14章
夢小説設定
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葬儀が終わったあと、私達は騎士団側のご厚意で部屋を貸してもらった。
騎士団員は徹夜で作業があるから使っていいそうだ。
三つしかないベッドをどう使うかで緊張が走ったけど、簡易ベッドを貸してもらうことで事なきを得た。
肉体的な疲れもあったし、何より精神的な疲労が大きかったから、私達はもう泥のように眠った。
それこそドアが誰かによって開けられるまで、私もエイトも爆睡していたのだ。
その音で一気に目が覚めて、私とエイトはすぐに身を起こすとベッドを降りた。
「目が覚めたみたいだな」
「ククールさん……」
入口にもたれかかっているのは、ククールさんだ。
一夜明けても、心の中には無力感が広がったままで、うまく彼の顔を見ることが出来なかった。
「……葬式の前にも言ったが、オディロ院長の死のことは、あんたたちの責任じゃない。むしろ、あんたらがいなかったら、マルチェロ団長まで死んじまってただろう。礼を言う」
「……お礼なんて、受け取れません。私達は結局、オディロ院長様をお助けすることもできませんでした」
「レイラ……」
「……マルチェロさんは、お怪我はもう……?」
私の問いにククールさんが頷く。
そうか……マルチェロさんも深手を負っていたように見えたけれど、無事だったのか。
これが不幸中の幸いだなんて言いたくないけど、マルチェロさんのことは助けられたと思うべきなんだろうか。
「……さて。その聖堂騎士団長殿がお呼びだ。部屋まで来いとさ」
「あ……分かりました」
「じゃあな。俺は確かに伝えたからな」
「あ、あの……ククールさん。先日から色々と不躾な態度、すみませんでした。それと、ありがとうございました」
そう言って頭を下げる。
ククールさんは「別にいいさ」と短く答えて、ドアを閉めてどこかへ去っていった。
顔を上げて、小さくため息をつく。
それからエイトを見上げて、無理やり微笑んだ。
「……マルチェロさんを待たせるのも悪いし、みんなを起こしてお部屋に向かおっか」
「うん……。ねえ、レイラ」
「なに?」
「その、あんまり背負い過ぎないでほしいんだ。オディロ院長のこととか、ドルマゲスを逃がしたこととか……。僕らはみんなでドルマゲスを追ってるんだから、犠牲が出たって、奴を捕まえられなくたって、それはレイラのせいじゃない。自分だけの責任だって思わなくていいからね」
エイトを見上げて、何度か瞬きをする。
それから小さく頷いた。
……分かってる、私達はきっとこれから先も、こういう気持ちを味わっていくのかもしれない。
それでも心を折っちゃいけないし、とにかくみんなで支え合っていくしかない。
「……うん。ありがとう、エイト」
不安そうなエイトに微笑んでから、私はゼシカを起こした。
ヤンガスはエイトが起こしてくれて、マルチェロさんに呼ばれていることを伝え、私達はマルチェロさんのお部屋へと向かった。
マルチェロさんのお部屋は、すぐ向かいにある一番大きな部屋。
両側に立つ騎士団員が、私達を見て部屋へ入るよう促した。
ノックをして扉を開け、中へ入る。
入口近くにはククールさんが立っていた――彼もマルチェロさんに呼ばれていたらしい。
机に座っていたマルチェロさんは、未だ頭部の包帯が取れないままだ。
「……これはこれは。目が覚められましたか。話は全てこちらの方から聞きました。あらぬ疑いをかけ、申し訳ない」
こちらの方、というのは、別室で休んでいた陛下のことだ。
ただの魔物ではないと感じていただろうけど、まさかそれが一国の国王だとは、彼も夢にも思わなかっただろう。
「憎むべきはドルマゲス。あの道化師には、神の御名のもと、鉄槌を下さねばなりますまい。ですが……私には新しい院長として、皆を導くという役目がある」
……そう。
マルチェロさんはオディロ院長に代わり、新たな修道院長に就任することになった。
他にめぼしい人物がいないのだから、仕方のない話かもしれないけれど……ククールさんはどう思ってるんだろう。
朝からどこか不機嫌そうだったのは、このせいかもしれない。
「……そこで、です。こちらのトロデという方のお話では、皆さんもドルマゲスを追って旅しているとか」
マルチェロさんはそこで言葉を切って、視線を私達からその後ろへ向けた。
そこにいるのは、ククールさんだ。
「どうでしょう? ここにいる我が弟ククールを、同行させてはいただけませんか?」
「……へ?」
予想外のような、でもちょっと予想できたような展開だ。
思わず気の抜けた声が出てしまったけれど、当のククールさん本人は騒ぐでも怒るでもなく、冷静だった。
「……騎士団長殿。規則が守れぬ者は弟とは思わぬと、あなたが言ったのでは……」
「今はこの方々と話をしているのだが? お前は黙っていろ」
そう言われ、ククールさんが不愉快そうに眉根を寄せてそっぽを向く。
承服しかねる決定なのは間違いないだろう。
それに……マルチェロさんはどうも、この修道院からククールさんを追い出したいようにも見える。
ドルマゲスを追えという命令は、その口実にはもってこいだ。
恩義ある院長の仇を討つべしと言われれば、ククールさんとて容易には断れない。
それが分かっているから、ククールさんも何も言わないんだろうな。
騎士団員は徹夜で作業があるから使っていいそうだ。
三つしかないベッドをどう使うかで緊張が走ったけど、簡易ベッドを貸してもらうことで事なきを得た。
肉体的な疲れもあったし、何より精神的な疲労が大きかったから、私達はもう泥のように眠った。
それこそドアが誰かによって開けられるまで、私もエイトも爆睡していたのだ。
その音で一気に目が覚めて、私とエイトはすぐに身を起こすとベッドを降りた。
「目が覚めたみたいだな」
「ククールさん……」
入口にもたれかかっているのは、ククールさんだ。
一夜明けても、心の中には無力感が広がったままで、うまく彼の顔を見ることが出来なかった。
「……葬式の前にも言ったが、オディロ院長の死のことは、あんたたちの責任じゃない。むしろ、あんたらがいなかったら、マルチェロ団長まで死んじまってただろう。礼を言う」
「……お礼なんて、受け取れません。私達は結局、オディロ院長様をお助けすることもできませんでした」
「レイラ……」
「……マルチェロさんは、お怪我はもう……?」
私の問いにククールさんが頷く。
そうか……マルチェロさんも深手を負っていたように見えたけれど、無事だったのか。
これが不幸中の幸いだなんて言いたくないけど、マルチェロさんのことは助けられたと思うべきなんだろうか。
「……さて。その聖堂騎士団長殿がお呼びだ。部屋まで来いとさ」
「あ……分かりました」
「じゃあな。俺は確かに伝えたからな」
「あ、あの……ククールさん。先日から色々と不躾な態度、すみませんでした。それと、ありがとうございました」
そう言って頭を下げる。
ククールさんは「別にいいさ」と短く答えて、ドアを閉めてどこかへ去っていった。
顔を上げて、小さくため息をつく。
それからエイトを見上げて、無理やり微笑んだ。
「……マルチェロさんを待たせるのも悪いし、みんなを起こしてお部屋に向かおっか」
「うん……。ねえ、レイラ」
「なに?」
「その、あんまり背負い過ぎないでほしいんだ。オディロ院長のこととか、ドルマゲスを逃がしたこととか……。僕らはみんなでドルマゲスを追ってるんだから、犠牲が出たって、奴を捕まえられなくたって、それはレイラのせいじゃない。自分だけの責任だって思わなくていいからね」
エイトを見上げて、何度か瞬きをする。
それから小さく頷いた。
……分かってる、私達はきっとこれから先も、こういう気持ちを味わっていくのかもしれない。
それでも心を折っちゃいけないし、とにかくみんなで支え合っていくしかない。
「……うん。ありがとう、エイト」
不安そうなエイトに微笑んでから、私はゼシカを起こした。
ヤンガスはエイトが起こしてくれて、マルチェロさんに呼ばれていることを伝え、私達はマルチェロさんのお部屋へと向かった。
マルチェロさんのお部屋は、すぐ向かいにある一番大きな部屋。
両側に立つ騎士団員が、私達を見て部屋へ入るよう促した。
ノックをして扉を開け、中へ入る。
入口近くにはククールさんが立っていた――彼もマルチェロさんに呼ばれていたらしい。
机に座っていたマルチェロさんは、未だ頭部の包帯が取れないままだ。
「……これはこれは。目が覚められましたか。話は全てこちらの方から聞きました。あらぬ疑いをかけ、申し訳ない」
こちらの方、というのは、別室で休んでいた陛下のことだ。
ただの魔物ではないと感じていただろうけど、まさかそれが一国の国王だとは、彼も夢にも思わなかっただろう。
「憎むべきはドルマゲス。あの道化師には、神の御名のもと、鉄槌を下さねばなりますまい。ですが……私には新しい院長として、皆を導くという役目がある」
……そう。
マルチェロさんはオディロ院長に代わり、新たな修道院長に就任することになった。
他にめぼしい人物がいないのだから、仕方のない話かもしれないけれど……ククールさんはどう思ってるんだろう。
朝からどこか不機嫌そうだったのは、このせいかもしれない。
「……そこで、です。こちらのトロデという方のお話では、皆さんもドルマゲスを追って旅しているとか」
マルチェロさんはそこで言葉を切って、視線を私達からその後ろへ向けた。
そこにいるのは、ククールさんだ。
「どうでしょう? ここにいる我が弟ククールを、同行させてはいただけませんか?」
「……へ?」
予想外のような、でもちょっと予想できたような展開だ。
思わず気の抜けた声が出てしまったけれど、当のククールさん本人は騒ぐでも怒るでもなく、冷静だった。
「……騎士団長殿。規則が守れぬ者は弟とは思わぬと、あなたが言ったのでは……」
「今はこの方々と話をしているのだが? お前は黙っていろ」
そう言われ、ククールさんが不愉快そうに眉根を寄せてそっぽを向く。
承服しかねる決定なのは間違いないだろう。
それに……マルチェロさんはどうも、この修道院からククールさんを追い出したいようにも見える。
ドルマゲスを追えという命令は、その口実にはもってこいだ。
恩義ある院長の仇を討つべしと言われれば、ククールさんとて容易には断れない。
それが分かっているから、ククールさんも何も言わないんだろうな。
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