47章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハワードさんをお部屋まで運んで、落ち着くのを待ってから、私たちは改めてハワードさんを訪ねた。
大勢で押し掛けても迷惑だろうからと、お部屋へ向かったのは私とエイトとゼシカだけ。
ヤンガスとククールは屋敷の外で、陛下と一緒だ。
「……心配かけてすまんかったな、エイトよ。チェルスの亡骸を見た瞬間、色々な疑問が氷解した。わしは全てを悟ったのじゃ」
ハワードさんはすっかり気落ちして、これまでの不遜な態度が嘘のようだ。
別人のように大人しくなってしまったハワードさんになんて声をかけたらいいか分からないから、私たちは黙ってハワードさんの話を聞くことにした。
「わしはご先祖様の因縁の呪により、生まれながらにこう運命づけられておったようじゃ。偉大な賢者の一族……つまりはその末裔であるチェルスの命を守るように……とな。だが強力な呪術の力に驕った我が一族は、いつからか先祖の呪をも消しかけてしまった。……せめてあと少し早くその事に気付いていれば、こうはならんかったのかもしれん……。チェルス……いや、偉大な賢者の亡骸は、手厚く葬るよう、部下たちに命じておいたが……」
ハワードさんはそう呟いて、長いこと口を閉ざしていた。
あまりにも皮肉な話だ。
因縁の呪を忘れた一族にそれを思い出させるのは、呪で導かれたチェルスが死んだ時……。
はるか昔の時代から、いずれ来るであろうこの瞬間のために呪をかけた初代ハワードは今、天国で何を思っているだろう。
「……わしは取り返しのつかないことをしてしまったな。もう誰にも顔向けができん……。……エイトよ。わしの最後の頼みを聞いてくれんか」
「……はい。何でしょうか」
「チェルスを殺したのがレオパルドであることは知っておる。それを承知で頼むが……。レオパルドを退治してくれ。そして賢者の一族の仇を、お前の手で討ってほしいのじゃ」
「でも、レオパルドは……ハワードさんの」
「わしには分かるのじゃ。奴はもうレオパルドではない。強大な魔の力に支配されておる。これが罪滅ぼしになるとは思っておらんが、今のわしにできるのはこれくらいじゃ……」
「分かりました。……レオパルドは、僕らが」
エイトは静かに頷いた。
私もその隣で小さく頷いてみせる。
ハワードさんにとって、レオパルドがどれほど大切な存在だったかは知っている。
それでもレオパルドはもう、ハワードさんの愛した犬ではない。
魔犬……とでも呼んだほうがいいだろうか。
「……そうじゃ。お前さんたちにも、いろいろ迷惑をかけた。なにか礼をせねばならんな。そうじゃな……」
憔悴した様子で考え込むハワードさんは、じっとゼシカを見つめた。
ゼシカの顔に何か付いているだろうか。
いえ彼女にはとんでもなくご立派なものがついてはいるんですけど。
「どうやらそっちの娘さんは、魔法使いの天分がまだ半分ばかり眠ったままのようじゃな。よし! わしの力で、眠っているその天分を軽く揺り起こしてやろう」
ハワードさんが何かを唱えると、ゼシカの頭上からキラキラした光が降り注いだ。
ゼシカが不思議そうに頭上を見上げて、それから自分の手を見つめる。
「変わった感じは?」とゼシカに尋ねてみると、ゼシカは何度か頷いてみせた。
「それから……そちらの娘さん。今まで気付かなんだが、お前さんも賢者の末裔じゃな。その不思議な力は……霊導者ヨシュアの力か。お前さんもレオパルドには充分、気を付けるのじゃぞ。霊導者の封印は、他の賢者の封印とは違うものだそうだからな」
「気を付けます。……戦うのは得意ですけど、向こうの力もかなり強くなってるから」
「うむ。……エイトよ。レオパルドはこの町から北へ逃げていったと聞く。まずは北に向かうとよいじゃろう。それではくれぐれも頼んだぞ。お前たちの旅の無事を祈っておる」
ハワードさんの見送りを受けて、私たちはお屋敷を後にした。
なんだか色んなことがありすぎて、心が疲れている気がするけど、立ち止まっている暇はない。
ハワードさんからも頼まれた以上、今度こそ……今度こそは、レオパルドを倒して、あの杖を取り戻さないと。
背後で屋敷のドアが閉まる。
そのまま敷地の外に出ようとした私たちを、ゼシカが呼び止めた。
「ねえエイト、レイラ。ちょっと待って」
「ん?」
「どうしたの?」
「えっと……。大した用じゃないんだけど……。ドルマゲスを倒して、杖を持った瞬間から私、自分の意思で話すことが出来なかったから……。だから今、言っておくわ。私、兄さんの仇を討ったなんて、まだちっとも思えてないの。暗黒神ラプソーンっていうのが何者なのかは、よく分からないけど……あの杖をこのままにはしておけないわ。あの杖をもう一度封印するまで、私、まだ旅を続けるから……えっと……これからもよろしくお願いします」
ゼシカが私たちに向かって頭を下げる。
……そっか、ゼシカとは元々、ドルマゲスを倒すまでって話だったっけ。
それはククールも同じか。
こちらとしても、ゼシカがいてくれるなら大助かりだ。
断る理由はどこにもない!
「……なんだか改まっちゃって、私、ちょっと変だったかな?」
「はは、まぁゼシカらしくはないかも?」
「エイトくん!? 乙女にその返しは酷くない!?」
「本当よ、酷いわね! ふふ。もういいわよーだ! エイトのバカ!」
「だってゼシカに言われるまでもなく、これから先も一緒に旅をするんだと思ってたから。言葉には出さなくても、ククールもそう思ってるよ。乗り掛かった船だろ、最後まで乗ってもらうから。改めて宜しく、ゼシカ」
あーあやれやれ、私の恋人はとんでもなくいい男ですよ。
これで惚れないほうが無理ってもんでは?
一生ついていきます。
今回のは本当に一生だぞ、先にそれを望んだのはそっちなんだしね。
「あ……レイラ、ちょっと」
歩き出そうとした私を呼び止めたのは、またしてもゼシカだ。
先程とはまた違って、今度は何やら深刻そうな顔をしている。
呪われている間のゼシカが私にやった事を気にしてるのかな、もう私は気にしてないんだけど。
「どしたの?」
「ラプソーンと戦うことになっても、その……自分の命を投げ出さないでね」
「え?」
「お願い、約束して……」
「う、うん。分かった」
どうしたんだろう、ゼシカ。
今のところ、死にに行くつもりはないんだけど。
生きてトロデーンの復活を拝みたいし、城の人達とも再会と無事を喜びたいし。
「なんかあったの?」
「……あの、ね。見ちゃったの。ラプソーンを封印する瞬間のこと……」
「封印する……ああ、八賢人たちの?」
「……ええ。そこにレイラのご先祖様もいたのは知ってるでしょ?」
「うん」
「……ヨシュアはね、自分の命を使って、ラプソーンを封印したの」
「え……」
驚きの事実だ。
まさかあのヨシュアが……。
そうまでしないと、封印できない相手だったってことなのかな。
「暗黒神を封印するとき、彼女にはすでに子供が産まれていたみたい。だからあなたがヨシュアの子孫として生きているのね」
「ヨシュア……」
「あなたとヨシュアは、どことなく似ている気がする。だからお願い、絶対に命を投げ出さないで」
「……うん、分かった。約束する。ていうか……私が死んだら、後を追ってきそうな人もいるしね……」
ちらりと背後のエイトを見やる。
エイトは私と目が合うと、にっこりと微笑んで。
「もちろん後を追うに決まってるじゃないか」
「ヤバいこれ私下手なことできない」
笑っているけど、目が笑ってなかった。
マジのやつだったよどうしよ。
私はともかく、エイトまでいなくなったら、さすがにトロデーンが困るんじゃないかな!?
姫様が泣くぞ!?
……そうならない為にも、生きてまたトロデーン城に戻らなければ。
大勢で押し掛けても迷惑だろうからと、お部屋へ向かったのは私とエイトとゼシカだけ。
ヤンガスとククールは屋敷の外で、陛下と一緒だ。
「……心配かけてすまんかったな、エイトよ。チェルスの亡骸を見た瞬間、色々な疑問が氷解した。わしは全てを悟ったのじゃ」
ハワードさんはすっかり気落ちして、これまでの不遜な態度が嘘のようだ。
別人のように大人しくなってしまったハワードさんになんて声をかけたらいいか分からないから、私たちは黙ってハワードさんの話を聞くことにした。
「わしはご先祖様の因縁の呪により、生まれながらにこう運命づけられておったようじゃ。偉大な賢者の一族……つまりはその末裔であるチェルスの命を守るように……とな。だが強力な呪術の力に驕った我が一族は、いつからか先祖の呪をも消しかけてしまった。……せめてあと少し早くその事に気付いていれば、こうはならんかったのかもしれん……。チェルス……いや、偉大な賢者の亡骸は、手厚く葬るよう、部下たちに命じておいたが……」
ハワードさんはそう呟いて、長いこと口を閉ざしていた。
あまりにも皮肉な話だ。
因縁の呪を忘れた一族にそれを思い出させるのは、呪で導かれたチェルスが死んだ時……。
はるか昔の時代から、いずれ来るであろうこの瞬間のために呪をかけた初代ハワードは今、天国で何を思っているだろう。
「……わしは取り返しのつかないことをしてしまったな。もう誰にも顔向けができん……。……エイトよ。わしの最後の頼みを聞いてくれんか」
「……はい。何でしょうか」
「チェルスを殺したのがレオパルドであることは知っておる。それを承知で頼むが……。レオパルドを退治してくれ。そして賢者の一族の仇を、お前の手で討ってほしいのじゃ」
「でも、レオパルドは……ハワードさんの」
「わしには分かるのじゃ。奴はもうレオパルドではない。強大な魔の力に支配されておる。これが罪滅ぼしになるとは思っておらんが、今のわしにできるのはこれくらいじゃ……」
「分かりました。……レオパルドは、僕らが」
エイトは静かに頷いた。
私もその隣で小さく頷いてみせる。
ハワードさんにとって、レオパルドがどれほど大切な存在だったかは知っている。
それでもレオパルドはもう、ハワードさんの愛した犬ではない。
魔犬……とでも呼んだほうがいいだろうか。
「……そうじゃ。お前さんたちにも、いろいろ迷惑をかけた。なにか礼をせねばならんな。そうじゃな……」
憔悴した様子で考え込むハワードさんは、じっとゼシカを見つめた。
ゼシカの顔に何か付いているだろうか。
いえ彼女にはとんでもなくご立派なものがついてはいるんですけど。
「どうやらそっちの娘さんは、魔法使いの天分がまだ半分ばかり眠ったままのようじゃな。よし! わしの力で、眠っているその天分を軽く揺り起こしてやろう」
ハワードさんが何かを唱えると、ゼシカの頭上からキラキラした光が降り注いだ。
ゼシカが不思議そうに頭上を見上げて、それから自分の手を見つめる。
「変わった感じは?」とゼシカに尋ねてみると、ゼシカは何度か頷いてみせた。
「それから……そちらの娘さん。今まで気付かなんだが、お前さんも賢者の末裔じゃな。その不思議な力は……霊導者ヨシュアの力か。お前さんもレオパルドには充分、気を付けるのじゃぞ。霊導者の封印は、他の賢者の封印とは違うものだそうだからな」
「気を付けます。……戦うのは得意ですけど、向こうの力もかなり強くなってるから」
「うむ。……エイトよ。レオパルドはこの町から北へ逃げていったと聞く。まずは北に向かうとよいじゃろう。それではくれぐれも頼んだぞ。お前たちの旅の無事を祈っておる」
ハワードさんの見送りを受けて、私たちはお屋敷を後にした。
なんだか色んなことがありすぎて、心が疲れている気がするけど、立ち止まっている暇はない。
ハワードさんからも頼まれた以上、今度こそ……今度こそは、レオパルドを倒して、あの杖を取り戻さないと。
背後で屋敷のドアが閉まる。
そのまま敷地の外に出ようとした私たちを、ゼシカが呼び止めた。
「ねえエイト、レイラ。ちょっと待って」
「ん?」
「どうしたの?」
「えっと……。大した用じゃないんだけど……。ドルマゲスを倒して、杖を持った瞬間から私、自分の意思で話すことが出来なかったから……。だから今、言っておくわ。私、兄さんの仇を討ったなんて、まだちっとも思えてないの。暗黒神ラプソーンっていうのが何者なのかは、よく分からないけど……あの杖をこのままにはしておけないわ。あの杖をもう一度封印するまで、私、まだ旅を続けるから……えっと……これからもよろしくお願いします」
ゼシカが私たちに向かって頭を下げる。
……そっか、ゼシカとは元々、ドルマゲスを倒すまでって話だったっけ。
それはククールも同じか。
こちらとしても、ゼシカがいてくれるなら大助かりだ。
断る理由はどこにもない!
「……なんだか改まっちゃって、私、ちょっと変だったかな?」
「はは、まぁゼシカらしくはないかも?」
「エイトくん!? 乙女にその返しは酷くない!?」
「本当よ、酷いわね! ふふ。もういいわよーだ! エイトのバカ!」
「だってゼシカに言われるまでもなく、これから先も一緒に旅をするんだと思ってたから。言葉には出さなくても、ククールもそう思ってるよ。乗り掛かった船だろ、最後まで乗ってもらうから。改めて宜しく、ゼシカ」
あーあやれやれ、私の恋人はとんでもなくいい男ですよ。
これで惚れないほうが無理ってもんでは?
一生ついていきます。
今回のは本当に一生だぞ、先にそれを望んだのはそっちなんだしね。
「あ……レイラ、ちょっと」
歩き出そうとした私を呼び止めたのは、またしてもゼシカだ。
先程とはまた違って、今度は何やら深刻そうな顔をしている。
呪われている間のゼシカが私にやった事を気にしてるのかな、もう私は気にしてないんだけど。
「どしたの?」
「ラプソーンと戦うことになっても、その……自分の命を投げ出さないでね」
「え?」
「お願い、約束して……」
「う、うん。分かった」
どうしたんだろう、ゼシカ。
今のところ、死にに行くつもりはないんだけど。
生きてトロデーンの復活を拝みたいし、城の人達とも再会と無事を喜びたいし。
「なんかあったの?」
「……あの、ね。見ちゃったの。ラプソーンを封印する瞬間のこと……」
「封印する……ああ、八賢人たちの?」
「……ええ。そこにレイラのご先祖様もいたのは知ってるでしょ?」
「うん」
「……ヨシュアはね、自分の命を使って、ラプソーンを封印したの」
「え……」
驚きの事実だ。
まさかあのヨシュアが……。
そうまでしないと、封印できない相手だったってことなのかな。
「暗黒神を封印するとき、彼女にはすでに子供が産まれていたみたい。だからあなたがヨシュアの子孫として生きているのね」
「ヨシュア……」
「あなたとヨシュアは、どことなく似ている気がする。だからお願い、絶対に命を投げ出さないで」
「……うん、分かった。約束する。ていうか……私が死んだら、後を追ってきそうな人もいるしね……」
ちらりと背後のエイトを見やる。
エイトは私と目が合うと、にっこりと微笑んで。
「もちろん後を追うに決まってるじゃないか」
「ヤバいこれ私下手なことできない」
笑っているけど、目が笑ってなかった。
マジのやつだったよどうしよ。
私はともかく、エイトまでいなくなったら、さすがにトロデーンが困るんじゃないかな!?
姫様が泣くぞ!?
……そうならない為にも、生きてまたトロデーン城に戻らなければ。
1/4ページ
