69章
夢小説設定
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朝日が昇り始めた頃、私とエイトは目を覚ました。
寝起きでしゃっきりしない頭がぼんやりとエイトを見つめていると、「おはよう」と揶揄うような声。
それで昨夜のことを全部思い出して、私は布団を頭から被って顔を隠した。
「お、はよう、ございます……」
「なんで顔を隠すんだよ?」
「は……恥ずかしくて……!」
ぺりっとエイトの手が容赦なく布団を剥いだ。
酷い、乙女心の分からん奴だな。
変な顔になってるだろうなというのは自分でも分かっている。
それはエイトなら尚更分かっているだろうに、エイトは「おはよう」と擽ったそうに言って、私の額にキスを落とした。
何の変哲もない、平和な朝のような光景。
本当にそうだったらよかったのに。
町が目覚め始めた気配を感じて、私たちは身支度を整えると部屋を出た。
そのまま宿屋の裏にあるレストランで朝食を摂ろうという魂胆だ。
前回は私が大寝坊をかましたけど、今回は逆に私たちが一番乗りである。
「レイラ大丈夫? 身体はきつくない?」
「キツかったとしたら反省してほしいもんだけどな? 全然平気だよ」
「あ、あはは……」
苦笑いで誤魔化したエイトが視線を持ち上げる。
レストランの入口には、ヤンガスとククールとゼシカ。
手を振ってやると、三人はすぐにこちらへとやってきた。
「おはようごぜぇやす、兄貴、姉貴」
「相変わらず早起きだな」
「元兵士だもの、早起きはお手の物よね」
朝食のセットが五人分やってきて、私たちはまるでいつもの旅の途中であるかのように、ワイワイと賑やかに食事をした。
なんならククールの口からとんでもない話が飛び出てきたくらいだ。
「──ええッ!? サザンビークの大臣が行方不明に!?」
「そう。それでサザンビークは大変なことになってるそうだ。屋敷の中を調べた限りだと、特におかしな点はなかったんだがな」
「気になる話でがすが、今は空の上に居座るラプソーンを片付けるのが先でがすよ」
「そうなのよね。クラビウス王も困り果てた様子ではあったんだけど、そっちに時間を割いてる余裕はないし……」
「ま、世界を平和にした後、俺たちでのんびり探し出してやろうぜ。エイトとレイラも、それくらいは付き合ってくれるだろ?」
「そうだね……。たぶん、トロデ王に申し出たら、助けに行けとおっしゃってくれるとは思うし」
うんうん、と頷いて、サンドイッチの最後の一口を押し込む。
食後の紅茶も頂いてから、私たちはお代をウェイターに渡してレストランを出た。
腹ごしらえは万端!
かかってこい、暗黒神!!
神鳥の魂で鳥に変身して大空へ。
ふと、この光景を見るのも最後になるのかな、と郷愁に駆られた。
……今はそんなことを考えている場合じゃない。
暗黒神を倒すことに集中しないと。
止まり木にはレティスが戻ってきていた。
探し物は見つかったんだろうか、こっちはオーブを八個集めてきたけど。
レティスが探すものだもん、きっと最終決戦に必要なものだと思うし。
『世界に散らばったオーブを集めてきたのですね?』
「はい」
レティスに問われ、エイトが頷く。
手分けして探したけど、半日はかかったもんな。
全員で回ってたら、丸一日はかかったかもしれない。
『私もこの世界での探し物をようやく見つけ出し、先程ここに戻ったばかり。さあ、私が見つけてきた、この世界の最後の希望を、あなた達の手に託しましょう……』
レティスが翼を広げると、光に包まれた何かが宙に浮いた。
光に包まれていたのは……トロデーン城にあった、封印の杖だ。
「そ、その杖……!」
「それは我がトロデーン国の秘宝の杖!! いかんぞ! その杖を手にしてはならんのじゃ!!」
『心配はいりません。暗黒神ラプソーンの魂は、既にこの杖には宿っていません。そればかりか今、この杖の中には、七人の賢者たちの魂が眠っているのです』
「賢者たちの魂が……?」
「待ってください、レティス! ヨシュアの魂は暗黒神の肉体の封印が解けたときに、消滅したはずで……!」
『……たしかにヨシュアの魂は役目を終え、消滅するはずでした。しかし、あなたの世界を救いたいという強い思いが、ヨシュアの魂をこの杖に留まらせたのです』
「……それって」
エイトが何かに気付いたように呟く。
それが何を意味しているかは分からなかったけど、昨日から表情が暗かったエイトの顔が少しだけ明るくなったような気がした。
……まあ、同じ道を辿ることになるかもしれないんだもんね、私。
私を助けられる方法に繋がるものがあれば、どんな些細なことも手掛かりにしたいんだろう。
『それより……この杖の名は、長い時の間に、いつの間にか失われてしまったようですね』
「へ? この杖、名前があったんですか?」
『この杖は、かつて私がこの世界の人間に作り方を授け、八賢者が作り上げたものです。彼らはこの杖のことをこう呼んでいました。神鳥の杖……と』
神鳥の杖……そんな名前があったなんて。
秘宝の杖だの封印の杖だの、好き勝手に呼んでたな、私たち……。
しかも杖を作ったのが八賢者だったとは驚きだ。
とはいえこれが最後の希望とは、いったい……?
『闇の結界を取り払うために、あなた達はこの神鳥の杖を手に取り、暗黒神に立ち向かうのです。私があなた達を背に乗せて、暗黒神の元に運びます。暗黒神はきっと激しく攻撃してくるでしょう。しかしあなた達はその攻撃に耐えながら、杖に向かってひたすらに祈るのです。五人全員が祈れた時、賢者の魂はひとつ……またひとつとオーブに宿りゆき、救いの手を差し伸べるでしょう』
つまり……私たちは全員でこの杖に向かって八回、祈りを捧げなければならない。
その間もラプソーンは攻撃をしてくるから、それに耐えながらという話だ。
おそらくかなりの長期戦になる。
闇の結界を取り払ってからが本番というわけか、面倒な手間を増やしてくれたものだな暗黒神め。
寝起きでしゃっきりしない頭がぼんやりとエイトを見つめていると、「おはよう」と揶揄うような声。
それで昨夜のことを全部思い出して、私は布団を頭から被って顔を隠した。
「お、はよう、ございます……」
「なんで顔を隠すんだよ?」
「は……恥ずかしくて……!」
ぺりっとエイトの手が容赦なく布団を剥いだ。
酷い、乙女心の分からん奴だな。
変な顔になってるだろうなというのは自分でも分かっている。
それはエイトなら尚更分かっているだろうに、エイトは「おはよう」と擽ったそうに言って、私の額にキスを落とした。
何の変哲もない、平和な朝のような光景。
本当にそうだったらよかったのに。
町が目覚め始めた気配を感じて、私たちは身支度を整えると部屋を出た。
そのまま宿屋の裏にあるレストランで朝食を摂ろうという魂胆だ。
前回は私が大寝坊をかましたけど、今回は逆に私たちが一番乗りである。
「レイラ大丈夫? 身体はきつくない?」
「キツかったとしたら反省してほしいもんだけどな? 全然平気だよ」
「あ、あはは……」
苦笑いで誤魔化したエイトが視線を持ち上げる。
レストランの入口には、ヤンガスとククールとゼシカ。
手を振ってやると、三人はすぐにこちらへとやってきた。
「おはようごぜぇやす、兄貴、姉貴」
「相変わらず早起きだな」
「元兵士だもの、早起きはお手の物よね」
朝食のセットが五人分やってきて、私たちはまるでいつもの旅の途中であるかのように、ワイワイと賑やかに食事をした。
なんならククールの口からとんでもない話が飛び出てきたくらいだ。
「──ええッ!? サザンビークの大臣が行方不明に!?」
「そう。それでサザンビークは大変なことになってるそうだ。屋敷の中を調べた限りだと、特におかしな点はなかったんだがな」
「気になる話でがすが、今は空の上に居座るラプソーンを片付けるのが先でがすよ」
「そうなのよね。クラビウス王も困り果てた様子ではあったんだけど、そっちに時間を割いてる余裕はないし……」
「ま、世界を平和にした後、俺たちでのんびり探し出してやろうぜ。エイトとレイラも、それくらいは付き合ってくれるだろ?」
「そうだね……。たぶん、トロデ王に申し出たら、助けに行けとおっしゃってくれるとは思うし」
うんうん、と頷いて、サンドイッチの最後の一口を押し込む。
食後の紅茶も頂いてから、私たちはお代をウェイターに渡してレストランを出た。
腹ごしらえは万端!
かかってこい、暗黒神!!
神鳥の魂で鳥に変身して大空へ。
ふと、この光景を見るのも最後になるのかな、と郷愁に駆られた。
……今はそんなことを考えている場合じゃない。
暗黒神を倒すことに集中しないと。
止まり木にはレティスが戻ってきていた。
探し物は見つかったんだろうか、こっちはオーブを八個集めてきたけど。
レティスが探すものだもん、きっと最終決戦に必要なものだと思うし。
『世界に散らばったオーブを集めてきたのですね?』
「はい」
レティスに問われ、エイトが頷く。
手分けして探したけど、半日はかかったもんな。
全員で回ってたら、丸一日はかかったかもしれない。
『私もこの世界での探し物をようやく見つけ出し、先程ここに戻ったばかり。さあ、私が見つけてきた、この世界の最後の希望を、あなた達の手に託しましょう……』
レティスが翼を広げると、光に包まれた何かが宙に浮いた。
光に包まれていたのは……トロデーン城にあった、封印の杖だ。
「そ、その杖……!」
「それは我がトロデーン国の秘宝の杖!! いかんぞ! その杖を手にしてはならんのじゃ!!」
『心配はいりません。暗黒神ラプソーンの魂は、既にこの杖には宿っていません。そればかりか今、この杖の中には、七人の賢者たちの魂が眠っているのです』
「賢者たちの魂が……?」
「待ってください、レティス! ヨシュアの魂は暗黒神の肉体の封印が解けたときに、消滅したはずで……!」
『……たしかにヨシュアの魂は役目を終え、消滅するはずでした。しかし、あなたの世界を救いたいという強い思いが、ヨシュアの魂をこの杖に留まらせたのです』
「……それって」
エイトが何かに気付いたように呟く。
それが何を意味しているかは分からなかったけど、昨日から表情が暗かったエイトの顔が少しだけ明るくなったような気がした。
……まあ、同じ道を辿ることになるかもしれないんだもんね、私。
私を助けられる方法に繋がるものがあれば、どんな些細なことも手掛かりにしたいんだろう。
『それより……この杖の名は、長い時の間に、いつの間にか失われてしまったようですね』
「へ? この杖、名前があったんですか?」
『この杖は、かつて私がこの世界の人間に作り方を授け、八賢者が作り上げたものです。彼らはこの杖のことをこう呼んでいました。神鳥の杖……と』
神鳥の杖……そんな名前があったなんて。
秘宝の杖だの封印の杖だの、好き勝手に呼んでたな、私たち……。
しかも杖を作ったのが八賢者だったとは驚きだ。
とはいえこれが最後の希望とは、いったい……?
『闇の結界を取り払うために、あなた達はこの神鳥の杖を手に取り、暗黒神に立ち向かうのです。私があなた達を背に乗せて、暗黒神の元に運びます。暗黒神はきっと激しく攻撃してくるでしょう。しかしあなた達はその攻撃に耐えながら、杖に向かってひたすらに祈るのです。五人全員が祈れた時、賢者の魂はひとつ……またひとつとオーブに宿りゆき、救いの手を差し伸べるでしょう』
つまり……私たちは全員でこの杖に向かって八回、祈りを捧げなければならない。
その間もラプソーンは攻撃をしてくるから、それに耐えながらという話だ。
おそらくかなりの長期戦になる。
闇の結界を取り払ってからが本番というわけか、面倒な手間を増やしてくれたものだな暗黒神め。
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