43章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
すっかり朝日が昇った頃、ようやく目が覚めた。
酷く疲れていたせいか、一番鶏の鳴く時間には起きられなかったようだ。
隣のベッドはもぬけの殻。
ゼシカは既に起きてしまったらしい。
一階に行こうかと思ったけど、エイトの様子が気になって、男子部屋に行ってみることにした。
着替えて部屋を出て、隣の部屋のドアを開ける。
エイトはまだ眠っていて、私は少し迷った末、エイトのベッドに座って目覚めを待つことにした。
「……陛下も姫様も、元に戻らなかったね。どうしたらいいんだろ……」
私たちの中にある手がかりはゼロだ。
これからどうしたもんか。
すやすやと眠るエイトの前髪をそっと払って、指の背で頬をなぞる。
擽ったそうにエイトが顔を背けた、その時。
ドゴドゴドゴドゴと建物が揺れ、部屋のドアがバァン!! と勢いよく開け放たれた。
飛び込んで来たのはヤンガスだ。
「ヤンガス、おは──」
「て、てえへんでがすよ、兄貴! あ、姉貴も!」
さすがにこの物音でエイトが起きた。
枕元に座っていた私に「うわっ!?」と声を上げつつ、のそりと起き上がる。
そのエイトの元へ、ヤンガスが駆け寄ってきた。
「大変って、何があったの?」
「ゼシカが……ゼシカがいねぇでげす! 朝起きたらベッドはもぬけの殻で、荷物も見当たらねぇんでげすよ!」
「……え? ゼシカ、先に起きてたんじゃないの?」
「いや、違えんでがす。アッシらはいつまでも起きてこねぇ兄貴と姉貴とゼシカを待っていて、起こしに行こうとしたんでがすよ。そしたら姉貴の荷物しかなくて、ゼシカの荷物が無くなってたんでげす!」
「……そんな」
私とエイトは揃って絶句した。
ゼシカが何も言わずに出ていくなんて、考えられない。
それにゼシカの荷物もないとなると……。
「……待って。杖は?」
「へっ?」
「封印の杖! 昨日、遺跡から出る時にゼシカが持ってて……。杖も無くなってるってこと?」
「言われりゃあ杖もなかったような……。おっさんが持ってるってことはないでげすかね?」
「とにかく、急いで準備するよ。ヤンガスはククールと一緒に、ゼシカの情報を探して」
「分かりやした!」
厳しい顔でベッドを出たエイトは、山吹色のロングジレを着てベルトを締め、ブーツを履いた。
オレンジのバンダナをぎゅっと巻いて、鞄を肩からかけると、剣のベルトをその上から締め、荷物を手に立ち上がって部屋を出ようとする。
「わ、私も荷物、取ってくる」
「うん」
隣の部屋に戻って、自分の荷物をとる。
袋にベルトを通して腰に締め、その上から剣のベルトを締めた。
バタバタと階段を降りると、一階でエイトが女将さんと話し込んでいた。
「エイト、ごめん。お待たせ──」
「それじゃあ、僕らの仲間は早朝には宿を出たんですね?」
「そうだねぇ……。まだ日も昇らないうちに宿を出ようとするから、どこへ行くのってあたしゃ聞いてみたんだよ。そしたら北へ行くってさ。北って言えば、たしか関所があったね」
関所──。
ゼシカはいったい、何のために関所を越えてまで北へ行こうとしたんだろう。
ゼシカも西の大陸は初めて来たはずだから、北に何があるかなんて知らないはずなのに。
「ありがとうございました。急いで追いかけます」
「あ、ちょっと。せめて朝食は食べてお行き。腹が減っては何とやらだよ」
「そうですね。それじゃあ頂いていきます」
エイトと二人で朝食をもらって、部屋へと戻る。
なんとなく一人になりたくなくて男子部屋について行くと、中にはククールとヤンガスが戻ってきていた。
「おはよう」
「よう。よく眠れたか?」
「お陰様で。起こしてくれて良かったのに」
「ヨシュアが夜に現れてな、霊導の力を二度も使ったせいで魔力がかなり削られてるから、自然と目が覚めるまでは寝かせておいてくれってよ。わざわざ夢の中に現れたんだぜ?」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ……! いったい何がどうなってるの? なんでゼシカが……。あの杖が何を封じてたかは分からないけど、何か良くないことになりそうなのは嫌でも分かるよ……!」
「レイラ」
「とにかく、急いで北の関所を目指さなきゃ!」
「レイラ!」
エイトの両手が私の肩を強く叩く。
それで意識がハッとなって……私はしゅんと肩を落とした。
「落ち着いて。焦る気持ちは痛い程分かるよ。けど、焦って行動すれば視野が狭くなって、大切なことを見失う。それが隙を作ることだってあるんだ。焦りは禁物だなんて、当たり前のことだろ?」
「……っ、こめん……」
たしかに今、ゼシカを早く探さなきゃって焦っていた。
きっと手がかりが「ゼシカは北へいった」ことしか分かっていないからだ。
手がかりがなさすぎるから、ゼシカが無事なのかどうかも分からない。
みんなだって心配してるはずなのに、私だけが焦ってしまって恥ずかしい。
すぅ、と深呼吸をして、心を落ち着ける。
「もう大丈夫。ゼシカを追いかけよう!」
「その前に、朝ご飯だね」
「腹が減っては何とやらでがすよ、姉貴」
「ヤンガスにまで諭されるとは……」
床に座って、パンをスープにつけて食べる。
ヤンガスはさっさと食べ終わったようで、スープの器を持って一階へ降りていった。
それを見送ったククールは、呆れた様子で言った。
「あいつ、もう五回目だぞ」
「えっ」
ヤンガスが五回目のおかわりを持って戻ってくる。
朝からいい食べっぷりを見せたヤンガスを、私たちは黙って見つめていた。
宿屋を出る時、女将さんには頭を下げておこう……。
酷く疲れていたせいか、一番鶏の鳴く時間には起きられなかったようだ。
隣のベッドはもぬけの殻。
ゼシカは既に起きてしまったらしい。
一階に行こうかと思ったけど、エイトの様子が気になって、男子部屋に行ってみることにした。
着替えて部屋を出て、隣の部屋のドアを開ける。
エイトはまだ眠っていて、私は少し迷った末、エイトのベッドに座って目覚めを待つことにした。
「……陛下も姫様も、元に戻らなかったね。どうしたらいいんだろ……」
私たちの中にある手がかりはゼロだ。
これからどうしたもんか。
すやすやと眠るエイトの前髪をそっと払って、指の背で頬をなぞる。
擽ったそうにエイトが顔を背けた、その時。
ドゴドゴドゴドゴと建物が揺れ、部屋のドアがバァン!! と勢いよく開け放たれた。
飛び込んで来たのはヤンガスだ。
「ヤンガス、おは──」
「て、てえへんでがすよ、兄貴! あ、姉貴も!」
さすがにこの物音でエイトが起きた。
枕元に座っていた私に「うわっ!?」と声を上げつつ、のそりと起き上がる。
そのエイトの元へ、ヤンガスが駆け寄ってきた。
「大変って、何があったの?」
「ゼシカが……ゼシカがいねぇでげす! 朝起きたらベッドはもぬけの殻で、荷物も見当たらねぇんでげすよ!」
「……え? ゼシカ、先に起きてたんじゃないの?」
「いや、違えんでがす。アッシらはいつまでも起きてこねぇ兄貴と姉貴とゼシカを待っていて、起こしに行こうとしたんでがすよ。そしたら姉貴の荷物しかなくて、ゼシカの荷物が無くなってたんでげす!」
「……そんな」
私とエイトは揃って絶句した。
ゼシカが何も言わずに出ていくなんて、考えられない。
それにゼシカの荷物もないとなると……。
「……待って。杖は?」
「へっ?」
「封印の杖! 昨日、遺跡から出る時にゼシカが持ってて……。杖も無くなってるってこと?」
「言われりゃあ杖もなかったような……。おっさんが持ってるってことはないでげすかね?」
「とにかく、急いで準備するよ。ヤンガスはククールと一緒に、ゼシカの情報を探して」
「分かりやした!」
厳しい顔でベッドを出たエイトは、山吹色のロングジレを着てベルトを締め、ブーツを履いた。
オレンジのバンダナをぎゅっと巻いて、鞄を肩からかけると、剣のベルトをその上から締め、荷物を手に立ち上がって部屋を出ようとする。
「わ、私も荷物、取ってくる」
「うん」
隣の部屋に戻って、自分の荷物をとる。
袋にベルトを通して腰に締め、その上から剣のベルトを締めた。
バタバタと階段を降りると、一階でエイトが女将さんと話し込んでいた。
「エイト、ごめん。お待たせ──」
「それじゃあ、僕らの仲間は早朝には宿を出たんですね?」
「そうだねぇ……。まだ日も昇らないうちに宿を出ようとするから、どこへ行くのってあたしゃ聞いてみたんだよ。そしたら北へ行くってさ。北って言えば、たしか関所があったね」
関所──。
ゼシカはいったい、何のために関所を越えてまで北へ行こうとしたんだろう。
ゼシカも西の大陸は初めて来たはずだから、北に何があるかなんて知らないはずなのに。
「ありがとうございました。急いで追いかけます」
「あ、ちょっと。せめて朝食は食べてお行き。腹が減っては何とやらだよ」
「そうですね。それじゃあ頂いていきます」
エイトと二人で朝食をもらって、部屋へと戻る。
なんとなく一人になりたくなくて男子部屋について行くと、中にはククールとヤンガスが戻ってきていた。
「おはよう」
「よう。よく眠れたか?」
「お陰様で。起こしてくれて良かったのに」
「ヨシュアが夜に現れてな、霊導の力を二度も使ったせいで魔力がかなり削られてるから、自然と目が覚めるまでは寝かせておいてくれってよ。わざわざ夢の中に現れたんだぜ?」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ……! いったい何がどうなってるの? なんでゼシカが……。あの杖が何を封じてたかは分からないけど、何か良くないことになりそうなのは嫌でも分かるよ……!」
「レイラ」
「とにかく、急いで北の関所を目指さなきゃ!」
「レイラ!」
エイトの両手が私の肩を強く叩く。
それで意識がハッとなって……私はしゅんと肩を落とした。
「落ち着いて。焦る気持ちは痛い程分かるよ。けど、焦って行動すれば視野が狭くなって、大切なことを見失う。それが隙を作ることだってあるんだ。焦りは禁物だなんて、当たり前のことだろ?」
「……っ、こめん……」
たしかに今、ゼシカを早く探さなきゃって焦っていた。
きっと手がかりが「ゼシカは北へいった」ことしか分かっていないからだ。
手がかりがなさすぎるから、ゼシカが無事なのかどうかも分からない。
みんなだって心配してるはずなのに、私だけが焦ってしまって恥ずかしい。
すぅ、と深呼吸をして、心を落ち着ける。
「もう大丈夫。ゼシカを追いかけよう!」
「その前に、朝ご飯だね」
「腹が減っては何とやらでがすよ、姉貴」
「ヤンガスにまで諭されるとは……」
床に座って、パンをスープにつけて食べる。
ヤンガスはさっさと食べ終わったようで、スープの器を持って一階へ降りていった。
それを見送ったククールは、呆れた様子で言った。
「あいつ、もう五回目だぞ」
「えっ」
ヤンガスが五回目のおかわりを持って戻ってくる。
朝からいい食べっぷりを見せたヤンガスを、私たちは黙って見つめていた。
宿屋を出る時、女将さんには頭を下げておこう……。
1/6ページ
