71章
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竜神族の里にある会議場で、長老たちに会った僕らは、竜神王という人が行った儀式によって、この里が破滅へ向かっていることを知った。
だったら僕らが竜神王と戦って、その人を正気に戻せばいい。
「……ふむ。ということは、竜神王様に勝ちうる最強の戦士が必要なのだな」
話を聞き終わったところで、グルーノさんがそう言い、それから僕らを見た。
「ならばエイトたちこそが適任じゃろう。なにしろ、神鳥レティスに認められた勇者たちなのだからな」
「なんと、あの神鳥レティスに……」
長老たちがざわめき、頷き合う。
彼らならば、やってくれるはずだ──という期待を感じた。
……本当に、できるだろうか。
ラプソーンにさえ勝てなかった僕らが、竜神王に勝てるのか──。
「なあ、エイトよ。ラプソーンを倒すという使命を背負ったお前たちに頼むのは気が引けるが……。だがここはひとつ、わしの顔を立てると思って、竜神王様と戦ってはもらえんじゃろうか?」
「……はい。僕らで力になれるなら」
本当は少し怖い。
今度は誰を失うんだろうという恐怖はある。
でもここで立ち止まったら、僕らは強くなれない気もして……。
もしそうだとしたら、レイラに合わせる顔がない。
「おお、やってくれるか! ならば今日のところはまず、英気を養ってもらおう! さあ、わしの家に行こう。人間界からの客人の口にも合う、美味しいチーズ料理を振る舞おうぞ」
「チーズ料理……。トーポくんがいたら、きっと喜んだでしょうにね」
そうだね、と曖昧に微笑んで、僕らは会議場から外へ出た。
会議場から下へ降りて、左奥。
そこにグルーノさんの家はあるという。
家の中へお邪魔すると、どうやら使用人らしい青年が、玄関の近くで大きな籠から食材をいくつか拾っていた。
玄関の布を捲る音で青年が顔を上げ、グルーノさんに気付いて表情を輝かせる。
「グルーノ様! ああ、ついにお帰りになられたのですね。ずっとお待ちしておりました」
「……ああ。うむ。よく留守を守ってくれたようじゃな。今日は人間界からの客人をお連れしたのじゃ。丁重におもてなしするようにな」
「お世話になります」
みんなで使用人の方に挨拶をすると、僕を見た使用人は、はっとしたようにグルーノさんを見て言った。
「人間界の……ということは、ひょっとしてウィニア様の……?」
「い、いや、それは……。そんなことより、食事の支度をしておけ。美味しいチーズ料理を頼むぞ」
「は……はあ、チーズ料理ですか。かしこまりました」
不思議な会話をしつつ、使用人が台所へと向かう。
その姿を目で追いかけると、グルーノさんがぱん、と手を叩いた。
「さあ、エイト。今晩は我が家でくつろいでいってくれ」
「あ……はい。お言葉に甘えて」
腑に落ちないことは多いけど、ひとまず夕食の席で、ご馳走を待たせてもらうことにした。
トーポはどこに行ったんだろう。
せっかく美味しいチーズ料理が出てくるのに、食べられないなんて。
どこかでお腹を空かせて迷子になってないかな。
この里は人間には冷たいけど……ネズミには優しいといいな。
* * *
腹いっぱい食事を振る舞ってもらって、僕らは二階の部屋に通された。
そこは広い部屋で、壁際にタンスがふたつと、ベッドの横に丸いソファがひとつあるだけ。
なんだか逆に寂しいくらいだ。
「いや〜食った食った。竜神族があんなにチーズ好きだなんて、意外だったでげすね。まあ美味かったから文句はねぇでがすけど、ちょいと食いすぎちまいましたよ」
ベッドに大の字で仰向けになったヤンガスが、腹を撫でて満足そうに言う。
壁に面して置いてあるテーブルに腰かけたまま頷くと、ゼシカが呆れたようにため息をついた。
「……まったく、呑気な男ね。そんなことより、気になるのはあのグルーノおじいさんよ。あの人とはここで初めて会ったっていうのに、妙に私たちのことに詳しくない?」
「それもそうだが、俺はあの長老たちの、エイトに対する態度のほうが気になったな。あの態度は……まるでエイトのことを昔から知ってるみたいだったじゃないか?」
「ふ〜ん。アッシはそんなの、これっぽっちも感じなかったでげすよ。考えすぎなんじゃねぇのかい? でもまあ、そんなに気になるなら、グルーノじいさんに直接聞いてみりゃいいでがすよ!」
「……それもそうね。ヤンガスもたまにはいいこと言うじゃない!」
「あのじいさんが素直に話してくれるとも思えないが……。とりあえず当たってみるとするか」
なぜか勝手に話が決まって、僕たちはグルーノさんを探すために一階へと降りた。
階段のすぐ脇には、使用人の青年がいて、僕らを見ると「あっ」と顔を上げ、にっこりと微笑んだ。
「お部屋は如何ですか? 掃除はしていましたが、埃っぽいなどはありませんか?」
「快適です。広くてちょっと落ち着かないですけど」
「そうですか、それはよかった。皆さんをお泊めしている部屋は、グルーノ様の一人娘。ウィニアお嬢様の部屋だったのですよ」
「ウィニア……たしか、里の入口近くに住んでるじいさんが言ってたな。過ちを犯したとかなんとか……」
「……ええ。ウィニアお嬢様は、たいそう好奇心の強い方で、ある時、人間界へ飛び出していってしまわれたのです。グルーノ様は慌てて後を追って連れ戻したのですが、その時すでにお嬢様は、人間の男と恋に落ちていました。男の名はエルトリオ。人間界にある、何とかという国の王子だったということです。たしかその国では、王家の男は、特別な宝石で作られた指輪を婚約者に贈る風習があったそうで……。連れ戻されたウィニアお嬢様の指にも、まさしくその宝石で作られた指輪が嵌められておりました」
「……それって、アルゴンリングのことじゃない?」
ゼシカが思い出したように言うから、僕も忘れたかった王者の儀式を思い出してしまった。
ということはミーティア姫、あの闇商人からチャゴス王子が買ったアルゴンハートで作った指輪を、いずれはもらうってことなのか。
せめてそのアルゴンハートが、アルゴングレートから勝ち取ったものだったなら、まだ僕らも納得はしたけど……。
だったら僕らが竜神王と戦って、その人を正気に戻せばいい。
「……ふむ。ということは、竜神王様に勝ちうる最強の戦士が必要なのだな」
話を聞き終わったところで、グルーノさんがそう言い、それから僕らを見た。
「ならばエイトたちこそが適任じゃろう。なにしろ、神鳥レティスに認められた勇者たちなのだからな」
「なんと、あの神鳥レティスに……」
長老たちがざわめき、頷き合う。
彼らならば、やってくれるはずだ──という期待を感じた。
……本当に、できるだろうか。
ラプソーンにさえ勝てなかった僕らが、竜神王に勝てるのか──。
「なあ、エイトよ。ラプソーンを倒すという使命を背負ったお前たちに頼むのは気が引けるが……。だがここはひとつ、わしの顔を立てると思って、竜神王様と戦ってはもらえんじゃろうか?」
「……はい。僕らで力になれるなら」
本当は少し怖い。
今度は誰を失うんだろうという恐怖はある。
でもここで立ち止まったら、僕らは強くなれない気もして……。
もしそうだとしたら、レイラに合わせる顔がない。
「おお、やってくれるか! ならば今日のところはまず、英気を養ってもらおう! さあ、わしの家に行こう。人間界からの客人の口にも合う、美味しいチーズ料理を振る舞おうぞ」
「チーズ料理……。トーポくんがいたら、きっと喜んだでしょうにね」
そうだね、と曖昧に微笑んで、僕らは会議場から外へ出た。
会議場から下へ降りて、左奥。
そこにグルーノさんの家はあるという。
家の中へお邪魔すると、どうやら使用人らしい青年が、玄関の近くで大きな籠から食材をいくつか拾っていた。
玄関の布を捲る音で青年が顔を上げ、グルーノさんに気付いて表情を輝かせる。
「グルーノ様! ああ、ついにお帰りになられたのですね。ずっとお待ちしておりました」
「……ああ。うむ。よく留守を守ってくれたようじゃな。今日は人間界からの客人をお連れしたのじゃ。丁重におもてなしするようにな」
「お世話になります」
みんなで使用人の方に挨拶をすると、僕を見た使用人は、はっとしたようにグルーノさんを見て言った。
「人間界の……ということは、ひょっとしてウィニア様の……?」
「い、いや、それは……。そんなことより、食事の支度をしておけ。美味しいチーズ料理を頼むぞ」
「は……はあ、チーズ料理ですか。かしこまりました」
不思議な会話をしつつ、使用人が台所へと向かう。
その姿を目で追いかけると、グルーノさんがぱん、と手を叩いた。
「さあ、エイト。今晩は我が家でくつろいでいってくれ」
「あ……はい。お言葉に甘えて」
腑に落ちないことは多いけど、ひとまず夕食の席で、ご馳走を待たせてもらうことにした。
トーポはどこに行ったんだろう。
せっかく美味しいチーズ料理が出てくるのに、食べられないなんて。
どこかでお腹を空かせて迷子になってないかな。
この里は人間には冷たいけど……ネズミには優しいといいな。
* * *
腹いっぱい食事を振る舞ってもらって、僕らは二階の部屋に通された。
そこは広い部屋で、壁際にタンスがふたつと、ベッドの横に丸いソファがひとつあるだけ。
なんだか逆に寂しいくらいだ。
「いや〜食った食った。竜神族があんなにチーズ好きだなんて、意外だったでげすね。まあ美味かったから文句はねぇでがすけど、ちょいと食いすぎちまいましたよ」
ベッドに大の字で仰向けになったヤンガスが、腹を撫でて満足そうに言う。
壁に面して置いてあるテーブルに腰かけたまま頷くと、ゼシカが呆れたようにため息をついた。
「……まったく、呑気な男ね。そんなことより、気になるのはあのグルーノおじいさんよ。あの人とはここで初めて会ったっていうのに、妙に私たちのことに詳しくない?」
「それもそうだが、俺はあの長老たちの、エイトに対する態度のほうが気になったな。あの態度は……まるでエイトのことを昔から知ってるみたいだったじゃないか?」
「ふ〜ん。アッシはそんなの、これっぽっちも感じなかったでげすよ。考えすぎなんじゃねぇのかい? でもまあ、そんなに気になるなら、グルーノじいさんに直接聞いてみりゃいいでがすよ!」
「……それもそうね。ヤンガスもたまにはいいこと言うじゃない!」
「あのじいさんが素直に話してくれるとも思えないが……。とりあえず当たってみるとするか」
なぜか勝手に話が決まって、僕たちはグルーノさんを探すために一階へと降りた。
階段のすぐ脇には、使用人の青年がいて、僕らを見ると「あっ」と顔を上げ、にっこりと微笑んだ。
「お部屋は如何ですか? 掃除はしていましたが、埃っぽいなどはありませんか?」
「快適です。広くてちょっと落ち着かないですけど」
「そうですか、それはよかった。皆さんをお泊めしている部屋は、グルーノ様の一人娘。ウィニアお嬢様の部屋だったのですよ」
「ウィニア……たしか、里の入口近くに住んでるじいさんが言ってたな。過ちを犯したとかなんとか……」
「……ええ。ウィニアお嬢様は、たいそう好奇心の強い方で、ある時、人間界へ飛び出していってしまわれたのです。グルーノ様は慌てて後を追って連れ戻したのですが、その時すでにお嬢様は、人間の男と恋に落ちていました。男の名はエルトリオ。人間界にある、何とかという国の王子だったということです。たしかその国では、王家の男は、特別な宝石で作られた指輪を婚約者に贈る風習があったそうで……。連れ戻されたウィニアお嬢様の指にも、まさしくその宝石で作られた指輪が嵌められておりました」
「……それって、アルゴンリングのことじゃない?」
ゼシカが思い出したように言うから、僕も忘れたかった王者の儀式を思い出してしまった。
ということはミーティア姫、あの闇商人からチャゴス王子が買ったアルゴンハートで作った指輪を、いずれはもらうってことなのか。
せめてそのアルゴンハートが、アルゴングレートから勝ち取ったものだったなら、まだ僕らも納得はしたけど……。
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