25章
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復活したアスカンタを旅立ってから、しばらく経つ。
二度目の訪問になる私たちの目の前には、すっかり活気を取り戻した城下町が広がっていた。
店の商人たちの活気ある呼び込み、城下町を走り回る子供たちと、それを見守る井戸端会議中のご婦人たち。
平和な日常を過ごす彼らの表情は、誰もみな明るい笑顔だ。
「この国もすっかり吹っ切れたな」
「うん! やっぱり城下町ってのはこうでなくちゃ!」
「アッシらも頑張って山登りをした甲斐があるってもんでがすな」
「そう言われてみれば、この国はなんだかイシュマウリと縁がある国ね。さすが願いの丘の伝説が残っているだけのことはあるわ」
活気づいている城下町を通り抜け、王宮へと足を踏み入れる。
噴水のある一階のエントランスから階段を登って、四階の玉座の間へ。
前回ここを訪れた時は夜中で、玉座に突っ伏して泣き濡れるパヴァン王がいたけれど──。
今回は昼日中、玉座には穏やかな顔つきで座るパヴァン王のお姿がある。
そのパヴァン王と私たちの目が合った途端、パヴァン王が勢いよく立ち上がった。
「……もしや!」
そう大声を出して玉座を降り、私たちのところへ歩み寄ると、パヴァン王はエイトの手を握った。
「やはりそうだ! ああ、皆さん。よくこの城に立ち寄ってくれました。あの時、シセルの幻を見せてくれたこと……。なんと感謝すればよいものか」
「いえいえ、私たちはただお節介を焼いただけですから!」
「アスカンタがまた元気な姿を取り戻してくれて、僕らも嬉しいです」
ね、と微笑むエイトに頷く。
寄り道にはなったけど、人助けもまた旅の醍醐味。
情けは人の為ならずというわけだ。
「それで、アスカンタへはどんなご用でいらしたのですか?」
「実は、とある事情で、月影のハープという楽器を探しているんです。それがないと、僕らの旅は行き詰まってしまうことになって……」
「もちろん、この国にとって大切なものだろうということは承知の上よ。それでも、どうしても月影のハープが必要なの!」
「……なるほど」
そう言ってパヴァン王は腕を組んだ。
柔和な微笑みは引っ込み、王としての真剣な顔つきが表に現れる。
「月影のハープなら、ちょうど我が国にあります。古来より、我がアスカンタに伝えられてきた、国の宝なのです」
やっぱり国宝級の代物かぁー!
素直にくれるわけもない!
借りて……イシュマウリがアスカンタに返してくれることに賭けるか……!?
いやそんな、相手から見ればイシュマウリなんて存在、いるかも分からないのに、信じられるわけもないか……。
さすがに無理か……? と全員が覚悟した時。
「……だが、他ならぬ皆さんの頼みとあらば。いいでしょう。ハープは差し上げます」
「え!!」
「い、いいんでげすかい? アッシらの頼みとはいえ、国宝なんでがしょう?」
「助かります。本当にありがとうございます!」
私達も口々にお礼を言って頭を下げる。
パヴァン王は気後れしたように笑いつつ、「顔を上げてください」と言ってくれた。
なんて優しい……これがアスカンタ王国を治める賢王……。
「月影のハープは城の地下宝物庫の中に、厳重に保管されています。私についてきてください」
そう言ってパヴァン王は玉座の間から階段を降りていった。
慌ててその後を追いかけて、私達も階段を降りていく。
その途中で、気になったことをエイトに聞いてみた。
「……ねえ、エイト」
「どうしたの?」
「国宝を旅人にホイってあげちゃっていいの? この国これで本当に大丈夫?」
「……トロデーン国領にしちゃう?」
「予期しなかったこの返答」
まさかエイトの口から攻略論が出てくるなんて思いもしなかったよ、私は。
もう少し穏便な会話になると思ったのに、一気に物騒になっちゃった。
とうすんだこれ。
「冗談だよ、冗談」
「冗談に聞こえないのは私だけかな」
後ろにいる仲間を見ると、みんなわざとらしく咳払いしたり明後日の方向を向いたり、ヤンガスは鼻くそをほじっていた。
お前らも実はそう思ってたんだろ、そうだろそうなんだろ。
ちくしょう、裏切り者どもめが。
「ま、まあでも、パヴァン王も私たちに相当の恩を感じているようだし、貰えるものはありがたくもらっておきましょ」
「ゼシカの言う通りだ。どのみち俺たちには、月影のハープが必要なんだろ。だったら、国宝を旅人にホイホイあげることについて議論してたって仕方ないと俺は思うね」
「ククールは相変わらずクールだよね……」
「そりゃどうも」
「人の心が足りないだけかもよ」
「ゼシカ。俺の心は鋼鉄で出来てるわけじゃないんだぜ」
「ガラス製でもないでしょうけれどね」
ククールが胸を押さえて蹲る。
ゼシカの一言が痛恨の一撃を与えてしまったようだ。
私とヤンガスに肩をポンと叩かれたククールは、「別にそんなんじゃねーよ……」と弱々しい声で言い張ったのだった。
二度目の訪問になる私たちの目の前には、すっかり活気を取り戻した城下町が広がっていた。
店の商人たちの活気ある呼び込み、城下町を走り回る子供たちと、それを見守る井戸端会議中のご婦人たち。
平和な日常を過ごす彼らの表情は、誰もみな明るい笑顔だ。
「この国もすっかり吹っ切れたな」
「うん! やっぱり城下町ってのはこうでなくちゃ!」
「アッシらも頑張って山登りをした甲斐があるってもんでがすな」
「そう言われてみれば、この国はなんだかイシュマウリと縁がある国ね。さすが願いの丘の伝説が残っているだけのことはあるわ」
活気づいている城下町を通り抜け、王宮へと足を踏み入れる。
噴水のある一階のエントランスから階段を登って、四階の玉座の間へ。
前回ここを訪れた時は夜中で、玉座に突っ伏して泣き濡れるパヴァン王がいたけれど──。
今回は昼日中、玉座には穏やかな顔つきで座るパヴァン王のお姿がある。
そのパヴァン王と私たちの目が合った途端、パヴァン王が勢いよく立ち上がった。
「……もしや!」
そう大声を出して玉座を降り、私たちのところへ歩み寄ると、パヴァン王はエイトの手を握った。
「やはりそうだ! ああ、皆さん。よくこの城に立ち寄ってくれました。あの時、シセルの幻を見せてくれたこと……。なんと感謝すればよいものか」
「いえいえ、私たちはただお節介を焼いただけですから!」
「アスカンタがまた元気な姿を取り戻してくれて、僕らも嬉しいです」
ね、と微笑むエイトに頷く。
寄り道にはなったけど、人助けもまた旅の醍醐味。
情けは人の為ならずというわけだ。
「それで、アスカンタへはどんなご用でいらしたのですか?」
「実は、とある事情で、月影のハープという楽器を探しているんです。それがないと、僕らの旅は行き詰まってしまうことになって……」
「もちろん、この国にとって大切なものだろうということは承知の上よ。それでも、どうしても月影のハープが必要なの!」
「……なるほど」
そう言ってパヴァン王は腕を組んだ。
柔和な微笑みは引っ込み、王としての真剣な顔つきが表に現れる。
「月影のハープなら、ちょうど我が国にあります。古来より、我がアスカンタに伝えられてきた、国の宝なのです」
やっぱり国宝級の代物かぁー!
素直にくれるわけもない!
借りて……イシュマウリがアスカンタに返してくれることに賭けるか……!?
いやそんな、相手から見ればイシュマウリなんて存在、いるかも分からないのに、信じられるわけもないか……。
さすがに無理か……? と全員が覚悟した時。
「……だが、他ならぬ皆さんの頼みとあらば。いいでしょう。ハープは差し上げます」
「え!!」
「い、いいんでげすかい? アッシらの頼みとはいえ、国宝なんでがしょう?」
「助かります。本当にありがとうございます!」
私達も口々にお礼を言って頭を下げる。
パヴァン王は気後れしたように笑いつつ、「顔を上げてください」と言ってくれた。
なんて優しい……これがアスカンタ王国を治める賢王……。
「月影のハープは城の地下宝物庫の中に、厳重に保管されています。私についてきてください」
そう言ってパヴァン王は玉座の間から階段を降りていった。
慌ててその後を追いかけて、私達も階段を降りていく。
その途中で、気になったことをエイトに聞いてみた。
「……ねえ、エイト」
「どうしたの?」
「国宝を旅人にホイってあげちゃっていいの? この国これで本当に大丈夫?」
「……トロデーン国領にしちゃう?」
「予期しなかったこの返答」
まさかエイトの口から攻略論が出てくるなんて思いもしなかったよ、私は。
もう少し穏便な会話になると思ったのに、一気に物騒になっちゃった。
とうすんだこれ。
「冗談だよ、冗談」
「冗談に聞こえないのは私だけかな」
後ろにいる仲間を見ると、みんなわざとらしく咳払いしたり明後日の方向を向いたり、ヤンガスは鼻くそをほじっていた。
お前らも実はそう思ってたんだろ、そうだろそうなんだろ。
ちくしょう、裏切り者どもめが。
「ま、まあでも、パヴァン王も私たちに相当の恩を感じているようだし、貰えるものはありがたくもらっておきましょ」
「ゼシカの言う通りだ。どのみち俺たちには、月影のハープが必要なんだろ。だったら、国宝を旅人にホイホイあげることについて議論してたって仕方ないと俺は思うね」
「ククールは相変わらずクールだよね……」
「そりゃどうも」
「人の心が足りないだけかもよ」
「ゼシカ。俺の心は鋼鉄で出来てるわけじゃないんだぜ」
「ガラス製でもないでしょうけれどね」
ククールが胸を押さえて蹲る。
ゼシカの一言が痛恨の一撃を与えてしまったようだ。
私とヤンガスに肩をポンと叩かれたククールは、「別にそんなんじゃねーよ……」と弱々しい声で言い張ったのだった。
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