいです」
「……ふむ。あんな長い話は、もう聞きたくないか。まあ、無理もないことじゃな。では、里を見回りながら、ついでに長老たちに、使命を果たしたことを報告してくるとするか」
おじいさんの家を出て、会議場へ。
会議場の入口に立っていた青年が、僕らを見て顔を輝かせた。
なんだか里の雰囲気が明るい。
竜神王を正気に戻らせた効果がもう出ているんだ。
「あんた達、ついに……ついにやってくれたんだな! さあ、長老たちがお待ちかねだ。入ってくれ!! しかし本当に竜神王様に勝つなんてなぁ……。あんた達は正に、竜神族にとっての救世主だな。今となっては、人間ってだけであんた達を見下していた自分が恥ずかしいばかりだよ」
手のひらの返し方がすごい。
ここまで露骨に変わるものなんだ、笑いすら出てこなかった。
会議場へ入ると、長老たちから次々に感謝の言葉を頂いた。
それが落ち着いた頃、あれこれと長老たちと話していたのだけど、気になることがひとつ。
結局ここまで来ても、僕の呪いを受け付けない体質がどこから来るものだったかが分からなかった。
てっきり、ここに理由があると思っていたんだけど……。
「そういや、エイトの兄貴には記憶封じとかいうものが掛けられてるって、グルーノのじいさんが言ってたでがすよ。それってなんなんだ?」
「エイトにかけられた記憶封じは、実は強力な呪いの一種でな。それゆえ、記憶を封じられた者は、逆に他の呪いを受け付けなくなることがあるそうなのじゃ。もしエイトが呪いをかけられたのに無事だったということがあったら、それは記憶封じの呪いのせいじゃろうな」
「……そのせいだ!!」
一気に疑問が解決した!
トロデーン城が呪われても無事だったのも、闇の遺跡で茨の呪いを弾いたのも、記憶封じの呪いが原因だったんだ。
なんだか……僕を苦難に落としたくせに、その呪いのおかげで災難を逃れたなんて、皮肉というかなんというか……。
今まで分からなかった、どこにも存在しないと思っていた両親は、確かにここにいた。
会うことはできないけど……両親が生きた証が、ここに残っていた。
「……そっか。僕にも、ちゃんと親がいたんだ……」
ラプソーンを倒すための手掛かりを得る旅。
その途上で、思いがけない真実と出会った。
納得がいく部分はある。
初めてクラビウス王にお会いしたとき、王様は誰かと僕を見間違えた。
今思い返せば、あれはエルトリオ王子と見間違えたんだ。
だけどエルトリオ王子が生きていたら、僕のような若い見た目をしているはずもないから、他人の空似だと──。
「兄貴、嬉しそうでがす」
「そうね。出自はとんでもなくぶっ飛んでるけど」
「父親がサザンビークの第一王子とはなぁ」
「これでサザンビークの王様がちゃんとエルトリオ王子だったら、今頃お姫様と婚約してたのはエイトだったのね……」
「やめてよ、僕にはレイラだけなんだから」
「分かってるわよ」
「そのことなんじゃがの」
後ろから唐突に声がした。
「トロデ王、いつの間に!!」
「最初からおったわい」
いましたっけ? ……とは言わないでおく。
トロデ王がいたと言うんだから、いたということにしておいた方がいいんだ。
これは十年間お仕えした小間使い時代と近衛兵時代の経験則だ、間違いない。
「黙っておったが、そろそろ話しても良いかのう。レイラの出自のことじゃ」
「レイラ? トロデーン領に住む貴族の家系というだけじゃないんですか?」
「うむ。実はレイラの父親は、わしの兄なのじゃ」
「「えぇぇえええっ!?」」
全員の声が綺麗に重なる。
トロデ王は耳を塞いでいた。
いや、だって、なんだってそんな、今になって!!
「ちょっ……なんでそんな大事なことを黙ってたんですか!」
「知られてはならんかったのじゃ!」
「ってことは、レイラって実は王族でもあるってことなの!?」
「……まあ、そうなるのう。もちろん兄は王位を捨ててロアナス家に婿入りしたわけじゃから、王位継承権などはないが」
全員が絶句したまま、時間だけが過ぎた。
そりゃそうだ。
まさか、そんなカミングアウトが待ち受けてただなんて、誰が予想できよう。
そ、それじゃあ、世が世なら、サザンビークの王子が僕で、トロデーンの姫がレイラで……。
僕らが婚約していた可能性があったってこと……!?
「……それってよ、チャゴスと姫様の結婚を、お前とレイラで肩代わりできるかもしれないって話にならねぇか?」
「え?」
「だから、サザンビーク側の王子がエイトだ。で、トロデーン側の姫がレイラ。血筋だけでいけばそういう話になるだろ」
「そうはなるまい。トロデーンもそうじゃが、王位継承権を持つ者が新たに現れるとなると、国を乱すことにもなりかねん。わしもレイラを王族の一員と見なすことはできん。それはあのクラビウス王も同じことじゃろう」
「……でもそうなると、ミーティア姫はあのチャゴス王子と結婚することになるのよ。トロデ王はそれでいいの?」
「……」
トロデ王は答えなかった。
そんなふうに簡単な事じゃないんだ、国同士の約束事は。
お互いのメンツもあるし、国同士が結び付くことによって得られる利益もある。
それに、昔のトロデーンとサザンビークは犬猿の仲だった。
この結婚を機に、恒久的な友好国となれる恩恵は、双方の国にとって重要なもの……。
ある意味では、王族の義務とでも言うべきものだ。
……僕だって本当は、大事な幼馴染みでもあるミーティア姫を、あんな世紀のダメ王子になんてくれてやりたくもない。
だけど……それはもう、こちらの一存で無かったことにはできないもので……。
僕たちはミーティア姫があのブタ野郎の手垢を付けられるのを、黙って見ていることしかできないんだ。
「……さて、話も終わったようじゃし、里の様子を見回ってくるとしようか。それとも、もう一度今の話を聞きたいかね?」
「あ、それはいいです」
「……ふむ。あんな長い話は、もう聞きたくないか。まあ、無理もないことじゃな。では、里を見回りながら、ついでに長老たちに、使命を果たしたことを報告してくるとするか」
おじいさんの家を出て、会議場へ。
会議場の入口に立っていた青年が、僕らを見て顔を輝かせた。
なんだか里の雰囲気が明るい。
竜神王を正気に戻らせた効果がもう出ているんだ。
「あんた達、ついに……ついにやってくれたんだな! さあ、長老たちがお待ちかねだ。入ってくれ!! しかし本当に竜神王様に勝つなんてなぁ……。あんた達は正に、竜神族にとっての救世主だな。今となっては、人間ってだけであんた達を見下していた自分が恥ずかしいばかりだよ」
手のひらの返し方がすごい。
ここまで露骨に変わるものなんだ、笑いすら出てこなかった。
会議場へ入ると、長老たちから次々に感謝の言葉を頂いた。
それが落ち着いた頃、あれこれと長老たちと話していたのだけど、気になることがひとつ。
結局ここまで来ても、僕の呪いを受け付けない体質がどこから来るものだったかが分からなかった。
てっきり、ここに理由があると思っていたんだけど……。
「そういや、エイトの兄貴には記憶封じとかいうものが掛けられてるって、グルーノのじいさんが言ってたでがすよ。それってなんなんだ?」
「エイトにかけられた記憶封じは、実は強力な呪いの一種でな。それゆえ、記憶を封じられた者は、逆に他の呪いを受け付けなくなることがあるそうなのじゃ。もしエイトが呪いをかけられたのに無事だったということがあったら、それは記憶封じの呪いのせいじゃろうな」
「……そのせいだ!!」
一気に疑問が解決した!
トロデーン城が呪われても無事だったのも、闇の遺跡で茨の呪いを弾いたのも、記憶封じの呪いが原因だったんだ。
なんだか……僕を苦難に落としたくせに、その呪いのおかげで災難を逃れたなんて、皮肉というかなんというか……。
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