31章
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翌朝の明け方。
いつも通りに目が覚めた私は、ゼシカが隣のベッドで眠っているのを確認して、そっと部屋を出た。
エイトはもう起きてるかな〜と思いつつフロントへ降りると、なんとエイトはまだ起きていないようだ。
「ふぁーあ……。あれ、私が一番に起きたのか」
なんとなく優越感に浸りながら宿屋を出ると、東の空が明るみ始めている。
明け方のベルガラックを一周したあと、私は町の外にいる陛下の元を訪れることにした。
「んー、気持ちいい朝」
朝の空気は少しひんやりしていて、身がキュッと引き締まる。
一日が始まっていくこの時間は好きだ。
特に『夜勤』を命じられなかった時は──。
「レイラか、早起きじゃのう」
「陛下。おはようございます」
「よく眠れたか?」
「はい、おかげさまで」
そう答えると、陛下が私をじっと見つめてきた。
な、なんだろう、もしかして、めちゃくちゃすごい寝癖がついてるとか?
まだ髪を結んでないから、寝癖があったらそのままになっているかもしれない。
「あの……私に、何か?」
「この姿になってしまったからかのう。レイラから、何やら神聖な力を感じる気がするのじゃ」
「神聖な……力」
私が祖先から受け継いだ、霊導の力のことだろうか。
どうやら私には霊導者としての力が備わっているみたいだもんな。
今のところ、この力が役に立ったのは、城が呪われる時だけなんだけど。
「今までは、そのようなことはなかったんじゃが」
「……陛下にはお伝えしていませんでした。私の出生について」
「む?」
陛下が怪訝そうに小首を傾げる。
本来なら、主君に対して隠し事なんてご法度だけど……。
あまりにも自分で自分を信じられなかったから、陛下にお伝えするのも憚られて、そのままになってしまっていた。
今でも少し信じられないでいるくらいだ。
「私は、七賢人に隠れた、八人目の賢者──ヨシュア・ロアナスの子孫だそうです。ヨシュアは死者の魂を昇天させ、魔物などの悪しき魂を浄化させる、霊導と呼ばれる力を持っていた者です。その存在はあまり表立っておらず、知る者も多くありません」
「ヨシュア・ロアナス……じゃと?」
「はい。……もしや陛下、ご存じなのですか?」
陛下は驚いた様子で何度も首を振った。
マルチェロさんもククールも「知っている人は少ない」って言ってたけど、まさかこんな身近なところに知っている人がいるなんて。
……ひょっとして私のご先祖様、私が思ってるより数倍すごい人だったりする?
「忘れることなどできんわい。ロアナス家はトロデーン領に存在した、名家の中の名家じゃったからのう」
「え? ええー!? トロデーン領に!? そうだったんですか!?」
なんだってそんな重要な話がここで出てくるんだ!!
めちゃくちゃ初耳なんだけど!!
つまり私……生粋のトロデーン王国民ってこと!?
「うむ、確かにロアナス家の者は、強い力を持っておった。じゃから歴代のトロデーン国王は代々のロアナス家当主に、トラペッタの守護を命じたのじゃ。じゃがある年、ロアナス家は外遊の帰途で魔物に襲われ、全滅してしまっての」
「全滅……」
「トラペッタに行けばよいところを、お主は一人、城まで歩いてきたんじゃな」
「え、えぇ……?」
そうだったんだ、すごいな私。
きっとあの時は魔物から逃げるのに必死で、何がなんだか分かってなかったんだろうな。
それにしたってトラペッタを通り過ぎて、トロデーン城まで行くか……?
たった九歳の子供が……?
よく魔物に殺されなかったな、本当に。
「お主に尋ねても記憶がないからか、名前しか分からんでのう。ロアナス家のことが分かったのも、それからずいぶん経っての話じゃった。なにせトラペッタとトロデーン城は遠いゆえ、どうしても疎遠になってしまうのでな」
「そうですね……」
トロデーン城が呪いにかけられて滅びたという話だって、私たちがトラペッタを出る頃になっても届いていなかった。
城とトラペッタは、子供の足でも丸一日は掛かるくらいには遠いのだ。
(魔物に襲われて全滅……か)
誰の仕業なんだろう。
その頃はまだ、ドルマゲスなんて道化師は、トラペッタにはいなかっただろうし。
……誰が、何の目的で?
まさか、今の私がそうであるように、魔物にとって危険な霊導の力を持った一族を、抹殺しようとしたの?
きっと、霊導の力を受け継いでる人は、そう多くはなかっただろう。
いても一人か二人だったはずだ。
一体誰が……。
「あっ、見つけた! レイラー! 朝食ができてるわよ!」
「あ、今行く!」
町の入口からゼシカの声が聞こえてきた。
なんと空はすっかり明るくなって、夜明けから朝になっている。
陛下に敬礼して、私はベルガラックの町に戻ることにした。
……ともかく今は、ドルマゲスのことだけを考えよう。
「探したわよ」
「わーごめん! 気持ちのいい朝だったから、散歩したくなっちゃって」
「あとでエイトにも謝っておきなさい。青い顔して探し回ってたんだから」
「うわ、めっちゃ怒られそうでやだな」
「めっちゃ怒ってるよ! なんで何も言わずに町の外まで出るかな、レイラは!」
「げぇエイト!! 死ぬほど怒ってんじゃん!!」
「こらぁ!! ごめんなさいは!?」
「ごめんなさーい!!」
エイトに追いかけられながら宿屋へと飛び込む。
フロントのソファに座っていたククールと、そのククールの傍に立っていたヤンガスは、私を見るなりほっとした顔をして、それからやれやれと首を振ったのだった。
いつも通りに目が覚めた私は、ゼシカが隣のベッドで眠っているのを確認して、そっと部屋を出た。
エイトはもう起きてるかな〜と思いつつフロントへ降りると、なんとエイトはまだ起きていないようだ。
「ふぁーあ……。あれ、私が一番に起きたのか」
なんとなく優越感に浸りながら宿屋を出ると、東の空が明るみ始めている。
明け方のベルガラックを一周したあと、私は町の外にいる陛下の元を訪れることにした。
「んー、気持ちいい朝」
朝の空気は少しひんやりしていて、身がキュッと引き締まる。
一日が始まっていくこの時間は好きだ。
特に『夜勤』を命じられなかった時は──。
「レイラか、早起きじゃのう」
「陛下。おはようございます」
「よく眠れたか?」
「はい、おかげさまで」
そう答えると、陛下が私をじっと見つめてきた。
な、なんだろう、もしかして、めちゃくちゃすごい寝癖がついてるとか?
まだ髪を結んでないから、寝癖があったらそのままになっているかもしれない。
「あの……私に、何か?」
「この姿になってしまったからかのう。レイラから、何やら神聖な力を感じる気がするのじゃ」
「神聖な……力」
私が祖先から受け継いだ、霊導の力のことだろうか。
どうやら私には霊導者としての力が備わっているみたいだもんな。
今のところ、この力が役に立ったのは、城が呪われる時だけなんだけど。
「今までは、そのようなことはなかったんじゃが」
「……陛下にはお伝えしていませんでした。私の出生について」
「む?」
陛下が怪訝そうに小首を傾げる。
本来なら、主君に対して隠し事なんてご法度だけど……。
あまりにも自分で自分を信じられなかったから、陛下にお伝えするのも憚られて、そのままになってしまっていた。
今でも少し信じられないでいるくらいだ。
「私は、七賢人に隠れた、八人目の賢者──ヨシュア・ロアナスの子孫だそうです。ヨシュアは死者の魂を昇天させ、魔物などの悪しき魂を浄化させる、霊導と呼ばれる力を持っていた者です。その存在はあまり表立っておらず、知る者も多くありません」
「ヨシュア・ロアナス……じゃと?」
「はい。……もしや陛下、ご存じなのですか?」
陛下は驚いた様子で何度も首を振った。
マルチェロさんもククールも「知っている人は少ない」って言ってたけど、まさかこんな身近なところに知っている人がいるなんて。
……ひょっとして私のご先祖様、私が思ってるより数倍すごい人だったりする?
「忘れることなどできんわい。ロアナス家はトロデーン領に存在した、名家の中の名家じゃったからのう」
「え? ええー!? トロデーン領に!? そうだったんですか!?」
なんだってそんな重要な話がここで出てくるんだ!!
めちゃくちゃ初耳なんだけど!!
つまり私……生粋のトロデーン王国民ってこと!?
「うむ、確かにロアナス家の者は、強い力を持っておった。じゃから歴代のトロデーン国王は代々のロアナス家当主に、トラペッタの守護を命じたのじゃ。じゃがある年、ロアナス家は外遊の帰途で魔物に襲われ、全滅してしまっての」
「全滅……」
「トラペッタに行けばよいところを、お主は一人、城まで歩いてきたんじゃな」
「え、えぇ……?」
そうだったんだ、すごいな私。
きっとあの時は魔物から逃げるのに必死で、何がなんだか分かってなかったんだろうな。
それにしたってトラペッタを通り過ぎて、トロデーン城まで行くか……?
たった九歳の子供が……?
よく魔物に殺されなかったな、本当に。
「お主に尋ねても記憶がないからか、名前しか分からんでのう。ロアナス家のことが分かったのも、それからずいぶん経っての話じゃった。なにせトラペッタとトロデーン城は遠いゆえ、どうしても疎遠になってしまうのでな」
「そうですね……」
トロデーン城が呪いにかけられて滅びたという話だって、私たちがトラペッタを出る頃になっても届いていなかった。
城とトラペッタは、子供の足でも丸一日は掛かるくらいには遠いのだ。
(魔物に襲われて全滅……か)
誰の仕業なんだろう。
その頃はまだ、ドルマゲスなんて道化師は、トラペッタにはいなかっただろうし。
……誰が、何の目的で?
まさか、今の私がそうであるように、魔物にとって危険な霊導の力を持った一族を、抹殺しようとしたの?
きっと、霊導の力を受け継いでる人は、そう多くはなかっただろう。
いても一人か二人だったはずだ。
一体誰が……。
「あっ、見つけた! レイラー! 朝食ができてるわよ!」
「あ、今行く!」
町の入口からゼシカの声が聞こえてきた。
なんと空はすっかり明るくなって、夜明けから朝になっている。
陛下に敬礼して、私はベルガラックの町に戻ることにした。
……ともかく今は、ドルマゲスのことだけを考えよう。
「探したわよ」
「わーごめん! 気持ちのいい朝だったから、散歩したくなっちゃって」
「あとでエイトにも謝っておきなさい。青い顔して探し回ってたんだから」
「うわ、めっちゃ怒られそうでやだな」
「めっちゃ怒ってるよ! なんで何も言わずに町の外まで出るかな、レイラは!」
「げぇエイト!! 死ぬほど怒ってんじゃん!!」
「こらぁ!! ごめんなさいは!?」
「ごめんなさーい!!」
エイトに追いかけられながら宿屋へと飛び込む。
フロントのソファに座っていたククールと、そのククールの傍に立っていたヤンガスは、私を見るなりほっとした顔をして、それからやれやれと首を振ったのだった。
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