閑話3
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背後には強敵。
目の前には立派な門。
ここがどこかって?
そう──この場所こそが世界の中心。
聖地ゴルドである!!
「なんで西に行くって言って聖地ゴルドに着くんだよ」
「なんでだろうね! 分かんないや!」
「方向音痴は二度と舵を握るなよ」
なんだかいつにも増してククールの機嫌が悪い。
いやまぁ、普段からこうと言われればそんな気もするんだけど。
でもせっかくだしさぁ、こういう巡礼的なことはしときたいじゃん?
ドルマゲスを倒した後だと、いつ来られるか分かんないし!!
「お、おぉぉぉ……!! 女神像おっきぃ〜!!」
「崖を直接、女神像として掘ってるのね……。すごい技術だわ。あれをずっと昔の人が作ったなんて信じられない……」
完全にお上りさんだが気にしない!
なぜなら巡礼の旅人はほとんどがお上りさんだからだ!
しょっちゅう来られる場所じゃないからありがたみが増すんだぜ!!
「せっかく来たんだし、お祈りだけでもしていこうか?」
「そだね! あ〜ワクワクする! 足元で見たらどんだけ大きいんだろ!?」
「あー、残念だが、あの大神殿の向こうは金持ち以外、立ち入り禁止だ」
「な……なんでぇ!?」
「そういうもんだからだよ」
ククールはそうとだけ言って、さっさと歩き始めた。
そんなぁ……せっかく中に入れると思ったのに……。
でも近くで見られればそれでいいや。
決して観光気分ではなくて、そう、旅の息抜きとして!
気を張ってたら疲れるからね!
とか何とか一人で言い訳を考えながら大神殿に向かっていると、その大神殿から誰かが出てきた。
よく見ると、片方は明らかに高貴な身なりの太った男性、そしてもう片方は……。
「これはニノ大司教にマルチェロ殿! ご苦労様です!」
門を守っていた聖堂騎士団員が声をかける。
う、うわー!!
なんだってこんなところで二階からイヤミに鉢合わせなく立ってさぁ!!
ほらもうククールの顔がすごいことなってるって!!
ニノ大司教様は騎士団員を下がらせると、背後に控えていたマルチェロさんへ視線を投げかけた。
「この聖地ゴルドの大神殿は、法皇様の即位式を行う、聖なる場所。いくら聖堂騎士団長とはいえ、お前のような生まれの卑しい者が立ち入れる場所ではない。よいかマルチェロ。貴様を警護役として連れてきたのは、あくまで特例中の特例。……わかっておるとは思うが、次期法皇候補たるこの私が、法皇様に頼み込んだからなのだぞ」
「……ええ。存じております。ニノ大司教」
「お前がその若さでマイエラ修道院の院長になれたのも、私の口添えあらばこそ。それをゆめゆめ忘れるな?」
「私の感謝と忠誠は、後ほど大司教様のご自宅へ届けさせましょう。……ちょうど先日、旅の商人が、見事な宝石を我が修道院に寄付いたしまして」
「いつもいつも、よく気のつくものよ。……じゃがな、マルチェロよ。法皇様は潔癖なお方。あのお方には、そのような手は通用せん。よく覚えておけ」
う、うわぁ、教会って……薄々感じてはいたけど、ここまで腐敗が進んでいたんだ。
そりゃあそれを身近で見てきたククールが、修道院を追い出されてせいせいするとか言うわけだよ!
ろくなところじゃないな、教会ってのは!!
「ここでの用は済んだ。さあ帰るぞ」
大司教様とマルチェロさんがこちらへ歩いてくる。
あっやべ、と思った時には、マルチェロさんとガッツリ目が合ってしまった。
ククールのためにもさっさと離れておきたかったんだけどなー!!
「……おやおや。これら珍しい顔に会うものだ。髪の毛一筋ほども信仰など持ち合わせていないお前が巡礼に来るとは。神頼みか? それとも観光気分か? 気楽なものだな」
「……っ」
ククールが頭に来た様子で何かを言いかけて……けれど彼は口を閉ざした。
言葉が見つからなかったのか、それとも言うだけ無駄だと判断したのか、それは定かではないけれど。
でも二人の間に流れる雰囲気はかなり険悪だ。
「……まぁいい。私も忙しい身でね。お前なぞに構っている暇はない。では皆様、ごきげんよう。物見遊山も宜しいが、ドルマゲスを追う旅もどうぞお忘れなく」
やはり嫌味を山のように残して、マルチェロさんはニノ大司教と共に去っていった。
ククールが感情を飲み込むみたいに呼吸を整える。
「……な、なんだアイツ!? さすが二階からイヤミだな!? よくもまぁあんだけベラベラ、頼んでもないのに出てくるもんだよ!!」
「そうよそうよ! いっつも上から偉そうに! 結局は賄賂で出世しただけのしょうもない男じゃない! 信仰心を持ち合わせてないのはどっちよ!」
「マルチェロの話になると、姉貴とゼシカは息が合うようでがすなぁ。女の敵ってわけでがすかい」
「……さぁね。どうでもいいよ、あんなやつ。ほら、さっさと女神像を拝んでいこうぜ」
ぶっきらぼうにそう言って、ククールが大神殿へと歩いていく。
その背中を呼び止めたのはエイトだった。
「僕らは、何があってもククールの味方だから」
「……そういうの、余計なお世話って言うんだ。覚えておけよ、優等生」
返ってきたのは、こちらを突き放す言葉。
それでもエイトは心配そうにククールを見つめるだけだった。
……気持ちは伝わってると思うんだ。
ただ、ククールは……多分だけど、そういう感情をどうやって受け取って良いか、分かんないだけなんだろう。
素直にありがとうって言えないのは、彼の生い立ちや置かれてきた環境のせいだと思うから。
大神殿の前で祈りを捧げた私たちは、聖地ゴルドを後にした。
西の大陸へ向かわなくては!
待ってろドルマゲス!
今その首、私が獲りに行ってやるからな!!
──物騒なことを言わない、とエイトの目が言っていたので、今の発言はなかったことにしようと思う。
目の前には立派な門。
ここがどこかって?
そう──この場所こそが世界の中心。
聖地ゴルドである!!
「なんで西に行くって言って聖地ゴルドに着くんだよ」
「なんでだろうね! 分かんないや!」
「方向音痴は二度と舵を握るなよ」
なんだかいつにも増してククールの機嫌が悪い。
いやまぁ、普段からこうと言われればそんな気もするんだけど。
でもせっかくだしさぁ、こういう巡礼的なことはしときたいじゃん?
ドルマゲスを倒した後だと、いつ来られるか分かんないし!!
「お、おぉぉぉ……!! 女神像おっきぃ〜!!」
「崖を直接、女神像として掘ってるのね……。すごい技術だわ。あれをずっと昔の人が作ったなんて信じられない……」
完全にお上りさんだが気にしない!
なぜなら巡礼の旅人はほとんどがお上りさんだからだ!
しょっちゅう来られる場所じゃないからありがたみが増すんだぜ!!
「せっかく来たんだし、お祈りだけでもしていこうか?」
「そだね! あ〜ワクワクする! 足元で見たらどんだけ大きいんだろ!?」
「あー、残念だが、あの大神殿の向こうは金持ち以外、立ち入り禁止だ」
「な……なんでぇ!?」
「そういうもんだからだよ」
ククールはそうとだけ言って、さっさと歩き始めた。
そんなぁ……せっかく中に入れると思ったのに……。
でも近くで見られればそれでいいや。
決して観光気分ではなくて、そう、旅の息抜きとして!
気を張ってたら疲れるからね!
とか何とか一人で言い訳を考えながら大神殿に向かっていると、その大神殿から誰かが出てきた。
よく見ると、片方は明らかに高貴な身なりの太った男性、そしてもう片方は……。
「これはニノ大司教にマルチェロ殿! ご苦労様です!」
門を守っていた聖堂騎士団員が声をかける。
う、うわー!!
なんだってこんなところで二階からイヤミに鉢合わせなく立ってさぁ!!
ほらもうククールの顔がすごいことなってるって!!
ニノ大司教様は騎士団員を下がらせると、背後に控えていたマルチェロさんへ視線を投げかけた。
「この聖地ゴルドの大神殿は、法皇様の即位式を行う、聖なる場所。いくら聖堂騎士団長とはいえ、お前のような生まれの卑しい者が立ち入れる場所ではない。よいかマルチェロ。貴様を警護役として連れてきたのは、あくまで特例中の特例。……わかっておるとは思うが、次期法皇候補たるこの私が、法皇様に頼み込んだからなのだぞ」
「……ええ。存じております。ニノ大司教」
「お前がその若さでマイエラ修道院の院長になれたのも、私の口添えあらばこそ。それをゆめゆめ忘れるな?」
「私の感謝と忠誠は、後ほど大司教様のご自宅へ届けさせましょう。……ちょうど先日、旅の商人が、見事な宝石を我が修道院に寄付いたしまして」
「いつもいつも、よく気のつくものよ。……じゃがな、マルチェロよ。法皇様は潔癖なお方。あのお方には、そのような手は通用せん。よく覚えておけ」
う、うわぁ、教会って……薄々感じてはいたけど、ここまで腐敗が進んでいたんだ。
そりゃあそれを身近で見てきたククールが、修道院を追い出されてせいせいするとか言うわけだよ!
ろくなところじゃないな、教会ってのは!!
「ここでの用は済んだ。さあ帰るぞ」
大司教様とマルチェロさんがこちらへ歩いてくる。
あっやべ、と思った時には、マルチェロさんとガッツリ目が合ってしまった。
ククールのためにもさっさと離れておきたかったんだけどなー!!
「……おやおや。これら珍しい顔に会うものだ。髪の毛一筋ほども信仰など持ち合わせていないお前が巡礼に来るとは。神頼みか? それとも観光気分か? 気楽なものだな」
「……っ」
ククールが頭に来た様子で何かを言いかけて……けれど彼は口を閉ざした。
言葉が見つからなかったのか、それとも言うだけ無駄だと判断したのか、それは定かではないけれど。
でも二人の間に流れる雰囲気はかなり険悪だ。
「……まぁいい。私も忙しい身でね。お前なぞに構っている暇はない。では皆様、ごきげんよう。物見遊山も宜しいが、ドルマゲスを追う旅もどうぞお忘れなく」
やはり嫌味を山のように残して、マルチェロさんはニノ大司教と共に去っていった。
ククールが感情を飲み込むみたいに呼吸を整える。
「……な、なんだアイツ!? さすが二階からイヤミだな!? よくもまぁあんだけベラベラ、頼んでもないのに出てくるもんだよ!!」
「そうよそうよ! いっつも上から偉そうに! 結局は賄賂で出世しただけのしょうもない男じゃない! 信仰心を持ち合わせてないのはどっちよ!」
「マルチェロの話になると、姉貴とゼシカは息が合うようでがすなぁ。女の敵ってわけでがすかい」
「……さぁね。どうでもいいよ、あんなやつ。ほら、さっさと女神像を拝んでいこうぜ」
ぶっきらぼうにそう言って、ククールが大神殿へと歩いていく。
その背中を呼び止めたのはエイトだった。
「僕らは、何があってもククールの味方だから」
「……そういうの、余計なお世話って言うんだ。覚えておけよ、優等生」
返ってきたのは、こちらを突き放す言葉。
それでもエイトは心配そうにククールを見つめるだけだった。
……気持ちは伝わってると思うんだ。
ただ、ククールは……多分だけど、そういう感情をどうやって受け取って良いか、分かんないだけなんだろう。
素直にありがとうって言えないのは、彼の生い立ちや置かれてきた環境のせいだと思うから。
大神殿の前で祈りを捧げた私たちは、聖地ゴルドを後にした。
西の大陸へ向かわなくては!
待ってろドルマゲス!
今その首、私が獲りに行ってやるからな!!
──物騒なことを言わない、とエイトの目が言っていたので、今の発言はなかったことにしようと思う。
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