65章
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聖地ゴルドの大神殿にて、暴君と化したマルチェロさんの企みを阻止すべく戦った私たち。
ククールのグランドクロスで、ついにマルチェロさんが膝をついた。
「……な、んだと……? この私が……っ」
「杖がおかしい! 気を付けて、みんな!」
封印の杖が紫色の光を纏う。
それから感じる力は、とてつもないものだった。
今まで感じたものとは明らかに違う。
七賢者の封印を完全に解いた杖は、もう何も縛るものがない。
マルチェロさんが血のように赤い光に一瞬包まれ、苦悶の表情を浮かべる。
そうしてがくりと項垂れた。
「兄貴……?」
ククールが震えた声でマルチェロさんを呼ぶ。
エイトが私を守るように一歩前へ出た。
そうして説教台の向こうから立ち上がったマルチェロさんは──いつかのドルマゲスのような、灰色の髪におよそ人とは思えないグレーの肌になっていた。
誰もが息を呑んで、その姿を見つめた。
身体から放たれるオーラも、マルチェロさんのものではない。
それは……かつてはドルマゲスが放っていたもの。
『……くっくっく』
マルチェロさんの声で、マルチェロさんではない『何か』が笑う。
いや、その正体を、私たちはもう知っている。
それは数百年前、賢者たちが自らの血と魂によって封じた存在。
『「礼を言うぞ、エイトよ……」』
「……お前は、まさか……!?」
「暗黒神ラプソーン──」
エイトの驚嘆を私が引き継ぐ。
これからどうなるんだろう。
肉体を封印する鍵はヨシュアだとしても、彼女はもう死んでいて、魂だけの人だ。
もしその鍵の役割を、私が受け継いでいるのだとしたら──。
「随分手こずらされたが、お前たちのおかげでようやくこの肉体を自由に操ることができる……。この男が法皇……最後の賢者を亡き者にしてくれた今、杖の封印は全て消え失せた」
「ってこたぁ、法皇様を殺したのは、マルチェロ本人の意思だったってことかよ……!?」
「そ、そんな……! 杖の支配を免れていたのに!?」
それだけ彼にとって、法皇様は邪魔な存在だったんだ。
オディロ院長様がドルマゲスによって殺された瞬間から、彼を止める人はいなくなってしまった。
彼は、自らの意思で、自らの手によって、最後の賢者を殺したんだ。
「そう!! 今こそ、我が復活の時!」
「そんなことさせない!!」
「霊導者の魂など取るに足りぬ。貴様如きの力では、我が封印の核など務まらぬわ!」
高らかに謳い、マルチェロさんの体が宙へ浮かび上がる。
その体は女神像の顔あたりと同じ高さまで上昇した。
駄目だ、その先を許してはいけない。
この女神像には──暗黒神ラプソーンの肉体が封じられている。
霊導者の力が叫ぶ。
「その女神像は、暗黒神の肉体を封印する核なの!! そこにヨシュアが……! ヨシュアの力が残ってるのに!!」
「さあ!! 蘇れ! 我が肉体よ!!」
封印を解かれた杖が──女神像の喉元に投げられ、突き刺さる。
瞬間、女神像の喉に大きく穴が開き、ヒビが全身に広がった。
バキン! と何かがひび割れる音が聞こえる。
それはヨシュアの魂で作られた、肉体の封印を破る音──。
空気が震え、地面が鳴動する。
女神像のヒビは広がり、像が少しずつ崩れ落ちていく。
ボロボロと崩れた女神像の瞳から、不気味な光がギョロリと覗いた。
そうして像が完全に崩れ落ちて、背後の大岩さえも表面が崩壊した、その先は──真っ暗な空道。
そこから、怪しい光が二つ覗いたと思った瞬間──全てを破壊するような、大爆発が起きた。
「きゃあああ──ッ!!」
爆発をまともに受けて、大神殿の説教台から吹き飛ばされる。
宙に放り出された身体が大きく弧を描いて、地上へと落ちていく。
みんなが無事かなんて気にする余裕はない。
吹き飛んで散らばっていた瓦礫が、爆発の中心地へと吸い寄せられていく。
そうして大神殿のあった場所に──不気味な城のような建物が現れた。
(なに、あれ……!?)
城は大神殿の大地ごと抉り出し、ゆっくりと空へ上がっていく。
中心には暴風が吹き荒れ、瓦礫がそれに付随して上空へと昇っていった。
暗闇と暗雲が覆う空へ昇った城から、恐ろしい色の稲光が放たれ、それは聖地の地面へと無数に降り注いだ。
投げ出された体は聖地の入口付近に落下して、全身を地面に打ち付ける。
衝撃で一気に意識が暗転していく間際、その光が地上の聖地を這い──そしてそれが止んだかと思った瞬間、真っ赤な光が空に放たれた。
空が──赤く染まる。
それはまるで、世界の崩壊の合図に見えた。
赤い光は空を覆い尽くし、どこまでも広がっていく。
きっとそれはトラペッタのルイネロさんも、不思議な泉にいるお師匠様も……三角谷のラジュさんも、見ているはず。
暗黒神の復活を告げる、赤い光。
私たちは──とうとうそれさえ、止められなかった。
(終わる──世界が、終わってしまう……)
混濁して落ちていく意識の中で、私の中から何かが消えていく気配がした。
それはヨシュアの気配。
闇の世界でレティスが言っていたのを思い出した。
暗黒神の封印が破られると、ヨシュアの魂は消滅してしまう、と。
つまり、今──ヨシュアの魂は、消滅してしまったということなのか……。
ああ……もう、何も──分からない……。
ククールのグランドクロスで、ついにマルチェロさんが膝をついた。
「……な、んだと……? この私が……っ」
「杖がおかしい! 気を付けて、みんな!」
封印の杖が紫色の光を纏う。
それから感じる力は、とてつもないものだった。
今まで感じたものとは明らかに違う。
七賢者の封印を完全に解いた杖は、もう何も縛るものがない。
マルチェロさんが血のように赤い光に一瞬包まれ、苦悶の表情を浮かべる。
そうしてがくりと項垂れた。
「兄貴……?」
ククールが震えた声でマルチェロさんを呼ぶ。
エイトが私を守るように一歩前へ出た。
そうして説教台の向こうから立ち上がったマルチェロさんは──いつかのドルマゲスのような、灰色の髪におよそ人とは思えないグレーの肌になっていた。
誰もが息を呑んで、その姿を見つめた。
身体から放たれるオーラも、マルチェロさんのものではない。
それは……かつてはドルマゲスが放っていたもの。
『……くっくっく』
マルチェロさんの声で、マルチェロさんではない『何か』が笑う。
いや、その正体を、私たちはもう知っている。
それは数百年前、賢者たちが自らの血と魂によって封じた存在。
『「礼を言うぞ、エイトよ……」』
「……お前は、まさか……!?」
「暗黒神ラプソーン──」
エイトの驚嘆を私が引き継ぐ。
これからどうなるんだろう。
肉体を封印する鍵はヨシュアだとしても、彼女はもう死んでいて、魂だけの人だ。
もしその鍵の役割を、私が受け継いでいるのだとしたら──。
「随分手こずらされたが、お前たちのおかげでようやくこの肉体を自由に操ることができる……。この男が法皇……最後の賢者を亡き者にしてくれた今、杖の封印は全て消え失せた」
「ってこたぁ、法皇様を殺したのは、マルチェロ本人の意思だったってことかよ……!?」
「そ、そんな……! 杖の支配を免れていたのに!?」
それだけ彼にとって、法皇様は邪魔な存在だったんだ。
オディロ院長様がドルマゲスによって殺された瞬間から、彼を止める人はいなくなってしまった。
彼は、自らの意思で、自らの手によって、最後の賢者を殺したんだ。
「そう!! 今こそ、我が復活の時!」
「そんなことさせない!!」
「霊導者の魂など取るに足りぬ。貴様如きの力では、我が封印の核など務まらぬわ!」
高らかに謳い、マルチェロさんの体が宙へ浮かび上がる。
その体は女神像の顔あたりと同じ高さまで上昇した。
駄目だ、その先を許してはいけない。
この女神像には──暗黒神ラプソーンの肉体が封じられている。
霊導者の力が叫ぶ。
「その女神像は、暗黒神の肉体を封印する核なの!! そこにヨシュアが……! ヨシュアの力が残ってるのに!!」
「さあ!! 蘇れ! 我が肉体よ!!」
封印を解かれた杖が──女神像の喉元に投げられ、突き刺さる。
瞬間、女神像の喉に大きく穴が開き、ヒビが全身に広がった。
バキン! と何かがひび割れる音が聞こえる。
それはヨシュアの魂で作られた、肉体の封印を破る音──。
空気が震え、地面が鳴動する。
女神像のヒビは広がり、像が少しずつ崩れ落ちていく。
ボロボロと崩れた女神像の瞳から、不気味な光がギョロリと覗いた。
そうして像が完全に崩れ落ちて、背後の大岩さえも表面が崩壊した、その先は──真っ暗な空道。
そこから、怪しい光が二つ覗いたと思った瞬間──全てを破壊するような、大爆発が起きた。
「きゃあああ──ッ!!」
爆発をまともに受けて、大神殿の説教台から吹き飛ばされる。
宙に放り出された身体が大きく弧を描いて、地上へと落ちていく。
みんなが無事かなんて気にする余裕はない。
吹き飛んで散らばっていた瓦礫が、爆発の中心地へと吸い寄せられていく。
そうして大神殿のあった場所に──不気味な城のような建物が現れた。
(なに、あれ……!?)
城は大神殿の大地ごと抉り出し、ゆっくりと空へ上がっていく。
中心には暴風が吹き荒れ、瓦礫がそれに付随して上空へと昇っていった。
暗闇と暗雲が覆う空へ昇った城から、恐ろしい色の稲光が放たれ、それは聖地の地面へと無数に降り注いだ。
投げ出された体は聖地の入口付近に落下して、全身を地面に打ち付ける。
衝撃で一気に意識が暗転していく間際、その光が地上の聖地を這い──そしてそれが止んだかと思った瞬間、真っ赤な光が空に放たれた。
空が──赤く染まる。
それはまるで、世界の崩壊の合図に見えた。
赤い光は空を覆い尽くし、どこまでも広がっていく。
きっとそれはトラペッタのルイネロさんも、不思議な泉にいるお師匠様も……三角谷のラジュさんも、見ているはず。
暗黒神の復活を告げる、赤い光。
私たちは──とうとうそれさえ、止められなかった。
(終わる──世界が、終わってしまう……)
混濁して落ちていく意識の中で、私の中から何かが消えていく気配がした。
それはヨシュアの気配。
闇の世界でレティスが言っていたのを思い出した。
暗黒神の封印が破られると、ヨシュアの魂は消滅してしまう、と。
つまり、今──ヨシュアの魂は、消滅してしまったということなのか……。
ああ……もう、何も──分からない……。
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