29章
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船は西へ向けてゆっくりと進んでいく。
地図を見ながら舵を取りつつ、私たちは未だ見えぬ大陸を、目を凝らして探し続けた。
「海の魔物も倒せるようになってきたんじゃない?」
デスセイレスがゼシカのメラミを受けて倒れる。
剣を鞘に戻したところで、私はゼシカにそう問われた。
ちなみにこのゼシカは、デスセイレスにぱふぱふされたところ、勝ち誇った笑みを浮かべたままにメラミをぶち込んだ。
自分の胸囲に絶大なる自信をお持ちなのだ、そりゃあお色気も増すってもんである。
最近は魔物も見とれてることあるもんね。
「デスセイレスみたいな人型とか、シーメーダみたいなよく分かんないやつは大丈夫なんだよね。プチアーノンも平気」
「そうなのね。じゃああれは?」
ゼシカが指さした先には、大王イカ。
私の喉から「ヒュッ……」と締まる音が漏れた。
だから言ってんじゃん、イカとタコは無理だって!!
「レイラ、できる範囲で!」
「無理はすんなよー」
「私たちのサポートでも大丈夫よ!」
「ハイ……」
果敢に攻めていく四人へ、私は黙ってスクルトをかけ、ピオリムで後押しをした。
実は最近、少しづつだけど、唱えられる呪文が増えてきたのだ。
攻撃呪文はまだベギラマ、メラミ、ヒャダルコまでしか唱えられないけど、補助呪文ならゼシカとククールのカバーが可能だ。
攻撃呪文の威力を上げたくて、ゼシカに教えてもらおうと思ったけど、賢さが足りないせいか、アドバイスがよく分からなかったので諦めた。
私はやっぱり物理でいこうと思う。
「みんな、怪我は?」
「かすり傷でがすよ」
「そっか……よかった」
魔物たちの気配も消えた。
当面は戦闘になることはなさそうだ。
あまりにも私が戦力外なので、これ以上は無様を晒したくないだけである。
今更かもしれないけど。
「さてと……地図上だと、もう少しで大陸につくはずなんだけど」
そう言ってエイトが周囲を見渡し、何かを見つけた。
少し遠くに、陸地のようなものが見えている。
「みんな、大陸が見えたよ!」
「本当でがすか!? うおぉぉおお!! 陸が見えるでがすよ!!」
ヤンガスが盛り上がってくれて良かった。
背後の皆さんは既にお疲れモードだ。
そりゃまあ私の分まで戦ってますからね……。
本当に申し訳ない……。
「やれやれ、やっと見えてきたか。どこかの素敵なレディが、一晩泊めてくれるとありがたいんだけどな」
「なんでレディ限定なのよ。でも確かにそうね、私も今日は疲れたわ。よく考えれば、あのデブモグラを倒してから、私たちってまともに休んでないのよね」
それはそう。
ドン・モグーラからハープを取り返した時も夜までしか休めなかったし、ポルトリンクに寄った時だって夜中も夜中だったから、睡眠時間はちょっと足りてない。
おまけに、メダル王女様のところに寄り道なんかしちゃったから、実はそこそこ疲れているのだ。
「妖精の矢で吸い取ってるとはいえ、俺の魔力もそろそろ限界だぜ」
「私もよ。攻撃呪文は魔力の消費が大きいのよね……」
魔法が主力の二人がそう言ってるんだから、戦いが大変になりそうだな。
早いところ、今日の宿を探さないといけないんだけど……。
船が大陸間の海峡へと入っていく。
頭上にはアーチ状にかかる橋と、その上に街が見えた。
凄いところに街があるんだな……。
そう驚いたのもつかの間。
私たちの耳に、魔物の叫び声が飛び込んできた。
「な、なんじゃあれぇぇ!!」
「おいおい、見るからに強敵だぞ……」
紫のような色をした、サメのようなドラゴンのような魔物。
人呼んで海竜とはよく言ったものだ。
これなら私でも戦えそう!
足手まといにはならなくて済みそうだ!
「一先ずククール、ゼシカ! いつものお願い!」
「仕方ねぇ、やってやるか。攻撃は任せたぜ、近衛兵さん! ──スクルト!」
「ピオリム! エイト、レイラ、ヤンガス! 気を付けて!」
オッケー、と飛び出そうとした瞬間、海竜が大きく口を開けた。
その口に光が溜まっていく。
「えッ」
「何かくる!?」
私とエイトの足が止まった、その瞬間!
光はジゴフラッシュとなり、私たちに向かって放たれた!
あっつい! 痛い! そんで目が見えない!!
「ま、待って視界が! 目が、目がぁ!!」
「何も見えねぇ! 兄貴!」
「僕も何も見えない……! くそっ……!」
「全員仲良くマヌーサかい!!」
ちくしょう、ここで一方的にやられるなんて嫌だ!!
右手をグッと胸の前で握り締め、魔力を展開する。
真っ白な文字の羅列が交差するように私を包んだ瞬間、右腕を横に薙ぎ払って唱えた。
「メラミ!」
大きな火の玉が海竜へ向かっていく。
ギャア、と海竜の叫び声は聞こえたけど、たぶんゼシカ程の威力はないから、もう一、二発は食らわせないと駄目だ。
「任せて、レイラ! メラミ!」
「ゼシカ〜!」
海竜の反撃を許さず、ゼシカが追撃のメラミを唱える。
ありがとうゼシカ、愛してる。
私より威力が高いだろうから、あと一撃でも何かが決まればいいんだけど……。
「バギマ!」
「ベギラマ!」
「盗っ人狩り! だぁぁぁ空振りでげす!!」
お、終わらなーい!
とりあえずもう1回、メラミを唱えて……!
「め、メラ──ミ゛ッ」
「レイラー!!」
「すげぇな、あいつ顔面で海竜の尾鰭を受け止めたぞ」
「感心してる場合じゃないでしょ!」
まったくもってゼシカの言う通りだ!
感心してる暇があったら海竜を倒してくれ!!
今度こそメラミを唱えて、海竜が海へ落ちて行く。
視力が戻ってきたところで、エイトが私に駆け寄ってきた。
「レイラ、大丈夫!?」
「ねぇエイト、私の鼻曲がってない? 大丈夫そ?」
「鼻は曲がってないが、鼻血がすごいぞ」
「ヒィン」
ククールがベホイミで回復してくれて、鼻血が止まった。
心配そうな顔をするエイトに笑ってみせると、エイトはようやくほっとしたように笑って、陛下と何かを話し始めた。
そろそろ上陸できる場所があってもいいと思うけど、どうしたもんか。
空がオレンジ色に染まった夕方。
海峡を通り抜けたその先で、私たちは左手に建物を見つけた。
屋根に教会のシンボルがあるから、旅人の教会のようだ。
「ねぇエイト! あれって教会じゃない?」
「ん? あ、本当だ」
「よし、今日はそこに厄介になろうぜ。教会ってのは大概、旅人を泊めてくれるもんだしな」
ククールの意見が珍しく採用されて、私たちは船を教会の近くに停泊させた。
タラップを陸に渡して、ドキドキの初上陸だ。
残念ながら、はしゃぐだけの体力がないので、「はじめの一歩!」とかは出来ないわけだが。
「アッシはもうヘトヘトでがすよ……」
「右に同じ……。避けてばっかりも結構疲れるもんだね……」
「ほら、みんな! もう目の前だよ、元気出して!」
「あなたはいつでも元気よね……」
「お前のその体力は無尽蔵か? そうなのか?」
「いや違うけど」
「先に泊まれるか聞いてみる!」と言って、エイトは教会まで走っていった。
なんで走って行けんの、なんであの人疲れてないの?
疲れってものを知らないの、あの人。
やっぱりドルマゲスを追う旅のリーダーは、タフじゃないと駄目なんだろうな……。
一生かかってもあのタフさを手に入れられる気はしない。
エイトってすごい、なんかもう色々とバケモンだ。
地図を見ながら舵を取りつつ、私たちは未だ見えぬ大陸を、目を凝らして探し続けた。
「海の魔物も倒せるようになってきたんじゃない?」
デスセイレスがゼシカのメラミを受けて倒れる。
剣を鞘に戻したところで、私はゼシカにそう問われた。
ちなみにこのゼシカは、デスセイレスにぱふぱふされたところ、勝ち誇った笑みを浮かべたままにメラミをぶち込んだ。
自分の胸囲に絶大なる自信をお持ちなのだ、そりゃあお色気も増すってもんである。
最近は魔物も見とれてることあるもんね。
「デスセイレスみたいな人型とか、シーメーダみたいなよく分かんないやつは大丈夫なんだよね。プチアーノンも平気」
「そうなのね。じゃああれは?」
ゼシカが指さした先には、大王イカ。
私の喉から「ヒュッ……」と締まる音が漏れた。
だから言ってんじゃん、イカとタコは無理だって!!
「レイラ、できる範囲で!」
「無理はすんなよー」
「私たちのサポートでも大丈夫よ!」
「ハイ……」
果敢に攻めていく四人へ、私は黙ってスクルトをかけ、ピオリムで後押しをした。
実は最近、少しづつだけど、唱えられる呪文が増えてきたのだ。
攻撃呪文はまだベギラマ、メラミ、ヒャダルコまでしか唱えられないけど、補助呪文ならゼシカとククールのカバーが可能だ。
攻撃呪文の威力を上げたくて、ゼシカに教えてもらおうと思ったけど、賢さが足りないせいか、アドバイスがよく分からなかったので諦めた。
私はやっぱり物理でいこうと思う。
「みんな、怪我は?」
「かすり傷でがすよ」
「そっか……よかった」
魔物たちの気配も消えた。
当面は戦闘になることはなさそうだ。
あまりにも私が戦力外なので、これ以上は無様を晒したくないだけである。
今更かもしれないけど。
「さてと……地図上だと、もう少しで大陸につくはずなんだけど」
そう言ってエイトが周囲を見渡し、何かを見つけた。
少し遠くに、陸地のようなものが見えている。
「みんな、大陸が見えたよ!」
「本当でがすか!? うおぉぉおお!! 陸が見えるでがすよ!!」
ヤンガスが盛り上がってくれて良かった。
背後の皆さんは既にお疲れモードだ。
そりゃまあ私の分まで戦ってますからね……。
本当に申し訳ない……。
「やれやれ、やっと見えてきたか。どこかの素敵なレディが、一晩泊めてくれるとありがたいんだけどな」
「なんでレディ限定なのよ。でも確かにそうね、私も今日は疲れたわ。よく考えれば、あのデブモグラを倒してから、私たちってまともに休んでないのよね」
それはそう。
ドン・モグーラからハープを取り返した時も夜までしか休めなかったし、ポルトリンクに寄った時だって夜中も夜中だったから、睡眠時間はちょっと足りてない。
おまけに、メダル王女様のところに寄り道なんかしちゃったから、実はそこそこ疲れているのだ。
「妖精の矢で吸い取ってるとはいえ、俺の魔力もそろそろ限界だぜ」
「私もよ。攻撃呪文は魔力の消費が大きいのよね……」
魔法が主力の二人がそう言ってるんだから、戦いが大変になりそうだな。
早いところ、今日の宿を探さないといけないんだけど……。
船が大陸間の海峡へと入っていく。
頭上にはアーチ状にかかる橋と、その上に街が見えた。
凄いところに街があるんだな……。
そう驚いたのもつかの間。
私たちの耳に、魔物の叫び声が飛び込んできた。
「な、なんじゃあれぇぇ!!」
「おいおい、見るからに強敵だぞ……」
紫のような色をした、サメのようなドラゴンのような魔物。
人呼んで海竜とはよく言ったものだ。
これなら私でも戦えそう!
足手まといにはならなくて済みそうだ!
「一先ずククール、ゼシカ! いつものお願い!」
「仕方ねぇ、やってやるか。攻撃は任せたぜ、近衛兵さん! ──スクルト!」
「ピオリム! エイト、レイラ、ヤンガス! 気を付けて!」
オッケー、と飛び出そうとした瞬間、海竜が大きく口を開けた。
その口に光が溜まっていく。
「えッ」
「何かくる!?」
私とエイトの足が止まった、その瞬間!
光はジゴフラッシュとなり、私たちに向かって放たれた!
あっつい! 痛い! そんで目が見えない!!
「ま、待って視界が! 目が、目がぁ!!」
「何も見えねぇ! 兄貴!」
「僕も何も見えない……! くそっ……!」
「全員仲良くマヌーサかい!!」
ちくしょう、ここで一方的にやられるなんて嫌だ!!
右手をグッと胸の前で握り締め、魔力を展開する。
真っ白な文字の羅列が交差するように私を包んだ瞬間、右腕を横に薙ぎ払って唱えた。
「メラミ!」
大きな火の玉が海竜へ向かっていく。
ギャア、と海竜の叫び声は聞こえたけど、たぶんゼシカ程の威力はないから、もう一、二発は食らわせないと駄目だ。
「任せて、レイラ! メラミ!」
「ゼシカ〜!」
海竜の反撃を許さず、ゼシカが追撃のメラミを唱える。
ありがとうゼシカ、愛してる。
私より威力が高いだろうから、あと一撃でも何かが決まればいいんだけど……。
「バギマ!」
「ベギラマ!」
「盗っ人狩り! だぁぁぁ空振りでげす!!」
お、終わらなーい!
とりあえずもう1回、メラミを唱えて……!
「め、メラ──ミ゛ッ」
「レイラー!!」
「すげぇな、あいつ顔面で海竜の尾鰭を受け止めたぞ」
「感心してる場合じゃないでしょ!」
まったくもってゼシカの言う通りだ!
感心してる暇があったら海竜を倒してくれ!!
今度こそメラミを唱えて、海竜が海へ落ちて行く。
視力が戻ってきたところで、エイトが私に駆け寄ってきた。
「レイラ、大丈夫!?」
「ねぇエイト、私の鼻曲がってない? 大丈夫そ?」
「鼻は曲がってないが、鼻血がすごいぞ」
「ヒィン」
ククールがベホイミで回復してくれて、鼻血が止まった。
心配そうな顔をするエイトに笑ってみせると、エイトはようやくほっとしたように笑って、陛下と何かを話し始めた。
そろそろ上陸できる場所があってもいいと思うけど、どうしたもんか。
空がオレンジ色に染まった夕方。
海峡を通り抜けたその先で、私たちは左手に建物を見つけた。
屋根に教会のシンボルがあるから、旅人の教会のようだ。
「ねぇエイト! あれって教会じゃない?」
「ん? あ、本当だ」
「よし、今日はそこに厄介になろうぜ。教会ってのは大概、旅人を泊めてくれるもんだしな」
ククールの意見が珍しく採用されて、私たちは船を教会の近くに停泊させた。
タラップを陸に渡して、ドキドキの初上陸だ。
残念ながら、はしゃぐだけの体力がないので、「はじめの一歩!」とかは出来ないわけだが。
「アッシはもうヘトヘトでがすよ……」
「右に同じ……。避けてばっかりも結構疲れるもんだね……」
「ほら、みんな! もう目の前だよ、元気出して!」
「あなたはいつでも元気よね……」
「お前のその体力は無尽蔵か? そうなのか?」
「いや違うけど」
「先に泊まれるか聞いてみる!」と言って、エイトは教会まで走っていった。
なんで走って行けんの、なんであの人疲れてないの?
疲れってものを知らないの、あの人。
やっぱりドルマゲスを追う旅のリーダーは、タフじゃないと駄目なんだろうな……。
一生かかってもあのタフさを手に入れられる気はしない。
エイトってすごい、なんかもう色々とバケモンだ。
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