55章
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色のない世界を歩いて、闇の世界のレティシアへ到着した私たち。
そこで見たものは──私たちと違う、色のない人々だった。
つまりはまぁ、現地の人達からすれば、我々のほうが異質なので。
「な……なんだあいつら! ハデハデの変な姿だ……。まさかレティスの仲間なのか!?」
「ちょっと待て! よく見ろよ。たしかに変な姿に見えるけど、レティスとは似ても似つかないぞ。……どっちかと言うと人間っぽい姿じゃないか? うん。ちょっと奇妙だが、人間みたいだ」
「人間だって!? でもあんな色がついた姿してるの、レティスくらいしか……」
「と……とにかく、危険はなさそうだから、下手に刺激しないほうがいい! お前は長老を呼んでくるんだ!」
「う……うん、分かった!」
完全に危険人物扱いだ。
ひどいや、こんな見るからに人畜無害な人間に向かってさ!
村の入口での大騒ぎは村中に知れ渡り、私たちはあっという間にレティシアの人達に囲まれた。
「やれやれ、お尋ね者にでもなった気分だ」
「色がないのが当たり前の世界に、こんなカラフルな人間が来たら、そりゃあ不気味にも思うわよ」
「う〜む、アッシらは至って普通の人間なんでがすがねぇ」
「なんか悪いことしてる気分になってきちゃった。何もしてないのに」
五人で居心地悪く顔を寄せ合っていると、人の輪の間が割れて、長老さんが現れた。
やっぱり長老さんも村の人たちも、光の世界にいた人たちと瓜二つだ。
この世界と私たちの世界は、表裏一体なのかもしれない。
……ということは、私の闇の世界バージョンもいたりするのかな?
「おお、その姿、もしや……?」
長老さんは私たちのカラフルな姿を目にすると、ふさふさの眉毛に隠れた目を見開いた。
「お主たちはひょっとして、世界の破れ目を通ってこちらへ来た、光の世界の住人ではないのかね?」
「はい、そうです」
「やはりそうじゃったか。ならば今この時、お主たちがきたのは、天の意思なのかもしれんな」
……天の意思、か。
それじゃあ私たちが暗黒神の復活を阻止しなくてはならないのも、天の意思なのだろうか。
私たちはただ平和な日常を取り戻したいだけの、普通の人間なのに。
「……ふむ。お主たちに話したいことがあるのじゃ。後ほど、わしの家まで来てほしい。それさえ約束してくれたら、あとは好きに村の中を見てもらっても構わんぞ」
こくりと再びエイトが頷く。
私たちも聞きたいことだらけだから、向こうから話があると言ってくれるのなら、断る理由はない。
「では待っておるからな。わしの家は一番大きい建物じゃから、すぐに分かるじゃろう」
村の作りも光の世界と全く同じだもんね。
長老さんのおうちも、一番奥にある大きなおうちで間違いないだろう。
長老さんは私たちに背を向けると、今度は私たちを囲んでいるレティシアの人たちへ声をかけた。
「レティシアの民よ。この者たちは、我らに危害を加えるような者ではない。落ち着いて、いつも通りにしておれ」
長老さんの言葉を合図に、レティシアの人達が一人、また一人と私たちの前から去っていく。
やがて普段通りの落ち着きを取り戻した村は、けれど光の世界のレティシアとは別の意味で、静かだった。
「はへ〜っ、あんたたち光の世界の人間だったのか。どうりでそんな外見してるわけだ。いや〜、この島によそ者が来るだけでも珍しいのに、異世界の人間だなんてビックリしたぜ」
「で、ですよね。僕らも驚かせるつもりはなかったんですけど」
「チカチカして目が痛いとは思いますけど、しばらくの間、お邪魔させていただきます」
「ところで、この村はレティシアって名前なんだな?」
「ああ、そうだ。レティシアってのは、神鳥レティスを崇める者って意味なんだが……。今となっては胸糞悪い呼び名だよ。ちくしょう、あのアホウ鳥め!」
「え、ええ!?」
レティシアでレティスを崇めない人がいるなんて、そっちがびっくりだよ!?
ひょっとしてこの闇の世界って、暗黒神とかが神として崇められたりしてないよね!?
だから暗黒神と敵対しているレティスを敵視してるとか……?
「……事情がありそうだな」
少し離れたところまで歩いて、ククールは呟いた。
それにエイトも頷く。
事情はあると思うし、それが良くない方向の話だろうなという予感もある。
だって闇のレティシアは、光のレティシアと比べて、村の家々がボロボロだ。
経年劣化というよりは、壊されたものを補修した、という雰囲気がある。
とにかく今は、長老さんの家に向かうがてら、村の人達に話を聞いてみるしかない。
ふと視線を止まり木のレプリカに向けると、その足元で憤りを見せる人がいる。
今にも止まり木を蹴り壊さんばかりの勢いで、さすがの私達も「やめておけ……」と全員の心が一致するくらいだった。
「あ、あの、それってレティスの止まり木……では?」
「おお、光の世界の人! 聞いてほしいだよ!」
「はっはい! 聞きます!」
勢いに圧された。
こちらの予想より遥かに好意的に憤りを伝えてくれる感じで来たから、たしなめて終わるはずだったのに長話に突入だ。
いやいや、でもほら、これで貴重な証言が出てくるかもしれないし!
「オラいい加減、頭にきてるだ! こんなレティスの止まり木なんて、壊しちまえばいいだよ!」
「壊すのは良くないと思いますけど!?」
「あの鳥のせいで、オラのかわいい馬が怪我したんだ! まったくとんでもねえ奴だよ!」
「え、ええ……? レティスが馬を襲ったってこと?」
鳥ってそんな、家畜の肉とか食べるんだっけ?
木の実とか虫とか食べてるイメージだったんだけど、神鳥ともなると食べるのかな、肉。
その割には怪我しただけで終わって、食われてはないっぽいし……?
村のもうひとつの入口はこちらの世界でも壊れていて、それはどうやらレティスが破壊したものらしい。
その壊れた入口のアーチの前で、若いお嬢さんが困ったように立っていた。
「……レティシアの人達は、レティスをもう敬ってはいないんですか?」
「どう答えたら正しいんでしょう……」
お嬢さんは複雑そうな表情を浮かべて、私と崩れたアーチとで視線を彷徨わせた。
「私たちは美しい色を持つレティスを、遥か祖先の時代より崇拝してきました。レティスの方も、この島で暴れる魔物を退治してくれたりして、ずっといい関係でいたのに……」
「……でも、何かが起きたんですね?」
「……なのにレティスは、その長い間の信頼を裏切って、突然この村を襲ってきたんです。幸い怪我をした者は出ませんでしたが、村の建物は見ての通りボロボロ。こんなのってあんまりだわ」
……レティスが、この村を襲った?
長年の信頼を裏切って?
今まで伝承で聞いてきた話と、この村を襲ったレティスの話が一致しない。
世界を守るために自分を犠牲にしてこの世界に留まるほどのレティスが、自分たちを崇める人間を襲うだろうか。
……なんというか、ラプソーン復活を阻止するために力を借りるどころの話じゃなくなってきた感じがするな。
そこで見たものは──私たちと違う、色のない人々だった。
つまりはまぁ、現地の人達からすれば、我々のほうが異質なので。
「な……なんだあいつら! ハデハデの変な姿だ……。まさかレティスの仲間なのか!?」
「ちょっと待て! よく見ろよ。たしかに変な姿に見えるけど、レティスとは似ても似つかないぞ。……どっちかと言うと人間っぽい姿じゃないか? うん。ちょっと奇妙だが、人間みたいだ」
「人間だって!? でもあんな色がついた姿してるの、レティスくらいしか……」
「と……とにかく、危険はなさそうだから、下手に刺激しないほうがいい! お前は長老を呼んでくるんだ!」
「う……うん、分かった!」
完全に危険人物扱いだ。
ひどいや、こんな見るからに人畜無害な人間に向かってさ!
村の入口での大騒ぎは村中に知れ渡り、私たちはあっという間にレティシアの人達に囲まれた。
「やれやれ、お尋ね者にでもなった気分だ」
「色がないのが当たり前の世界に、こんなカラフルな人間が来たら、そりゃあ不気味にも思うわよ」
「う〜む、アッシらは至って普通の人間なんでがすがねぇ」
「なんか悪いことしてる気分になってきちゃった。何もしてないのに」
五人で居心地悪く顔を寄せ合っていると、人の輪の間が割れて、長老さんが現れた。
やっぱり長老さんも村の人たちも、光の世界にいた人たちと瓜二つだ。
この世界と私たちの世界は、表裏一体なのかもしれない。
……ということは、私の闇の世界バージョンもいたりするのかな?
「おお、その姿、もしや……?」
長老さんは私たちのカラフルな姿を目にすると、ふさふさの眉毛に隠れた目を見開いた。
「お主たちはひょっとして、世界の破れ目を通ってこちらへ来た、光の世界の住人ではないのかね?」
「はい、そうです」
「やはりそうじゃったか。ならば今この時、お主たちがきたのは、天の意思なのかもしれんな」
……天の意思、か。
それじゃあ私たちが暗黒神の復活を阻止しなくてはならないのも、天の意思なのだろうか。
私たちはただ平和な日常を取り戻したいだけの、普通の人間なのに。
「……ふむ。お主たちに話したいことがあるのじゃ。後ほど、わしの家まで来てほしい。それさえ約束してくれたら、あとは好きに村の中を見てもらっても構わんぞ」
こくりと再びエイトが頷く。
私たちも聞きたいことだらけだから、向こうから話があると言ってくれるのなら、断る理由はない。
「では待っておるからな。わしの家は一番大きい建物じゃから、すぐに分かるじゃろう」
村の作りも光の世界と全く同じだもんね。
長老さんのおうちも、一番奥にある大きなおうちで間違いないだろう。
長老さんは私たちに背を向けると、今度は私たちを囲んでいるレティシアの人たちへ声をかけた。
「レティシアの民よ。この者たちは、我らに危害を加えるような者ではない。落ち着いて、いつも通りにしておれ」
長老さんの言葉を合図に、レティシアの人達が一人、また一人と私たちの前から去っていく。
やがて普段通りの落ち着きを取り戻した村は、けれど光の世界のレティシアとは別の意味で、静かだった。
「はへ〜っ、あんたたち光の世界の人間だったのか。どうりでそんな外見してるわけだ。いや〜、この島によそ者が来るだけでも珍しいのに、異世界の人間だなんてビックリしたぜ」
「で、ですよね。僕らも驚かせるつもりはなかったんですけど」
「チカチカして目が痛いとは思いますけど、しばらくの間、お邪魔させていただきます」
「ところで、この村はレティシアって名前なんだな?」
「ああ、そうだ。レティシアってのは、神鳥レティスを崇める者って意味なんだが……。今となっては胸糞悪い呼び名だよ。ちくしょう、あのアホウ鳥め!」
「え、ええ!?」
レティシアでレティスを崇めない人がいるなんて、そっちがびっくりだよ!?
ひょっとしてこの闇の世界って、暗黒神とかが神として崇められたりしてないよね!?
だから暗黒神と敵対しているレティスを敵視してるとか……?
「……事情がありそうだな」
少し離れたところまで歩いて、ククールは呟いた。
それにエイトも頷く。
事情はあると思うし、それが良くない方向の話だろうなという予感もある。
だって闇のレティシアは、光のレティシアと比べて、村の家々がボロボロだ。
経年劣化というよりは、壊されたものを補修した、という雰囲気がある。
とにかく今は、長老さんの家に向かうがてら、村の人達に話を聞いてみるしかない。
ふと視線を止まり木のレプリカに向けると、その足元で憤りを見せる人がいる。
今にも止まり木を蹴り壊さんばかりの勢いで、さすがの私達も「やめておけ……」と全員の心が一致するくらいだった。
「あ、あの、それってレティスの止まり木……では?」
「おお、光の世界の人! 聞いてほしいだよ!」
「はっはい! 聞きます!」
勢いに圧された。
こちらの予想より遥かに好意的に憤りを伝えてくれる感じで来たから、たしなめて終わるはずだったのに長話に突入だ。
いやいや、でもほら、これで貴重な証言が出てくるかもしれないし!
「オラいい加減、頭にきてるだ! こんなレティスの止まり木なんて、壊しちまえばいいだよ!」
「壊すのは良くないと思いますけど!?」
「あの鳥のせいで、オラのかわいい馬が怪我したんだ! まったくとんでもねえ奴だよ!」
「え、ええ……? レティスが馬を襲ったってこと?」
鳥ってそんな、家畜の肉とか食べるんだっけ?
木の実とか虫とか食べてるイメージだったんだけど、神鳥ともなると食べるのかな、肉。
その割には怪我しただけで終わって、食われてはないっぽいし……?
村のもうひとつの入口はこちらの世界でも壊れていて、それはどうやらレティスが破壊したものらしい。
その壊れた入口のアーチの前で、若いお嬢さんが困ったように立っていた。
「……レティシアの人達は、レティスをもう敬ってはいないんですか?」
「どう答えたら正しいんでしょう……」
お嬢さんは複雑そうな表情を浮かべて、私と崩れたアーチとで視線を彷徨わせた。
「私たちは美しい色を持つレティスを、遥か祖先の時代より崇拝してきました。レティスの方も、この島で暴れる魔物を退治してくれたりして、ずっといい関係でいたのに……」
「……でも、何かが起きたんですね?」
「……なのにレティスは、その長い間の信頼を裏切って、突然この村を襲ってきたんです。幸い怪我をした者は出ませんでしたが、村の建物は見ての通りボロボロ。こんなのってあんまりだわ」
……レティスが、この村を襲った?
長年の信頼を裏切って?
今まで伝承で聞いてきた話と、この村を襲ったレティスの話が一致しない。
世界を守るために自分を犠牲にしてこの世界に留まるほどのレティスが、自分たちを崇める人間を襲うだろうか。
……なんというか、ラプソーン復活を阻止するために力を借りるどころの話じゃなくなってきた感じがするな。
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