46章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
熱い、と感じたのは一瞬。
次にやってきたのは、想像を絶する痛みと──吹き荒れる暴風だった。
「な、何……!? 何が起きて……!?」
「力……が、抜けて……」
私のお腹はべっとりと血に濡れて、そこから風船が萎むみたいに魔力が漏れ出ていく。
恐ろしいほどの、魔力の奔流。
視界は真っ白になって、めちゃくちゃな衝撃が竜巻のように吹き荒れた。
(駄目だ……もう、立っていられない──)
全身から力が抜けて、硬い地面に体を打ち付ける。
私、ここで死ぬんだ……。
ああ……やっと、悪夢が終わる。
「レイラ!!」
「駄目だエイト!! あいつの傍は危険すぎる!!」
「姉貴!! 姉貴ィ──!!」
返事をする力もないや。
みんな、ごめん。
ゼシカは……ゼシカは、どうなったの?
真っ白だったはずの視界が、どんどん暗くなっていく。
遠くで爆発音が絶え間なく聞こえてくるのは、ゼシカが使っている呪文なのか、はたまた私の魔力が暴走しているからなのか。
もう……何も分からない。
分からなくていい、どうせこのまま死ぬ。
死んだら、私は……。
(……私は、どうなるの?)
それはこの生死の境にあって、ただ純粋な恐怖だった。
死んだら私はどうなるんだろう。
天国も地獄も、人間が勝手に言っているだけで、本当は存在しないんだとしたら?
だとしたら私は、どこに行くの?
「レイラ!! お願い! 死なないで!」
「あっ、オイ! エイト!!」
「兄貴、無茶でがす!!」
光の奔流の最中、誰かがこちらに向かって手を伸ばしていた。
それが誰かは分からなかったけど、押し返そうとする風に逆らって、その人は。
「絶対に……! 絶対にレイラは死なせない!! 僕が守る!! そう決めたんだ!!」
ぼんやりとするその姿が、ゆっくりと近付いてくる。
知らないうちに、私も手を伸ばしていた。
「生きて! 生きてよレイラ!!」
「生き……たい……」
生きたい。
──生きたい!
私が願ってはいけないのかもしれない。
でも、それでも……!!
「生きたい……死にたくない……!」
「レイラ! 僕の名前を呼んで!! 手を伸ばして!!」
「エイト……。エイト……!」
「あと、少し……!!」
「助けて……! 助けて、エイト……!」
朧気なそれに手を伸ばす。
もっと、もっと!
届いて! 光の先まで!!
あの人に届いて!!
「今助けるから!」
吹き荒れる風、激しさを増す光の奔流。
最大限伸ばした手が、ぬくもりと触れ合った。
ともすれば闇に引きずり込まれそうな意識が、辛うじて私の命を繋ぎ止めて。
「エイト──」
「レイラ!!」
エイトと手が触れた。
起き上がれない私に、その人が覆い被さって。
「──!!」
その人が何かを唱える。
閉じかけた世界の中で、その人は私を安心させるみたいに微笑んでいた。
そうして、まるで蓋をするかのように。
深く……深く、唇が重なった。
エイトの感情が流れ込んでくる──決意、怒り、悲しみ。
そして──私への際限のない愛おしさと恋しさ。
私を決して離すまいと、失うまいと……ここに繋ぎ止めようとする、エイトの切実な想い。
エイトの手が、私の手を強く握り締めた。
その手を握り返して、私の閉じた瞳の隙間から、涙が零れていく。
私の生きる理由は、ここにあるんだ。
私は、たとえ世界がそれを否定したとしても……エイトを好きでいていい。
私は生きていていいんだ、だってエイトがそれを望んでくれている。
エイトのために、生きていこう。
私の命がある理由は、きっと……エイトと一緒に生きていくためなんだ。
失われた魔力が、逆巻くように私の体へ戻ってくる。
遠のいていた意識が徐々に鮮明になってきて、私は持ち上げたその腕で、エイトの背中を抱き締めた。
「私、綺麗な手じゃない。綺麗な心じゃない。それでもいいの」
「レイラは綺麗だよ。体も心も、何もかもが綺麗だ」
「人殺しの手だよ」
「国を守る綺麗な手だよ」
「……私、エイトと一緒に生きていいの」
「もちろん。僕と一緒に、いつまでも生きていて」
それなら……そうしよう。
たとえ誰かが私の命を否定しても、エイトが私を好きでいてくれるなら。
エイトのために、私は生きていこう。
次にやってきたのは、想像を絶する痛みと──吹き荒れる暴風だった。
「な、何……!? 何が起きて……!?」
「力……が、抜けて……」
私のお腹はべっとりと血に濡れて、そこから風船が萎むみたいに魔力が漏れ出ていく。
恐ろしいほどの、魔力の奔流。
視界は真っ白になって、めちゃくちゃな衝撃が竜巻のように吹き荒れた。
(駄目だ……もう、立っていられない──)
全身から力が抜けて、硬い地面に体を打ち付ける。
私、ここで死ぬんだ……。
ああ……やっと、悪夢が終わる。
「レイラ!!」
「駄目だエイト!! あいつの傍は危険すぎる!!」
「姉貴!! 姉貴ィ──!!」
返事をする力もないや。
みんな、ごめん。
ゼシカは……ゼシカは、どうなったの?
真っ白だったはずの視界が、どんどん暗くなっていく。
遠くで爆発音が絶え間なく聞こえてくるのは、ゼシカが使っている呪文なのか、はたまた私の魔力が暴走しているからなのか。
もう……何も分からない。
分からなくていい、どうせこのまま死ぬ。
死んだら、私は……。
(……私は、どうなるの?)
それはこの生死の境にあって、ただ純粋な恐怖だった。
死んだら私はどうなるんだろう。
天国も地獄も、人間が勝手に言っているだけで、本当は存在しないんだとしたら?
だとしたら私は、どこに行くの?
「レイラ!! お願い! 死なないで!」
「あっ、オイ! エイト!!」
「兄貴、無茶でがす!!」
光の奔流の最中、誰かがこちらに向かって手を伸ばしていた。
それが誰かは分からなかったけど、押し返そうとする風に逆らって、その人は。
「絶対に……! 絶対にレイラは死なせない!! 僕が守る!! そう決めたんだ!!」
ぼんやりとするその姿が、ゆっくりと近付いてくる。
知らないうちに、私も手を伸ばしていた。
「生きて! 生きてよレイラ!!」
「生き……たい……」
生きたい。
──生きたい!
私が願ってはいけないのかもしれない。
でも、それでも……!!
「生きたい……死にたくない……!」
「レイラ! 僕の名前を呼んで!! 手を伸ばして!!」
「エイト……。エイト……!」
「あと、少し……!!」
「助けて……! 助けて、エイト……!」
朧気なそれに手を伸ばす。
もっと、もっと!
届いて! 光の先まで!!
あの人に届いて!!
「今助けるから!」
吹き荒れる風、激しさを増す光の奔流。
最大限伸ばした手が、ぬくもりと触れ合った。
ともすれば闇に引きずり込まれそうな意識が、辛うじて私の命を繋ぎ止めて。
「エイト──」
「レイラ!!」
エイトと手が触れた。
起き上がれない私に、その人が覆い被さって。
「──!!」
その人が何かを唱える。
閉じかけた世界の中で、その人は私を安心させるみたいに微笑んでいた。
そうして、まるで蓋をするかのように。
深く……深く、唇が重なった。
エイトの感情が流れ込んでくる──決意、怒り、悲しみ。
そして──私への際限のない愛おしさと恋しさ。
私を決して離すまいと、失うまいと……ここに繋ぎ止めようとする、エイトの切実な想い。
エイトの手が、私の手を強く握り締めた。
その手を握り返して、私の閉じた瞳の隙間から、涙が零れていく。
私の生きる理由は、ここにあるんだ。
私は、たとえ世界がそれを否定したとしても……エイトを好きでいていい。
私は生きていていいんだ、だってエイトがそれを望んでくれている。
エイトのために、生きていこう。
私の命がある理由は、きっと……エイトと一緒に生きていくためなんだ。
失われた魔力が、逆巻くように私の体へ戻ってくる。
遠のいていた意識が徐々に鮮明になってきて、私は持ち上げたその腕で、エイトの背中を抱き締めた。
「私、綺麗な手じゃない。綺麗な心じゃない。それでもいいの」
「レイラは綺麗だよ。体も心も、何もかもが綺麗だ」
「人殺しの手だよ」
「国を守る綺麗な手だよ」
「……私、エイトと一緒に生きていいの」
「もちろん。僕と一緒に、いつまでも生きていて」
それなら……そうしよう。
たとえ誰かが私の命を否定しても、エイトが私を好きでいてくれるなら。
エイトのために、私は生きていこう。
1/5ページ
