32章
夢小説設定
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ベルガラックで「道化師の格好をした強盗がギャリングを殺害し、北の孤島に逃げた」という情報を掴んだ私たち。
船に飛び乗って北の孤島へと向かった先には、島の中央に闇の遺跡があり、なんとそこへ入っていくドルマゲスを発見した。
追いかけて遺跡へ入るも、闇の結界により強制的に外へ追い出されてしまう。
この結界を破るため、私たちはサザンビーク城にあるという魔法の鏡を手に入れなければならなくなったのである。
……以上、今日のまとめである。
「エイトってさ、サボスの顔見たことあるんだっけ?」
「もう誰のこと言ってるか分かんないよ。チャゴス王子のお顔は僕も見たことないんだよね」
「そっかぁ」
酒場で二人、カウンターに並んでカランとグラスを傾ける。
いい夜だ……こんな状況じゃなければ。
いつかトロデーン城に戻れた時は、みんなでワイワイ言いながら酒盛りしたいなぁ。
「それにしても珍しいね、レイラから飲みに誘うなんて」
「ま、たまには息抜きってことで。色々と今日は迷惑もかけちゃったからさ」
「迷惑だなんて。レイラの力の問題なんだ、仕方ないだろ? 解決する話でもないしさ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどねぇ……」
頬杖をついたまま呟いて、カクテルを喉に通す。
隣に座るエイトはそんな私を見て、ちょっと楽しそう。
……そういえば初めてかも、エイトとサシで飲むなんて。
「レイラが霊導者ヨシュアの末裔だって話、トロデ王には?」
「したよ。そしたら陛下が教えてくれたんだ。ロアナス家は昔、トロデーンにあった貴族の家なんだって」
「トロデーンに?」
「普通にびっくりだよねぇ。こんなのが貴族の元お嬢様だって。産まれてくるとこ間違えてるとしか思えないって」
追加のお酒をマスターに頼んで、空のグラスに残った氷をカラカラと鳴らす。
エイトは何も言わずに、グラスの中のお酒を飲んだ。
エイトがトロデーンに来て十年、私は九年。
一年の差があるということは、その一年間だけは、私とエイトの生きる世界が違ったということ。
身寄りのない孤児の小間使いと、由緒正しきロアナス家の一人娘。
そんな、生きる世界が違う私たちは、ロアナス家の滅亡と共に同じ道を歩むことになった。
「レイラは、ロアナス家を再興したいって思う?」
「うーん、思わないなぁ」
「どうして?」
「自分が貴族の娘だったって言われてもピンと来ないもん。その頃の記憶は無いわけだしさ。今の生活のほうが性に合ってるよ。エイトがいて、近衛隊の皆がいて、姫様と陛下を守って……。そういう生活が送れたらそれでいいや」
「……そっか」
「エイトこそ、自分の生まれ故郷が分かったら、どうすんの?」
「……たしかにどうもしないな。今まで通り、トロデーンで働いてる」
「でしょ〜? まぁ分かんないけどね。ひょっとしたら私よりすごいところの生まれかもしれないし」
「貴族以上? 王族しかないけど」
「サザンビーク王家の出身だったりして」
「さすがに縁もゆかりも無い気がするなぁ」
はは、と困ったように笑って、エイトも追加の注文を入れた。
私の注文がカウンター越しに渡されて、口をつける。
うん、甘くて美味しい。
「……あら、こんなところで二人仲良く飲んでるなんて、どういう風の吹き回し?」
「お、ゼシカ。もう寝てると思って誘わなかったんだけど、起きてたんだ」
「兄貴もバニーショーを見に来たんでげすかい?」
「レイラと一緒にいてバニーショーはないだろ」
ヤンガスとククールも降りてきた。
なんだなんだ、みんな揃って夜更かしか。
でもみんなでお酒を飲むことって、一度もなかった気がする。
一杯くらいなら付き合おうじゃないの!
「それにしたって、こんな形でサザンビーク城を目指すことになるなんてねー」
「本当だよねぇ。えーどうしよ、カボチャ王子がろくでもない奴だったら」
「誰でげすか? そのろくでもなさそうな名前の王子は」
「チャゴス王子のことだろ」
「チャゴス王子のことだよ」
「そうそう、それそれ」
「原型ないにも程があるわよ」
いやほんとうに申し訳ない、どうでもいい人の名前は覚えられなくて。
よくこんなんで近衛兵やれてるな。
自分で言うなって話だけど。
「これ飲んだら切り上げようぜ」
「そうね、明日も早いもの」
「おっけー! まぁ私とエイトは、先に一杯引っ掛けちゃったけどね」
「滅多にないお誘いだったから、断る理由もなくて」
「良かったでがすな、兄貴」
「うん? うん。……ん?」
うんの三段活用みたいになってしまったエイトが首を傾げた。
エイトが分からないんだったら、私が分かるはずもない……。
目の前の三人はやれやれと首を振り、肩を竦めて酒を飲んでいた。
訳の分からない私とエイトは顔を見合わせるばかりだ。
私、そんなに付き合い悪いやつだと思われてたかな。
もっと酒場に誘うべきだったか……?
船に飛び乗って北の孤島へと向かった先には、島の中央に闇の遺跡があり、なんとそこへ入っていくドルマゲスを発見した。
追いかけて遺跡へ入るも、闇の結界により強制的に外へ追い出されてしまう。
この結界を破るため、私たちはサザンビーク城にあるという魔法の鏡を手に入れなければならなくなったのである。
……以上、今日のまとめである。
「エイトってさ、サボスの顔見たことあるんだっけ?」
「もう誰のこと言ってるか分かんないよ。チャゴス王子のお顔は僕も見たことないんだよね」
「そっかぁ」
酒場で二人、カウンターに並んでカランとグラスを傾ける。
いい夜だ……こんな状況じゃなければ。
いつかトロデーン城に戻れた時は、みんなでワイワイ言いながら酒盛りしたいなぁ。
「それにしても珍しいね、レイラから飲みに誘うなんて」
「ま、たまには息抜きってことで。色々と今日は迷惑もかけちゃったからさ」
「迷惑だなんて。レイラの力の問題なんだ、仕方ないだろ? 解決する話でもないしさ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどねぇ……」
頬杖をついたまま呟いて、カクテルを喉に通す。
隣に座るエイトはそんな私を見て、ちょっと楽しそう。
……そういえば初めてかも、エイトとサシで飲むなんて。
「レイラが霊導者ヨシュアの末裔だって話、トロデ王には?」
「したよ。そしたら陛下が教えてくれたんだ。ロアナス家は昔、トロデーンにあった貴族の家なんだって」
「トロデーンに?」
「普通にびっくりだよねぇ。こんなのが貴族の元お嬢様だって。産まれてくるとこ間違えてるとしか思えないって」
追加のお酒をマスターに頼んで、空のグラスに残った氷をカラカラと鳴らす。
エイトは何も言わずに、グラスの中のお酒を飲んだ。
エイトがトロデーンに来て十年、私は九年。
一年の差があるということは、その一年間だけは、私とエイトの生きる世界が違ったということ。
身寄りのない孤児の小間使いと、由緒正しきロアナス家の一人娘。
そんな、生きる世界が違う私たちは、ロアナス家の滅亡と共に同じ道を歩むことになった。
「レイラは、ロアナス家を再興したいって思う?」
「うーん、思わないなぁ」
「どうして?」
「自分が貴族の娘だったって言われてもピンと来ないもん。その頃の記憶は無いわけだしさ。今の生活のほうが性に合ってるよ。エイトがいて、近衛隊の皆がいて、姫様と陛下を守って……。そういう生活が送れたらそれでいいや」
「……そっか」
「エイトこそ、自分の生まれ故郷が分かったら、どうすんの?」
「……たしかにどうもしないな。今まで通り、トロデーンで働いてる」
「でしょ〜? まぁ分かんないけどね。ひょっとしたら私よりすごいところの生まれかもしれないし」
「貴族以上? 王族しかないけど」
「サザンビーク王家の出身だったりして」
「さすがに縁もゆかりも無い気がするなぁ」
はは、と困ったように笑って、エイトも追加の注文を入れた。
私の注文がカウンター越しに渡されて、口をつける。
うん、甘くて美味しい。
「……あら、こんなところで二人仲良く飲んでるなんて、どういう風の吹き回し?」
「お、ゼシカ。もう寝てると思って誘わなかったんだけど、起きてたんだ」
「兄貴もバニーショーを見に来たんでげすかい?」
「レイラと一緒にいてバニーショーはないだろ」
ヤンガスとククールも降りてきた。
なんだなんだ、みんな揃って夜更かしか。
でもみんなでお酒を飲むことって、一度もなかった気がする。
一杯くらいなら付き合おうじゃないの!
「それにしたって、こんな形でサザンビーク城を目指すことになるなんてねー」
「本当だよねぇ。えーどうしよ、カボチャ王子がろくでもない奴だったら」
「誰でげすか? そのろくでもなさそうな名前の王子は」
「チャゴス王子のことだろ」
「チャゴス王子のことだよ」
「そうそう、それそれ」
「原型ないにも程があるわよ」
いやほんとうに申し訳ない、どうでもいい人の名前は覚えられなくて。
よくこんなんで近衛兵やれてるな。
自分で言うなって話だけど。
「これ飲んだら切り上げようぜ」
「そうね、明日も早いもの」
「おっけー! まぁ私とエイトは、先に一杯引っ掛けちゃったけどね」
「滅多にないお誘いだったから、断る理由もなくて」
「良かったでがすな、兄貴」
「うん? うん。……ん?」
うんの三段活用みたいになってしまったエイトが首を傾げた。
エイトが分からないんだったら、私が分かるはずもない……。
目の前の三人はやれやれと首を振り、肩を竦めて酒を飲んでいた。
訳の分からない私とエイトは顔を見合わせるばかりだ。
私、そんなに付き合い悪いやつだと思われてたかな。
もっと酒場に誘うべきだったか……?
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