4章
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翌朝、私達はリーザス村を散策することにした。
村人に挨拶をしながら、この村に起こった不幸というものをそれとなく尋ねていく。
数人に尋ねただけでも、かなり有力な情報が手に入った。
「村人の話をまとめると、この村の村長の息子であり、土地の名士でもあったサーベルトさんが、東にある塔で殺害された……」
「そしてそれは、その塔にあるリーザス像を狙った犯行ではないか――っていうのが、この村の見解みたいだね」
「だからあのガキンチョはアッシらのことを盗賊団の一味だって言ったんでがすなぁ」
「……だけど変だよ」
私がそう呟くと、エイトも隣で頷いた。
リーザス像を狙った盗賊団の犯行――。
そうだとするには、不審な点がある。
「仮に盗賊団がサーベルトさんを殺害したのなら、どうしてリーザス像は無事だったんだろう」
「僕もそこはおかしいと思ってた。この村の人たち、サーベルトさんが亡くなったことは口にしても、リーザス像を奪われたとは口にしない」
「つまり、盗賊団はリーザス像が狙いじゃあなかったってことでげすかい?」
「……それが、盗賊団であると仮定するからおかしいんだ」
エイトが一度そこで口を閉ざす。
そして、私の目を見て言った。
「これが、ドルマゲスの仕業だと考えれば、何も不思議じゃない」
「ですけど兄貴、あのドルマゲスって野郎がなんでサーベルトっつうあんちゃんを狙ったかは分からねぇでがすよ」
「……そう、そこなんだ。どうしてサーベルトさんだけが狙われたのか。それだけが分からない」
マスター・ライラスに続く被害者の、サーベルトさん。
まだドルマゲスが殺したとは断定出来ないけど、可能性は高い。
「とりあえず、村長さんに挨拶していこう」
村長さんの家は、村の奥の高台にある、立派なお家だ。
幸いにも誰でも入れるようで、警戒心があるんだかないんだか分からない。
衛兵に会釈して中へと入った。
左右に続く階段を登ったところで、なんというか……とても、個性的な格好をした人を見つけてしまった。
え、あの人もリーザス村の人とか言わないよね……?
この静かでのどかな村には到底似合わない服装してるけど……。
「ええと、あのぅ……? こんにちは、あなたもリーザス村の方ですか?」
「こちらのお屋敷におられるということは、この村でもご高名でおられると存じます。よろしければ、お名前をお伺いしても?」
はい、私とエイトの差が出ました!
これが礼儀作法を真面目にやらなかった人と真面目に頑張った人の差です!
「はーっはっはぁ! そうさぁ! 僕こそが、かの有名なラグサットさぁ!」
「は? 誰? ラグマット?」
「どんな耳をしているんだね君は?」
いやもうだって、私の勘が言ってる。
こいつマジでろくでもない奴だって言ってる。
あとごめん、名前を聞いてもなお誰か分からなかった。
「さる大国の大臣の子息にして、ゼシカのフィ〜アンセでもある。そうさ、それが僕さぁ」
あ、あー答え合わせ完了した。
このろくでなし、サザンビークの大臣のドラ息子だ。
噂には聞いてたけど、想像以上だな……。
「今日は兄さんを失ったゼシカを慰めに来たんだが、ここで思わぬ恋の障害に突き当たったのさぁ」
「少なくとも慰めるどころか、無意識かつ無自覚に塩を塗り込みそうなんですけど」
「君はさっきから何なんだね?」
何って、ただの近衛兵ですけど……。
ちょっと心に思ってることがすぐ口に出るタイプなだけで、至って無害な人間だって自負があるんだけどな。
「というか、恋の障害って?」
「部屋の前で子供たちが通せんぼしていてね……。いつの日も恋路というのは厳しいものだねぇ」
「いやまあ、こんな時じゃなくてもそうなるでしょうね」
「君は本当に何なんだい?」
ドラ息子に愛想笑いをして離れる。
申し訳ないけどあまりにお近づきにはなりたくないタイプだ。
まだ見ぬゼシカさんに同情してしまう。
とはいえ、ここに来たのはラグサットと話をするためではなくて。
むしろこっちが大本命だ。
エイトを先頭にして、村長さんらしき女性へと声をかける。
「リーザス村の村長様とお見受けします」
「お初にお目にかかります。このような大変な時期にお邪魔してしまい、申し訳ございません」
服のスカート部分をつまんで腰を折る。
村長さんは私たちの所作を見て、少しだけ驚いたような雰囲気を見せた。
「村人の方から、こちらにゼシカお嬢様という方がおられると伺いました。ぜひお会い出来ればと思ったのですが……」
そうお伺いを立ててみると、村長さんは今度、呆れたようにため息をついた。
「私の名前はアローザ。我がアルバート家の家訓では、喪に服している間は、家人は家を出ることはなりません。娘のゼシカにそう言いつけたら、不貞腐れてしまって、あの子ったら家どころか部屋からも出てきやしないわ」
「へ、部屋からもですか……」
これは相当、手厳しいかもしれないぞ。
サーベルトさんの話を聞けるチャンスだと思ったけれど、難しいかもしれないな。
「おまけに子供たちを見張りにつけたりして……。まったく、どういうつもりなのかしら」
アローザさん、ゼシカさんに手を焼いているようだ。
そんな風に誰かの手を焼かせる人が部屋に引きこもるかなぁ?
サーベルトさんとゼシカさんはすごく仲のいい兄妹だったって村の人は言っていた。
……もしかすると、実はゼシカさんは。
アローザさんに挨拶をして、私たちはひとつのドアの前に立っているポルクくんとマルクくんを見つけた。
恐らく、そのドアの先がゼシカさんのお部屋なんだろう。
「あ、お前ら。さっきは悪かったな。でもここは通せないぞ。誰にも会いたくないから誰も部屋に入れるなっていう、ゼシカ姉ちゃんの命令だからな」
「絶対?」
「当たり前だろーが!」
「ちょっとノックしてみていい?」
「ダメだよ! ていうか、なんでそんなにゼシカ姉ちゃんに会おうとするんだよ」
「……好奇心?」
「その好奇心は別のところで発揮しようね、レイラ」
私を下がらせたエイトが人当たりのいい笑顔で「ごめんね」と笑った。
そのまま私の手を引いて、別の部屋へと入っていく。
そこは使用人さんのお部屋のようで、そこからロフトに階段が繋がっていた。
そのロフトを上がると、そこにはメイドが一人。
上がってきた私たちを見るなり、メイドが恐怖に満ちた顔を向けてきた。
「あ……あなた達、気をつけて! この部屋は今、危険に満ちているわ!」
「え!? どういうことですか!?」
もしかして、この部屋にドルマゲスがいる?
いや、奴がこんな部屋に隠れるとは思えない。
だとしたら一体、何が……。
「だ……だって、ネズミが出るのよ。私だってネズミ嫌いなのに、退治するように言われちゃって……」
「あ、え? ネズミ?」
ネズミなんてどこにでもいるもんだと思うけど。
トロデーンにだってしょっちゅう現れていたし、何ならエイトのポケットにいるのもネズミだ。
そんな会話をしているさなか、不意にそのネズミが走ってきた。
メイドがビクゥ! と固まった間に、ネズミは壁の隙間へと入り込んでしまった。
「ほ……ほら! ね? ね? 見たでしょ今の! ど……どうしよう!? 壁の向こうはゼシカお嬢様のお部屋なのにぃ……。ふぇーん!」
ネズミ……壁の向こうはゼシカさんのお部屋……。
そして足元にはネズミが通れそうな穴……。
ここから導かれる答えはひとつ。
「ねえレイラ」
「はいエイトさん」
「トーポを潜り込ませよう」
「私も言おうと思ったけどさ、それは。冷静に考えて無理だよさすがに。ネズミだもん、トーポは。そりゃ確かに賢いけどさ」
「やけにネズミらしくない知恵の回り方をする奴だけど、少なくとも図体はネズミだろ。だったらこの穴も余裕だと思うんだよね」
「た、多分……? いやその前にトーポがエイトの意図を理解できるのかって話をだな!?」
「今こそその無駄なまでに高い知能の使い所だ。頼んだよ、トーポ!」
「エイトどうしたの!? なんか言葉の選び方が急に雑になったけど!?」
エイトが穴の前でトーポを下ろす。
トーポは任せろと言わんばかりに、堂々と穴の中へ入っていった。
……トーポって、ほんとにただのネズミか?
村人に挨拶をしながら、この村に起こった不幸というものをそれとなく尋ねていく。
数人に尋ねただけでも、かなり有力な情報が手に入った。
「村人の話をまとめると、この村の村長の息子であり、土地の名士でもあったサーベルトさんが、東にある塔で殺害された……」
「そしてそれは、その塔にあるリーザス像を狙った犯行ではないか――っていうのが、この村の見解みたいだね」
「だからあのガキンチョはアッシらのことを盗賊団の一味だって言ったんでがすなぁ」
「……だけど変だよ」
私がそう呟くと、エイトも隣で頷いた。
リーザス像を狙った盗賊団の犯行――。
そうだとするには、不審な点がある。
「仮に盗賊団がサーベルトさんを殺害したのなら、どうしてリーザス像は無事だったんだろう」
「僕もそこはおかしいと思ってた。この村の人たち、サーベルトさんが亡くなったことは口にしても、リーザス像を奪われたとは口にしない」
「つまり、盗賊団はリーザス像が狙いじゃあなかったってことでげすかい?」
「……それが、盗賊団であると仮定するからおかしいんだ」
エイトが一度そこで口を閉ざす。
そして、私の目を見て言った。
「これが、ドルマゲスの仕業だと考えれば、何も不思議じゃない」
「ですけど兄貴、あのドルマゲスって野郎がなんでサーベルトっつうあんちゃんを狙ったかは分からねぇでがすよ」
「……そう、そこなんだ。どうしてサーベルトさんだけが狙われたのか。それだけが分からない」
マスター・ライラスに続く被害者の、サーベルトさん。
まだドルマゲスが殺したとは断定出来ないけど、可能性は高い。
「とりあえず、村長さんに挨拶していこう」
村長さんの家は、村の奥の高台にある、立派なお家だ。
幸いにも誰でも入れるようで、警戒心があるんだかないんだか分からない。
衛兵に会釈して中へと入った。
左右に続く階段を登ったところで、なんというか……とても、個性的な格好をした人を見つけてしまった。
え、あの人もリーザス村の人とか言わないよね……?
この静かでのどかな村には到底似合わない服装してるけど……。
「ええと、あのぅ……? こんにちは、あなたもリーザス村の方ですか?」
「こちらのお屋敷におられるということは、この村でもご高名でおられると存じます。よろしければ、お名前をお伺いしても?」
はい、私とエイトの差が出ました!
これが礼儀作法を真面目にやらなかった人と真面目に頑張った人の差です!
「はーっはっはぁ! そうさぁ! 僕こそが、かの有名なラグサットさぁ!」
「は? 誰? ラグマット?」
「どんな耳をしているんだね君は?」
いやもうだって、私の勘が言ってる。
こいつマジでろくでもない奴だって言ってる。
あとごめん、名前を聞いてもなお誰か分からなかった。
「さる大国の大臣の子息にして、ゼシカのフィ〜アンセでもある。そうさ、それが僕さぁ」
あ、あー答え合わせ完了した。
このろくでなし、サザンビークの大臣のドラ息子だ。
噂には聞いてたけど、想像以上だな……。
「今日は兄さんを失ったゼシカを慰めに来たんだが、ここで思わぬ恋の障害に突き当たったのさぁ」
「少なくとも慰めるどころか、無意識かつ無自覚に塩を塗り込みそうなんですけど」
「君はさっきから何なんだね?」
何って、ただの近衛兵ですけど……。
ちょっと心に思ってることがすぐ口に出るタイプなだけで、至って無害な人間だって自負があるんだけどな。
「というか、恋の障害って?」
「部屋の前で子供たちが通せんぼしていてね……。いつの日も恋路というのは厳しいものだねぇ」
「いやまあ、こんな時じゃなくてもそうなるでしょうね」
「君は本当に何なんだい?」
ドラ息子に愛想笑いをして離れる。
申し訳ないけどあまりにお近づきにはなりたくないタイプだ。
まだ見ぬゼシカさんに同情してしまう。
とはいえ、ここに来たのはラグサットと話をするためではなくて。
むしろこっちが大本命だ。
エイトを先頭にして、村長さんらしき女性へと声をかける。
「リーザス村の村長様とお見受けします」
「お初にお目にかかります。このような大変な時期にお邪魔してしまい、申し訳ございません」
服のスカート部分をつまんで腰を折る。
村長さんは私たちの所作を見て、少しだけ驚いたような雰囲気を見せた。
「村人の方から、こちらにゼシカお嬢様という方がおられると伺いました。ぜひお会い出来ればと思ったのですが……」
そうお伺いを立ててみると、村長さんは今度、呆れたようにため息をついた。
「私の名前はアローザ。我がアルバート家の家訓では、喪に服している間は、家人は家を出ることはなりません。娘のゼシカにそう言いつけたら、不貞腐れてしまって、あの子ったら家どころか部屋からも出てきやしないわ」
「へ、部屋からもですか……」
これは相当、手厳しいかもしれないぞ。
サーベルトさんの話を聞けるチャンスだと思ったけれど、難しいかもしれないな。
「おまけに子供たちを見張りにつけたりして……。まったく、どういうつもりなのかしら」
アローザさん、ゼシカさんに手を焼いているようだ。
そんな風に誰かの手を焼かせる人が部屋に引きこもるかなぁ?
サーベルトさんとゼシカさんはすごく仲のいい兄妹だったって村の人は言っていた。
……もしかすると、実はゼシカさんは。
アローザさんに挨拶をして、私たちはひとつのドアの前に立っているポルクくんとマルクくんを見つけた。
恐らく、そのドアの先がゼシカさんのお部屋なんだろう。
「あ、お前ら。さっきは悪かったな。でもここは通せないぞ。誰にも会いたくないから誰も部屋に入れるなっていう、ゼシカ姉ちゃんの命令だからな」
「絶対?」
「当たり前だろーが!」
「ちょっとノックしてみていい?」
「ダメだよ! ていうか、なんでそんなにゼシカ姉ちゃんに会おうとするんだよ」
「……好奇心?」
「その好奇心は別のところで発揮しようね、レイラ」
私を下がらせたエイトが人当たりのいい笑顔で「ごめんね」と笑った。
そのまま私の手を引いて、別の部屋へと入っていく。
そこは使用人さんのお部屋のようで、そこからロフトに階段が繋がっていた。
そのロフトを上がると、そこにはメイドが一人。
上がってきた私たちを見るなり、メイドが恐怖に満ちた顔を向けてきた。
「あ……あなた達、気をつけて! この部屋は今、危険に満ちているわ!」
「え!? どういうことですか!?」
もしかして、この部屋にドルマゲスがいる?
いや、奴がこんな部屋に隠れるとは思えない。
だとしたら一体、何が……。
「だ……だって、ネズミが出るのよ。私だってネズミ嫌いなのに、退治するように言われちゃって……」
「あ、え? ネズミ?」
ネズミなんてどこにでもいるもんだと思うけど。
トロデーンにだってしょっちゅう現れていたし、何ならエイトのポケットにいるのもネズミだ。
そんな会話をしているさなか、不意にそのネズミが走ってきた。
メイドがビクゥ! と固まった間に、ネズミは壁の隙間へと入り込んでしまった。
「ほ……ほら! ね? ね? 見たでしょ今の! ど……どうしよう!? 壁の向こうはゼシカお嬢様のお部屋なのにぃ……。ふぇーん!」
ネズミ……壁の向こうはゼシカさんのお部屋……。
そして足元にはネズミが通れそうな穴……。
ここから導かれる答えはひとつ。
「ねえレイラ」
「はいエイトさん」
「トーポを潜り込ませよう」
「私も言おうと思ったけどさ、それは。冷静に考えて無理だよさすがに。ネズミだもん、トーポは。そりゃ確かに賢いけどさ」
「やけにネズミらしくない知恵の回り方をする奴だけど、少なくとも図体はネズミだろ。だったらこの穴も余裕だと思うんだよね」
「た、多分……? いやその前にトーポがエイトの意図を理解できるのかって話をだな!?」
「今こそその無駄なまでに高い知能の使い所だ。頼んだよ、トーポ!」
「エイトどうしたの!? なんか言葉の選び方が急に雑になったけど!?」
エイトが穴の前でトーポを下ろす。
トーポは任せろと言わんばかりに、堂々と穴の中へ入っていった。
……トーポって、ほんとにただのネズミか?
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