6章
夢小説設定
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リーザス像の塔での出来事から一夜が明けた今日。
私達はドルマゲスを追うべく、リーザス村を出発することにした。
とはいえ行く宛てなどないので、どうしたもんか、というのが私達の正直な気持ちだ。
とりあえず、お世話になったから挨拶だけでもしていこうという話になって、私達は高台にあるアルバート家を訪ねた。
――そして現在。
私達の目の前では、親子喧嘩が開催されていた。
「……いや、なんで?」
「ゼシカとかいう姉ちゃんもおふくろさんも、穏やかじゃねぇでがすなぁ」
「穏便には……進まなさそうだね」
エイトのそれにヤンガスと二人で頷く。
期せずして野次馬になってしまった私達の腕を、ド派手な男が引っ張った。
「お……おいおい、きみ達ぃ! 取り込み中だ。話なら後にしなよ」
「あっ、まともなことも言えたんですね、えーと、ジックラトさん」
「もはや名前の原型すら留めていないよ。君は昨日から何なんだい?」
何って……ねぇ?
ただの元近衛兵ですが……。
エイトが何か言いたげな目をしていたので、愛想笑いで切り抜けることにした。
典型的な怒らせると怖いタイプなので、エイトを怒らせるわけにはいかないのだ。
「もう一度聞きます、ゼシカ。あなたには兄であるサーベルトの死を悼む気持ちはないのですか」
アローザさんの厳しい声が響く。
……大丈夫かな、これ。
さすがに家の中でメラをぶっぱなすことはないと信じたいけど、塔の中で平然とメラをぶち込もうとしてきた人だもんな、ゼシカさん。
「……またそれ? さっきから何度も言ってるじゃない。悲しいに決まってるでしょ。ただ、家訓家訓って言ってるお母さんとは、気持ちの整理のつけ方が違うだけ。私は兄さんの仇を討つの」
一歩も引かないゼシカさんがそう言った瞬間、アローザさんの顔色が変わった。
例えるなら怒りが頂点に達してしまったというか。
とにかくもう、怒気がすごい。
ちょっと離れたところにいる私達まで、ごくりと喉を鳴らしてしまったくらいだ。
「仇を……討つですって?」
迫力と剣幕が凄い。
さすが由緒あるらしいアルバート家の当主……。
私がゼシカさんなら絶対に負けてた。
「ゼシカ!! 馬鹿を言うのもいい加減にしなさい!! あなたは女でしょ! サーベルトだって、そんなことを望んではいないはずよ! 今は静かに、先祖の教えに従って、兄の死を悼みなさい!」
これがお兄さんは妹の背中を押しちゃったんだよなぁ。
あちゃあ、なんて心の声が、私とエイトの中に浮かんだ。
サーベルトさん、こうなることもお見通しだったんだろうな……。
「もういい加減にしてほしいのはこっちよ!! 先祖の教えだの家訓だのって、それがいったい何だっての!? どうせ信じやしないだろうけど、兄さんは私に言ったわ! 自分の信じた道を進めってね。だから私は、どんな事があっても絶対に兄さんの仇を討つわ。それが自分の信じた道だもの」
ゼシカさんがそうきっぱり言い返すと、アローザさんは黙り込んだ。
そうしてゼシカさんを見る眼差しは、先程よりも厳しさが増していて。
何となく、本当に何となくだけど、アローザさんが何を言うかが予想できてしまった。
「……分かったわ。それほど言うなら、好きなようにすればいいでしょう。……ただし」
アローザさんがそこで一度、言葉を切る。
そうして言い渡されたのは――やはり、勘当だった。
「私は今から、あなたをアルバート家の一族とは認めません。この家から出てお行きなさい」
私の横から「えっ」という声が零れた。
流石のエイトもやりすぎじゃないかと思ったらしい。
まあ、アローザさんは家訓や伝統を重んじるタイプの人だから、ゼシカさんとは絶対に反りが合わないだろうな。
「ええ、出て行きますとも。お母さんはここで気が済むまで思う存分、引き篭ってればいいわよ」
そう言ってゼシカさんは、自分の部屋へと大股で歩いていく。
足音からも怒りがありありと見て取れて、部屋の前にいるポルクくんとマルクくんが、ぎょっとした顔でゼシカさんを見上げた。
「ポルクッ! マルクッ! 荷物を取ってくるから通して!」
大声に飛び上がった二人がドアの前から飛び退く。
そうしてゼシカさんは部屋のドアを開け、それは力いっぱい閉めた。
バァン!! という音が屋敷中に響いて、両脇にいる二人が縮み上がって飛び跳ねる。
そうして出てきたゼシカさんは、大胆に胸元までが開いた旅用の服を着ていた。
「わぁ」と乾いた声が私の喉から漏れる。
分かってたけど、とんでもなくナイスバディ……。
思わず自分の胸を見てしまった。
無いとは言わんが、ゼシカさん程ではない。
近衛兵としてそれはもう鍛えまくっているから、色気とは真反対の身体だもんな、私……。
「ポルク。マルク。あんた達のこと、色々と利用しちゃってごめんね」
「ゼシカ姉ちゃん……。本当に村を出ていっちゃうの?」
「うん。だから、これからはあんた達ふたりが、この村を守るのよ。サーベルト兄さんがよく言ってたわ。ポルクとマルクは将来、村を守る立派な戦士になるだろうって」
「えうえう……あうう〜……」
「ほら。泣かないの」
泣き出してしまったマルクくんの頭を、鍋の上からゼシカさんが撫でる。
その横でポルクくんは、悲しさを堪えるように手のひらを握り締めて俯いたままだ。
「さあ、もうここの見張りは終了よ。これからは外の見回りをよろしく」
「イ……イエッサー!!」
気丈に敬礼したポルクくんが、まだ泣いているマルクくんを伴って、屋敷の階段を降りていく。
その背を見送って、ゼシカさんはアローザさんのほうへと歩いてきて。
「それじゃあ、言われた通りに出ていくわ! お世話になりました! ごきげんよう!」
お嬢様らしいお言葉を残して、これまたドスドスと大股で階段を降りていった。
き、気が強い……。
こんなにお転婆なお嬢様は初めて見たぞ……。
私達はドルマゲスを追うべく、リーザス村を出発することにした。
とはいえ行く宛てなどないので、どうしたもんか、というのが私達の正直な気持ちだ。
とりあえず、お世話になったから挨拶だけでもしていこうという話になって、私達は高台にあるアルバート家を訪ねた。
――そして現在。
私達の目の前では、親子喧嘩が開催されていた。
「……いや、なんで?」
「ゼシカとかいう姉ちゃんもおふくろさんも、穏やかじゃねぇでがすなぁ」
「穏便には……進まなさそうだね」
エイトのそれにヤンガスと二人で頷く。
期せずして野次馬になってしまった私達の腕を、ド派手な男が引っ張った。
「お……おいおい、きみ達ぃ! 取り込み中だ。話なら後にしなよ」
「あっ、まともなことも言えたんですね、えーと、ジックラトさん」
「もはや名前の原型すら留めていないよ。君は昨日から何なんだい?」
何って……ねぇ?
ただの元近衛兵ですが……。
エイトが何か言いたげな目をしていたので、愛想笑いで切り抜けることにした。
典型的な怒らせると怖いタイプなので、エイトを怒らせるわけにはいかないのだ。
「もう一度聞きます、ゼシカ。あなたには兄であるサーベルトの死を悼む気持ちはないのですか」
アローザさんの厳しい声が響く。
……大丈夫かな、これ。
さすがに家の中でメラをぶっぱなすことはないと信じたいけど、塔の中で平然とメラをぶち込もうとしてきた人だもんな、ゼシカさん。
「……またそれ? さっきから何度も言ってるじゃない。悲しいに決まってるでしょ。ただ、家訓家訓って言ってるお母さんとは、気持ちの整理のつけ方が違うだけ。私は兄さんの仇を討つの」
一歩も引かないゼシカさんがそう言った瞬間、アローザさんの顔色が変わった。
例えるなら怒りが頂点に達してしまったというか。
とにかくもう、怒気がすごい。
ちょっと離れたところにいる私達まで、ごくりと喉を鳴らしてしまったくらいだ。
「仇を……討つですって?」
迫力と剣幕が凄い。
さすが由緒あるらしいアルバート家の当主……。
私がゼシカさんなら絶対に負けてた。
「ゼシカ!! 馬鹿を言うのもいい加減にしなさい!! あなたは女でしょ! サーベルトだって、そんなことを望んではいないはずよ! 今は静かに、先祖の教えに従って、兄の死を悼みなさい!」
これがお兄さんは妹の背中を押しちゃったんだよなぁ。
あちゃあ、なんて心の声が、私とエイトの中に浮かんだ。
サーベルトさん、こうなることもお見通しだったんだろうな……。
「もういい加減にしてほしいのはこっちよ!! 先祖の教えだの家訓だのって、それがいったい何だっての!? どうせ信じやしないだろうけど、兄さんは私に言ったわ! 自分の信じた道を進めってね。だから私は、どんな事があっても絶対に兄さんの仇を討つわ。それが自分の信じた道だもの」
ゼシカさんがそうきっぱり言い返すと、アローザさんは黙り込んだ。
そうしてゼシカさんを見る眼差しは、先程よりも厳しさが増していて。
何となく、本当に何となくだけど、アローザさんが何を言うかが予想できてしまった。
「……分かったわ。それほど言うなら、好きなようにすればいいでしょう。……ただし」
アローザさんがそこで一度、言葉を切る。
そうして言い渡されたのは――やはり、勘当だった。
「私は今から、あなたをアルバート家の一族とは認めません。この家から出てお行きなさい」
私の横から「えっ」という声が零れた。
流石のエイトもやりすぎじゃないかと思ったらしい。
まあ、アローザさんは家訓や伝統を重んじるタイプの人だから、ゼシカさんとは絶対に反りが合わないだろうな。
「ええ、出て行きますとも。お母さんはここで気が済むまで思う存分、引き篭ってればいいわよ」
そう言ってゼシカさんは、自分の部屋へと大股で歩いていく。
足音からも怒りがありありと見て取れて、部屋の前にいるポルクくんとマルクくんが、ぎょっとした顔でゼシカさんを見上げた。
「ポルクッ! マルクッ! 荷物を取ってくるから通して!」
大声に飛び上がった二人がドアの前から飛び退く。
そうしてゼシカさんは部屋のドアを開け、それは力いっぱい閉めた。
バァン!! という音が屋敷中に響いて、両脇にいる二人が縮み上がって飛び跳ねる。
そうして出てきたゼシカさんは、大胆に胸元までが開いた旅用の服を着ていた。
「わぁ」と乾いた声が私の喉から漏れる。
分かってたけど、とんでもなくナイスバディ……。
思わず自分の胸を見てしまった。
無いとは言わんが、ゼシカさん程ではない。
近衛兵としてそれはもう鍛えまくっているから、色気とは真反対の身体だもんな、私……。
「ポルク。マルク。あんた達のこと、色々と利用しちゃってごめんね」
「ゼシカ姉ちゃん……。本当に村を出ていっちゃうの?」
「うん。だから、これからはあんた達ふたりが、この村を守るのよ。サーベルト兄さんがよく言ってたわ。ポルクとマルクは将来、村を守る立派な戦士になるだろうって」
「えうえう……あうう〜……」
「ほら。泣かないの」
泣き出してしまったマルクくんの頭を、鍋の上からゼシカさんが撫でる。
その横でポルクくんは、悲しさを堪えるように手のひらを握り締めて俯いたままだ。
「さあ、もうここの見張りは終了よ。これからは外の見回りをよろしく」
「イ……イエッサー!!」
気丈に敬礼したポルクくんが、まだ泣いているマルクくんを伴って、屋敷の階段を降りていく。
その背を見送って、ゼシカさんはアローザさんのほうへと歩いてきて。
「それじゃあ、言われた通りに出ていくわ! お世話になりました! ごきげんよう!」
お嬢様らしいお言葉を残して、これまたドスドスと大股で階段を降りていった。
き、気が強い……。
こんなにお転婆なお嬢様は初めて見たぞ……。
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