36章
夢小説設定
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さて、城下町から出た我々は、チャゴス王子を馬車の荷台に押し込めて、ゆっくりと歩き始めた。
とりあえず、話は城から離れてからにしようということだ。
城門から少し離れた辺りで、荷台からチャゴス王子が飛び降りた。
体型に似合わず俊敏だ、さすが侍従の手を煩わせただけのことはある。
「ええい! 狭い、狭すぎる! なんて狭苦しい荷台だ。あの邪魔くさい釜さえなければ、もう少しゆったりできたものを……」
「痩せたらいいんじゃないですかね」
「レイラ、もう一回マホトーンしておく?」
ゼシカの笑顔がやってきて、私は顔を青ざめさせた後、ぶんぶんと首を振った。
身内からマホトーンされるのは懲り懲りだ。
喋れないのってものすごく不便なんだもん……。
「それにしても、なんだコイツは? こんな化け物みたいなおっさん連れて、よくここまで旅をしてこられたな」
「はは……」
スゥーっと頭が冷えていくのを感じた。
ニコニコと対外的な笑顔を貼り付けたまま、エイトの横にすすす、と移動する。
「手元が狂ったことにしたらバレなくない?」
「暗殺を考えないでね、お願いだから。旅が終わる前に僕らの命が終わるから」
「私の得意分野だからいけるなって」
「いこうとしなくていいからね。王者の儀式に行こうね」
チッ、と強めの舌打ちが出てしまった。
仕方ない。
こうなったら、ちゃっちゃと行ってさっさと終わらせよう。
そうしてこの王子と一秒でも早くおさらばするんだ!!
「おっさん、どうしたんでげす? いつもだったら、わしはこう見えても王様なんじゃぞって、食ってかかるのに」
「ちょっと耳を貸せい」
ヤンガスにそう言って近くに寄らせた陛下は、そのままヤンガスにコソコソと囁いた。
「今はわしも姫もこんな姿じゃ。チャゴス王子に、あなたの婚約者は馬になってしまいましたとは言えんだろ。だから王子には本当のことを伏せておくつもりじゃ。他の皆にも伝えておいてくれ。よいな?」
うっうっ、陛下も姫様もおいたわしや。
必ず私とエイトが呪いを解いてみせますからね……!
あっ、でも呪いを解いたら、このブタと姫様が結婚する羽目になるのか……。
ここに来て呪いを解くのを躊躇う理由ができるとは思わなかったなァ……。
「ところで王子様。これからどちらへ向かいましょう?」
ああっ、陛下が身分も格も下のチャゴス王子に、丁寧なお言葉を……!
なんか奇跡が起きて、今この場でちょっとだけ呪いが解けないかなぁ!?
……ていうか別に身分は低くなくない?
元とはいえ、トロデーン王国貴族にして霊導者の末裔と、リーザス地方の領主であるアルバート家のお嬢様と、ドニ領主の元跡取りがいるわけだし……。
言うほど身分は低くなくない!?
「言いたいことは分かるが、王族の前では全部霞むぞ。やめとけ」
「やっぱ駄目かぁ〜」
「何をごちゃごちゃ言っているんだ、お前たち?」
「なァんでもありませ〜ん」
顎をしゃくらせながらそう言うと、エイトに「レイラ?」と笑顔で圧をかけられた。
もう何も言うまい。
「で、どこに行けばいいんでがすかい?」
「……気は進まぬが、ここから東にある、王家の山へ向かってくれ。そこが王者の儀式の地なのだ」
山登り、再び。
願いの丘を山に数えていいのかは分からないけど、なかなかに急勾配だったもんなぁ。
あれより緩やかだといいけど……。
「おっと。そうだエイト。これをお前に渡しておこう」
チャゴス王子が差し出したのは、小さなトカゲがまるまる一つ漬けられた謎の液体入りの小瓶。
ごめん、流石の私でも気持ち悪いと思っちゃった。
ええ……何に使うの、これぇ……?
「その袋には、人間の臭いを消す粉が入っているんだ。王家の山へ入る前に、その粉を身体に振りかけておけよ」
「臭いを消す?」
「儀式で戦うことになるアルゴリザードはな、人間の臭いに敏感で、近づいただけでも逃げ出してしまう……。そこでこの粉で体臭を消し、トカゲ臭くなれば、アルゴリザードに逃げられず戦えるようになるって寸法だ」
「なるほど、頭いいんですねぇ」
「お前は馬鹿っぽそうだな」
「ぁんだとゴルァ!!」
「レイラ! どうどう!」
「馬?」
まさか幼馴染みから馬扱いされるとは思わなかった。
はっ……だから馬鹿ってこと……!?
まぁ賢さはあんまりないよね、馬鹿かどうかはともかく。
「ところで王家の山までの道中、王子はどうなさるんですか? 一緒に歩くなら、魔物と戦ってもらうことになりますけど」
「歩くものか。表向き、ひとりで王者の儀式へ旅立ったことになっているから、普段は馬車の荷台に隠れているからな。王家の山へ着いたら、馬車を降りて歩いてやる。だからうろちょろせずに真っ直ぐ王家の山へ向かえよ」
「承知しました。それじゃあ行こう」
それでは張り切って、東にある王家の山へレッツゴー!
もうちゃっちゃと行ってサクッと終わらせようね!
一刻も早くこいつとおさらばしたいからね!
それにしても、姫様の婚約者かぁ……。
……エイトのほうがかっこいいな?
どうにかして姫様とエイトが結婚できないかなぁ?
だって姫様と話しているエイト、すごく楽しそうだし、姫様も楽しそうなのが見て取れるし。
傍目から見てもお似合いだなって思うんだけどな。
(……まただ)
ツキンと胸が痛んで、そっと左胸を押さえる。
最近、エイトのことを考えると、時々こうやって胸が痛くなる。
どうしてなのかは分からないまま来てしまったけど、一度ちゃんとお医者様に診てもらったほうがいいのかな。
病気とかじゃないといいんだけどなぁ……。
とりあえず、話は城から離れてからにしようということだ。
城門から少し離れた辺りで、荷台からチャゴス王子が飛び降りた。
体型に似合わず俊敏だ、さすが侍従の手を煩わせただけのことはある。
「ええい! 狭い、狭すぎる! なんて狭苦しい荷台だ。あの邪魔くさい釜さえなければ、もう少しゆったりできたものを……」
「痩せたらいいんじゃないですかね」
「レイラ、もう一回マホトーンしておく?」
ゼシカの笑顔がやってきて、私は顔を青ざめさせた後、ぶんぶんと首を振った。
身内からマホトーンされるのは懲り懲りだ。
喋れないのってものすごく不便なんだもん……。
「それにしても、なんだコイツは? こんな化け物みたいなおっさん連れて、よくここまで旅をしてこられたな」
「はは……」
スゥーっと頭が冷えていくのを感じた。
ニコニコと対外的な笑顔を貼り付けたまま、エイトの横にすすす、と移動する。
「手元が狂ったことにしたらバレなくない?」
「暗殺を考えないでね、お願いだから。旅が終わる前に僕らの命が終わるから」
「私の得意分野だからいけるなって」
「いこうとしなくていいからね。王者の儀式に行こうね」
チッ、と強めの舌打ちが出てしまった。
仕方ない。
こうなったら、ちゃっちゃと行ってさっさと終わらせよう。
そうしてこの王子と一秒でも早くおさらばするんだ!!
「おっさん、どうしたんでげす? いつもだったら、わしはこう見えても王様なんじゃぞって、食ってかかるのに」
「ちょっと耳を貸せい」
ヤンガスにそう言って近くに寄らせた陛下は、そのままヤンガスにコソコソと囁いた。
「今はわしも姫もこんな姿じゃ。チャゴス王子に、あなたの婚約者は馬になってしまいましたとは言えんだろ。だから王子には本当のことを伏せておくつもりじゃ。他の皆にも伝えておいてくれ。よいな?」
うっうっ、陛下も姫様もおいたわしや。
必ず私とエイトが呪いを解いてみせますからね……!
あっ、でも呪いを解いたら、このブタと姫様が結婚する羽目になるのか……。
ここに来て呪いを解くのを躊躇う理由ができるとは思わなかったなァ……。
「ところで王子様。これからどちらへ向かいましょう?」
ああっ、陛下が身分も格も下のチャゴス王子に、丁寧なお言葉を……!
なんか奇跡が起きて、今この場でちょっとだけ呪いが解けないかなぁ!?
……ていうか別に身分は低くなくない?
元とはいえ、トロデーン王国貴族にして霊導者の末裔と、リーザス地方の領主であるアルバート家のお嬢様と、ドニ領主の元跡取りがいるわけだし……。
言うほど身分は低くなくない!?
「言いたいことは分かるが、王族の前では全部霞むぞ。やめとけ」
「やっぱ駄目かぁ〜」
「何をごちゃごちゃ言っているんだ、お前たち?」
「なァんでもありませ〜ん」
顎をしゃくらせながらそう言うと、エイトに「レイラ?」と笑顔で圧をかけられた。
もう何も言うまい。
「で、どこに行けばいいんでがすかい?」
「……気は進まぬが、ここから東にある、王家の山へ向かってくれ。そこが王者の儀式の地なのだ」
山登り、再び。
願いの丘を山に数えていいのかは分からないけど、なかなかに急勾配だったもんなぁ。
あれより緩やかだといいけど……。
「おっと。そうだエイト。これをお前に渡しておこう」
チャゴス王子が差し出したのは、小さなトカゲがまるまる一つ漬けられた謎の液体入りの小瓶。
ごめん、流石の私でも気持ち悪いと思っちゃった。
ええ……何に使うの、これぇ……?
「その袋には、人間の臭いを消す粉が入っているんだ。王家の山へ入る前に、その粉を身体に振りかけておけよ」
「臭いを消す?」
「儀式で戦うことになるアルゴリザードはな、人間の臭いに敏感で、近づいただけでも逃げ出してしまう……。そこでこの粉で体臭を消し、トカゲ臭くなれば、アルゴリザードに逃げられず戦えるようになるって寸法だ」
「なるほど、頭いいんですねぇ」
「お前は馬鹿っぽそうだな」
「ぁんだとゴルァ!!」
「レイラ! どうどう!」
「馬?」
まさか幼馴染みから馬扱いされるとは思わなかった。
はっ……だから馬鹿ってこと……!?
まぁ賢さはあんまりないよね、馬鹿かどうかはともかく。
「ところで王家の山までの道中、王子はどうなさるんですか? 一緒に歩くなら、魔物と戦ってもらうことになりますけど」
「歩くものか。表向き、ひとりで王者の儀式へ旅立ったことになっているから、普段は馬車の荷台に隠れているからな。王家の山へ着いたら、馬車を降りて歩いてやる。だからうろちょろせずに真っ直ぐ王家の山へ向かえよ」
「承知しました。それじゃあ行こう」
それでは張り切って、東にある王家の山へレッツゴー!
もうちゃっちゃと行ってサクッと終わらせようね!
一刻も早くこいつとおさらばしたいからね!
それにしても、姫様の婚約者かぁ……。
……エイトのほうがかっこいいな?
どうにかして姫様とエイトが結婚できないかなぁ?
だって姫様と話しているエイト、すごく楽しそうだし、姫様も楽しそうなのが見て取れるし。
傍目から見てもお似合いだなって思うんだけどな。
(……まただ)
ツキンと胸が痛んで、そっと左胸を押さえる。
最近、エイトのことを考えると、時々こうやって胸が痛くなる。
どうしてなのかは分からないまま来てしまったけど、一度ちゃんとお医者様に診てもらったほうがいいのかな。
病気とかじゃないといいんだけどなぁ……。
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