12章
夢小説設定
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梯子の行き止まりを松明で照らすと、取っ手のようなものが見えた。
それを右に引っ張ると、天井だと思っていたそこが開いていく。
梯子を登り切った先は、なんと、院長様の館がある島の裏手だった。
「まさか歴代院長の墓が一つだけ、地下で繋がっていたなんてね」
「ククールさん、よく知ってたな……」
墓を元に戻してから、そっと表側へ回る。
昼間に出発したのに、外はもう夜だ。
橋を通せんぼしていた騎士団員達は、なぜか橋の上で転がっていた。
……嫌な予感がする。
館のドアを開けると、中で聖堂騎士団員が二人、倒れていた。
「な、何がどうなってるんでがすか!?」
「大丈夫ですか!? 道化師はどこに……!」
慌てて騎士団員に駆け寄って、上半身を抱き起こす。
呻き声を上げた騎士団員は、絞り出すように言葉を発した。
「あいつ……あのおかしな道化師は、ここに来てしばらくの間は、穏やかに振る舞っていたのだ……。それが急に、狂ったように笑い出し、院長様のお部屋へと駆け上がろうと……。わ……我々は……必死に止めようとしたのだ。だが……三人がかりでも……止められ……なかった……!」
私達四人ともが、大きく息を呑んだ。
つまり……この上に、今――ドルマゲスがいる。
騎士団員を床へとそっと寝かせ、私達は顔を見合わせて頷いた。
院長様のお部屋へと階段を上る。
ベッドでお休みになられているオディロ院長の、足元に立っているのは――。
「――!!」
ドルマゲス――!!
駆け寄ろうとした私を嘲笑うように、ドルマゲスはニタリと笑い。
……そうして、一瞬で姿を消した。
まるで、そう……私達が来ることを予見していたみたいに。
「……逃げた」
「今のがドルマゲスでがすか……」
「足が……動かなかったわ。あいつを前にして、射竦められた……」
「それよりも、院長様はご無事なの?」
院長様の近くまで向かうと、オディロ院長は目を覚まして起き上がられた。
……この方が、修道院長のオディロ様。
暗がりでもよく分かるくらい、清廉な方だ。
「……う……ん? なんだ、この禍々しい気は……?」
院長様もドルマゲスの気配に気付かれていたみたいだ。
院長様のお体に傷一つないことを見て、私達はひとまず安堵した。
「お怪我はありませんか、修道院長様」
「君達は……? 私に何か用かね?」
「僕達は――」
「――いたぞ! こいつらだ!」
エイトが事情を説明しようとした瞬間。
聖堂騎士団が数名、階下から階段を駆け上がってきた。
そうして私達をあっという間に包囲してきたのだ。
「え、え? なんで?」
「……嫌な予感がするわ」
「レイラ、僕から離れないで」
エイトが私を背に庇って、騎士団と対峙する。
何が起きているのか、理解が追いつかない。
「オディロ修道院長の命を狙うとは、何たる罰当たりめ!!」
「命を狙う!? 私達が!?」
私達はむしろ、魔の手から院長様を守った側なのに。
どうして私達が曲者扱いされているんだ?
ゼシカとヤンガスがじりじりと下がってくる。
期せずして、私は三人に庇われる形になってしまった。
近衛兵の名が大号泣である。
「これは……何の騒ぎだね?」
オディロ院長様は静かに彼らへと問うた。
その問いに答えたのは、私達を囲む騎士団員ではなく――。
最後に現れた、団長のマルチェロさんだった。
「オディロ院長。聖堂騎士団長マルチェロ、御前に参りました」
マルチェロさんが、院長様の前で恭しく膝をついて頭を垂れる。
「おお、マルチェロか。いったい何があったのだ」
「修道院長の警護の者達が、次々に侵入者に襲われ、深手を負っております」
「なんと!?」
「もしやと思い、駆け付けましたところ……」
マルチェロさんが私達を一瞥し、微かに口角を上げる。
それだけで嫌な予感は、ほぼ確信に変わった。
「昼の間から、この辺りをうろついていた賊を、今ここに捕らえたというわけです。どうにか間に合いましたな。ご無事で何よりです」
「ち、ちょっと待ってください! 私達はそんなこと……!」
マルチェロさんが踵を返して帰ろうとする。
……駄目だ、この状況では、私達が何を言っても無意味だ。
私達は今、素性の知れない旅人。
その旅人が、なぜかこの修道院長の部屋にいる。
おまけに、橋を塞いでいた騎士団員も、一階にいた騎士団員も倒されていた。
……私達が犯人と見なされるのは、悔しいけれど、反論材料がない。
「……いや、待て。その方々は怪しい者ではない」
マルチェロさんを止めたのは、オディロ院長様だった。
少なからず私達は驚いて……そして、院長様へ縋るような眼差しを向けた。
「何をおっしゃいます! 現に見張りが……」
「斯様にも澄んだ目をした賊がいるはずはあるまい。何かの間違いだろう」
「しかし……!」
マルチェロさんは反論しようとして、口を閉ざした。
そしてひとつ呼吸を整え、静かに頷いて。
「……分かりました。ただ、どうしてこのような夜更けに、院長の元を訪れたのか。それだけは、はっきりと聞いておかねばなりません。宜しいでしょうか?」
「ほっほっほ。お前は心配性じゃのう。分かった。それなら良かろう」
「ありがとうございます。……さあ、行きましょうか。皆さん」
そう言って、マルチェロさんはニヤリと、私達へ向かってほくそ笑んだのだった。
あ、これ駄目なやつだ。
直感的に私は、自分達の置かれるであろう状況を察した。
申し訳ないが、ククールさんのことは、盛大に恨ませてもらうことにしよう。
それを右に引っ張ると、天井だと思っていたそこが開いていく。
梯子を登り切った先は、なんと、院長様の館がある島の裏手だった。
「まさか歴代院長の墓が一つだけ、地下で繋がっていたなんてね」
「ククールさん、よく知ってたな……」
墓を元に戻してから、そっと表側へ回る。
昼間に出発したのに、外はもう夜だ。
橋を通せんぼしていた騎士団員達は、なぜか橋の上で転がっていた。
……嫌な予感がする。
館のドアを開けると、中で聖堂騎士団員が二人、倒れていた。
「な、何がどうなってるんでがすか!?」
「大丈夫ですか!? 道化師はどこに……!」
慌てて騎士団員に駆け寄って、上半身を抱き起こす。
呻き声を上げた騎士団員は、絞り出すように言葉を発した。
「あいつ……あのおかしな道化師は、ここに来てしばらくの間は、穏やかに振る舞っていたのだ……。それが急に、狂ったように笑い出し、院長様のお部屋へと駆け上がろうと……。わ……我々は……必死に止めようとしたのだ。だが……三人がかりでも……止められ……なかった……!」
私達四人ともが、大きく息を呑んだ。
つまり……この上に、今――ドルマゲスがいる。
騎士団員を床へとそっと寝かせ、私達は顔を見合わせて頷いた。
院長様のお部屋へと階段を上る。
ベッドでお休みになられているオディロ院長の、足元に立っているのは――。
「――!!」
ドルマゲス――!!
駆け寄ろうとした私を嘲笑うように、ドルマゲスはニタリと笑い。
……そうして、一瞬で姿を消した。
まるで、そう……私達が来ることを予見していたみたいに。
「……逃げた」
「今のがドルマゲスでがすか……」
「足が……動かなかったわ。あいつを前にして、射竦められた……」
「それよりも、院長様はご無事なの?」
院長様の近くまで向かうと、オディロ院長は目を覚まして起き上がられた。
……この方が、修道院長のオディロ様。
暗がりでもよく分かるくらい、清廉な方だ。
「……う……ん? なんだ、この禍々しい気は……?」
院長様もドルマゲスの気配に気付かれていたみたいだ。
院長様のお体に傷一つないことを見て、私達はひとまず安堵した。
「お怪我はありませんか、修道院長様」
「君達は……? 私に何か用かね?」
「僕達は――」
「――いたぞ! こいつらだ!」
エイトが事情を説明しようとした瞬間。
聖堂騎士団が数名、階下から階段を駆け上がってきた。
そうして私達をあっという間に包囲してきたのだ。
「え、え? なんで?」
「……嫌な予感がするわ」
「レイラ、僕から離れないで」
エイトが私を背に庇って、騎士団と対峙する。
何が起きているのか、理解が追いつかない。
「オディロ修道院長の命を狙うとは、何たる罰当たりめ!!」
「命を狙う!? 私達が!?」
私達はむしろ、魔の手から院長様を守った側なのに。
どうして私達が曲者扱いされているんだ?
ゼシカとヤンガスがじりじりと下がってくる。
期せずして、私は三人に庇われる形になってしまった。
近衛兵の名が大号泣である。
「これは……何の騒ぎだね?」
オディロ院長様は静かに彼らへと問うた。
その問いに答えたのは、私達を囲む騎士団員ではなく――。
最後に現れた、団長のマルチェロさんだった。
「オディロ院長。聖堂騎士団長マルチェロ、御前に参りました」
マルチェロさんが、院長様の前で恭しく膝をついて頭を垂れる。
「おお、マルチェロか。いったい何があったのだ」
「修道院長の警護の者達が、次々に侵入者に襲われ、深手を負っております」
「なんと!?」
「もしやと思い、駆け付けましたところ……」
マルチェロさんが私達を一瞥し、微かに口角を上げる。
それだけで嫌な予感は、ほぼ確信に変わった。
「昼の間から、この辺りをうろついていた賊を、今ここに捕らえたというわけです。どうにか間に合いましたな。ご無事で何よりです」
「ち、ちょっと待ってください! 私達はそんなこと……!」
マルチェロさんが踵を返して帰ろうとする。
……駄目だ、この状況では、私達が何を言っても無意味だ。
私達は今、素性の知れない旅人。
その旅人が、なぜかこの修道院長の部屋にいる。
おまけに、橋を塞いでいた騎士団員も、一階にいた騎士団員も倒されていた。
……私達が犯人と見なされるのは、悔しいけれど、反論材料がない。
「……いや、待て。その方々は怪しい者ではない」
マルチェロさんを止めたのは、オディロ院長様だった。
少なからず私達は驚いて……そして、院長様へ縋るような眼差しを向けた。
「何をおっしゃいます! 現に見張りが……」
「斯様にも澄んだ目をした賊がいるはずはあるまい。何かの間違いだろう」
「しかし……!」
マルチェロさんは反論しようとして、口を閉ざした。
そしてひとつ呼吸を整え、静かに頷いて。
「……分かりました。ただ、どうしてこのような夜更けに、院長の元を訪れたのか。それだけは、はっきりと聞いておかねばなりません。宜しいでしょうか?」
「ほっほっほ。お前は心配性じゃのう。分かった。それなら良かろう」
「ありがとうございます。……さあ、行きましょうか。皆さん」
そう言って、マルチェロさんはニヤリと、私達へ向かってほくそ笑んだのだった。
あ、これ駄目なやつだ。
直感的に私は、自分達の置かれるであろう状況を察した。
申し訳ないが、ククールさんのことは、盛大に恨ませてもらうことにしよう。
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