24章
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深夜のトロデーン城の図書館。
月明かりに照らされて、図書館の壁には窓枠の影が浮かび上がっている。
それは月の世界への入口である、月影の窓。
「……イシュマウリなら、ひょっとして……」
「あの船を海まで運べるかも……?」
エイトと顔を見合わせて、同時に頷く。
そうしてエイトの手が月影の窓を開いた。
眩しい光が差し込んで、その先は……あの、不思議な世界。
「まさかこの世界にもう一度来ることになるとは思わなかったな」
「そんなホイホイ開くものでもなさそうだもんね」
「ま、あのイシュマウリっていうやつの力を借りれば、何とかなりそうじゃないか?」
「そうね……。アスカンタで見た不思議な光景は、イシュマウリの力によるものなんでしょうし」
月の満ち欠けが描かれた通路を渡り、イシュマウリのいる小さな家のドアを開く。
イシュマウリは楽器たちが並んでいるスペースに立っていて、私達の姿を見ると、驚いたように目を丸くしたあと、柔らかく微笑んだ。
「おや……? 月の世界へようこそ、お客人」
イシュマウリの手の中にある竪琴が綺麗な音色を響かせる。
「月影の窓が人の子に叶えられる願いは、生涯で一度きり。再び窓が開くとは珍しい。さて、いかなる願いが君たちをここへ導いたのか? さあ、話してごらん」
「はい、実は……トロデーン国領の南にある荒野に、打ち捨てられた古代船があるんです。それをもう一度、動かせるようにしたくて」
イシュマウリは竪琴を抱え、エイトの言葉に頷いた。
「あの船なら知っている。かつては月の光の導くもと、大海原を自在に旅した。覚えているよ」
イシュマウリがそう言うってことは、あの船、相当な古代の遺物なんじゃ……。
私達で動かせるものなのかな。
少なくとも私は操舵技術なんかないんだけど。
「お力添え頂けませんか。あの船を、海に戻したいんです」
「再び海の腕へとあの船を抱かせたいと言うのだね。それなら容易いことだ。君たちも知っての通り、あの地はかつては海だった。その太古の記憶を呼び覚ませばいい。君たちにアスカンタで見せたのと同じように……。大地に眠る海の記憶を形にするのだ。そう、こんなふうに……」
ポロン……とイシュマウリの指が竪琴の弦を弾く。
そうしてイシュマウリが曲を演奏し始めた。
なんとも心地の良い音が鳴らされ、思わず聞き入ってしまった──その時。
プツンという音と共に、竪琴の音色は止んだ。
よく見れば、イシュマウリの手にある竪琴は弦が切れている。
「ふむ……。やはりこの竪琴では無理だったか。これほど大きな仕事には、それに相応しい、大いなる楽器が必要なようだ。さて、どうしたものか……」
考え込んだイシュマウリが、ふとその綺麗なかんばせを持ち上げた。
視線の先にはエイトがいる。
……ま、まさか、エイトの命をもって願いを叶えるとか、そういう!?
「……いや待て。君たちを取り巻く、その気配……。微かだが、確かに感じる」
「あ、あの、エイトの命だけは何とか勘弁していただけないでしょうか! 無能な家臣は私だけで十分ですので!!」
「そうか! 月影のハープが昼の世界に残っていたとは。あれならば大役も立派に務めるだろう」
「そうなんです代わりに月影のハープを犠牲に……って、はい? 月影のハープとは?」
「話がとっ散らかるにも程があるわよ!?」
「しかも僕が死ぬ流れになりかけなかった!?」
ゼシカとエイトの二人から手厚いツッコミを受けてしまった。
いやだって、なんかこう、誰かを犠牲にしなきゃいけないのかなって思って……。
素直に言ってしまったら、「そんなわけあるか」とククールからもツッコミを入れられてしまった。
「よく聞くがいい。大いなる楽器は、地上の何処かにある。君たちが歩いてきた道、そのどこかに。深く縁を結びし者が、ハープを探す導き手となるだろう。人の子よ。船を動かしたいと望むのなら、月影のハープを見つけ出すといい。そうすればすぐにでも、荒れ野の船を大海原へと、私が運んであげよう」
私たちが歩んできた道のどこかに、月影のハープがある。
イシュマウリはたしかにそう言った。
地上のどこかにあるって言われた時は「世界の半分しか歩いてないですが」と心が挫けそうになったが、捨てる神あれば拾う神あり。
さっそく探すぞ、月影のハープ!!
「いつになく張り切ってるわね。心当たりがあるの?」
「ない!!」
「元気なお返事をありがとうよ、近衛兵さん」
窓を出ながらククールがチクリと刺してきた。
こいつは本当に。
とはいえまあ、私達のこれまでの旅路も、振り返ろうとするとなかなかな長さというか……。
「ヤンガス、耳にしたことは?」
「月影のハープねぇ。盗賊稼業の長いアッシも、とんと聞いたことがねぇでげすよ。だいたい、地上のどこかにって軽く言ってくれやしたが、探すほうの身にもなってほしいでがす」
「それはそう」
エイトが静かに頷いた。
こっちも内心でげんなりしてたんだな。
いやまあ、分かるぞ、その気持ち。
ひょっとしてこれ、また旧修道院跡地に向かわなきゃいけなかったりする可能性ある?
さすがに今度ばかりは気絶では済まない自信があるけど。
月明かりに照らされて、図書館の壁には窓枠の影が浮かび上がっている。
それは月の世界への入口である、月影の窓。
「……イシュマウリなら、ひょっとして……」
「あの船を海まで運べるかも……?」
エイトと顔を見合わせて、同時に頷く。
そうしてエイトの手が月影の窓を開いた。
眩しい光が差し込んで、その先は……あの、不思議な世界。
「まさかこの世界にもう一度来ることになるとは思わなかったな」
「そんなホイホイ開くものでもなさそうだもんね」
「ま、あのイシュマウリっていうやつの力を借りれば、何とかなりそうじゃないか?」
「そうね……。アスカンタで見た不思議な光景は、イシュマウリの力によるものなんでしょうし」
月の満ち欠けが描かれた通路を渡り、イシュマウリのいる小さな家のドアを開く。
イシュマウリは楽器たちが並んでいるスペースに立っていて、私達の姿を見ると、驚いたように目を丸くしたあと、柔らかく微笑んだ。
「おや……? 月の世界へようこそ、お客人」
イシュマウリの手の中にある竪琴が綺麗な音色を響かせる。
「月影の窓が人の子に叶えられる願いは、生涯で一度きり。再び窓が開くとは珍しい。さて、いかなる願いが君たちをここへ導いたのか? さあ、話してごらん」
「はい、実は……トロデーン国領の南にある荒野に、打ち捨てられた古代船があるんです。それをもう一度、動かせるようにしたくて」
イシュマウリは竪琴を抱え、エイトの言葉に頷いた。
「あの船なら知っている。かつては月の光の導くもと、大海原を自在に旅した。覚えているよ」
イシュマウリがそう言うってことは、あの船、相当な古代の遺物なんじゃ……。
私達で動かせるものなのかな。
少なくとも私は操舵技術なんかないんだけど。
「お力添え頂けませんか。あの船を、海に戻したいんです」
「再び海の腕へとあの船を抱かせたいと言うのだね。それなら容易いことだ。君たちも知っての通り、あの地はかつては海だった。その太古の記憶を呼び覚ませばいい。君たちにアスカンタで見せたのと同じように……。大地に眠る海の記憶を形にするのだ。そう、こんなふうに……」
ポロン……とイシュマウリの指が竪琴の弦を弾く。
そうしてイシュマウリが曲を演奏し始めた。
なんとも心地の良い音が鳴らされ、思わず聞き入ってしまった──その時。
プツンという音と共に、竪琴の音色は止んだ。
よく見れば、イシュマウリの手にある竪琴は弦が切れている。
「ふむ……。やはりこの竪琴では無理だったか。これほど大きな仕事には、それに相応しい、大いなる楽器が必要なようだ。さて、どうしたものか……」
考え込んだイシュマウリが、ふとその綺麗なかんばせを持ち上げた。
視線の先にはエイトがいる。
……ま、まさか、エイトの命をもって願いを叶えるとか、そういう!?
「……いや待て。君たちを取り巻く、その気配……。微かだが、確かに感じる」
「あ、あの、エイトの命だけは何とか勘弁していただけないでしょうか! 無能な家臣は私だけで十分ですので!!」
「そうか! 月影のハープが昼の世界に残っていたとは。あれならば大役も立派に務めるだろう」
「そうなんです代わりに月影のハープを犠牲に……って、はい? 月影のハープとは?」
「話がとっ散らかるにも程があるわよ!?」
「しかも僕が死ぬ流れになりかけなかった!?」
ゼシカとエイトの二人から手厚いツッコミを受けてしまった。
いやだって、なんかこう、誰かを犠牲にしなきゃいけないのかなって思って……。
素直に言ってしまったら、「そんなわけあるか」とククールからもツッコミを入れられてしまった。
「よく聞くがいい。大いなる楽器は、地上の何処かにある。君たちが歩いてきた道、そのどこかに。深く縁を結びし者が、ハープを探す導き手となるだろう。人の子よ。船を動かしたいと望むのなら、月影のハープを見つけ出すといい。そうすればすぐにでも、荒れ野の船を大海原へと、私が運んであげよう」
私たちが歩んできた道のどこかに、月影のハープがある。
イシュマウリはたしかにそう言った。
地上のどこかにあるって言われた時は「世界の半分しか歩いてないですが」と心が挫けそうになったが、捨てる神あれば拾う神あり。
さっそく探すぞ、月影のハープ!!
「いつになく張り切ってるわね。心当たりがあるの?」
「ない!!」
「元気なお返事をありがとうよ、近衛兵さん」
窓を出ながらククールがチクリと刺してきた。
こいつは本当に。
とはいえまあ、私達のこれまでの旅路も、振り返ろうとするとなかなかな長さというか……。
「ヤンガス、耳にしたことは?」
「月影のハープねぇ。盗賊稼業の長いアッシも、とんと聞いたことがねぇでげすよ。だいたい、地上のどこかにって軽く言ってくれやしたが、探すほうの身にもなってほしいでがす」
「それはそう」
エイトが静かに頷いた。
こっちも内心でげんなりしてたんだな。
いやまあ、分かるぞ、その気持ち。
ひょっとしてこれ、また旧修道院跡地に向かわなきゃいけなかったりする可能性ある?
さすがに今度ばかりは気絶では済まない自信があるけど。
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